魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第50話 特訓

「というわけで弟子が増えました」

 

「そんなぁ~~!やっぱり私も先輩に弟子入り……」

 

「み、ミウラ・リナルディです!この度カイトさんに弟子入りしました!」

 

「まあ実際の師匠はザフィーラさんなんだが、そこらへん複雑なんで出張弟子として扱います」

 

「同じくお師さまの弟子のアインハルトです。よろしくお願いいたしますミウラさん」

 

「はいっ!」

 

 そんなこんなで色々と用事を済ませて約1週間、カルナージ世界での合宿を終えて大体1か月くらいか。そんでDSAAの予選会も近くなってきている。それで今俺たちはノーヴェさんに集められてDSAAに向けた特訓を開始するという段になってきているわけだな。そこで俺は八神家道場にひとっ走り行ってきてミウラを拉致ってきたわけだ。

 

 お互いの師匠から聞いていたのもあるのだろうがヴィヴィオたちはミウラのことは歓迎ムードで、アインハルトなんか握手してるよ。ヴィヴィオはなんで先輩の弟子が増えてるのー?!と困惑気味ではあるが、それはしょうがない。恩義ある人の頼みだし、断るのも据わりが悪い。なおかつミウラに関しては俺に頼むのもよくわかる、素質的な意味で。

 

「さて、DSAAも近くなってきたから今日から早速特訓を始めるぞ!チームとはいえ全員ライバルなわけだから、全体練習はともかく個別特訓はそれぞれ別だ」

 

「アインハルトとミウラに関してはまあ、俺がやることになる。つっても俺もDSAAに向けて準備するからお目付け役程度にな。練習メニュー自体はノーヴェさんが組んでくれるから」

 

「特訓の目的はただ一つ!特技の徹底強化だ!」

 

 ノーヴェさんが指をピッと立てて特訓で何をするかということを発表する。あまりピンと来ていない5人ではあるが、要は得意を伸ばすということだ。アインハルトとミウラは、そこら辺を俺が教えることが可能なのだがヴィヴィオ、リオ、コロナに関しては俺じゃちょっと厳しいので別練習になっちまうな。

 

「それで、ヴィヴィオはあたしな。リオとコロナについてはそれぞれ別コーチを用意した」

 

「コロナお嬢様には僕が」

 

「リオお嬢様には私がつきます」

 

 すっと現れたオットーとディード。ふぅむ、俺は3人の特訓内容は知らされていないから何をするかわからないが、まあそれは当然だろう。確率は限りなく低いが仮にこのうち5人の誰かがDSAAを獲った場合、俺と殴り合うかもしれないのだから知らさないのが吉だ。アインハルトとミウラはまあ、許してほしいのだが。

 

「んじゃあ、アインハルトとミウラは俺についてこい。場所変えるから。チビども、がんばれよ~」

 

「はいっ!」

 

「それじゃ、失礼しますっ!」

 

「せんぱーい!後でスパーリング~~!」

 

「ノーヴェさん相手に生き残ってたらな」

 

 二人を引き連れて背を向けた俺に慌てた様子のヴィヴィオの声がかかる。こいつどれだけ俺にかまってほしいんだよ。まあ悪い気はしないからいいんだけどさ、ノーヴェさんも苦笑してるから怒ってはいないみたいだけど師匠を前にその態度はよろしくないぞー。まあ、特訓というだけあってやることは多いだろうし疲れるだろう。俺にかまってられる元気があればいいんだが。

 

 

 

「あの、お師さま……どこへ向かっているのでしょう?」

 

「アインハルトの特訓場所。ミウラもそこでな」

 

「いいんですか、ボクも……」

 

「いいんだよ。アインハルトもそうだが……正直お前も磨いてみたいとは思うし。ザフィーラさんが俺を指名したのも頷ける」

 

「ひぇ、チャンピオンにそんな期待されちゃうなんて……」

 

「気が小さいのはどうにかしねえとなあ。ほれ、乗れ」

 

 そういって俺は近くに止めてあった俺の車を指さす。今から行く場所は実は俺も初めてなのだがノーヴェさんの紹介ということもあるし、アインハルトとミウラ両方の特訓に適している場所なのでこれ幸いという感じだ。どこと言われたらミッドチルダの南のほうにあるとある道場なのだが……。

 

 二人が後部座席に座ってシートベルトを締めたのを確認した俺は魔導エンジンをうならせて車を発進させる。まあ大体30分くらいか。しかし、静かだなあ。にぎやかしのヴィヴィオとリオがいないせいで車内はすっかり静まり返っている。ミウラはそれで何とかしなきゃと思っているのかわたわたしているが、そこら辺を空気読まないアインハルトは黙ったままだ。まあ、元が静かだからなこいつ。ぽんこつだけど。

