魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第52話 予選会

「……やっと完成か。思ったよりも時間かからなかったな。2、3年は覚悟してたんだが」

 

『やりすぎではないか?』

 

「アロイジウスの新しい一歩だぞ、やりすぎぐらいじゃないとな」

 

『だからと言って、兵器にでもなるつもりか』

 

 フラムとシュロスに搭載されているシミュレーション機能ではなく、実家の書斎の中にある高性能なシミュレーターの中にて俺とラフィはいつも諫める俺と過激思想のラフィとは逆のやり取りをしていた。というのも、俺も俺自身の修行を進めていかないとダメ、というかアップデートをしないと今回のDSAAは勝てるかわからんしな。なにせ今回は情報がばれているわけなので。

 

「これは……めいっぱいマリアージュを作ってすべて自爆させてもここまではいきません……」

 

「イクス的には、通じそうか?」

 

「通じなければ私は私の国を守れなかったでしょう」

 

「それは、結構な評価だな。ありがとうよ」

 

 右手に握るフラムに視線を落とす。俺の魔力を極限まで圧縮に圧縮を重ねた結果、魔力が物質化して紅蓮色の結晶に変わった残滓がフラムにまとわりついている。キラキラと輝く結晶がフラムから分離してふらふらと剥がれ落ち、空気に溶けるように消えていく。ようやく形になったか。

 

 魔力結晶化、ただのエネルギーでしかない魔力を集めて、集めて、集めて……高密度に圧縮を重ねると……結晶に変わる。物質化寸前の魔力は、割とそこらで使われている。例えばカートリッジシステムとかだ。だけどそれは機械の力を借りて、空の器に注いだ結果に過ぎない。人力でこれを行ったのは、もしかしたら俺が初か?

 

 いつだか、俺の魔力の適性の話をしたかもしれないが……俺の適性はアロイジウスの魔法以外だと圧縮に偏っている。圧縮というのは、収束とは似て非なる適性だ。周辺から魔力を集められる収束のようにはいかず、自らの魔力のみに作用する。正直言えば、普遍的で誰でも持っている適性でしかない。魔力を結合させるシールドやプロテクション、魔力弾に至ってもすべて圧縮のプロセスが使われている。

 

 それでも、この圧縮で何か新技をと考えたのは……アロイジウスの技ではない俺のオリジナルを開発するためだ。俺が今まで使ってきたアロイジウスの技を下地にして、いわばアロイジウス流から俺流の技を一つ作るべきだと思った。イサムのやつが御神流に魔導武術としての一歩を踏ませようとしているように、俺も一歩を踏み出すべきだと思った。まあ、それを決意したのは去年のDSAAを優勝した時だ。あんなギリギリの勝利だったんだ、アロイジウスの戦い方が古いことが証明されたってことに近い。

 

 そして、俺の隣に立つ小さい人影。イクス、冥府の炎王イクスヴェリア。ちょうど、体の修復が終わって昨日目を覚ました。ようやくこれでお話しできますと嬉しそうに笑っていたし、それを取り戻すようにコミュニケーションに積極的になっている。そういえば1年近く妖精サイズのままだったからなあ。運動音痴も相変わらずらしいが。

 

「断界……でしたか?さすがに古代の王たちでもここまでの極致破壊は相応の準備がなければ不可能です。ゆりかごですら、落とせるかもしれません」

 

「まあ、それが目的だからな。この時代に役立つかと言われたら、どうもな」

 

『魔力消費も馬鹿にならん。カートリッジの魔力以外でやるなよ主カイト。最悪腕や足がもげるぞ』

 

「制御にしくじれば、だろ」

 

 イクスがつぶやいたように、この技の名前は断界、ヴィヴィオに教えた断海とは同じ読みをするが……まあ骨子にアロイジウスの武技が詰まっていることは間違いないのでこの名前にした。物質ではあるが極めて壊れにくい流体である海をも断てる断海、それ以上に危なく、何もない空を断つ断空。そして、俺が目指すのは世界、境界を断つ一撃だ。

 

 この世界というのは、別にミッドチルダのような世界をぶっ壊すような一撃ではない。目標は、ゆりかご……聖王のゆりかごを真正面から完全に破壊すること。聖王にとって、ゆりかごは自らの故郷であり一つの世界。けして他と交わらない、交わらせてくれない牢獄。初代も、クラウス陛下も結局それを……境界の向こうから手を伸ばすことすらできなかった。

 

 その戒めを込めて、この名前を付けた。仮にヴィヴィオが、アインハルトが、イクスが、ジークが、ヴィクターが……俺の知る古代ベルカに関する誰かが……何かしらのしがらみ、境界の向こうにとらわれたとき。その境界を断ち切り、手を伸ばせるようにするための技だ。だから、世界、境界を断つ……それが俺の『断界』だ。

