魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「まあ、こんなものだろう……ほんとにこれでいいのか?」
「いや、このご時世にここまで物騒なのはいらないんよ」
「そうか……」
「久しぶりにフルで一から作るデバイスだからって張り切りすぎだ。フラムやシュロスじゃないんだぞ」
「……むぅ」
『……ダメなのですか』
あ、すねたなラフィのやつ。変わらず八神家の居間のテーブルの上ではやてさんと俺とラフィ、あとリインフォースはアインハルト用のデバイスについて煮詰めあっていた。ラフィが出した草案は彼女が普段俺と一緒に自認しているとおり古代ベルカのデバイスづくりなので所々物騒でなおかつ実用性と強度一辺倒だった。
リインフォースもどうやらベルカ脳らしいが、ヴィヴィオのセイクリッドハートは融合装着型の外装、つまりデバイスフォームがない特殊なタイプのデバイスだ。使用者と融合し、演算能力、魔法発動速度、その他もろもろが飛躍的に上がる。ユニゾン適性のいらないユニゾンデバイスというべきだろうか。ユニゾンデバイスとは特化方向が異なるので一概にどうとは言えないのだけども。
アインハルトはセイクリッドハートと同型を希望したので必然的に融合装着型になるのだが、ラフィのデバイス技師としての本分は演算領域の少ないアームドデバイス、それも実戦用の危険なタイプだからなあ。張り切ったはいいがそこらへんが設計図ににじみ出てしまったらしい。はやてさんがうまいこと修正してくれて助かった。
「まあ、当世のデバイスについては騎士はやてのほうが一日の長があるだろう。これで行くことにする」
「はいな。いやー、ラフィがいてくれて助かるなあ。私はデバイスマイスターの資格はもってへんからマリエルかシャーリーに頼らなあかんし。そや、かかるお金のことやけど」
「それは俺が負担します。まあ、あいつは俺の弟子らしいですから」
「ヴィヴィオ拗ねるんちゃう?認めちゃったら」
「事実教える立場になりましたからね、俺は」
まあ今更アインハルトが弟子入りした件についてはもう受け入れたし、ノーヴェさんにもアインハルトのDSAAまでの特訓はメニュー含め任せてもらった。無茶じゃないかチェックは入れてもらうつもりだが、あいつが俺に鍛えてほしいというのなら俺も相応の覚悟を持って向き合ってやるのが筋だろう。それなら、デバイス一つ程度安いものだ。蓄えは家の金ではなく俺が嘱託魔導士として稼いだものを使おう。
仮の話にはなるが、将来俺が結婚して次の城塞を育てるとなったら子供に対して訓練を施すのだ。早いか遅いかの違いだし、教えることによって自分にも身につくということもある。アインハルトの強烈な強さへの飢えは出会ったときから和らいではいるものの変わりなく彼女の中に巣くっている。
その強さへの方向性を間違えないようにしてやるのも、数年程度の違いとは言え年上……先達としての務めだろう。ましてやDSAAに挑むとなれば、同大会のチャンピオンとして間違った強さを教えるわけにもいかない。それこそ辻殴りをしていた時のような感じに導いたらだめだ。
ヴィヴィオに関しては……まぁ……拗ねるというよりも、いいなーという羨ましさをアインハルトに抱いているように見える。ヴィヴィオ自体も自分の戦闘スタイルが俺とは致命的に違いすぎるというのは理解してはいるし、ノーヴェさんのことも大好きなのでうらやましがることはあっても本気で俺に師事したいとは言ってこないだろう。
アインハルトを除いた3人の中で俺に一番近いのはリオだが、あの子はそもそも実家で春光拳を継いでいる身だ。師は両親なのであってノーヴェさんはトレーナー、俺が師になるなどとんでもない。コロナのゴーレム創成については俺は全く門外漢。したがってこの形になるのが必然となるわけだ。そもそも秘密特訓するんだしな。
「ふぅん。なんや余裕綽々って感じやな。いっそのこと教導資格でも取ったらどうや?」
「……それ、割と本気で考えてるんですよ」
「え!?冗談やで?」
「いや、ちびたちにアドバイスするようになってから何となく性に合ってるような気がして。なのはさんからも向いてるって言われました」
