魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「主カイト、荷造りはこれでいいだろう。そろそろ集合時間じゃないか?」
「ん、おおそうだな。さて、行こうか」
「しかし、戦艦に頼らず世界を移動するのか……世界の発展には驚くばかりだ」
小さくなったラフィが俺の肩にふわりと飛んで着地する。なのはさんから誘いを受けた無人世界カルナージへのトレーニング旅行に出発する朝である。なんと、フェイトさんが車で迎えに来てくれるっていう超特別待遇である。如何せん、俺は次元空港も次元船に乗るのも初めてだし、手続きも詳しく知らないんだけど、フェイトさんがそんな俺を心配してくれてやり方を懇切丁寧に教えてくれたりした。ほんと、頭が上がらないなあ……良い人すぎないか?
「カイト、久しぶり。元気だった?」
「久しぶり……ってこの前あったの1週間くらい前じゃなかったでしたっけ?」
「あ、あれ?そうだったかな……?本局で缶詰してるとどうも時間の感覚が曖昧で……」
「主カイト、就職先を考え直した方がいいのではないか?」
「ちょっと俺もそう思う」
俺は将来、具体的にはDSAAのアンダー19に出場できなくなった時くらいをめどに管理局への嘱託魔導士からの採用を目指していたんだけど、目の前で本局の人手不足による被害を一心に受けている執務官を見るとちょっと考え直すべきだと思ってしまった。城塞の騎士の名を継ぐことを許された以上、それなりに強い自負はあるんだけど、高ランク魔導士へのしわ寄せが酷いという事例を目の前で見てしまって、ちょっとどうしようか考えるべきじゃないかという疑問が出来てしまった。
いつ休んだっけなんて恐ろしい言葉を呟くフェイトさんの言葉に戦々恐々としながらも、俺は肩の上のラフィを落とさないように気をつけつつ、キャリーケースを車に積み込んでフェイトさんの高そうなスポーツカーにお邪魔させてもらう。年上のお姉さんの私服姿という男子的にはどうしたらいいか分からないので助手席に乗らないの?と悲しそうな顔をするフェイトさんに断腸の思いで遠慮して、俺は後部座席のドアを開けるのだった。この人距離近くない?
「カイトせんぱ~~い!」
「お~~~ヴィヴィオ、今日も元気だな。4日間よろしく。なのはさんもよろしくお願いします」
「すっかり懐いたね~ヴィヴィオ。カイトくんもよろしくね」
空港のラウンジに荷物を担いで入ってきた俺とフェイトさんをヴィヴィオの嬉しそうな声が出迎えてくれた。ヴィヴィオはこの日がよっぽど楽しみだったらしくいつもよりかなりテンションが高い。テンションが高すぎてえーいっ!と俺に飛び込んでくるほどだ。ヴィヴィオほどの体重ごときで突撃を食らっても揺らぐ体幹は持っていないので軽く受け止めるだけに済ませたが、あとから恥ずかしくなったらしいヴィヴィオが真っ赤になってフリーズし、フェイトさんの後ろに隠れる。最初からやるなよ傷つくわその反応。
「ああ、あとはスバルとノーヴェとティアナだね。はやてちゃんたちはちょっと遅れて次の便になるって」
「すいませ~~~ん!お待たせしました~~!」
「まさか遅刻しそうで走る羽目になるとは思わなかったわ……」
「スバル姉ぇが起きなかったんだもんよ~……」
そうこうしているうちに残りの人たちが来たらしい。青色のショートヘアーで快活そうな人、オレンジ色の髪のロングヘア―で気が強そうな人、それとノーヴェさんだ。俺に気づいた2人は顔に笑みを浮かべて此方にやってくる。やっと片手をあげたノーヴェさんにぺこりと会釈してから俺は残りの二人に自己紹介をした。
「カイト・エルンスト・アロイジウスです。長ったらしいのでカイトとでも呼んでください。こっちが融合騎のラフィです」
「ヴェントラフィカだ。よろしく頼む」
「私、スバル・ナカジマ!ノーヴェのお姉ちゃんだよ!よろしくねカイト!ストライクアーツ、強いんだって!?私とも一戦やろうね!」
「ティアナ・ランスターよ。本局で執務官やってるわ。ま、4日間よろしくね」
「俺は
「えっ!?そうだったの!?カイト先輩、あんなにすごかったのに?どんなトレーニングしてたの!?」
