魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第57話 一戦終えて

「……相手が悪かったな」

 

「カイト先輩……」

 

「よくやったぜリオ。お前の全部が乗っていた試合だった。俺もハリーとは軽くやったことあるが、あいつは強い。俺がそういうんだから間違いないぜ?それを見ろ、あと一歩まで追い詰めた」

 

 砕けて熔けたリングの上で魔法が解けてちっこくなったリオを抱き上げて医務室まで行く道すがら俺はリオに対して慰めの言葉を言う。言葉なんぞ尽くしても正直意味はないが、それでも上っ面じゃない言葉を言うべきだとは思っている。

 

 アインハルト、コロナ、ヴィヴィオにミウラに続く最後の試合はリオと何の悪戯かハリー・トライベッカとの対戦だった。ミカヤさんに次ぐ古豪の登場、勝つ気で挑んだリオは激戦の末にハリーに敗れた。隠しておくはずだった隠し玉をすべて吐き出させたうえでだ。

 

 この試合を見てリオが弱かったなぞというやつは俺が直々にぶちのめしてやる、そう断言できるほどに見事だった。紙一重上回ったのがハリーだったというだけだ。

 

 女の子の素肌を見るわけにはいかないので医務室につくと後はノーヴェさんに任せて俺は会場の外に出てベンチにどっかりと座り込む。なんだ……()()な、こういうのって。初めて……いや、初代はたくさん経験してたんだったか……討死報告って形で。そう考えれば今の俺の状況はだいぶましか。

 

「あー、こんなところにいたカイトくん。ヴィヴィオが探してたよ~?どうしたのかな?」

 

「……いや、教える側に立って初めて思ってるところなんですよ、勝たしてやりたかったなって。同門対決が二つあって、格上にぶつかったやつがいて、それでも」

 

「そうだよ。私もいつもそう思ってる。負けたら死んじゃうかもしれない教導はちょっと違うかもしれないけどね」

 

 タバコでも買ってふかそうかなんて考えてた俺の思考を中断したのはなのはさんだった。フェイトさんはどうやらヴィヴィオと一緒で俺を探しに来たらしい。俺の弱音が珍しかったのか、それとも教導官という立場故かなのはさんはかなり真剣に話を聞いてくれた。

 

「ふふ、懐かしいな。初めて今のカイトくんみたいな気持ちになったのってもうだいぶ前だもん。教導初心者だった私と一緒」

 

「あー……だめだな、似合わない。体動かしてから帰るんで、お先にどうぞ」

 

「おーっと。そうはいかないぞカイトくん?実は私もヴィヴィオの戦いでメラメラッてきちゃってね~。どうかな?」

 

「たんこぶ拵えてもしりませんよ?」

 

「自慢の盾、割れちゃうかもよ?」

 

 考えることは性にあっていないので適当に疲労困憊状態になろうと思ってベンチを立つと、なぜだかなのはさんが吹っ掛けてきたので、乗ることにする。後ろからやってきたフェイトさんはじめチビ達が笑顔で威嚇しあう俺たちを前にビビリ散らかしていたがこの際はどうでもいいな。よし、やるか。

 

 

 

 

 

「というわけでまどろっこしいルールは全部ナーシ!ノックアウトか魔力切れ、もしくは詰みの状態までということで!」

 

「いいですね、それで行きましょうか。体を動かさないとなまりますしね」

 

「ラフィは呼ばなくていいのかな?」

 

「あいつ今日メンテで意識ないはずなんで」

 

「ざーんねん、本気のカイトくんと戦いたかったのになー」

 

 バリアジャケットと騎士甲冑を身にまとった俺たちがなのはさんが超特急で取った訓練場で相対する。ちなみにチビどもは今日の試合の疲労で眠そうだが見ると言ってきかなかったので観戦室にいる。ラフィは今日俺の試合がないからと自己メンテで意識飛ばしているので呼ばない。

 

 というわけで俺は空飛べないが、まあシールド足場にジャンプはできるし問題ねえ。別に爆発ジャンプでいいや。この際だし、チビとの模擬戦じゃだせない技術を総動員しよう。折角エースオブエースの胸を借りれるわけだからな。

 

『お互い無茶はしないようにね?』

 

「はーい。もー、心配性だなフェイトちゃんはー」

 

「両腕捥げるまでは無茶じゃないですよ?」

 

「君も大概だよ!?」

 

『もー、それじゃ、試合開始っ!』

 

「アクセルシューター!ファイアッ!」

 

「はぁっ!!」

 

 開始同時になのはさんが形成した40を超える誘導弾が俺の全方位から襲い掛かってくる。前面をシールドで防ぎつつ後方にフラムを振るって炎熱の衝撃波でかき消しつつ、最後の一発をサッカーボールキックで魔力付与をしつつ勢いよく蹴り返した。

 

『け、蹴りで旋衝破をっ!?』

 

「やる~。それ見せたことないよね?」

 

「武器でやるよりゃ簡単ですよ。全身五体これ全て武器であれってね」

 

「うーん、カイトくんの引き出しは深いなー。ぜひぜひたくさん見せてほしいよ。それ次!」

 

「さすがにできることできないことはありますよ!」

 

 燃えて返ってきた魔力弾をレイジングハートで軽くぺちこんと横に叩いて逸らしたなのはさんの次の手は、伝家の宝刀ディバインバスター……に加速魔法を付与したどう見ても今作ったオリジナル魔法だった。

 

 文句を言いつつシュロスで防ぐ、が直下で打ち下ろされているので逃げることができない。加えて加速が加わったディバインバスターは想定より重く割られないにしても縫い付けられた。そこから時間差で襲ってくる誘導砲撃3発――――っ!!!

 

「舐めんなっ!」

 

「さっすが!」

 

 俺はフラムを地面に捨て、もう片手で魔力式を編んで対爆シールドを全面に展開し難を逃れ続けざまにフラムを蹴り上げてキャッチし、なのはさんに向かってぶん投げる。衝撃波を纏って飛んだフラムはダイレクトになのはさんが張ったシールドに直撃し、罅を入れて割った。避けたなのはさんがフラムを失った俺に好機とばかりにレイジングハートを向ける。

 

 その瞬間俺はフラムの柄尻に結んでいた魔力鎖をひっぱってフラムを引き戻す。実戦じゃ初めて使うな、鎖斧。これやり始めたのは……母さんだから新しい戦い方だけど。ジャララッと音をさせつつ鎖を手繰り、なのはさんに向けて思いっきりたたきつけた。

 

「きゃあっ!もうっ!」

 

「近づかないともっと痛いですよ!」

 

 母さんは歴代アロイジウスの中でも比較的非力だった。だから、補う方法を身に着けた。鎖斧という遠距離の刃。先端が重い斧であるが故、遠ければ遠いほど先端の速度は速くなる。それを力自慢なのが取り柄の俺が振るえば、威力は母さんが振るうのとそん色ないはずだ!

 

「甘いね~、あまいあま~い!」

 

「まじかっ!」

 

 手繰った魔力鎖が撃ちぬかれる。冗談じみた精度の射撃魔法だ。しかも誘導弾じゃなくて直射弾、さすがはエースオブエース。撃ちぬかれた鎖は切れることはなかったが当然たわんで狙い通りの場所にはいかない。そして一瞬あれば俺の眼前に魔力砲を突きつける程度はあっさりとやれるだろうな!

 

「オラァッ!」

 

「それこそ冗談だよっ!」

 

 大盾を構えて全身でぶつかる。ライフポイント制なら自殺行為の行動だがあいにく今はノックダウンか負けを認めさせるかどっちかの試合だ。無理無茶無謀どんとこい、俺は城塞の騎士……不可能を通して後ろを守るのが仕事だ。タックルの勢いを削がれつつも魔力砲撃の中を割ってくぐり、手繰ったフラムを捕まえて直接振るう。

 

「紅火剛閃っ!」

 

「クァドラプルシールド!」

 

 俺は2発、なのはさんは3発のカートリッジを消費し、紅い炎を纏った一撃と4枚のシールドを重ねたもので我慢比べを開催する。俺の戦斧が1枚、2枚とシールドを溶断し、3枚目に差し掛かった時になのはさんが笑みをこぼした。

 

「しまっ!?」

 

「引っかかったね~!レイジングハート!ディバインバスター・エクスティンション!」

 

『all light lord cartridge』

 

 やられた、3枚目のシールドはバインディングシールド……シールドに触れた瞬間俺の四肢と胴体をぐるぐる巻きにして拘束されてしまった。自慢の腕力で引きちぎろうとするも、力を込めた瞬間にバインドが緩み張力ギリギリまで粘って壊させてくれない。俺対策じゃんこのバインド!

