魔法少女リリカルなのはVivid 城塞の軌跡   作:防御特化っていいよね

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第9話 模擬戦終えて

 シュツルムファルケン、騎士シグナムが編み出した遠距離直射型の大規模魔法。その本質は弓矢による一点集中狙撃により防御を貫徹し内部で隼の形に圧縮された炎熱を解放して攻撃するもの。憧れた、あの隼の美しさに、威力に。俺のフラムは弓にはならないけど、いくつもの対戦の果てに……盗ませてもらった。

 

 投げられたフラムは炎の隼となって一直線に騎士シグナムに迫る。俺はそれを追いかけるように左手にシュロスを接合して地を蹴り上げる。同時に城塞不撓の制御を破棄した。酸素を失った炎のように下から消えていく城塞不撓。騎士シグナムのシュツルムファルケンは防壁がなくなったことで俺の元へ向かうが、威力は格段に落ちているのでシュロスでぶつかって爆発の中を突き進む。

 

 俺の背中のマントがはためく。これ分かりづらいんだけど飛行魔法なんだよね。普通の飛行魔法だと限界重量で俺は飛べないので大出力のものを使ってるんだけど、俺は炎熱変換資質のせいで純粋魔力の放出が苦手なので普通なら布のマントとして表れるところを炎のマントになってしまっているのだ。

 

「アギト!剣閃烈火!」

 

『火竜!』

 

「『一閃!』」

 

『短距離転送、炎熱消去!』

 

 咄嗟に剣の状態に戻せなかったらしい弓のレヴァンテインを左手に持ち、騎士シグナムが右手を剣を持つように握る。燃え盛る炎が収束し、赤を越えた白い熱線のようにアギトによって姿を変える。それが振るわれて着弾寸前だった俺のシュツルムファルケンに激突した。ため込まれた魔力が至近で爆発した騎士シグナムが耐え切れず吹き飛ぶ。代わりに迎撃されたフラムは力なく下に落ちて行った。

 

 だが、俺にできないことはラフィがやってくれる。フラムに残った炎熱を消去し、短距離テレポートでフラムを俺の右手に転送してくれる。俺はそれを右手で回転させて保持する。そのまま攻撃を振り切った態勢の騎士シグナムに向かって突っ込む。巨大なタワーシールドであるシュロスを向けて、突撃。いわゆるシールドチャージというやつだ。

 

「ぐっ!?」

 

「はぁっ!」

 

 ドグシャ!と俺は騎士シグナムにぶつかる。違う、感触が軽い!避けられた!俺の頭上に影が差す。それはやはり、騎士シグナム。激突の瞬間にシュロスを足蹴にすることで駆け上ったのだ。何という度胸と技術、そして根性……!既に剣の状態に戻ったレヴァンテインには赤々と炎が灯って大上段に構えられている。

 

「紫電、一閃!」

 

「吠えよ炎獅子!」

 

『炎熱起爆!プロミネンスロア!』

 

『Prominence roar』

 

 防御、迎撃、どちらも間に合わない。俺が採った選択肢は迎撃による相打ち。相手の必殺の一太刀と同時にシュロスが砲弾を吐き出す。渦巻く魔力の制御を放棄することで、炎熱資質を活かした全方位大爆発を起こす魔法だ。兵器のエネルギー源として使われる砲弾型カートリッジの爆発は騎士シグナムを巻き込んで吹き飛ばす。そして俺も、同時に胸に灼熱感が走って地面に叩きつけられた

 

「った~~~!おいこれ致命傷だよな?」

 

『実戦ならな。初代だったら今のでも守っていたぞ』

 

「……道は遠いな」

 

 ばっさりと袈裟に斬られた俺の騎士甲冑は胸が損傷して胸板がベロンと見えて、一文字に切り傷が出来て血が滴ってしまっている。実戦なら死んでた。逆に再現されたビルに突き刺さった騎士シグナムは咄嗟に左手で全身を庇ったらしく左手の騎士甲冑が全損してダランと垂れているあたり左手がオシャカになったんだろう。さて次はどうするか、と思ったら通信ウィンドウが目の前にでかでかと現れる。

 

『すと~~~~~ぷっ!』

 

「なんだ、高町。今すごく良い所なんだが」

 

「なのはさん、めっちゃ燃えてきたところなんですけど今」

 

『これ以上は大怪我するから終わり!中止!当たり前みたいに非殺傷設定貫通させないで!』

 

 ぷんすこ、と言った感じでストップがかかる。騎士シグナムと二人して邪魔しないでくださいと言ってみるが、どうやら怪我が発生したことで向こう側の許容を越えたみたいだ。非殺傷設定は魔法を使った技術でだいたい相手をケガさせない範囲に収めてくれるんだけどアームドデバイス、しかも武器として性能がいいとそう簡単にはいかないのだ。

 

