魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
『天瞳流抜刀居合師範代!ミカヤ・シェペルvsフレッシュルーキー!ミウラ・リナルディ!ベテランと新人の対決と相成りました!』
「行ってこい」
「ケガだけ気をつけろよ」
「ぶつけるだけぶつけてこい。なに、勝てるさ」
ザフィーラさん、ヴィータさんの激励と俺の言葉を受けてミウラはリングの中に歩を進めた。さてさて、どうなるか。勝てると勇気づけて言ってやったはいいが、ミカヤさんは正直言えば強さ云々もベテランだし……そもそも試合慣れしてて気負いがない。ガチガチのミウラとどう戦うか。
試合開始、の合図とともにミウラは構え、ミカヤさんは両脇に差した太刀のうち左側に手を添えて抜刀術の構えをとった。想定通り、想定通りだ。さてミウラ、お前に教えたな。古い古い騎士が、一撃必殺の相手にどう立ち向かうか。お前にその勇気はあるか?
「はぁっ!」
『ミウラ選手飛び込んだっ!』
「シィッ!しまっ!?」
「ハンマァ!シュラァァアクッ!!!」
『初、初撃はミウラ選手ーーっ!』
「ずらし、か。良く仕込んだものだカイト」
「俺のライバルがよく付き合ってくれたんで、まあ一発芸レベルですけどね」
「いや、あれやられたらあたしは嫌だな。必殺の間合いでもあれがちらつくんだからよ」
実況が驚愕する今の攻防を解説すると、全速力でただまっすぐにひたすらに突っ込んだミウラと、ミウラのすさまじい突撃力を知っているミカヤさんの迎撃の抜刀。その突撃のさなか、ミウラの突進のスピードがミカヤさんの間合いの半歩手前で爆発的に落ちた。
ミカヤさんの抜刀は速い、速いがゆえに一度抜くとモーション終わりまでは迎撃手段が取れない。わがライバルなんかはそれを暗器で補ってるのだが、純粋な一刀にすべてをかけるミカヤさんの戦いには悪い意味で殺し合い特有の泥臭さがない。
もちろんそんなもんなくていいんだが、こと実戦においてそれはまあ普通に隙になる。ミウラがやったのは単純、全速力でぶっ飛んだ後に、魔力を前面に噴射してブレーキをかけたのだ。しかも収束に適性があるミウラの噴射は予備動作がほぼなくしかも強い。突撃力は損なったがミウラはそこで体をひねって蹴り技の中で1,2を争う威力を持つ後ろ回し蹴りをクリーンヒットさせた。
だが、ミカヤさんもさるもの、2連撃技の初撃は外したが、2撃目をミウラの蹴り脚の防御に使った。ライフは減ったが、それもまだ余裕の部類だ。ミカヤさんなら2回目以降は合わせる。さて、ここからが実力勝負だぞミウラ。
「油断したよ、だけど2度目はない。今のはもう覚えた!」
「はいっ!わかってます!ですけど……カイト師匠の教えてもらったことは、まだまだあるんですから!」
「だろうね、君らしくない小技だった……いやしかし、その構えはそっくりだね」
「鉄甲流、というそうです。ストライクアーツの基本を教えてくれたザフィーラ師匠と、流派を預けてくれたカイト師匠!二人が見てくれてる前で無様な試合はできません!」
聞いてないぞ、という顔をするザフィーラさんとヴィータさんの視線をスルーする俺。いやだってさ、ストライクアーツやらせてて思ったんだけど、多分俺の流派の方がミウラにあってるとおもって試しに教えてみたら水を吸うように吸収しちゃうから……。
鉄甲流、まあつまり俺の家に伝わる格闘術の名前である。ちなみに完成させたのは斧と盾を持たずに拳で戦ったとされる4代目である。まあつまり、フラムとシュロスのフォルムドライをつけた当主のことだ。
この流派の特徴は硬い防御と突撃力、言わずもがなだな。ただ、防御の部分は全く不動の俺とは違って動き回ることも視野に入れたミウラの戦い方には合わなかったので一切教えてない。やったことはただ一つ、突撃力の強化。
打ち合いに入るが、間合いに入りたいミウラと入れたくないミカヤさんのせめぎ合いだ。後ろに下がりつつ刀を振るうミカヤさんを必要最小限のライフを支払いつつも驚異的なダッシュ力、突撃力で詰め続けるミウラ。
