魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「あー、皆さん驚かせてしまってごめんなさい。これやらないと、ご先祖様に顔向けできなくて。もう一回夜天の主にラフィを会わすのが悲願みたいな感じで伝わってたんですよ」
「うむ、妹がいないのは少々残念だが守護騎士たちが息災なようでうれしい。騎士はやて、深く感謝する」
「そんな、私がしたことなんて大したことあらへん。皆がいてくれたから、闇の書は夜天の書に戻ったんよ」
「……待て、闇の書とはなんだ?」
「あ?知らねーのか?」
「生憎3年前まで寝ていてな。主カイトも知らんだろう、聖王教会とは断絶している」
騎士はやての闇の書という言葉にラフィが顔をしかめる。闇の書、名前だけは聞いたことはあるが……それが何なのかはよくわからない。たしか、そうだ。何度目かの聖王教会との勧誘合戦の時に向こう側の人がぽろっと漏らしたんだっけ。母さんがまだ幼かった俺を抱きつつ、これ以上は武力行使するって言って追い払ったんだ。ウチの聖王教会アレルギーは筋金入りだな。
本気で知らないというのが分かったらしく、騎士はやてが軽く説明してくれる。管理局が長年探していたロストロギアの一つで、主を選んで魔法を蒐集させて書を完成させると世界一つを滅ぼして転生し、また同じことを繰り返す超一級の危険物……だったんだが、それは歴代の書の主から改悪を受け続けた結果の夜天の魔導書だった……そうか、そういうことか。それで、管制人格であるリインフォースは闇の書の全てを葬るために自ら天に昇った、と。
これが本当なら、今から返すものは壮絶なそれを乗り越えた騎士はやてを始めとする守護騎士たちの努力を踏みにじるようなものかもしれない。土壇場でそんな事情を聞かされたら、返しづらいものだ。ああ、聞いてもええか?と騎士はやては話題を変えるようにパチン、と手を叩く。
「なんで聖王教会を嫌ってるか、聞いてもええ?カリムに聞いても『我々の汚点の結果』としか言うてくれへんのよ」
「あんまり面白い話じゃないですよ?10代前から3代続けて聖王教会の上のやつに毒殺されかけたので7代前がキレてもう断絶するって言って関係を切りました。なのでうちには古代ベルカの様々なものが伝わってますが、逆に聖王教会が持ち得ている情報は入ってこないんです。管理局に入りだしたのも母が初めてだったくらいで」
「……そらキレるわ。むしろよく断絶だけで許したな」
「宗教組織は得てしてそうなるってことですよ。昔は過激だったらしいです。今は随分とクリーンになったと思ったんですが……」
そこで俺は難しい話に目を回すヴィヴィオに気づかれないように一瞬視線をやる。はやてさんはそれに苦虫を嚙み潰したような顔をしてこら、関係修復は無理やなと両手をあげて肩をすくめた。うん、まあヴィヴィオの出自が明るいものか後ろ暗いものかは知らないが、聖王教会が発表していない時点でお察しってことだ。さて、それよりも。
「騎士はやて「堅苦しいからはやてでええ」では、はやてさん。5代目の夜天の主より預かったものをお返ししたいと思います」
「そやなあ、それが目的やったしな。で、そんな仰々しいもの渡されてもはやてちゃん困っちゃうでー?」
重い話が続いたせいか、空気を軽くしようとしているらしいはやてさんが軽い調子で話を戻す。俺はそれに頷いてラフィに目配せをすると、彼女は胸の中央に手をやると、そこから一冊の本を取り出した。黒い本、表紙と裏には特徴的な十字架が金属質の光を放っている。それを見た守護騎士も、はやてさんも目を丸くした。
「夜天の書……」
「の、バックアップです。5代目の夜天の主が守護騎士システムと管制融合騎を組み入れた際に万が一があった時のために作成したものです。それが、初代に預けられて姉妹機であるラフィに託されました」
「……先ほどの闇の書の話を聞いて、妹が悔いなく逝ったのならよしと思っていたが、考えが変わった。妹は、闇の書を復活させないように、逝ったのだな……。その中には、当時の夜天の書の全てがある。魔法も、守護騎士も……管制人格も」
「リインフォースも!?」
「ああ、生憎人格データだけだし、まだ何も知らぬ赤ん坊だ。妹は、何も残さず逝ったのか?」
「いや……リインフォースは残してくれたで。ツヴァイ!初めて会うお姉ちゃんに挨拶しぃ」
「は、はいですっ!リインフォースツヴァイと言います!アインスお姉ちゃんの後継機で、残してもらった「欠片」を組み込んで作ってもらったですっ!」