なのはさん曰く俺は感覚派であるらしいのだが、その感覚をうまいこと説明できる才能を持っているらしい。なのはさんはもともと感覚派だったけど、理論も理解できたから教導官になれたとか。ヴィータちゃんと同じタイプだね、というから今は席を外しているヴィータさんのように教導官としての道もありなんじゃないかとは正直思っている。
「ただいまー、はやてどうだ?終わったか?」
「おー、ちょうど終わって雑談してたところやで。新米師匠に司令官がお悩み相談してたところや」
「あー、アインハルトがこいつに弟子入りしたってやつか。それよりもほら、紹介したいやつがいるんだ」
「お、連れてきたん?カイト、私がお願いしたいことがある言うたんは覚えてる?」
「覚えてますよ。結局何なのかわからないんですけど」
「お邪魔しまーすっ!こんにちははやてさん、お元気です……か……?」
「おーミウラ、元気そやな。紹介するでーカイト、わが八神家道場期待の星、ミウラや!」
アインハルトのデバイスのことはもうあと作るだけの状態になってきているのではやてさんと俺の会話もすでに雑談に移行していた。そんなところに帰ってきたのはヴィータさん。ヴィータさん曰く紹介したいやつがいる、と聞いていつだかはやてさんにこの話を持ってきたときにお願いしたいことがあるという話をされたのを思い出した俺はこっちがはやてさんの本題かと向きなおる。
俺がいることを聞かされていなかったらしい少し桃色がかった髪の毛と緑色の瞳をした少女を見た俺の脳裏に、騎士カリムとの非公式会談の時、海岸でザフィーラさんに鍛えられていた一人の少女がよぎった。立ち方に見覚えがある、彼女だ。ミウラというらしいアインハルトと同年代っぽい少女は俺を見ると完全にフリーズして動きを止め、徐々に顔を赤く染めていった。
「来ていたか、カイト」
「ザフィーラさん、お久しぶりです。それで、この子は?」
「ああ、道場で面倒を見ている弟子なのだが……少々、あがり症でな」
「少々、ですか」
「かなり、だ」
完全に動きを止めて真っ赤になったミウラを眺めながら俺がそういうと、訂正の言葉がザフィーラさんからでてきた。つまり、緊張でこうなっていると?さっきのはやてさんへの言葉を聞く限り本来は打ち解けたら明るい性格なのかもしれないが初対面の俺相手にここまで固まる理由あるか?あ、男が苦手なのか?確かに俺は身長高いし筋肉はあるし怖いかもな。
「ミウラ、大丈夫か?」
「し、しししし師匠!ちゃ、チャンピオンが!チャンピオンがいますぅ!」
「そりゃ私が呼んだからなあ、ミウラに稽古つけたってほしいって」
「それは俺初耳なんですが?」
「さぷらーいずや。両方に」
相変わらずタチが悪いことするなこの人は!それでいてお茶目で済む範囲で済ませるから猶更悪辣だ!これが若くして佐官になった人の手管か!まあ、それはともかくとして俺を知っているということはミウラもDSAAに出るのか?去年チラ見した程度の関係だから詳しくわからんが、立ち姿がしゃんとしている。一本芯が通った立ち方だ、ベルカの格闘術に通ずるものがある。師匠とザフィーラさんを読んだあたり、本弟子に取ったのだろうか。
「紅の鉄騎な教導官に盾の守護獣、剣の騎士がいて
「ことミウラに関しては、お前の協力が欲しい。頼む、騎士カイト」
「実はなんだけどな……」
ザフィーラさんが俺に騎士としての称号を付けたうえでそう頼むってことは結構深刻なのか、この話は。俺と自らの師匠のやり取りを目を白黒させてみるミウラに視線をやると、彼女はびくっとしてまた固まった。なんか傷つくなあ、ジークでもそんな顔はしなかったぞ。
それで話を聞くに、八神家は休日などを使って近所の子供たちに武術を教える道場を開いているのだが、そこにミウラがやってきた。もちろん八神家は大歓迎、嬉々として他の子と同じようにミウラに武術を教えていくのだがそこで困ったことがある。それは「ミウラの才能が高すぎる」ということであった。入塾してすぐに相手にできる子はいなくなり、今ではなんとザフィーラさんやヴィータさんが直々に相手にしているのだとか。
「ものすごくいいことじゃないですか」
「ああ、こいつは得難いことだと思うぜ?でもよぉ、あたしらは本業があるし、道場は子供向けだ。ミウラを相手にできる奴は道場にはもういねえ」
