魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「おっすイサム、寝坊してないようで何より」
「武術家に寝坊はないだろ。毎朝稽古するんだし」
「そりゃそうだ」
「……というか、お前が運転するのか?」
「そうだが?安心しろ。私有地で乗り回して来た。ピカピカの新車だ」
俺の実家の玄関にてボストンバックと大きめの竹刀袋というらしい袋を担いだイサムに片手をあげて挨拶をした。今日は待ちに待ったオフトレ合宿の出発日である。俺がもたれかかったフェイトさんが乗るスタイリッシュなスポーツカーとはまた違う黒くてでかくてごついオフロード車を目にしたイサムの疑問に俺は至極当然と言った顔で返した。
いい加減徒歩や電車移動に飽き飽きしていた俺は魔導士ランクを取るついでに運転免許を取得し、金だけは無駄に有り余っているので車を扱うディーラーに突撃し、一番いいのを頼む。と販売員に伝えてこの車を入手したわけである。実に俺らしいごつくて頑丈そうな車が納車されたわけだが、暇を持て余している俺は私有地でぶんぶん乗り回して感覚を掴んだ。当然市道も走っているので安全運転は任せろ。
「おまえソレ許可取ってんだろうな?」
「当然だろ。とってなきゃ質量兵器所持で違法だ」
「聞くだけ野暮だったか。悪いな、一応嘱託魔導士なもんで」
「いや、ミッド人なら普通の反応だ。ラフィさん、イクスさん、3日間よろしく」
「ああ、よろしく頼む」
竹刀袋の中身、重心からしてこいつが何時も稽古で使っている木刀じゃなくて真剣っぽかったから突いてみたら、案の定真剣だった。稽古で使うんならしょうがないか。まあ俺も家の地下倉庫に腐るほどあるんだけど。当時使われてたデバイスじゃなくて質量兵器の方の真剣やら戦斧やら。後ろのドアを開けて乗ったイサムとラフィが挨拶するのを見て俺は運転席に乗りエンジンをかける。
低く唸るエンジン音と振動、ちなみにこいつは魔導エンジンである。フェイトさんは内燃エンジンらしいんだけど、まあ広義に見るならこの車はデバイスと言ってもいい。ディーラーに無理難題を押し付けて設置してもらったイクス用の席にきちんと収まるイクスがわたわたとイサムに頭を下げて、シートベルトをしているのを確認してから俺はアクセルを踏み込み、滑らかに車を発進させるのだった。
因みに何でおれが高町家にそのまま集合せず車で行くことになったのかだが、単純に高町家から出発する人間が多いからだ。ならもう、自分たちの移動は自分たちで済ましてフェイトさんやなのはさんに負担をかけるのはやめようという判断の元に今こうなっている。
まずなのはさんだろ?そんでフェイトさんだろ?ヴィヴィオ、コロナ、リオ、アインハルトとくればフェイトさんの車一台に詰め込んでギリギリだ。俺やラフィ、イクスにイサムのスペースがあると思うか?ないよそんなの。ついでにいうの車内の女性比率が高すぎて気まずいので。俺も男だし。
「お、いたいた~。アインハルト」
「あっ、お師さま」
「俺はグラムじゃないんだが?」
「でも……覇王流の先達ですし……」
そもそも俺は覇王流を使えるだけで極めているわけではないのだが、と大きなボストンバッグを持って所在なさげに立っていたアインハルトに俺は苦言を呈す。まあ確かに、アインハルトの覇王流に若干の不安を覚えた俺は彼女の覇王流を矯正する役割を買ってでてはいる。アインハルトのやつ、あの初代とクラウス殿下の残響の邂逅以来、俺のことを師匠扱いしやがるのだ。
弟子なんぞ産まれてこの方持ったことないんだけどなあ。アインハルトの中で何がどうなったのやら。いいんだけどね?アインハルトの覇王流は伸びしろが物凄くあるから、なんかこう……俺が手をくわえたら多分もっとすごいことになる。あとクラウス殿下の記憶のまんまの覇王流ってことはリアル殺人術だ。そういう意味でも矯正したほうがいいだろうし。
「初めましてだね。イサム・フワだ。名前でいいよ」
「ハイディ・E・S・イングヴァルトです。どうぞアインハルトと。DSAAの決勝戦は拝見しました」
「なあカイト、お前弟子とったの?」
「勝手に呼んでるだけだ。ウチの先祖関連ではあるけどな。覇王イングヴァルトは知ってるだろ?直系の子孫だぜ」