俺、実は実戦経験は皆無に等しいのだ。だけど、経験値だけは積んでいる。フラムとシュロスに記録された戦場をバーチャル体験で幾度となく経験することで、模擬戦を出来ないながらもそういう経験はしてきたつもりになっている。ちなみに3桁くらい死んだよ。痛みもリアルだからもうやめようかと思ったりもしたし。まあ、両親に顔向けできないから続けたけどさ。だから実際に戦える模擬戦ができるなら非常に喜ばしいんだ、師なんていないし、ただ、初代をトレースしてきただけだから。
それを伝えるとなんだかすごいドン引きされている気配がした。3桁死んだのあたりでそれが顕著になった気がする。なのはさんなんておいしいご飯と正しいトレーニングを教えてあげるよなんて言ってる。俺、価値観が古代ベルカと混じってしまっているからたまにこういうことが起こっちゃうんだよなあ。あと、同じ古代ベルカの価値観仲間としてラフィがいるのがそれを加速させてる気がする。
「そういえば、夜天の主……八神はやてさんというのでしたっけ、会ってくださると考えていいですか?」
「もちろん!話したらすぐに家に突撃しそうだったから抑えるのが大変だったよ~。カイトくん、覚悟しといたほうがいいんじゃない?」
「むしろ連絡先を渡したりした方が良かったのでは……?」
「はやて……実はこのオフトレに参加するために修羅場をくぐってたんだ……あと少しでこれなくなっちゃうぐらい時間が無くて……」
「やっぱ管理局ってブラックなのでは????」
「否定しないわ。私も執務官やってよ~~~く理解したもの」
うお、本局所属の管理局員の皆さんの目が死んでる!?どれだけ忙しいんだ時空管理局!?確かに未だ発見され続ける世界を管理するには人員が足りないってよく聞くし、コマーシャルで滅茶苦茶入隊するように宣伝してたりするし人手不足を全力でアピールしてるじゃん。どうしよ、マジで就職先変えるか?でもなー、聖王教会は絶対に嫌だしなー。総合DSAAの選手をするのもありかなー?古式ベルカを教えることができますってアピールポイントでジム作ったりとか?
「ほ、ほらほら積もる話は飛行機の中でもできるんだから!チェックインしないと!」
はっ!とスバルさんの苦笑い交じりの指摘に俺たちは正気を取り戻していそいそと荷物を持ち、搭乗ゲートに向かって歩みを進めるのだった。
「カイト先輩のデバイスって、何なんですか?」
「こいつらか?言っていいなら言うが……模擬戦で披露したほうが面白いと思うんだけどな」
「デバイス二つ持ちは珍しいわよね……しかも融合騎もいるだなんて」
「まあ、古い骨董品ですからね。現代の最先端と比べちゃうとどうしても処理能力とかは劣ります。だから、ご先祖様は分けたんですよ、一つじゃ無理なら二つ使えって」
「ゴリ押しじゃない」
「我が家は力任せの脳筋騎士ですからね。全く否定できません」
そこは否定したほうがいいんじゃないかな……とフェイトさんのお言葉が返ってくるけど、これ事実なんだよなあ。何だったらご先祖様が既に俺は馬鹿だから馬鹿なりに考えるって書いてんだよ当時の日記に!ラフィだって実際そうだろうというスタンスだし、俺も力押し、ゴリ押し万歳な騎士だ。むしろ否定したらアロイジウスの騎士ではないね。それでも処理能力足りなくて融合騎に手を出したんだぜ?脳筋としか言えねえ。
ヴィヴィオにもそういえばまだデバイスを使った戦闘は見せてなかったな、と俺は次元船の中で隣で俺のデバイスの待機状態である二つの腕輪をぶかぶか~と両手に嵌めるヴィヴィオを見て思い出す。なんだか異様に懐かれてるような気がしてしょうがないが、まあ物珍しい人間という自覚はあるのでそういうものなんだろう。
次元船で4時間、と言われてもそれがどれくらい遠いのか分からないので遠いんですか?と聞いてみると近い部類らしい。何でも無人世界なのに住んでる人がいて、そのすんでる人が知り合いなんだとか。無人世界なのに有人とはこれいかに、と胸ポケットの中で丸くなって寝てしまったラフィを起こさないように俺も目を閉じることにする。
「へー、ベルカ自治領よりも自然豊かですね」
「そりゃあ、観光地だし一部の人間以外はいないからなあ。こっちだぜ」
そんな感じで最初以外は寝てしまった初めての次元船での渡航はあっという間に終わり、俺は無人都市カルナージについた。ラフィは目を覚ましていつも通りの大きさに戻り背筋を伸ばしている。最初期のユニゾンデバイスである彼女は人間サイズがデフォルトなので縮んでいると肩がこるらしい。滅茶苦茶自然豊かで空気が美味しすぎる。なんか俄然楽しみになってきたぞ。ボルテージが上がってきた。
