魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡 作:防御特化っていいよね
「流石にお前硬すぎないか?」
「困るものではないと思うんですが、騎士ヴィータ」
「こっぱずかしいからその呼び方やめろ。ヴィータでいいんだよ」
「まさかなのはの砲撃でも割れないだなんて……」
魔法戦技のトレーニングに入ったら、何と光栄なことに戦技教導官であるなのはさんとヴィータさん二人の付きっきりでトレーニングを見てもらえることになって喜び勇んで二人についていった俺は、焼け野原のクレーターの中心にて呆れたようなヴィータさんからの突っ込みを貰っていた。
正直、あの桜色の極光に飲み込まれた時はなんか心が折れそうな気もしたけど、城塞の名に懸けて易々と防御を割らせるわけには行かなかったので全力で頑張って踏ん張ってみたらなんか、守れちゃったのだ。ひびの入ったプロテクションを見て俺はなのはさんの砲撃の威力に恐れおののくのだった。非殺傷でも貫通してきそうだよね……。
俺が砲撃に飲み込まれたのを見て心配して来てくれたらしいフェイトさんがポカンとしながらなのはさんの砲撃で俺の防御が割れなかったことに驚いているのを見るあたり、やはりなのはさんは砲撃魔導士として超一流に違いない。シュロスを下げてとりあえずどうすればいいのか待っているとなぜか寒気がした。ぞわっとするその気配は……目の前にいる白い魔導士。
「ふふ、ふふふふ……いい、いいよカイトくん。すっごく鍛えがいある。ここまで堅い防御を持ってる人を見るの、初めてだもん。じっくりと教導してあげるよ」
「あの~?なのはさん?どうしちゃったんですおわっ!?あぶなっ!?」
「ほら、反応速度もとてもいい。マルチタスクがちゃんとできてる証拠。さあ、あげていくよ~~~~」
「あかん、なのはちゃんが教導モードに入ってしもた」
その寒気の主は当然なのはさんで、なのはさんはどうやら俺が予想以上に「できる」からか完全に教導官としてのスイッチが入ってしまったらしく、俺の不意を突くような形でためが短い砲撃をノーモーションでぶつけてきた。今回はバリアじゃなくシールドを発生させて砲撃を弾いてみたんだけど、それが余計にスイッチを入れてしまったらしい。ゆらぁ、と魔力をたなびかせて楽しそうにこちらを見ていた。
「ヴィータさん」
「なんだよ」
「俺はどうなるんですか?」
「安心しろ、あたしも含めて思いっきりお前の限界を突破させてやるから」
ヴィータさんに可憐な笑顔を受けて、俺は素直に覚悟を決めることにした。うおおおおおっ!エースオブエースがなんぼのもんじゃい!城塞の二つ名舐めたらあかんで~~~!
「案外何とかなるもんですね」
「むしろ……何でアンタそんなに元気なのよ……」
「よくよく考えれば肉体的なきつさはご先祖式のメニューの方がきつかったです」
「凄いねカイト!なのはさんとヴィータさんのマンツーマンを切り抜けるなんて!」
3時間後、そこには執務官と佐官の死屍累々と体力自慢の談笑という天国と地獄の光景がそこにあった。なのはさんとヴィータさんの教導、効くんだよ。肉体的なきつさもさることながら、魔法についても滅茶苦茶参考になった。どうも、俺の防御は頭がおかしいレベルまで達しているらしい。盾の守護獣たるザフィーラさんのお墨付きももらった。まあ、そうじゃなきゃ城塞とは名乗れないよな。
ご先祖式の魔力強化を切ってデバイスを装着したまま行軍するとか、拳で岩を砕くとか、フラムで魔力補助なしのまま大木を薪にするとかも悪くないけど、こっちも捨てがたいなあ。体力自慢なのは家系的に皆そうだから俺だけじゃない。凄い人なんか3日も眠らず休まず具足をつけたまま行軍をしたそうだ。まあ初代なんですけどね。
「それじゃあ、今日の締めに模擬戦をします!皆希望の相手の所に集まっ……て……」
「……」
「……」
「……」
「あははー、モテモテだねカイトくんは~」
「せやなぁ、大人気や」
なのはさんの、模擬戦をしますの言葉で一瞬で一緒にトレーニングをしていた管理局のエースの人たちの目がキラーンと輝くと、ずい、ずずいっと無言で俺の周りに人が集まる。むしろ集まっていないのは騎士シャマル、はやてさん、なのはさんにキャロ、ルーテシアのような後方組だ。前衛組、そして中距離支援が主なはずのティアナさんでさえやりましょう?という顔で俺の近くにいる。
「ど、どうすれば……」
「選べばええんちゃう?ほら、より取り見取りやろ~?」
「それじゃあ、騎士シグナム、お願いします」
「即答!?」