「……なるほどなあ。お前の周りは面白いな」
面白いってなんだコノヤロウ。と俺はシートベルトを締めなおして今度は高町亭に向けて進路を変更する。イクスはどうやらアインハルトがお気に召したらしく、身振り手振りで何とか会話を成立させようと頑張っている。イクスの体は高密度の魔力で形作られているが、魔力が減ると組成が崩れたりしてヤバいので魔法は禁止なのだ。念話もな。その代わり、俺とラフィの渾身の術式によりAMFにさらされても平気である。長時間はやばいけど。
「あっ!カイトいらっしゃい」
「フェイトさん、お疲れ様です。もうみんな揃ってますか?」
「うん。今からコロナとリオのお家に行って準備するよ。ヴィーヴィオー!カイト来てくれたよ~」
「カイトせんぱーい!」
ドタドタドタバンッ!と玄関先に止めていた車のチェックをしているフェイトさんに挨拶をすると、フェイトさんが念話と同時に声をかけたらしく高町亭の玄関が勢いよく開いてお出かけ準備が済んだヴィヴィオが出てきた。俺はそれに苦笑して運転席の窓越しにヴィヴィオに手をあげて、後部座席の窓を開けた。そこから顔を出したアインハルトにヴィヴィオの目がキラキラと輝く。
「アインハルトさんっ!!もしかしてオフトレ合宿にくるんですかっ!?」
「はい、ノーヴェさんとお師さまにお誘いいただきました。よろしければ同行させてください」
「はいっ!も―全力で大歓迎ですよ!あれ?お師さまっていうのは?」
「俺のことらしい。まあ覇王流のことを考えればな」
「えーーーっ!!!じゃあ私もカイト先輩に弟子入りさせてください!」
「じゃあってなんだじゃあって。お前の師匠はノーヴェさんだろ」
うーん、小動物。良く動き、よく笑い、そして明るい。ヴィヴィオといると楽しくなるな。と思いつつ本来の師匠に睨まれては困るのでヴィヴィオの弟子入りは却下だ。アインハルトのそれは正直しょうがないとは思ってはいるが俺は未だ弟子を取れるほど完成した人間ではないしな。アドバイスはできても教えを授けるのは流石に無理だ。そこら辺イサムは師範代ってことは弟子を取れる立場なのかな。
窓越しにアインハルトの手を握ってぶんぶんやるヴィヴィオとわたわたするアインハルトに苦笑していると玄関がまた開いてノーヴェさんやらなのはさんやらリオにコロナがわーーーっと出てきた。ノーヴェさんは話を聞いていたのかヴィヴィオに対してカイトに弟子入りするのか~?とにやにやしている。アンタが師匠だろいい加減認めろよ。
「それじゃ、いこうか~。初めまして、アインハルトちゃんはこっちの車ね。代わりにノーヴェ乗せて行ってもらえる?カイト君」
「いいですよ」
「またゴツイ車だなカイト。邪魔するぜ」
「しょうがないでしょう、うちの私有地はほぼ未舗装なんですから」
どうやら年が近い同士で固めてしまうつもりらしい。ヴィヴィオに引っ張られて車を降りたアインハルトが俺にぺこりと頭を下げてフェイトさんの車の後頭部座席に入っていく。俺たちはリオとコロナの実家によって荷物を積み込んでから、去年も使った次元港に車を走らせるのだった。
「やっほー、カイト~!久しぶり~~」
「カイト、この前の事件はありがとね。助かっちゃったわ」
「いえいえ、お気になさらず。スバルさんもティアナさんもお元気そうで何よりです」
「……なあ、カイト。お前の交友関係女しかいないのか?」
「安心しろ、お前もその仲間に入れてやるってんだよ」
「頼んでないよ」
うるせえ、このオフトレ合宿にくる時点でお前は俺と同じように美人と美少女の集団に接点を持つことが確定しているんだ。エリオとの男子同盟にお前を入れることは確定事項なんだからな。絶対逃がさねえぞコノヤロウ。その切れ長イケメンフェイスを洗って待っていやがれ、と俺は次元港で待ち合わせしていたスバルさんとティアナさんを見て当たり前の感想を漏らすイサムに対して男子同士特有の乱雑なノリで返した。
残念ながら今回のオフトレには来れなかった八神家にどんなお土産を持っていこうか考えていたら腹が減ったので適当にサンドイッチを買い足し、搭乗手続きを始めた。案の定イサムの真剣について引っかかったが、管理局の許可があることと抜けないように俺が古代ベルカ式の封印魔法を施すことで事なきを得た。刃引きしてねえのかよ、そりゃ引っかかるわ。