「いらっしゃ~~い!貴方がカイトね?私、ルーテシア・アルピーノ!ここにママと住んでるの。よろしく!」
「カイト・エルンスト・アロイジウスだ。よろしく頼む」
「ヴェントラフィカだ。世話になる。」
「貴方が!古代ベルカの最初期の融合騎!?アギトとはまた別の!?いろいろ話を聞かせてもらえないかしら!?」
「む、むう?確かに間違ってはいないが……」
「ルールーはデバイスマイスターなの。古代ベルカのそれこそロストロギアクラスの融合騎なんて目にしたら……」
「こうなるわけか」
大きなロッジにコテージが併設された温かみのある建物の中から紫髪にリボンをつけた活発な少女がやってくる。ルーテシア、ね。同年代より少し下ってところか。それでデバイスマイスターなんだから凄いよなあ。俺、なんか資格持ってたっけ?なんもねえわ。完全敗北。詰め寄られてタジタジという珍しいものを見れたのでそのままにしておく。ヴィヴィオの注釈を聞いて納得できた。
ロッジの中でメガーヌさんというルーテシアをそのまま大きくしたような人とも自己紹介をして、お茶を進められるがままソファについて緑茶というらしい管理外世界のお茶を頂く。きりりとした苦みとスーッと抜ける香りがいいな、と思っているとフェイトさんが砂糖とミルクをどさっと投入して飲み始めたのでそういうものかと倣おうとするとなのはさんからストップが入った。違うんだ、あれはフェイトさん専用?なるほど。
「いやー、待たせたな~皆!八神家到着や!さー、私に会いたいいう若者はどこや!?」
「あ、はやてちゃん。そうそう、こっちのカイトくんがって何やってるの!?」
「カイト、いったい何を……シグナム?ヴィータも?」
「ふむ、レヴァンテイン」
「あー、アイゼン」
俺たちが緑茶を楽しんでいると、騒々しく入室してくる一団がった。その中心にいる女性を目にいれた瞬間俺は確信を持った。この人が八神はやて、今代の夜天の書の主であると。すぐさま彼女に向かって片膝を突き、右手の拳を地面につき、左手を膝の上に乗せて首を垂れる。俺の後ろでラフィも同じ態勢を取っている。
これが何なのかと問われれば最敬礼だ。もし夜天の主に会うことがあれば最大の礼を持って尽くすべしという初代の教え通りの、何回も練習したそれ。古代ベルカの騎士の礼を前にして八神さんは何が何やら分からないみたいだったけど彼女の周りにいた夜天の書の守護騎士には通じたらしく、烈火の将シグナムと紅の鉄騎ヴィータはそれぞれデバイスを展開して俺とラフィの右肩に置く。
「はやて、なんか声かけてやってくれ」
「へ!?あ、そんなことせぇへんで普通に話してくれると嬉しいんやけど……」
「……申し訳ありません。初代『城塞の騎士』と5代目『夜天の主』の盟約により最大の礼を持てと教えられております。今代の『城塞』カイト・エルンスト・アロイジウスと申します。こちらは我が融合騎ヴェントラフィカ。会えて光栄です、騎士はやて」
騎士はやての許可が下りたので俺たちはすっと立ち上がる。目を白黒させている騎士はやてに騎士ヴィータが何がどういうことなのかを教えてくれた。
「はやて、今のはあたしたちが作られた古代ベルカの時の騎士における最敬礼だ。この時代でやるやつがいるなんて思わなかったからあたしも驚いちまったよ」
「しかし、この時代においてあそこまで完璧な礼をするとは、返礼が滞ったこと、申し訳ない」
「そ、そうなんや……あーびっくりした。もう普通にやってな?心臓がいくつあっても足りないわ」
そうだよね、普通に驚くよねいきなりこんな事されたら。でもね、昔の騎士って格式とかメンツとか滅茶苦茶大事だったの。現代に生きる俺がそれをする必要があるかと問われればしなくてもいいんだろうけど、初代の悲願だったわけだし、そうするべきだと思ったから。取り合えず騎士はやてに謝る所から始めよう。後驚かせたみんなにも。
主人公は頭の中がベルカに侵食されてるのでたまにこうなります。相棒のデバイスも融合騎も中身は純ベルカなので誰も修正してくれませんでした、可愛そうに。
ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします