魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「主カイト、アインハルトがジークリンデに負けたそうだ」
「内容は?」
「見る限り、呑まれることもなく全力を尽くした結果だろう。ジークリンデもオートパイロットは出てない。自力の差だ」
「……ああ、そうか。良かった……勝負に水を差すようなことがなくて。これで俺も大手を振れる」
「私を使わないのにか」
「舐めてるわけじゃねえよ。お前は世界戦からだ、秘密兵器をばんばか投入して情報を与えたくないしな。これでも俺も成長してんだ」
控室でアップをしていた俺が足を組んで端末の仮想画面をのぞき込んでいたラフィの言葉に胸をなでおろす。DSAA女子部門のビッグマッチ、元世界最強と覇王の激突は地力の差が出てしまったらしい。だが、勝負の勝ち負けよりも俺は試合の内容にジン、ときた。
ジークリンデはオートパイロットを抑え込み、アインハルトはクラウス殿下のエレミアに対しての激情に呑まれることなくただただ全力をぶつけ合えたということにだ。だって、そうだろ?まだまだ完全克服とは言えないが俺も含めた記憶継承者としての自己の確立を成したんだ。二人にかかわった身としてこれ以上嬉しいことがあるか?
最近出番がない上になのはさんの模擬戦にもハブられたこともあってご機嫌斜めのラフィのツンととがった口に苦笑いして今度しっかりがっつり使ってやらないとなあと思いつつ、試合内容については後でしっかり見ることにした。勝った後の楽しみができた。
入場を促している実況の声が聞こえてきた、俺はアップを切り上げて胸を張り試合会場に入る。後ろについてくるラフィも一緒にだ。お互いが会場の中央にたどり着き、相手を睨みつける。髪を逆立てた青髪の男だ。立ち姿からして得物は槍だな、いいじゃねえの。
『プライムマッチ!挑戦者は昨年の都市本選チャンピオン!前年度はあえなく欠場になったマルス選手!そして迎え撃つは次元世界最強の男!開会式でもぶち上げてくれたカイト選手です!』
「……世界最強は暫定だ。なにせ男女試合は中止されたからな」
「俺はそうは思わねぇぜ。去年の女子チャンプがアンタの防御抜けるとは思えねえからな」
「お前は抜けると?」
「ぶち抜いてやるよ。舐めプしたのを後悔させてやる」
「やってみろ」
さすがにチャンプとランカー同士の試合とあって会場は超満員か。実況の煽りもあって興奮が伝播していってる。ちょっと
試合開始、の声とともにお互い動き出す。俺は静、相手は動。いつかの誰かさんとの試合のごとくだ。俺は相手に向かって思いっきり、斧を叩きつけた。
『はろはろ~はやてさんやで~?完全勝利おめでとさん!将来私の下で働かん?』
「海ってランク制限あるんじゃなかったでしたっけ?俺今S+ですけど」
『っか~~!真面目な返しやなつまらん!ここはこう「是非ともはやてお姉さんのもとでビシバシこきつかってください!」いうとこやがな~……ってちょっと待って切らんといて!』
「なんですか、まだなにか?」
『なーさいきん、私の扱い雑ちゃう?』
雑にさせてんだろーが、という言葉を飲み込んで俺は仮想画面の通話切断のボタンから指を放した。試合を見てたであろうたぬきなお姉さんのお話を聞くことにした。十中八九チビどものなんかだろうし。
もうちょい勝利の余韻に浸らせてくれよ、と思う。気が高ぶってるから変なこと言わんと良いけどな。ここら辺俺はベルカというか蛮族というか、雑なので尊敬する騎士に失礼な発言したくないのだ。生肉を生で齧り取ってそうとネットのコメントにあるくらいにはそう見えるらしいし。
「それで?」
『あんな?エレミアと覇王が出会ったやろ。それに関してみんなで話し合い……認識のすり合わせをしたいんや。文献を見る限り、覇王とエレミアはほとんど喧嘩別れやろ』
「あー、まあそうですが。過去のことなんでそんなん関係なく仲良し会でいいじゃないですか」
『みんながみんな、カイトくんみたいに割り切れるわけちゃう。私はそれをよく知っとる。だから、誤解があれば解いとかないとお互いのためにならないんや』
「まあ、わかりますが。俺はどっか壊れてますしね。それで、どこにいけば?」