はやてさんが声をかけるとはやてさんのバックの中から妖精サイズの融合騎が飛び出してくる。へぇ、これが現代の融合騎かぁ……初めて見るな。リインフォースツヴァイと名乗ったその子を見る限り、確かにラフィと似ている部分はあれど、いい意味で「ゆるさ」を備えている感じがする。ラフィは軽く微笑んで初めましてと挨拶をする。
「おそらくその欠片、妹の記憶が封じられているはずだ。全く、会える可能性が無いからと話さなかったな?」
「じゃ、じゃあ……リインフォースは……」
「相応の施設と、あと私がいれば……人格データを元に戻すことができるだろう。無論、私は協力するが……どうする?」
「リインフォース、また無理やり起こして怒らんかな……」
「さぁな。ただ……お前はいい主なのだろう」
「ちょぉ考えさせてほしいんよ。リインフォースの遺志を、無駄にしたくない」
そうはやてさんが言うと、しんと部屋が静まり返る。何というか、余計な真似をしたような気がしてならない。かさぶたで覆われ、その上に包帯を巻いていたような傷を、俺はいじくり回したのだ。そりゃあ、初対面でこんな風に気まずくなるわけだ。ただ、はやてさんは強かった。
「よし!うん、この話は一旦これでおわろか!しかしまあ、ラフィちゃんはホンマにリインフォースそっくりやなあ!一目見てなのはちゃんが驚いたんがよくわかるわ」
「正確には、私が妹に似ているのではなく妹が私に似ているのだが……まあ何も言うまい。それよりも後ろが詰まっているぞ」
「はっ!しもた!エリオ、キャロ、ごめんなぁ」
「い、いえ!その……むしろ申し訳ないと言いますか……」
「大切なお話みたいでしたし……」
八神家、と一纏めにされているらしい守護騎士とはやてさん一家の後ろに気まずそうにしていたのは赤色の髪の同年代っぽい男と桃色の髪の少女だった。あ、フェイトさんから話聞いたことがあるし写真も見せてもらったなたしか。男の方がエリオ・モンディアルで、女の子の方がキャロ・ル・ルシエだったかな?向こうの方もどうやらフェイトさんに聞かされてたらしくて笑顔で握手を求めてくる。うわ、爽やかな奴だな。
「初めまして、エリオです。カイト、でいいかな?」
「ああ、いいよ。年も近いっぽいしタメで頼む。女性比率が高すぎて肩身が狭かったところだ」
「そうだよね……分かるよ、その気持ち」
多分だけど、エリオの方が苦労してそうな感じがする。というか、エリオって機動六課に所属してたって聞いたから、騎士としては俺の先輩にあたるのか。がしっと力強く握手してみたが、かなり鍛えこんでいる感じの手をしている。向こうもそれが分かったらしくて無言で後で模擬戦というアイコンタクトが来て、俺も無言で頷いた。やべえ、もうすでに結構楽しいぞ。
「はーい!じゃあ全員そろったのでオフトレの時間で~~す!今回は初参戦の人もいるので、メニューは適宜調整するよ!着替えて訓練所に集合!」
空気が和らいだのを見逃さなかったなのはさんはそこで手を打ってみんなの注意を引き、纏めてくれる。完全に変な空気にした俺は申し訳なさに縮こまる。ラフィとは男女別ということで部屋が分かれるらしく、俺はエリオと同室だった。4日間よろしくな、と挨拶しつつ。話し込みながら俺たちは自室になる場所で着替えるのだった。
「ちょ、ちょお待ってぇな~……」
「なのは、私もちょっと……」
「なのはさん、きついです……」
「デスクワーク組は鈍ってるね~?しかし、カイトくんが脱落しないのは意外かな」
「きついはきついですけど……音を上げるほどではないですね。筋力負荷も魔力負荷も外してますし。久しぶりに体が軽いです」
1日目は基礎トレらしく、戦技教導官のなのはさんとヴィータさん特性のメニューをこなすことになった。まだまだ体が幼いヴィヴィオにこのメニューは無理だな、道理でノーヴェさんと一緒にこっちから離れて別のことしてるわけだ。時折俺を見て風船のように頬を膨らませてるけど。ガチのトレーニングと聞いたので平時には寝てる時も常にかけている筋力と魔力の負荷を外したおかげでこれ以上なく体が軽い。
それのおかげなのかは分からないが、管理局の中でも指折りのエース揃いが音を上げる基礎トレにもなんとか付いていけているみたいだ。しかし、さすがはプロ中のプロが作ったメニューだな、効いているのが実感できる。全身くまなく、運動をしているというのが意識できる。ご先祖式岩担ぎスクワットもいいが、こういうのもなんか最先端ってかんじでいいな!最高だ!