集まった人たちの中から戦いたい人を選んでいいという贅沢極まりないことを許されてしまったので俺は前々から許されるのならば是非本物と戦ってみたかった烈火の将、シグナムさんを指名する。悩むんじゃないかと予想してからかおうとにやにやしていたはやてさんは俺が即答したので驚いている。フェイトさんがそんなあ、とむくれるのになぜか死ぬほど申し訳なさを覚えた。
「良かったなぁシグナム。なあカイトくん、理由聞いてもええか?」
「フラムが記録している戦闘データベースに、あるんですよ。守護騎士たちのデータが。何度もデータ上では戦いました……本物を、知りたいんです」
「受けて立とう。準備をしろ。アギト!」
「お、おう!加減しねーぞカイト!」
「よろしくお願いします!ラフィ!頼む!」
「ああ」
「ユニゾンデバイスありでやるんか!?る、ルーテシア、もつと思う?」
「……壊れちゃったらはやてさんに請求するね☆あ!カイトはデータ欲しいからぶっ壊すつもりでやってねー!」
俺が騎士シグナムを選んだ理由は単純、データ上では何度も相対した相手だから。もちろん騎士シグナム以外にも色々戦っている。ヴィータさんも、当時の夜天の主も、エレミアも、クラウスもオリヴィエだって……初代と関係がある人間はみんなデータになっていた。だけどそれは、所詮はデータだ。体験程度のものであれど、本物を超えることは絶対にない。だから、本物と剣と盾を交えることが出来て、心が震えあがりそうなほどだ。
視界の端ではやてさんが崩れ落ちるのを見ながら、俺はラフィを伴って模擬戦用のスペースに騎士シグナムと一緒に移動する。彼女の融合騎であるアギトも一緒だ。訓練で汚れたり破れた騎士甲冑を改めて着なおして俺はクロスレンジの距離で彼女と向き合う。
「アギト、ユニゾンイン」
「ヴェントラフィカ、ユニゾン」
同時に光に包まれた俺たちは融合騎と融合をする。騎士シグナムは上半身の上着が消え、赤基調だった騎士甲冑の色が紫に変わり、薄い金髪と桃色の瞳でこちらを見据え、4つの炎の翼を背中に従えていた。融合騎に近づいた様子はない、ユニゾン後に融合騎の特徴が出るのは融合騎への適性が低い証拠だからだ。
俺も当然、変わる。燃え残りの灰の髪は紅蓮の色に。俺からは見えないが瞳は鉄の色になるらしい。サーコートは真っ赤に染めあがり、代わりにグリーヴとガントレットが真っ黒に焦げた。そして、首に巻き付けられ背中にたなびく炎のマント。それが俺、城塞の騎士カイトの全力形態。無言のまま俺たちは間合いまで近づき、フラムスクーレとレヴァンテインを重ねる。古い決闘の礼儀だ。開始は、名乗って一呼吸おいてから。
「『剣の騎士』シグナムと『炎の魔剣』レヴァンテイン」
「『烈火の剣精』アギト!」
「『城塞の騎士』カイトと『紅炎の壊斧』フラムスクーレ、『不落の絶盾』シュロスリッター」
「『業火に焚べる風』ヴェントラフィカ」
お互いの名乗りを済ませ、一呼吸置く、そして俺はフラムを、騎士シグナムはレヴァンテインを振り上げる。一拍速かった騎士シグナムのレヴァンテインが俺のフラムを上から押さえつける。先行は、彼女だ。どちらかが攻めるかを決めたら距離を取り仕切りなおす。ここまでがお作法、ここからが本番っ!
「ゆくぞっ!」
「いつでもぉ!」
宣言通り、騎士シグナムは地を蹴り俺に肉薄して大上段に構えたレヴァンテインを振り下ろした。初手からデータと違う!そりゃそうだ!先入観は捨てろ!相手は俺と違って歴戦の騎士だぞ!シュロスを掲げて受ける。物理防御だ、シールドは出さない。甲高い音を立ててレヴァンテインが叩き込まれる、手に伝わる衝撃が戦っているという事実を実感させてくれる。
『衝撃加速!』
『こっちもだ』
アギトとラフィが同じ魔法を調整して発動する。フラムとレヴァンテインに衝撃を加速させる魔法が付与される。右手に持つ戦斧を強く握り、目の前の騎士に叩き付ける。騎士シグナムもレヴァンテインを掲げて袈裟切りに打ち込んでくる。意図せず、デバイス同士がぶつかり合った。ため込まれた衝撃波が爆発する。
「やるな、アロイジウス」
「一筋縄じゃ行きませんね」
『シグナムが、吹き飛ばされた!?』
衝撃波への対応は真逆、押されるように威力を殺して空中に舞い上がった騎士シグナムと衝撃を全て受け止めて前に出て追撃しようとした俺、距離を離された、こりゃあれが来る。予想通り騎士シグナムはレヴァンテインを鞘に納める。そして、ガシュ!とカートリッジを撃発した。間違いない、飛竜一閃だ。元から避ける気などない。城塞の由来となった魔法、見せてやる!