しかもミウラの拳はミカヤさんの軽装バリアジャケットの上からなら防御されてもダメージが通る。蹴りに至っては武器防御をしないと持ってかれるのだ。例え、模擬戦をして手の内がある程度わかっている、あるいはわかっているからこそ基本の立ち回りを繰り返すミウラに手を焼いているのだろう。
「やるじゃねえか。つーか、ストライクアーツが足運びぐらいしか残ってねぇぞ」
「すんませんね、染めちゃって」
「いや、あれでいい。ミウラの素質を余すところなく活かすあの戦い方を短時間でよく仕込んだ。ヴィータの言う教導官の才能というのも頷ける」
一撃必殺の鋭さのミカヤさんと一撃必倒の重さのミウラ、ともに攻撃力に特化したファイターだろうけど、仕込みは上々だ。今ミウラのステップは、踵あたりから魔力を爆発させて加速力に転じさせている独自のものだ。魔力消費は激しいが、それには目的がある。
「さて、そろそろよさげか?ぶっ飛べよミウラ。独壇場の準備が整ったぞ」
「すぅぅっ……スターセイバー!抜剣!」
『Yes!』
「くるか!とっておき!しかも……収束型!晴嵐!」
『了!』
ミウラの脚甲型デバイス、スターセイバーの右足、利き足の装甲が開いてそこから空気中の魔力素を吸い取り、圧縮させていく。ちなみにこれはヴィヴィオたちどころかアインハルトも知らない隠し玉である。収束型といえばでお馴染みなのはさんによる特訓の成果がこれだ。
ステップで魔力素をまき散らし、収束に必要な周囲の魔力をより濃くして、それをすべて集めた必殺の一撃。お互いにカートリッジシステムは積んでいないから威力の増加は自己魔力を上乗せするしかないが、そのルールをぶち破る才能だ。
基本収束魔法はその魔力量故に制御が難しく、大体は砲撃魔法として運用されるのが世の常だが、収束に適性はなくとも魔力圧縮ならお任せあれの俺がいる。あと超すごい教導官であるなのはさんヴィータさんの鬼の教導により、この世界でも稀有な近接収束魔法の習得にミウラは至ったのだ。
利き足を熱を持つほどの魔力で覆ったミウラと正対するミカヤさん。相変わらず刀身を鞘の中に隠しているが、わかる。鞘の中には煮えたぎる魔力のマグマが噴出するのを今か今かと待っているのが。
おそらくだが抜刀の加速に全ぶりして抜剣の魔力ごとミウラを斬り飛ばすつもりだろな。刀身の魔力は鋭さに上げて、攻撃を迎撃してミウラの足を斬って返す刀でとどめってところか。
「抜剣!星王刃・撃砲!」
「天輪・蒼月三段!」
ミウラの重破を使った踏み込みによる蹴り落としと今まで使ってこなかったもう片方の刀による二刀流の居合のぶつかり合い……威力で言うならミウラだが……魔力爆発があたりを包み込む。
驚くことに吹き飛んできたのはミウラだった。ステージ端までゴロゴロと転がり、ギリギリで踏みとどまってお腹を押さえてうずくまった。煙が晴れた先には、投げ捨てられて地面に突き立っている刀と、片手で鞘を突き出した残身のミカヤさんがいてようやく何が行われたのか理解した。
まずミカヤさんは蹴り落としを全力の二刀居合の斬り上げで対処して、ある程度相殺した時点で刀を手放した。モーションを止められて静止されたミウラの腹を、抜刀術で使った鞘内に残った魔力を鯉口から噴出させながらミウラを突いたのだ。三段っていうのはそういうことか、二刀で二段、鞘で一段とは……恐れ入る。だが……。
「負けた、か……収束打撃、そういえばいいのかな。あれの威力を見誤った。おかげで片腕がパァだ。ライフも全部持ってかれた」
「けほっ、けほっ……カイト師匠が腹筋を教えてくれなかったらライフが全部なくなってました……」
「いやそれは多分俺関係ない。咄嗟に腹に魔力を収束させたんだろ。ギリ防げなかったが軽減できた」
右手をだらんと垂らしたミカヤさん、ミウラの収束打撃は余波でクラッシュエミュレートが起動するほど激しい攻撃だった。正直目のやり場に困るほどミカヤさんのバリアジャケットがボロボロなので騎士甲冑の要領で魔力でできた布を作って体にかぶせる。
威力負け、ではないな。攻撃範囲負けってところだと思う。収束した魔力が爆発した勢いがミカヤさんの刀で防げる範囲を超えて襲ってライフを残らず削り取った感じだ。ミウラの残りライフは50……マジで紙一重の差だな。
「紳士だね。これで私のDSAAは終わりか。存外呆気ないものだったかな」