ちなみにノックアウトされたのははやてさん、フェイトさん、ティアナさんとシャマルさんだ。どの人もデスクワーク中心で現場に出ることが少ないらしいから、身体強化の無い素の体力はこんなもんなのだそう。いやでも、普通の一般人に比べたら明らかに運動できると思う。さっきまでハーフマラソンしてたんだからそりゃそうなる。
「じゃあ休憩のリクエストにお応えして、魔法戦技の方に移ろっか。レイジングハート!」
『barrier jacket set up』
「バルディッシュ。そういえば、カイトの騎士甲冑見るの初めてだね?」
「お?そりゃ楽しみやな。本邦初公開いうやつや!」
「…………フラムスクーレ、シュロスリッター。武装形態」
『Anfang』
『Jawohl』
みんながそれぞれのデバイスを起動する中、出遅れた俺に視線が集まる。期待に重圧感を覚えた俺が両手のデバイスに起動を命じると、騎士甲冑、魔法で編まれた防護服が装着される。ミッド式ではバリアジャケットと呼ばれるやつだ。俺の騎士甲冑は重装甲を基本としているので黒のサーコートとグリーヴにガントレット。センスがあるかどうかは分からん。右手のフラムスクーレは機械的な片刃の戦斧に、左手のシュロスリッターは俺の身長並みの巨大さを持つタワーシールドに姿を変える。ガコン、とシュロスリッターと腕部の接合を放して取っ手を掴む。鈍い音を立ててフラムを振り回した俺はシュロスの後ろのスロットにフラムを仕舞って向き直る。
「……期待には応えられました?」
「へー、結構カッコいいやん。重くないん?シュロスリッター、やっけ」
「70キロありますよ?これを身体強化無しで振り回すところから我が家の騎士道は始まるんですね」
「完全に防御特化、突撃用って感じね……頑丈そうなバリアジャケットだわ」
「……シグナム、ステイや。模擬戦は後」
結構悪くない評価かな?エリオがストラーダというらしい穂先が巨大な槍を持ちつつシュロスに興味を示したので持たせてみると結構重いらしい。聞くにエリオはスピード型とのこと、そりゃ重いわ。俺とは真逆だな。そしてそれを軽々と振り回すスバルさんにやはり俺もまだまだだと考えさせられる。
そして俺が騎士甲冑を纏うとそれを見てうずうずしだす人が二人、一人ははやてさんにストップをかけられたレヴァンテインを鞘から抜いたり仕舞ったりしているシグナムさんと、そわそわしているフェイトさん。どうも模擬戦ジャンキーらしい、でも模擬戦はこの4日間でできるだけやりたいから大歓迎なんだけど……
「カイトくん、魔法適正把握してる?」
「射砲撃はほとんどないです。砲撃がギリですかね、形になる程度。一番得意なのが防御魔法で、その次に魔力付与と同じくらいに身体強化。炎熱資質があります。あと補助は自己回復以外は死んでます」
「清々しいほどにベルカの騎士ね……」
「防御魔法ってどれくらい得意なの?」
「比較対象が無いので分からないです。初代から続いているので異名をとる程度には硬い筈ですが」
予想通り、というなのはさんの言葉どおり俺は清々しいほど接近特化のベルカの騎士だ。接近戦万歳、脳筋で何が悪い。遠距離なんてくそくらえ!男は突っ込んで殴ればいいんだよ!を地で行くのが俺の資質である。まあ、ラフィとユニゾンすればだいぶ変わるんだけど。とりあえずこれ、と言ったなのはさんの言葉と同時に、一瞬で現れた桜色の魔力弾が、俺に殺到した。
デバイスはクソデカビックシールドとバトルアックスです。蛮族です、脳筋です。パワーオブパワー。仕方ないね。
ちなみにヴィヴィオの出自については公式設定です。聖王教会の司祭が聖骸布を盗んで遺伝子マップを提供しそのままヴィヴィオが出来たんですね。管理局の上も腐ってたけど聖王教会も大概やな