魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第56話 抜剣vs鮮烈の拳 

「なー、なんでカイくんがここにおるん?セコンドいいん?」

 

「いいんだよ。ヴィヴィオは弟子じゃないし、ミウラも本来は八神家の門弟だ。アインハルトはまあマジで弟子だからそうしたけどな。それに、あんまりどっちかに肩入れしたくねえ」

 

「はー、大変やねカイくんは。でもアインハルトちゃんの時には出てきてくれるゆーし、それまでは待っとこか」

 

「お前が女子部門優勝すれば戦えるぞ」

 

「いひひっ。ほんとに楽しみなんよ、それ」

 

 アインハルトとコロナの試合のあと少し、俺は観客席にいた。ちなみに隣にはジークがいて、目の前ではヴィクターがシャンテ相手に快勝した、感じか?最後の方全力だしてたみたいだから危なかったっちゃー危なかったんだが。

 

 まあ古代ベルカらしい勝ち方だったよ。高速移動と幻術魔法の合わせ技で攻めてきたシャンテをヴィクターはリング全域を覆う威力の範囲魔法で潰したんだから。俺でもそうするし。でも最後イラついてシャンテの頭をリングにたたきつけてたけどな。現代基準ではやりすぎだっつーの。いいか?確実に息の根止めるなら首を跳ねろ、以上。

 

 んでまあ、普通に無双して勝ちを拾ったエレミアさんと次の試合でアインハルトはぶつかるわけである。その前にこのミウラvsヴィヴィオの構図があるわけなんだが。さてどうしたもんかね、コロナの時はアインハルトに寄ったが、現実問題弟子じゃねーとはいえ二人とも実質教え子だ。だから、どっちにもいかないことにした。

 

 応援はしてるぜ?当たり前だけど。どっちに勝ってほしいっていうのもどっちにも勝てよって感じだからな。セコンドに行ったらどっちかに寄るし、これはもうしょうがねえだろ。ちなみに念話でセコンドのノーヴェさんとシグナムさんから文句がでたが言い伏せました。

 

 というわけで俺が観客席から見てるっていうのは合法です。悪くありません。文句があるならかかってこいや、フラムの焦げた染みにしてやろう。まあそれに……あいつらの試合を見れるのもこれが最後だしな。

 

 こっからは、さっき言ったアインハルトの試合以外は録画を見ることになるだろう。なんせ次からは、都市予選が始まる。俺も試合があるんだよ、付きっ切りにもなれないし、開会式で吹っ掛けたとおり決勝で待っててやらんとな。

 

 俺自身、あいつらの修行に付き合いつつ俺自身も修行してたんだけど……主に我がライバルとひたすら殴り合ってた。最近は神速を目で追えるようになってきたのが密かな自慢だ。でもイサムの野郎あっさりとうちの身体強化魔法を習得したおかげで神速が倍速になって目で追えなくなった。鼬ごっこだチクショウ。

 

「お。はいってきたでー。んー、楽しみって感じやな二人とも」

 

「まあそりゃあ、ストライクアーツが楽しいってやつらだしな」

 

 試合場に入ってきた二人を見ると、何とか取り繕ってはいるものの口の端がじわじわと上がっている感じだ。つまりだ、速く戦いたくてうずうずしてるわけだな。ヴィヴィオに至っては表情がもうオリヴィエ陛下そっくりなんだけど?俺の中の初代が懐かしんでるわ。

 

「どっちが勝つと思う?」

 

「イーブンだな。実力的にはどっこいどっこいだ。どっちが勝ってもおかしくない」

 

「おー、ウチと一緒。いや~どっちが上がってきてくれても嬉しいな~」

 

「あとそれ暑苦しいからやめろ」

 

 そういって俺は深くかぶったジークのフードを取っ払う。相変わらずどこに入ってんのかわからんジークのツインテがなびき、彼女がふくれっ面で俺に「いー」と犬歯を見せるのと同じくらいのタイミングで試合が始まった。

 

 ヴィヴィオとミウラ、二人とも動き回るタイプの選手なので試合開始と同時に動き出す。大きくステップを踏むミウラと逆に細かく動くヴィヴィオの対比がハードヒッターと高速カウンターの違いが見えてるな。

 

 ヴィヴィオの得意とする高速フラッシュジャブを躱したミウラの反撃の蹴りがヴィヴィオのガードの上に突き刺さる。だが、その着弾点にあるのは虹色の光、俺がヴィヴィオにプレゼントしたピンポイント防御壁に阻まれた蹴りはダメージを与えられない。

 

 ほう!と思わず口を出たらしいジークの関心の声。まあ、はっきり言えばでたらめというか、常人にはありえないことをヴィヴィオはしている。蹴りを見てから着弾点にバリアを張った。似たようなことを俺もしているかもしれんが、俺はほとんど大体ここに来るとヤマカンを張っているので、着弾点が完全にわかってからバリアを張って防ぐヴィヴィオとは違うのだ。