「シュロス、撃発」
『城塞、ここにあり。我らが後ろに何人も通ること許さず』
ラフィの詠唱と同時にシュロスからもカートリッジが排出される。ただし、いま管理局で使われてる標準のものより3倍ほど大きく太いものが。古すぎて廃れているが、砲弾型と呼ばれる大出力のカートリッジだ。昔は普通に使われてたらしいんだけどな。爆発するような手応えと跳ねあがる魔力。騎士シグナムからも迸る炎のような魔力が立ち上る。鞘に収まったレヴァンテインが炎を吐くのを今か今か止まっている。動き出しは同時。
「飛竜、一閃!!」
「難攻不落、落ちることなし!城塞不撓!」
連結刃に姿を変えたレヴァンテインが炎熱を伴ってこちらに迫る。俺はそれに向かって地面にシュロスを叩き付け、防御魔法を発動させる。城壁のような燃える壁が俺を中心に出現し、連結刃を受け止める。城塞不撓、ご先祖から伝えられ長い時間の中で1代づつ改良を加えられた防御魔法。その神髄は、結界、シールド、バリア、フィールドの4つの魔法を同時に発動させること。1層目の結界で魔力をそぎ、2層目のシールドで物理を弾き、3層目のバリアで受け止め、4層目のフィールドで体への影響を抑えて支える。
「何という、防御力だ……!素晴らしいぞ、騎士カイト」
「お褒めに預かれて光栄です。騎士シグナム」
竜の一噛みを受けた俺の燃え盛る巨大防壁は、無傷。ゆりかごの試射を受け止めた魔法だ、個人で破られたら困る。魔力消費がすさまじすぎて兵器に使う砲弾型カートリッジがないと使えない魔法なんだぞ。だけどこれが、これこそが我ら城塞の騎士の誇り。何物も通さない難攻不落の守りこそが我らが神髄なのだから。
『防壁が消えない……!?』
『シールド系じゃないの!?』
外野の音声が聞こえる。俺の前には赤々と燃え上がる防壁が傷一つなくその姿をさらしていた。普通の防御魔法ならば役目を果たせば消えゆくもの。だけど城塞不撓は防壁として後ろを守るための魔法だ。構築に必要な魔力はカートリッジで賄い、維持のための術式を組み込んである。盾ではない、城塞だから。後ろを守り続けるものだからだ。
煌々と燃える炎の防壁を前にした騎士シグナムは無言で連結刃を剣に戻し。塚尻を鞘につける。またカートリッジが吐き出され、レヴァンテインの姿が三度変わる。ボーケンフォルム、騎士シグナムが剣だけの騎士ではない証拠。魔力の波動が嵐のように吹き荒れて、刃のような矢をつがえた騎士シグナムの号令でレヴァンテインがさらに2発カートリッジを爆発させる。
「『翔けよ、隼!』」
『Sturmfalken!』
つがえた矢が発射され、空を飛翔する炎の隼となり城塞不撓にぶつかる。炎熱資質同士に削り合い、一撃必殺の隼と絶対不落の城塞のぶつかり合いだ。俺はラフィに城塞不撓の制御を移譲して、腕とシュロスの結合を取り外し、シュロスを地面に突き刺す。そのまま右手のフラムに魔力を込めた。
「フラムスクーレ、フォルムツヴァイ!」
『labrysform』
機械的な女性の音声で応えたフラムがシュロスとは別規格のベルカ式カートリッジを吐き出す。こっちは標準仕様のものだ。戦斧の柄が伸長し、両刃、穂先を揃えたハルバードの姿に成り代わる。俺はそれを槍投げのように持ち、自由になった左手を残身を取った騎士シグナムに向ける。そしてそのまま魔弾を2発ロードし、フラムに炎熱の魔力を込める。お返しだ!
「『翔けろ!隼!』」
「なにっ!?」
『Sturmfalken!』
身体強化全開の踏み込みで地面を割りつつ、思いっきりフラムをぶん投げる。俺の手から離れたフラムは城塞不撓と拮抗する隼の隣を抜けて、炎の翼をはばたかせて標的の喉元に襲い掛かった。
主人公君、初ガチ戦闘(模擬戦)古代ベルカの魔法はドイツ語主体ですが、主人公君の場合はシグナムさんを例にとり漢字系、4字熟語みたいな感じで纏めています。もちろん横文字もありますが。
魔法解説
城塞不撓(じょうさいふとう)
防御魔法、に見せかけたケージタイプの魔法。空間を区切って相手を閉じ込めるケージタイプの魔法を防御に応用した結界と防御魔法の合わせ技。4層にわたる別種の防御魔法があらゆる攻撃を受け止める防壁となる。
発動にクソデカ魔力が必要になるが、シュロスリッターに搭載された砲弾型カートリッジシステムの莫大な魔力によりそれを補っている。構築に必要な魔力はカートリッジで補い、維持に自己の魔力を使うため実際の所は負担が軽い。最大出力で使うと軍を覆うほどの規模で発動することもできる