「そもそもあの真剣なんなんだよ」
「恭也さんのご紹介で刀鍛冶の人に鍛ってもらえたんだ。六花がメインだけど、御神流は真剣の流派だから感覚を研ぎ澄ますために使ってるんだよ」
「お兄ちゃん、何してるの……」
六花、イサムのデバイスの名前だ。こいつはツインデバイス持ちなんだが少々構成が異なっていて、俺と同じ非人格型アームドデバイス2本と籠手型インテリジェントデバイスを持っているのだが、籠手型インテリジェントデバイスの中に組み込まれる形でアームドデバイスが収納されている。要はスバルさんと同じタイプらしい。で、インテリジェントデバイスの名前が六花、でリッカと読むらしい。
「ああ、そうそうカイト、もーしわけないんだけどまた出動お願いしてもいいかしら?古代ベルカの遺跡調査で学者の護衛が必要でね」
「いいですけど、いつですか?」
「時間自体は割と融通効くわ。ほらこの前の、アジトに改造されてたところよ」
「ああ~~~~」
「この前の?ってなんですか?」
緩やかに出発した次元船の中で前の席に座ったティアナさんが後ろを振り向いて俺に嘱託魔導士としての出動要請をしてきた。全く構わないんだけど依頼内容が学者の護衛って。いい思い出全くと言っていいほどないんだけど。ほら、まだ母さんと父さんが生きていたころの話、俺がぽろっと歴史の真実を話したら学者が家に住み着いた事件とかあったからさ。
「ティアナ、カイトのこと頼りすぎじゃない?」
「フェイトさんも別件で呼びつけてるの知ってますよ~?」
「そ、それはその……!前衛がいたほうが安全確実だから……!」
「私も同じです。それに、相手はフェイトさんも知っている人ですし。カイトも安心できると思うわ」
俺の後ろに座っているフェイトさんがティアナさんに冗談交じりのからかいをするが、逆にティアナさんに返されてしまってワタワタしている。この人色んな意味で可愛らしい人だなあと隣で鼻提灯を膨らますユニゾンデバイスと冥府の炎王さまを見比べる。どっちも美人なんだよなあ。それはそうと、半ば学者アレルギーな俺でも安心できる学者とな?
「どんな人なんですか?」
「無限書庫の責任者よ」
「ユーノ!?」
「へー、ユーノくんもフィールドワークに出る余裕が出来たんだね。よかったー」
「いやー、なのはさんそうじゃなくて……件の遺跡のプロテクトがカッチカチだから白羽の矢が立ったんですよ。そこにカイトもいれば、ユーノさんも楽になるんじゃないかと」
「ユーノくん、大変だなあ」
なのはさんの気の毒そうな顔を見るあたり、その無限司書の責任者とかいう滅茶苦茶お偉いさんとはみんな面識があるらしい。確か無限書庫を整理した人だったんだっけ……え?それって物凄く、というかある意味では英雄扱いされてもおかしくない功績だと思うのだけど。そんな人を護衛するのか?やべーよそれ。逆に安心できん。
そもそも無限書庫とは世界のありとあらゆる書籍、データが持ち込まれる魔窟のことだ。ミッドに限らず管理世界の書籍、データが今も追加され続けている。一部はダンジョンと化してトラップやら迎撃ゴーレムやらが闊歩する、目的の情報にたどり着くまで命がけなところもある超ヤバいところなんだぜ。
「いーなー。フィールドワーク。私も行きたーい」
「ヴィヴィオ、興味あるのか?」
「うん、最近自分のルーツを調べているんです。それで、現地を見てみたいなあと思ってて」
「ほー。そらいいことだ。まあ自衛できないから連れてけないし、そもそも任務だからダメだけどな」
「わかってますよーだ。カイト先輩、ついたら組手してほしいです」
「……トレーニングの後に元気がありゃな」
仕事の話に仲間外れにされたと思ったのか軽くぶすくれるヴィヴィオに苦笑してそれが対価になるならばと了承する。オフトレは子供組と大人組に分けるらしく、俺は当然大人組。ヴィヴィオは今回こそは模擬戦に参加をと息巻いている。うーん、しかし組み分けが楽しみだな。とりあえず嘱託任務は了解ですっと。
主人公君は男相手だと雑になります。特に同年代。普通にアホやるのが好きな一般高校生男子と同じメンタリティになっちゃいます。仕方ないね、美人とか女の子相手だとキャラ作っちゃうよね。
ではまた次回。感想評価よろしくお願いします