『こら、そんなこといわんの。ホテルとったからおいで?詳しくはそこで。インタビューあるん?』
ありますよ、無難なことしか言わないですけどとといいうとはやてさんはころころ笑って通話を切った。インタビューは世界戦の時になれた気がしたがたまにベルカのアレソレが出たりするのでまだ不安なんだよなー。飛びついてきたイクスを抱っこしたまま俺はインタビューに向かうのだった。
「あら、カイトさんではありませんか。試合、拝見させてもらいました。実にお見事な勝利です」
「おーうヴィクター。あんがとよ。ジーク、アインハルト!いい試合だったぜ、二人ともご苦労様」
「お師様!……ジーク?」
「あーカイくん!見てくれたん?ほんまにアインハルトちゃん強くてな―?」
「カイくん!?カイト先輩待って待って!あの……チャンピオンとは……知り合いなの?」
「ああ?こいつ俺の家の土地にテント張って暮らしてるんだぜ?そりゃ知ってるよ」
なんか知り合いしかいねえな、とはやてさんが用意したらしいたかーいホテルの最上階のガラス張りの部屋にはいると一番に気づいたのは出口近くにいたヴィクターだった。それでついでに他のやつらも俺に視線が来るわ来るわ。
ヴィクターとジークと話しているととたたっと足音高く寄ってきたアインハルトとヴィヴィオがとてもびっくりしていた。なぜだ?と一瞬思ったがそういえば知り合いだってこと伝えてねーわ、と思い出して何で知り合いなのかと軽く説明を入れると、ぷっくーとヴィヴィオのほっぺたが膨らみ、なぜかアインハルトもヴィヴィオには及ばないもののぷっくり顔だ。ジーク達には伝えてたんだがなこいつらのこと。
「先輩のばか!私も先輩の土地にテントで暮らすもん!」
「わ、私も!お師様のもっと近くで!」
「アホ抜かせ。俺の土地つってもベルカの方だ。お前らの方がよっぽど会う頻度高いぞ」
「はいはいはーい、遅れてきた主役がきたんでな?とりあえずこっち向いてちょうだいな?」
主役は違うだろ、というつっこみをかろうじて飲み込み我関せずとビュッフェに歩いて行ったラフィとイクスを見送ってはやてさんに向き直る。両脇に陣取ったチビ二人に苦笑して、さて何の話かねとあたりはついてるものの傾聴する。
「みんなもうすうすわかっていると思うけど、今日戦った二人には複雑な因縁がある。黒のエレミアに覇王インクヴァルトの末裔。二人を繋ぐ聖王女オリヴィエ、そしてベルカの歴史の要所に名前だけある流浪の騎士……城塞」
「何の因果かしらんがそこのリスみたいな頬してるやつは冥府の炎王本人だし、ここにいるお嬢様もベルカ王族の血筋。まあ、誰かの陰謀かなんかと疑りたくもなる感じだろ?」
「もごごっ!?も、もう!騎士カイト!」
「そういうときは悪戯っぽく運命っていうてや?実際何かあるかもしれんとは私も思っとるけど
……何かある前に大人が守るから安心してな?」
運命の悪戯、ね。確かに、2回までは偶然でも3回からは必然なんて言うしな。一回目のヴィヴィオ、2回目のジークとヴィクター、3回目のイクス、そして4回目のアインハルト……この時代、ベルカから遠い時代を超えて集まった奇跡がここにあるわけだ。すごいな、改めて考えると。
「どこから話しましょうか……ジークは聖王時代のことは……」
「個人の記憶はないんや。エレミアが継ぐのは技術のみ。記憶、記録はどっかにやったんやと思う」
「では、私が主体で。お師さま、補足をお願いします。長い、長い話ですから……」
「ああ、いいぜ。つってもいくつか端折るぞ。多分一番いるのは、戦争のところだ」
「はい」
俺が語ればいいかと思っていたが、アインハルトが自分から語ると言ったのは正直驚いたものの、記憶を記憶として認識できて来たのかと少しうれしくなった。そうして語りだしたアインハルトの話、曇天のあの日にやってきたオリヴィエ陛下のことから……
切磋琢磨しあう日々と、暖かった日常、二人してご先祖に怒られたこと。そしてやってきたエレミアとも友として仲良くなれた話。思い出すたびに心の底に暖かいものが降り積もっていくような記憶だ。感情を高ぶらせ燃やしていた戦争の日々とは大違いに。
