油臭い
「ジョージはいいよね。地球暮らしの身分で」
「なに。俺でも宇宙は素敵なところと分かるのさ」
「はっ。生意気言って」
身体をMSのもとに流すと、組み立て途中の機体を見やる。
アセンブリガンダム。
全身に使われたサイコフレームでできており、その強度はリムーバブルフレームを上回る。現存の中ではもっとも堅い金属。
そんな説明を受けても、なお。
俺は恐怖を感じる。
シンギュラリティワン。
ユニコーン一号機は時をも操る力を持っているとされている。
事実、連邦軍の機体はことごとくジェネレーターが分解されていた。
パイロットが死ぬわけじゃないが、神にも似た力を発揮したことが不安をかき立ててた。
「どうした? 地球人」
整備士のパトリックが怪訝な顔をこちらに向ける。
「いや、ニュータイプってのは本当にいるもんかね?」
ガンダムから特別なものを感じる。この感覚はなんだろう。
「ははは! それが分かりゃ、ミネバの言う通りネオジオンの奴らが反乱を行うってんだろ?」
「そうか。そうだな……」
ニュータイプなんていない方がいいのかもしれない。
俺たち連邦軍にとっては認めがたい存在。
連日ニュースでもニュータイプの科学的根拠はまったくないとされており、素直で物分かりがいい一般市民はあらがうことなく、聞き入れている。
「ま、こいつを使うこともないんだろうな」
「そうかい」
アセンブリガンダムは悲しそうにこちらを見ている気がした。
フレームだけの機体を見つめていると、格納庫《ハンガー》内に内線が伝わってくる。
『ジョージ中尉、すぐに艦橋《ブリッジ》へ。繰り返す――』
「行かないと」
俺はワイヤーガンでハンガーから出ていき、途中の通路を通りブリッジに向かう。
今度の任務はなんだ。嫌な気配がする。
誰かにずっと見つめられているような……。
「今回の任務は簡単だ。この輸送艦コロッセスが月のグラナダへRX-11を移送する」
「了解しました」
敬礼をすると、艦長のリヒティは苦笑を漏らす。
「まあ、気張るな。ただ運ぶだけだ」
MSを五機ほど搭載できる小型輸送艦は、魚の骨を思わせる風貌をしている。
その専用ブリッジにも三名ほどの乗組員を乗せているだけで、あとはほとんどが整備兵と衛生兵になっている。
多くの機能がAIとオートパイロットで補われているため、操縦も楽になっている。
スペースコロニー・トートを出港すると、そこはもう宇宙だった。
暗くどこまでも続く星々の海。
その深淵に吸い込まれる感覚を味わいながら、俺は座席についている手すりに掴まるのだった。