 

 ラフィとのユニゾンを解いて、フラムとシュロスを待機形態に戻して、よく再現された焦げ付いた空気のにおいに顔をしかめる。どろどろと溶けた岩石、燃える森林、蒸発した湖……俺の目の前には、そんな地獄があった。まるで横倒しになった火山の噴火を直接浴びたように、大山がえぐれ、左右真っ二つに分かたれている。その切り傷から、溶けたマグマがあふれ出ていた。

 

 

 

 

 

「さてさて、ヴィヴィオはどうしてるかなーっと。わが弟子たちも頑張ってるかね」

 

「ふふっ。もうすっかり主グラムのようだな、主カイト」

 

「ソフィーアにもそっくりです」

 

「うるせえ」

 

 もうすっかり師匠が板についたなと言外にからかわれるが、もう俺も認めているところだ。はっきり言うが、後輩にトレーニングをつけるのは、正直言ってめちゃくちゃ楽しい。一歩一歩、着実に進んでいくその姿は俺にとっては微笑ましいし、先達としてふさわしい姿であらねばと気が引き締まる。

 

 DSAAの予選会当日、俺の姿はDSAAの会場の中にあった。まあ、俺は去年の優勝者なので、試合には出なくともお仕事自体はあるのだ。なので、ヴィヴィオたちとは別行動というわけ。正直あいつら相手に心配はしていないんだがな。それでもやはり、見ておいてやるのも俺の仕事のうちだろ。

 

「じゃ、私とイクス様は観客席にいる。よい演説を期待するぞ主カイト」

 

「しねえよ演説なんて。柄でもない。選手宣誓だろ」

 

「でも、士気を上げるのに大将の演説は必要不可欠ですよ?」

 

「軍じゃねーんだよだから」

 

 あーもう、イクスは基本ラフィと一緒だから悪い意味で古代ベルカが抜けてないな。確かに俺はこれから、女子の代表と一緒になって開会式で選手宣誓をするが、進軍する軍隊の士気を上げるわけじゃねーんだよ!もういいわさっさと行って来いと俺が手を振るとラフィたちはなのはさんたちと合流すると階段を昇って行った。

 

 あ、チャンピオンだと廊下ですれ違う男女問わずに言われながらも俺は軽く手を挙げるだけにとどめて控室に向かう。まあ、時間通りだろうか。そういえば、女子の代表は誰なんだろうなあ、ヴィクターやジークに聞いたら違うっていうから多分俺の知り合いじゃないんだろ?あー……ミカヤさんも違うだろうし、ハリーは絶対やらん。あいつ恥ずかしがり屋だし。

 

「うい、お邪魔っと」

 

「あ!チャンピオン!今日はよろしくお願いします!エルス・タスミンです!」

 

「ああ~~、ハリーがよく言ってるいいんちょさんか」

 

「ぬあっ!?あの人は私のことをなんと!?」

 

 控室で待っていたのは、インターミドル4回出場のベテランで、都市本選8位入賞の実力者。エルス・タスミンだった。短いショートツインテを跳ねさせた彼女は思いっきり頭を下げた際にずれた眼鏡を直しつつ自分の風説がハリーからどう伝っているか不安らしく俺に詰め寄ってくる。

 

 しかし、話を聞いてみたかった奴と一緒になれるとは有り難いな。タスミンはインターミドルには珍しい結界魔導士、違反封縛(ルールマスター)の二つ名を持っている。城塞不倒の都合上結界魔法についてはある程度知識はあるつもりなので主にバインドを用いて戦いを進めるタスミンとは一度話してみたかったのだ。

 

「んー、まあいろいろな。知ってると思うがカイトだ。チャンピオンはよしてくれ」

 

「はい、カイトさん。私もエルスでお願いします。いいんちょではありません」

 

「はいよ。しかし、結界魔導士とはなあ。それでDSAAを生き残ってるんだからすごいもんだぜ。直接攻撃基本よりよっぽど難しい」

 

「カイトさんにそれを言われるとうれしいですね。特にあの防御魔法……どれだけ硬いのか私にもわからないくらいです」

 

 うん、話が合うなこいつ。元がまじめなのだろう、試合では奇策に対抗できず負ける部分が見受けられたがそこらへんは性格の問題だろう、むしろ基本に忠実に一手一手確実に相手を詰ませていくのは合理的だし、さらにはケガも少なくなる、個人的には割と好みだ。

 