 

 そしてなのはさんが俺に向けているのは自身の周りに4つのディバインバスターと、杖先に収束したひときわ大きなディバインバスター……融合砲撃だ。同時発射して5つのディバインバスターが着弾寸前に融合し相乗効果で大きな威力を生む。

 

 化け物かよこの人……収束技術を使わずに収束魔法並みに威力を持たせた魔法を使ってる。しかもこれ、なのはさんの鉄板のパターンにはめられたんだ。欲が出たな、なんてことをしているんだ俺は。アレを試そう、これを試そうとして……勝ちに来ている人に泥を塗るとは……。

 

 極光が俺を飲み込む寸前に、今装填しているすべてのカートリッジを撃発する。自らの強さに先が見えないからと母を真似たことを母となのはさんに心の中で謝罪しつつ、俺はすべての覚悟を固めた。

 

「わ、わ、わ……!なにそれ!?私、聞いてないよ?」

 

「話してませんから。情けないことをしてすいません。ここからはアロイジウスとしてではなくカイト(オレ)としてやります」

 

 砲撃の余波で上半身の騎士甲冑は全損した。それでも俺は問題なく動けている。ダメージがないわけではないが、最小限まで抑えた。小盾になったシュロスとフラムは紅い結晶に覆われ、俺の前腕までもそうなっている。結晶で武器を腕に固定しているのだ、たとえ手が砕けても武器を放すことがないように。

 

「鳴動……凱閃!」

 

「うわわわわっ!?」

 

 ガチィン!とシュロスにフラムをぶつける。キラキラと結晶が舞い、衝撃に反応して小爆発が空中で起こる。そしてその小爆発を乗せるようにしてフラムを掬い上げるように振るう。爆発に反応して剥がれ落ちた結晶が爆発しそれが超連鎖してまるでビームのような爆発がなのはさんに向かって行く。

 

 慌てて避けたなのはさんをよそに、結晶が剥がれたフラムは俺の手元から伝うようにまた結晶の鎧をまとう。圧縮で結晶化した魔力を一気に開放し戦う。俺が圧縮した魔力は火の変換資質により爆薬に近い性質を持っている。圧縮された魔力は俺の制御を離れれば些細なことでボカンだ。制御下にあれば岩のように硬いがな。

 

「それ、未完成だね」

 

「えー、もうちょっと驚きません?」

 

「驚いてるよ?十分に。だけど、細かい動きはまだ無理そうかなって」

 

「おっしゃる通りです」

 

 未完成といえば未完成なんだけど、大部分の魔力制御を担うラフィがいないからな今。いやこんなのいいわけなんだけどさ。まあなのはさんから見れば今の遠距離攻撃じゃなくて直接殴ったほうが強いじゃんって感じなんだろ。近づけさせてくれない人がそんなこと言うな!

 

 でも、これが俺が見つけた俺の戦い方だ。さっきのバインドも結晶をバインド内で爆発させて振り切ったわけだし。魔力砲をシュロスで弾く。弾いた瞬間に大爆発が起きて魔力砲を消し飛ばした。そのまま足元に創り出した結晶を爆発させてかっ飛び、なのはさんに向けて全力で振るった。

 

「でもっ!威力はすごいよ!それを連打できるみたいだねっ!」

 

「ええ、でも……限界ですね……」

 

 シールドの上に立った俺がなのはさんを攻め立てる一撃ごとにお互いを覆う規模の爆発が発生するが、なのはさんもさるもの。着弾の瞬間にための短い魔力砲で爆発の核を狙い撃ち威力を格段に減少してから受けている。これが、戦闘慣れの経験値か……!

 

「……参りました」

 

「……いいの?」

 

「時間切れです。模擬戦で死ぬかもしれない賭けはしたくないですし」

 

「えらーい!」

 

 一撃ごとに威力が減っていくので察していたのだろう。あっさりとなのはさんはレイジングハートを下げた。自己の魔力でやればまだ行けたが、ラフィからやめろって言われてるからやらない。融合砲撃を受ける前にロードしたカートリッジの魔力がなくなったから、結晶を維持できなくなった。

 

 ラフィがいないこの状態で追加でカートリッジを使えば、制御できずボカンだ。マジで両腕吹っ飛ぶかもしれん。ここら辺俺はラフィいないと弱いよなー。ごり押しの極致みたいな技作っといて制御できんとかさ。

 

「せんぱーいっ!すごいっ!すごいですっ!なんですかいまのっ!?」

 

「お師さま!お疲れさまでした……!」

 

「うおっ!?まだあぶねーから入ってくるなよ……あと企業秘密だ。教えたらお前ら真似しそうだからな」

 

「うっ……バレてる」

 

「……はい」

 

 模擬戦が終わったのを察したチビたちが駆け下りてきて、ヴィヴィオとリオが俺に飛び掛かり、アインハルト、コロナ、ミウラはそっと近づいてくる。あせあせと後ろからフェイトさんが追ってくる。なのはさんは背中にヴィヴィオ、前にはリオをぶら下げた俺にそっと近づいて耳元で囁く。

 

「すっきりした?」

 

「お互い様でしょう」




 こそこそと投稿。新主人公戦闘スタイルお披露目です。なお出番はだいぶ先。もう試合はカットカットカットで行こうかな。ぶっちゃけDSAAは原作でも序盤で終わってるし。まあ今作はヴィヴィオ勝ったけども。ではまた次回に。
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