 非殺傷設定にも限度があって、威力がぶっ飛びすぎてたりとか物理的にヤバすぎたりした場合普通に非殺傷を貫通する。騎士シグナムが放った紫電一閃が俺の胸を切り裂いたのとプロミネンスロアの爆発で左腕をやったのとかみたいにね。つまり今の俺たちである。やり過ぎたっぽいな。俺の非殺傷設定は管理局式のものじゃなくてベルカ時代のとりあえずこれなの勢いで開発されたものだから術式変えればマシになるかもしれない。

 

「騎士シグナム、ありがとうございました。決着はいずれ」

 

「ああ、今回は引き分けだ。騎士なんて敬称をつけずシグナムでいい、良く練られたいいベルカの騎士だなお前は。先が楽しみだ」

 

「嬉しいです。俺が体験できたデータより、ずっとずっと強かったです」

 

「……しかし、お前のような騎士が良く埋もれていたものだ」

 

 まだ動かないらしい左手を見やった後に不可思議そうな感じでシグナムさんが言う。いや、意外といるんだよ。古代ベルカってミッドとちょっと確執みたいなものがあるから、大多数は聖王教会に所属しているんだけど俺みたいなはぐれものもそれなりにいたりするんだ。で、そのはぐれものは一人でやれるほどの実力がないと、あっという間に聖王教会に狩られるわけで。昔の聖王教会は過激だったんだよねえ。

 

「せ、せせせせ……せんぱいっ!」

 

「お、どうしたヴィヴィオ」

 

「如何したじゃなくて!怪我怪我!」

 

「いやこれ超軽傷だぞ。縫うか回復魔法で治る」

 

「いやてめーそれ普通に重症だからな。シャマルに治してもらえ、シグナムも、中身滅茶苦茶だろ」

 

 遠くで別のことをしていたヴィヴィオがぐるぐると目を回して滅茶苦茶慌ててこっちに来た。早く治してしまいましょう!というヴィヴィオに大袈裟だなあと苦笑する。基本的に戦闘に支障がないなら軽傷扱いなんだようちは。それに紫電一閃の炎で止血自体はされているし。痛いは痛いんだけどさ、アドレナリンドバドバであんまり感じない。ぽかん、とヴィータさんに軽くアイゼンで叩かれてから騎士シャマルの回復魔法を受ける。

 

「感謝します。騎士シャマル」

 

「シャマルでいいわ。でも、模擬戦なんだから怪我するまで無茶しないの」

 

「すいません、憧れていた人と模擬戦できると思うと限界までやってみたくて」

 

「いやしかし……シグナム相手にあそこまで出来るんか~……空戦Aはあるかな?」

 

「ところどころ対人戦の経験不足が出てたけど地力で言うならもっとあるかも。総合だと陸戦AAで空戦Aってところかな。あの防御はフロントアタッカーとしてかなり魅力的だね~」

 

 とりあえず終わろっか~というなのはさんに、あれ?他の人の模擬戦は?と首を傾げる。ちょいちょい、となのはさんが俺とシグナムさんが模擬戦をしていたエリアを示すと、それはもう見事な大破壊の後があった。うむ、やりすぎたんですね。持ち主のルーテシア曰く壊れてはないけど復旧は明日とのことで、あっちゃーと俺はルーテシアに謝る。むしろいいデータが取れた、と投棄してきたはずなのになぜか砲弾型カートリッジの実包を持っているルーテシアを見て、いつの間に……と俺は驚くのだった。

 

 

 

 

 

 

「そういえば、カイト先輩はどうしてSt.ヒルデ魔法学院に通ってるんですか?聖王教会系列の学校ですよね?」

 

「ああ、それはだな……教会はどうしても俺の、というかアロイジウス家と仲直りしたいらしくて恩を売ってきたわけだ」

 

「恩?なんやけったいな考え方しとるなあカイトくんは。昔はともかくとして今の聖王教会はいい所やで~?」

 

 着替えてシャワーを浴びた俺たちはロッジのラウンジで交流を深めていた。ルーテシアに捕まってて根掘り葉掘りデバイスについて聞かれるラフィに手を合わせてからソファに座ると、待ってましたとばかりにヴィヴィオが隣に座ってきて、模擬戦の感想を伝えてくれる。目がいいのか、細かい所までよく見えているようだ。そうして雑談をしていると、ぽろっとヴィヴィオが質問してきた。

 

 確かに聖王教会系列の宗教系学校であるSt.ヒルデ魔法学院に聖王教会と断絶している俺が通っているのはおかしく見えてしまうかもしれない。というのも聖王教会側はアロイジウスの持っているあるものが非常に欲しいのだ。そしてそれは、正当な継承者である俺と初代から受け継がれたラフィが必須になる。アロイジウスの血統はもう俺しかいないから、まあ教会は何としても俺を説得したいわけで。

 

「もともとJS事件で両親が死んだから、元から通っていた学校には通わずに嘱託魔導士の試験を受けるつもりだったんだ。で、それに待ったをかけたのが聖王教会」

 