 城塞不倒の秘密を聞き出そうとするエルスを苦笑いして躱していると、スタッフさんが入ってきて出番を伝えてくれる。俺は都市本選からのエクストラシード枠なの今日は宣誓だけして終了なのだが。そんなことを考えつつも俺よりかなり小さいエルスと連れ立って控室を出て選手たちがずらっと整列している前にある台にエルスと登った。

 

『それでは昨年度DSAAIM男子総合優勝のカイト・エルンスト・アロイジウス選手と女子都市本選ベスト10のエルス・タスミン選手に激励の言葉をいただきます。まずはエルス選手から』

 

「はい、おほん。エルス・タスミンです。皆さんご存知のとおりインターミドルは年に一度。練習の成果を存分に試合に打ち込んでいきましょう!私も頑張ります!なので皆さんも頑張ってください!えい、えい!」

 

 おーーーっ!!と参加選手が一斉に手を挙げて気合を表明する。あれ、エルスこいつ締めでやることをしょっぱなにやりやがったぞ……やりづらっ!いや、まあこいつのように和やかにスピーチするつもりはなかったんだけど、この空気を壊しそうでいやだなあ。まあやるんだけど、と俺はフラムを起動して台に立て、塚尻に両手を重ねる。そして声を張り上げる。

 

『では、カイト選手お願いします』

 

「あー、俺は隣にいるエルスみたいに気の利いたことは言えないからまあ、聞き流してくれてもいいぜ。今、緊張してるやつ、武者震いしてるやつ、んで、わくわくしてるやつ……色々いると思う。けどな、お前らの手を見てみろ。そこにあるつぶれた豆が、固くなった手の皮が、自分のデバイスについた傷が、お前らが努力を重ねてきた証だ。当然、俺のデバイスにもな」

 

 緊張しているミウラとコロナ、武者震いに震えるアインハルト、わくわくと目を輝かせるヴィヴィオ、リオをそれぞれを視線で見つけて予想通りだと若干苦笑いしながら俺が話を続ける。自分の手と、自らのデバイスを思わず見ていた参加者たちが顔を上げたタイミングで話をつづけた。

 

「努力はそれぞれ必ずしている。否が応でも決着はつく。それでも、次こそはと歯を食いしばれる奴が、負かした奴の重みを背負える奴が、本当に強い奴だ。だから、俺は今次元世界一強いんだぜ?上で待ってるぞお前ら、男子は世界戦の決勝で。女子はそのあとのエキシビションマッチで。背負ってきたものを俺にぶつけてきな。俺はそこまで、必ず上って待っててやる」

 

 以上、とマイクのスイッチを切って司会の人に渡すと選手たちからわーーーーっ!!!と歓声が返ってきた。どうも、挑発の意味を多分に含めた言い草に男子は奮起し、女子もそれにつられてやる気をみなぎらせてくれたらしい。観客席から念話でイクスが「見事な演説でした、騎士カイト」だなんていうからしまったと頭を抱えかけた。

 

 声援に見送られて帰る俺は、あー揶揄われるだろうなあと思いながらエルスにせがまれて連絡先を交換しつつ、ついでサインを書いて分かれる。エルスはこのまま試合だからな。しゃーねえ、観客席行くかあ。

 

 

 

 

「それで、さっきかっこいーこと言ってたカイ君がここにおるわけね」

 

「見事な演説でしたわ。スピーチ原稿を書いてくださると助かるのですが」

 

「結局お前らでも俺のこと揶揄ってくるのかよ」

 

 ラフィたちのところに行くとなのはさんあたりにひどくいじられるのが目に浮かぶのでどうするかと考えていたら、なんと不審者スタイルのジークとばればれお嬢様なヴィクターが一緒になっていたのでこれ幸いとこいつらと観戦することにしたのだ。なのはさんに弄られるとどうも強く反論できない俺がいるのでこいつらのほうがかなりましだし。

 

「で、カイ君のお気に入りは?」

 

「いるぜ、ほらそこ。全員一発KO勝ちだ」

 

「カイトさんが見込むだけはありますね……特にこの銀髪の子……」

 

「ああ、それが今代の覇王だ。強いぞ。俺のお墨付きだ」

 

 なのはさんからの着信に友達を見つけたのでそちらで観戦すると返して俺はわがナカジマチーム&八神道場混成部隊の様子を見る。予選会の試合の勝利で次の試合のクラスが決まる。全員ノービススタートだが一勝すればスーパーノービススタートになるので頑張ってほしいところ、と考えてたが杞憂だったらしい。

 

 俺が教えた技を一切使わずに、5人とも難なく一撃で相手をKOしていく。それに感心するヴィクターとジークにどうだと俺は笑いかけるのだった。




 アロイジウスは聖王に脳みそを焼かれている、はっきりわかんだね
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