 

「んで、どこ行くかっつー話だが。天瞳流の道場だ。ミカヤ・シェベルの道場っつったらわかるか?」

 

「……わかりません」

 

「知ってます知ってます!ミッドチルダにおける抜刀術のメジャーですよね!門下生が一番多い道場!ミカヤ選手もDSAA都市本選の常連で!」

 

「お、ミウラ正解。天瞳流は管理外世界の地球からいち早く移住した武芸者が起こした流派でな。ミッドで刀っつったらこの流派ってぐらい浸透している。そこの師範代に時間をとってもらってるから、そこで特訓だ」

 

 ミカヤ・シェベル。ジークと戦って右腕を砕かれた選手だ。完成された武闘家としての精神を有し、ジークの暴走による勝敗の結果をも飲み込んだ天瞳抜刀術の師範代。あの病室の時のあれそれからわかっていたことだがどうやら彼女はノーヴェさんと個人的に仲がいいらしい。その縁でこの特訓につながったわけだ。

 

「で、何が目的かっつったらお前ら格闘者の天敵である斬撃への対策だな。ミウラはわかってるだろ。シグナムさんやヴィータさんの武器の怖さ」

 

「はい……模擬戦でもすぐ斬られちゃいます」

 

「あの……でしたらフワさんでもよろしいのでは?」

 

「あいつはお前らにゃ早い。そもそも御神流は暗殺術だ。天瞳流みたいにれっきとした剣術じゃない」

 

 アインハルトが言うように、斬撃の怖さを体感するなら確かにイサムでもいいかもしれんがあいつの斬撃は生半可な防御じゃ断ち切られてそのままお陀仏だ。ミカヤさんを侮る気はないが、ただ殺すためだけに洗練された御神流の剣術をこいつらが知るにはまだ早すぎる。そういうのは自分の拳の芯を見つけてからだ。じゃないと、殺傷力に傾倒してぶれるかもしれん。

 

 まあ、そのうちあのライバルにもご出張願うけどな。今年DSAAに出ないなら使い倒してやれ。もとは確かに人殺しの技術ではあるが、御神流はそこらへんうちと同じくらい深い。何度も言うが、殺しの技術はこの時代には不要なものだ、特にスポーツ式の魔導武術では。それを体感するのは、自分の拳を見つけてからでも遅くはないと思う。俺みたいに殺しの手段が身に付きまくってしまったらもう戻れないのだから。

 

 そんなこんなで車を運転すること少し、俺たちはミッドチルダ南部にある天瞳流抜刀術の第4道場にやってきた。第4、ということは少なくともほかに3つは道場があるわけで、この4道場も結構広いし、お弟子さんらしき人たちが掃き掃除やら拭き掃除、さらには木刀を使って素振りをしているのが外から見える。

 

 ほかの道場に入らせてもらうので礼儀として門の前で一礼してから中に入ると、顔が知られている俺が来たおかげですぐにミカヤさんのもとに案内された。道場の一室で胴着を着て正座していた彼女は俺たちがお弟子さんに案内されて入室したことに閉じていた目を開けると、傍らに置いていたデバイスらしい白鞘の刀を手に取り……っ!?

 

「おい」

 

「いやはや、さすがだね。抜く前に押さえつけられるとは」

 

「殺気が漏れてたからな」

 

「ひ、ひぇ……」

 

「……っ……」

 

 半ばまで抜刀された刀の塚頭を手で押さえた俺が思わず文句の声を出す。抜くのがあらかじめわかっていたのに、半分も刀を抜かれている。正直危なかった、俺狙いだったからよかったが仮にこれがアインハルトやミウラ狙いだったら反撃していたかもしれん。ミカヤさんがやったのは単純、正座の状態から姿勢低く駆け出し抜刀しようとしただけ。抑えらえるのはわかってた上でのそれだ。

 

「手荒い歓迎をして申し訳ない。あの病室で話した男の子がまさかDSAAを優勝するだなんて思ってもいなくて。いかんせん、疼きを抑えられなかった」

 

「……思ったより俺たち側なんだな、あんた。ちょっと心配になってきた」

 

「あはは、ごめんごめん。もうしないよ。私としてもこの条件は逃したくないから」

 

「武器術をこいつらに体感させる代わりに、あんたはストライカーとの戦闘経験とついでに俺とのスパーもやるっつー話だな。おい二人とも、正気に戻れ」

 

「ひゃ、ひゃいっ!」

 

「はっ!すいませんでした」

 

「いやいや、私が悪いからね。驚かしてごめんよ。ミカヤ・シェベルだ、よろしくね」

 