「なんや教会もえらい執着してんなあ。何がそんなに必要なんかな」

 

「そりゃ、引き継いだものが引き継いだものですからね」

 

「何なのよ、それ?」

 

 もったいぶるような話し方をする俺に抱き着こうとするスバルさんを手で制しながらコーヒーを飲んでいたティアナさんが聞いてくる。いつの間にか俺の身の上話を全員で聞く流れになったから俺は苦笑いをしつつ説明を再開する。まあこれは確かに、分からなきゃ疑問にしかならないよな。

 

「聖王オリヴィエが戦場で使っていた義手ですよ。彼女を看取ったのはアロイジウスでしたからね」

 

「義手……って本物の聖遺物じゃない!?」

 

「そら、教会も必死になるわ。毒殺してでも奪いたかったわけや」

 

「それ、今どこにあるの!?見せてもらったりできない!?」

 

「ルーちゃん……」

 

 俺の言葉を聞いてルーテシアがラフィとの会話を一瞬で切り上げて残像が残るほど、って魔法使ってるじゃねえか!まあとにかくすさまじいスピードで俺の前に現れて顔を覗き込む。うーん、教会にも貸し出したことがないしなあ……それに、オリヴィエ陛下からの預かり物の一つなわけだ。存在は教えられてもおいそれと見せるものじゃないかな。

 

「物自体はラフィが保管しているんだけど、見せるのは無理だな。そもそも預かり物であって俺のものじゃねえし。だから聖王教会にも渡してないんだ」

 

「預かり物……?」

 

 断絶前はラフィが眠っていたので遺物その他は本邸で管理していた。だから当主をぶっ殺せばやりたい放題ってわけだったんだ。そんで

 

「オリヴィエ陛下の遺言ですよ。仔細は話しませんが、まあ形見分けですね。アロイジウスにも残されたものはありますけど、義手の方は預かりものです」

 

「そもそもなんでアロイジウスがオリヴィエを看取ってるん?シュトゥラの騎士やろ?」

 

「ああ、それはですね……ゆりかごの玉座の間があるでしょう?あそこの門番、アロイジウスに任されたんですよ。命がけで後ろを守るのはうちの得意分野なので」

 

 初代はそれで、オリヴィエ陛下を見捨てて退艦していった聖王家とその直属の兵士たちとは真逆の、ゆりかごに乗り込み玉座へ続く道をその身で塞ぐ道を選んだ。それが当時のアロイジウスの決定であり、クラウス殿下の個人的な願いでもあった。引き止められぬならば、守ってほしい。アロイジウスはその無言の願いを聞き届け、シュトゥラを辞しそのままゆりかごに乗り込んだってわけだ。

 

「だから……ゆりかごのコアとなって衰弱していくオリヴィエ陛下を見守っていたのも初代でした。生憎脳筋でしたからね、外からは守れても、内からは守れなかった。結局アロイジウスは、オリヴィエ陛下に何もできることはなく、死なせてしまったんです」

 

「……なんか、歴史がひっくり返る話を聞いてない?私たち。聖王史だとオリヴィエってゆりかごに一人で行って一人で亡くなったんじゃ……」

 

「だから家は聖王教会が嫌いなんですよ。聖王教会、当時は聖王連合国でしたけど……都合のいいようにオリヴィエ陛下を神格化するためだけに色々捻じ曲げたりしましたから。断絶の原因は確かに毒殺ですけど、それだけじゃないですよ」

 

「カリムに報告してええ?その話」

 

「構いませんよ。まあ話を戻しますけど、オリヴィエ陛下の義手は俺が死ぬ、というか肉体がなくなるととりだせなくなります。管理局に行って戦場に行かれて死ぬのは聖王教会としてもまずいので、まあ学校に通わせて監視というわけですね」

 

「そうなんですね~、でも……なんかロマンチックだね、エリオくん」

 

「騎士とお姫様は鉄板だもんね」

 

 キャロとエリオのその言葉にぶふっと俺は吹き出す。いや、何も知らないから当然かもしれないけど……そんなロマンチックな話に発展する要素は一切ない。どっちかっていうとオリヴィエ陛下はクラウス殿下とロマンスを楽しんでいたような感じだ。いきなり噴き出した俺と笑いをこらえるラフィをみんなが首を傾げてみている。

 

「いやー、ないよないない!その時の初代アロイジウス、40過ぎのハゲ髭のおっさんだぜ?スキンヘッドのゴリマッチョだ。そういうのはないよ!」

 

「ああ、主グラムはクラウス殿下の武術の師であった。それはオリヴィエ陛下も同じだったがな」

 

 初代アロイジウス……グラム・エルンスト・アロイジウスの正体に、皆毒気を抜かれたように脱力するのだった。ごめんなさい。




 聖王オリヴィエたちと同年代だと思ったか!?残念だったな、おっさんだ!オリヴィエ様はクラウス様とくっついてもろて(叶わぬ願い

 ではまた次回に。感想評価よろしくお願いします
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