 

 負荷の軽い術式と、ヴィヴィオの天性の素質であるマルチタスクの多さ、そして目の良さ。この3つがキモだ。防御面積を狭くする代わりに強度を確保した魔法と、魔法起動、攻撃の起動予測、発動範囲の指定、最低3つはマルチタスクを防御に割いているうえで、さらには類稀なる動体視力がそれを完璧にアシストしている。

 

「やるじゃないか、俺には無理だな。普通にでかいシールド張ったほうが戦いやすい」

 

「そらカイくんは魔力量多いし、シールドの魔力効率に至っては多分次元世界でも指折りやからな。低燃費にこだわる必要あらへんわ。ストライカーでもないやろ?」

 

「そりゃな。なんだったらあいつのマルチタスクの数俺の倍あるぞ。多分知り合いの中でも多い方だ」

 

「一番多いんじゃないんか」

 

「多分知り合いの騎士の人の方が多い」

 

 具体的にははやてさんである。超広域型と言っていい彼女のマルチタスクの数はべらぼうに多い。というか、指揮官やってる人は漏れなく多いはずだ。素養としては後衛向きのヴィヴィオのマルチタスクの数を活かす使い方だ。少しうれしくなってきたぞ。

 

「……傾くで」

 

「もう傾いてる」

 

 応酬が、傾きだした。俺が教えた通りに果敢に攻めに転じていたミウラの攻めの間に防御行動が入りだしたのだ。ミウラの攻撃の後隙にピンポイントに差し込まれるヴィヴィオの攻撃。加速魔法で入りの加速を補った拳がミウラを襲い続ける。

 

 ミウラ、呑まれかけてるぞ。リズムをヴィヴィオに読まれかけてる。攻め方を変えろ、とどっちにもよらないと決めているにもかかわらずそんな考えが浮かんでしまう。もちろんヴィヴィオに対してもこのまま読みを被せて何もさせずに封殺し続けろと思ってしまうのだが。

 

「どっちを応援していいかわからんくて変な顔になってんで。難儀やな―、ほらもっとわらいーや!眉間がシワッシワでかなわんわー!」

 

「おい、やめろ。頬を掴むな、ぐりぐりするな」

 

 ビーーーッ!とたがいに対してダメージの入らぬままに1ラウンド目が終わる。形勢は最後ヴィヴィオ有利だったが、地形的な意味だったなら今はミウラ有利だ。なにせ今は、まき散らされた魔力素が満ち満ちている。収束打撃を撃つにはうってつけの現状だ。

 

『おまえいねーと思ったらそこにいたのかよ』

 

『あー、もうやっとつながった!カイトくん、ちょっといいかなー?今からのヴィヴィオとミウラちゃんの戦い、どうなると思う?』

 

「五分五分ですね。どっちにも転びます。お互いの奥の手も含めて」

 

『そうなんだ?私はミウラちゃん怖いなーっておもうんだけど。収束系は終盤に輝くからね』

 

『ああ、なのはのアレもそうだけどよぉ……技術で防げるもんじゃねーぞ』

 

「そりゃ撃たれたらそうですけどね。俺はヴィヴィオに傾くと思いますよ。まだ何かやってくれそうですから」

 

 着信になんだと思ったら、なのはさんとヴィータさんだった。ジークは画面が開いた瞬間に一瞬でフードをかぶって知らんぷり状態。何で二人からかかってきたかといえば、二人の面倒を両方見てたのがおれだからだろうか。一撃の重さや身体能力はミウラ、アインハルトよりだな。ただ、発想力や頭の柔らかさ、魔法方面はヴィヴィオだ。コロナにも引けを取らない。

 

 収束系は技術では防げない。なるほど確かに。スターライトブレイカーを魔法なしで盾だけで防げって言われたら無理だもんな。撃たれ方によるけど城塞不撓でももしかしたら貫通されるだろうし。まだ……まだされてないけど!