「かといって俺たちも常にミウラにつきっきりでいてやれるわけでもない。実際今、ミウラの修行の8割は自主練だ」
「……そりゃまずいっすね」
それを聞いて俺の背筋に冷や汗が垂れる。ミウラはなんのこっちゃわかってないが、監督者、つまり師がいない状態のままで修行を続けさせるというのは致命的な癖や悪癖ができてしまった場合、気づいてやれる奴がいないということを表すからだ。俺やアインハルト、ジークのようなすでに完成形が頭の中にある記憶継承者は例外だが、ミウラは素人から武術を習っている。つまり、導き手を絶対に必要としているわけだ、魔法という危険な技術を使うならなおさら。
「それで、俺にどうしろと?模擬戦でもやってやればいいんですか?」
「お前が師になってやってほしいのだ」
「……彼女の気持ちはどうなるんですか?」
「……どうも俺は口下手でいかんな。俺たちの手に届かないところを、お前に視てやってほしいのだ。騎士カイト、お前なら文句なしに八神家道場の宝を預けられる」
つまり、はやてさんが本当に俺に頼みたいのは、このミウラの面倒を見てほしい、正確には危ない癖がつく前に止めてほしいってところか。確かに、俺は今暇だからな。DSAAも去年優勝したおかげでシード枠を確保しているからいきなり都市本選からスタートだ。鍛えることをやめるつもりはないが、去年よりも余裕はある。
「本当なら最後まであたしたちがみてやりてぇ。けど、どうしたって無理だ。ミウラの才能はそれだけのもんだからな。せめてDSAAが終わるまでは、目を離すべきじゃない」
「それで、俺ですか。うーん……直接確かめさせてもらっても?」
「ああ、外出るか?」
「いや、ここでいいです。ミウラって呼ぶぞ?聞こえてるか?」
「は、はいっ!大丈夫ですっ!」
「よし、じゃミウラ。魔力を回せ、全身にだ。身体強化魔法を全身に巡らせてみろ」
「ふ、ふえ?」
「とりあえずやれ」
なぜノーヴェさんに頼まないのか、と考えたがすでにノーヴェさんはアインハルトのチェックを含めて4人担当している、多すぎるくらいだ。まあお目付け役程度なら引き受けてもいいとは思う。だけどそれは、ミウラが俺の修行についてこれるかどうかを確認してからにしよう。身体強化魔法は元の体の性能に合わせて、ついでに魔力制御も見ることができるからそれで図ってみることにする。
話についていけず混乱しているミウラも俺が真剣に語りかけていることが分かったからか声を上ずらせながらも全身にリンカーコアから魔力をみなぎらせて身体強化魔法をかける。俺はそれをじっと見つめて、なるほどこれはとうなづいた。足腰の発達がすさまじい、一番使っている部位なのだろう。それで魔力の浸透が早いんだ。そして、わずかであるが大気中の魔力がミウラの体に収束している。スターライトブレイカーをはじめとした収束系の魔法に適性がある証、そして魔力の通りがいい。くまなく全身を鍛えて日常的に魔力強化を行っているから魔力の通り道ができているということだ。
「もういいぞ」
「あ、はい!その、いまのは何を……」
「うわ、それできるのお前やっぱり教導官向きだぞ。なのはが嬉しそうにあたしに話してくるわけだ」
「魔力強化の魔力の通りで全身の練度を測ったのだ。久しぶりに行っているのを見た」
「そういうことだ。まあその状態ならトレーニングついていけそうだな。よし!DSAAまでは俺がお前のトレーニングの面倒を見ることにする!」
ミウラの練度は、確かにザフィーラさん達が才能があると太鼓判を押し、本来なら自分で育てたいのをこらえて他人に預けようと考えるのも理解できるほどよく鍛え上げられていた。俺はとりあえず魔力強化を解いたミウラの前に立ち、自己紹介から始めることにする。
「まあ、知っていると思うが俺はカイト。カイト・エルンスト・アロイジウスだ。よろしくな」
「ミウラ・リナルディです!よろしくお願いします!」
緊張していた最初とは違い覇気のある大きな声で頭を下げるミウラに、俺は大きくうなづく。よろしく頼むというザフィーラさんに最善を尽くすことを誓って、俺はミウラとがっちり握手をするのだった。
なぜか弟子が増えた筋肉の巻。はるにゃんはどんな顔をするのだろうか。
それではまた次回。感想評価を下さると励みになります