「オリヴィエ陛下は、ゆりかごで生まれた……まあ聖王一族は全員ゆりかご生まれなんだが、ゆりかごに対する適性ってのがあってな。それが低かったうえ、両腕を欠損し子供も望めなかったオリヴィエ陛下はシュトゥラに人質としてやってきた」
「ですが、聖王家は戦の拡大に危機感を覚えゆりかごを再起動することに決めました。なので……一番聖王として価値が低く、そして対外的に名が響いていたオリヴィエが選ばれたのです」
「当然、グラムもクラウス殿下も止めた……止められなかったがな。陛下を荼毘に付した後々聞いた話だが、ヴィルフリッドは当時軟禁されて止めることすら叶わなかった。勘違いが起きたのはここだな」
「はい。お師さまのお話を聞いてエレミアに対する認識は変わりました。話を戻します。クラウスは……止められず、師グラムに彼女の守護を懇願しました。力の足りぬ我が身を修羅の炎で焦がしながら、1年……聖王戦争は終わりました。オリヴィエの命と師グラムのよりどころを犠牲に」
あとはお前らが調べた通りだ。と俺はグイっとワインを飲み干す。呑まなきゃこんな話やってられっか。大体の話は話し終えたが……
「誤解は解けたんだぜって言ってやりてぇんだがなぁ……肝心のエレミアに対する情報がすくねえ」
「え?でも結構詳しいところまでお話されてたんじゃ……?」
「全部伝聞の話だぜこれ。グラム自体もそっからの城塞もあれから一度もエレミアに遭えず仕舞いだ。なんだったらジークが何十代ぶりに交わったって感じだからな。実際ヴィルフリッドがどう思ってたかなんてわかんねえんだよ」
気が利くというか俺が何も食わずすきっ腹に酒を流し込んだのが我慢ならなかったらしいラフィがこれでもかと料理を盛った皿を俺の前に置いたので礼を言ってからぱくつく。うーんさすが高級ホテルの味だ、うまい。
「エレミア、エレミア……あ!無限書庫のアーカイブにあるかも!確か武術家の手記みたいな感じで……!」
「あ!それ私も覚えてる!城塞の騎士のこと調べてるときに!」
「あ?そんなもん家に無駄に手記だの文献だのあるから言えば見せてやるのに」
「そ、それは後でお願いしたいですけど!ヴィヴィオと一緒に探索しようって話してたんです!」
ヴィヴィオが何かを思い出したように立ち上がり、リオが続いてコロナも立ち上がる。しかし無限書庫と来たか。さすが文系3人娘、俺らとは違うアプローチできたな。しかし、あるのか……?いやあるかもしれんが……あるだろうな、あそこなら。
「無限書庫……管理局のデータベースやんな?」
「しかしどうやってそこに……?八神司令、探索の許可をいただくことは?」
「んー?ヴィヴィオにお願いしたほうがはやいでー?なー?」
「はいっ!私、無限書庫の司書資格持ってるんです!コロナもリオも立ち入りパス持ってます!」
えええええっとギャラリーがヴィヴィオの意外な?一面に驚いている。そういえばそんなこと言ってたわと俺も思い出した。だいぶ前に聞いたけど俺自体読んで歴史書くらいなので頭の中から追い出してたくらいだからな。チビと一緒にいるときはもっぱらトレーニングか財布やってるし。
「ちょい待ち、今調べたんやけど本があるところ未整理区画や。カイト君、悪いけど護衛頼めへん?任務として発行するわ」
「いいですよ、引っ付いてくつもりでしたし」
「えええっ!?先輩明明後日試合なんじゃ……」
「いいんだよ別に。お前だって試合あるんだからお互い様だ。俺もいてジークもいてその他DSAAのランカーがいればそうそう何かあることもないだろ」
はやてさんからの任務依頼を端末で承認する。ヴィヴィオがあたふたしてるが魔窟無限書庫の本当の魔窟の部分に行くんだから正規任務を発行しておいた方がいいんだろう、何かあったときのために。あとフェイトさんのせいでダンジョン探索に慣れてる俺を指名したのもそういうことだろう。
ここからは自由やで~となったので、俺は食事を再開する。ついでに隣に来たアインハルトの頭を強く撫でた。よく頑張ったな、とねぎらいを込めて。そこで初めて今日のことが頭をよぎったらしいアインハルトの涙腺が決壊してしまって、俺は胸を貸してやることにするのだった。
次回、原作ではポロリしかなかった回!カイト君はどうなってしまうのか!