 

 テメー、という感じで俺を睨むヴィータさんとヴィヴィオ寄りと聞いて少し微笑むなのはさんと通信を繋いだまま試合に戻る。とっくに始まってた2ラウンド目は、趨勢だけで言えばミウラに傾いていた。ハードヒッターのいいところを押し付けている。

 

 ただ、ヒットポイントが削れ続けるヴィヴィオの目は

死んでいない。何かを待っている……違うな、タイミングだ。何を計っている?翡翠と紅の瞳が見ているのは、ミウラの……

 

「呼吸か!」

 

 俺が思わずそうつぶやいた瞬間にヴィヴィオが動いた。ミウラの攻撃と彼女が呼吸を吐き切りが重なった瞬間にヴィヴィオの掌底がミウラの胸の中央を捉えた。吐き切った呼吸の上からさらに息を吐かされたミウラが酸欠でいったん止まる。その隙に形成されたディバインバスターがミウラを吹き飛ばしてリングアウトに持っていった。

 

「カイくんやろ、あれ教えたん」

 

「教えてねー、見せただけだ。去年のDSAAの5回戦で一回だけな」

 

「ああ、肺が破裂した判定のやつやろ」

 

『なに物騒な技をヴィヴィオに教えてるのかな?』

 

『……ベルカじゃ珍しくねーとは言っておく』 

 

 肺が縮みあがった瞬間に打撃入れて呼吸困難もしくは即死に持っていくやつなんだが見せるべきじゃなかったわ。ヒットポイントが一気に削れたミウラ。まだ抜剣でひっくり返せるが、見せて仕留めなきゃヴィヴィオは対策してくるな。

 

 見覚え、というか体が覚えているジークが思わずといった感じで突っ込んでくる。そらそうだ、だってこれお前らエレミアから盗んだ技だもん。それはそうと、ミウラのやつ追い込まれちまったな。俺が思ってたひっくり返し方とは違うが、どうするミウラ。俺だったら……!

 

「当然そうだ!よく決断した!」

 

『うん、私でもそうする。自分が一番信頼できる一撃で、勝負をキメに来た』

 

『決めろよ……!』

 

 抜剣、収束打撃の構えをとったミウラに俺たち3人がまとめて同意する。俺でもそうする、追い込まれて切り札を斬らねえのは負けに行くようなもんだ。実力が逼迫してるならなおさら。押し切られる前に押し切るしかない。

 

『ヴィヴィオの構えは……?』

 

「うそやろ、あれ……断海……何で使えるん!?」

 

「返すつもりか!?」

 

 ジークが言う通り、ヴィヴィオがとった構えは断海、カウンター技だ。だけど、あれは一度攻撃を受けて、その攻撃の威力の流れを変えて相手に返す技術だ。只の蹴りならまだしも、収束打撃なんぞ今のヴィヴィオが受けきれるわけもない。

 

 やめろ、という声を飲み込んで見守る。動かないヴィヴィオと利き足をまばゆい魔力で固めたミウラ。この一撃ですべてが決まる、という状況で両方博打を打つとは。いや、これでこそDSAAなのかもしれない。全力と全力をぶつけるなら、当然こうなるわけだ。

 

 踏み込んだミウラと迎え打つヴィヴィオ、伸びしろが多分にある技同士がぶつかり合う。閃光、爆発。見えなくなった二人の姿を探して視力を強化する。だが、その前に分かった。電光掲示板のミウラのHPが消え去り、ヴィヴィオのHPがわずかに残っている。

 

「……通じるんか、断海……」

 

 魔力爆発のおかげで切れてしまった通信に気づかず、俺は何も言えずに黙り込んでしまう。ジークのつぶやきをよそに今の攻防のからくりを頭の中で反芻する。

 

 まずヴィヴィオはミウラの星煌刃を俺が教えたヘイリシュ・パンツァ―を用いて一瞬受け止め、瞬時に爆発する魔力を自分の魔力で作ったシールドで包んで抑え込んだ。そして、断海で受け取った力の流れを変え、左回転を開始した。

 

 包み込んだ収束打撃の魔力は当然すぐ爆発するが、一瞬遅れる。ミウラの意図したタイミングではなく、打撃と魔力の相乗効果がずれて威力は半減。そして、爆発前に回転しきったヴィヴィオはミウラの胴体ど真ん中にミウラの蹴りの威力を乗せたフィニッシュブロー……アクセルスマッシュを叩き込んだ。

 

 大技直後で何も動けなかったミウラはそれでHPを削り取られてノックアウト、遅れて爆発した星煌刃の魔力でヴィヴィオも吹き飛んだが、予想してたのか遅れて発動した防御魔法でギリギリ耐えたってところか……?

 

「……なんか、予想してたより無茶しよるんな、ヴィヴィオちゃん」

 

「……俺もここまでやるとは予想外だ……」

 

 ぽかん、とした俺とジークがそんなことを言い合う。認めざるを得ない、あの少女はミウラやアインハルト……もしくはオリヴィエ陛下とは別のベクトルで天才であると。

 

 俺はヴィヴィオとミウラ、二人に対して惜しみのない拍手を送りながら……その先の成長がより楽しみになったと強く思うのだった。




お久しぶりです。ここで原作とは別方向へ、ヴィヴィオWINとなりました。なお、何か変わるかと言われたらなにも……?でも主人公がずっとかかわり続けてベルカ脳に汚染されたヴィヴィオなら多分こうなるかなって。
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