「あ、あの!ありがとうございました!とっても手ごわかったです!」
「うん、君もねミウラちゃん。私に勝ったんだから突き進むところまで行ってらっしゃい。カイト君も、今年も期待してるからさ」
あっけらかんとそう笑ったミカヤさんはぐしゃぐしゃとミウラの頭をかき混ぜると俺にウインクをしてこれは借りてくよと魔力布をかぶった状態で自分の足を使ってリングを降りて行った。ミウラに関しては自力で動くのはきつそうなので俺が抱っこしたが。ダメージ的にはミウラの方が重いな、実戦じゃミウラの負けか。
さて、よくやったと褒められて嬉しそうなミウラはザフィーラさんとヴィータさんに任せて俺はリオの方に行ってやるか。あーそういえばプライムマッチもあるんだっけ。知り合いがわんさか戦うし今日は会場から離れられんなあ。
せんぱーい!といつも元気なリオに肩に乗っかられて肩車になったが、まあ好きにするといいさ。あ、頭だけぶつけるなよ俺はうすらでかいからな。お前の重さ程度なら蚊に停まられたのとそう変わらんし。
「……やりすぎた」
「あはは……」
「ほんとにね」
『もう2,3発入れておけ。なに、死ななければ問題あるまい』
ところ変わって今は別世界。いつも通りの嘱託魔導士任務である。なんだったらフェイトさんとティアナさんと一緒だ。この二人は俺を呼び出す回数がダントツで多いのである。ちなみにラフィもユニゾン中。
で、やりすぎたってのは今回の犯人たちは人身売買を主にしているクソ野郎どもだったんだが、これの前に強襲したアジトでなーんでかあったんだよねえ、オリヴィエ陛下の遺伝子マップデータ。ここで俺の理性は飛んだ。マジで許さんぞ聖骸布盗み出した司祭、見つけたら全力で腰を入れてぶん殴ってやる。
気づけばティアナさんが見つけてくれた本拠地に乗り込んで殴っては燃やし、燃やしては爆発、あと全力パンチのコラボレーションが開催された。ちなみに殴るときわざと魔力は使わなかったので全員顔をぼこぼこに腫らしてバインドで拘束されてたり。
「そういえば、次はミウラちゃんとヴィヴィオ、コロナとアインハルトのマッチなのよね?アンタ大丈夫?」
「結果は結果でしょう。今更試合相手が同門同然で揺れるメンタルは持ってないです。まあ、面白いだろなーとは思ってますけど」
そうそう、DSAAの予選のことだ。結局あの後知り合いも含めて試合を全部見て帰ったんだが、まあナカジマジムの面々は危なげなく2回戦突破したよ。連絡を受けたけど他の知り合いもまあ勝てたらしい。
「いい意味でカイトは安定してるね。私なんてヴィヴィオが戦うっていうのでハラハラしてるんだけどなぁ」
「そういえば、もう修行つけてあげなくていいのかしら?」
「ミウラは守護騎士の皆さんがいますし、アインハルトはここからは新技じゃなくて自己鍛錬で伸ばす段階です。覇王流の先に至るには、まだできてないですからね。できてからの話です」
「ヴィヴィオは?」
「ヴィヴィオにはノーヴェさんがいるでしょう。秘密の特訓の話なら、もう完成させたんで自己鍛錬でいいですよ。いいなー、俺が5年かけた技を一か月足らずで……」
「アンタもそんなこと言うのね」
そりゃいうよ。だってなんだかんだヴィヴィオもヴィヴィオで才能の塊だから。今更自分に才能が備わってないなんて馬鹿げたこと言わんが、器用さとか習得速度とかちょっとうらやましくなる。
話に出た通り、週末のDSAA3回戦からは同門対決ということになるのだ。まあ、それ自体はよくある話なので今更どうこう言わんが。楽しみっちゃ楽しみだな。なにせ、ヴィヴィオとミウラ両方仕込んでいるものがあるし、アインハルトも頑張ってるし、コロナは専門外何で何とも言えんが、ゴーレムの数次第じゃアインハルトでも負けるかも。
「それに、俺も予選がおわりゃ自分のことに集中しないといけませんし。あいつらについてやれるのも今月で最後ですね」
「今年も期待してるわよ、カイト?」
「ふふ、2連覇したらまたお祝いしようね」
この二人俺が優勝すること前提でいるんだけど、まあいいや。負けるつもりなんて欠片もないし。
覚えている人いるかなー?まあいいか(呑気)ゆっくり更新していますはい。またいつか