 そう、この人が俺たちの特訓の相手をしてくれる理由はウィンウィンの関係であるからだ。アインハルトとミウラはストライカーの天敵である武器術を体感し、ミカヤさんは対ジーク戦を想定したストライカーへの対処の特訓を。ついでに単純に強くて厄介な俺を斬りたいってところか。それにしても、シグナムさんみたいなことするなこの人は。あぶない。

 

「じゃ、まずはアインハルトちゃんからやろうか。その肩にいるのはペットかい?」

 

「デバイスだぞ」

 

「にゃあん」

 

「……AIまで猫なのかい?」

 

 ミカヤさんが指摘したが、この前ヴィヴィオと一緒に聖王教会に行った日アインハルトは八神家に行ってデバイスを受け取ってきていたのだ。見た目はまあ、白黒トラ柄の猫か。名前の由来はシュトゥラのユキヒョウ、オリヴィエ殿下お気に入りのつがいの子供たちのうち……死産した仔に贈ろうとした名前だろう。初代が荼毘にふして埋葬したからな、覚えている。

 

 愛称はティオ、割と頭がいいセイクリッドハートとは違いもうまんま猫のような感じだ。イクスを追いかけまわして半泣きにさせてたあたり狩猟本能もあるかもしれない。かわいそうだったので助けたけど。それじゃあ、と俺はミウラに向き直り庭を借りることにする。石畳の庭の上では自主練に励むお弟子さんたちもいるから、俺たちも混ざろう。

 

「終わったらミウラと交代な。アインハルト」

 

「はいっ」

 

「覇王流に生半な武器は通じず。そう教えたよな、初代も俺も。見ての通り……生半とは程遠い相手だ。記憶を経験に変えろ」

 

「了解しました。覇王流の武器対策……お見せします」

 

「楽しみだ」

 

 殺気が部屋中に蔓延し、一触即発……となる部屋に背を向けて俺はミウラとともに部屋を抜ける。俺が襖をぱたん、と閉じたのが合図になったのがその瞬間二人の踏み込みの音が重なって響いて中から激突音が聞こえる。ミウラはその音を聞いてわくわくて来たらしくちょっとだけ目が輝いてきた。

 

「さてミウラ、この特訓はお前のいいところを伸ばすための特訓だ。当然ながら俺はお前の長所を伸ばすつもりでいる」

 

「あの、でもボク特に得意なことなんてなくて……」

 

「それを自覚するのも含めてな。それじゃ、その位置から俺のところまで全力で蹴りこんでこい」

 

「は、はいっ!」

 

 すぅーーっはーーーっ……と俺から5mほど離れたミウラが緊張をほぐすために深呼吸をして、構える。うん、気持ちの切り替えはできるらしいな、そしてそのまま……ズバァンッ!と全力で踏み込んで俺の顔めがけて飛び上段回し蹴りを叩き込んできた。ザフィーラさんから聞いていたが、丸太にクッションを巻いた特製ミットを一撃で両断するらしい蹴りは、差し込んだ俺の右手にビリビリとその威力を伝える。

 

「で、自分でどう思う」

 

「ぜ、全然応えてない……!その……やっぱりよくわかんなくて……」

 

 地面に着地したミウラは俺が突っ立ったまま無造作に差し込んだ右手であっさりと防御されたことに顔を青くしている。すさまじい音に周りのお弟子さんたちが何事かとこっちを見ているが気にせずに話を続けることにする。

 

 今ので自覚がでないとは……俺の手を痺れさせる威力の蹴りを放っておいて無自覚……いや、比較対象が上すぎるのか。今まで自分より下か、圧倒的格上しかいなかったもんな。同年代で同じだけの実力者がいないせいか、その人と比較して自分がどう優れているのかがわからないわけだ。シミュレーターという比較対象があった俺よりも悪い。

 

「お前の一番の武器は、突破力だ。みろ、5mはある距離を魔力なしで踏み込んで、さらにそこからの蹴りの威力……ミドルレンジからの突撃力がお前の得意なことだ」

 

「突破力……」

 

「そう。防御力と並んでフロントアタッカーに重視される項目だな。これが優れていると分かったから俺はお前を受け入れた」

 

 俺たちアロイジウスは徹頭徹尾フロントアタッカー。防御力と突撃力で前線をこじ開け敵の中枢で暴れ回る騎士だ。その二つの重要項目のうち、一つに類まれな適性がある原石が出てきた。これは初代ではなくとも磨いてみたくなるだろう。人に教えるのはどういうことか、初代の記憶で理解はしているつもりだ。ミウラは自分のいいところにようやく気付いたのか、顔を紅潮させてうれしそうに笑うのだった。




 才能の集まりなチームナカジマ、あと筋肉の化け物も追加で

 ではまた次回に
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