水滸伝のストーリーは時代によってだいぶ違う。俺が最初に読んだ水滸伝は108人の英雄が反乱軍になりながらも朝廷に忠義を尽くし、まともな政治を求めて戦う話だ。現代で多く知られているのはこの流れだろう。まともとは、汚職など繰り返している輩を根絶やしにする事だ。現代基準で言えば過激な分類に入るが、まだ三国志みたいな感覚で受け入れられる主人公達として描かれている。何より、皇帝の為なら悪にもなろう!とする主人公達はカッコいいだろう。
さて…それでは最初の水滸伝について説明しよう。人数やファンタジー要素など違いはあるが、概ねのストーリーは同様だ。ただし、主人公組とあえて語るが梁山泊を根城にする部分は同じだが山賊としてのエピソードが酷い。現代版でもマイルドに書かれていたが、最初っからお国の為に!みたいな性格ではない。仲間同士での一部を抜粋して説明しよう。
『くそ、目的地まで着くのに資金がなくなっちまった…仕方ねえ、宝剣を売るしかないか…』
『はぁ!?それ家宝だろうが、何考えてんだお前!』
『うるせぇ!資金がねえって言ってんだろうがァァァ』(喧嘩)
『ぐはァァァァ!』(言い方は悪いが、注意しただけ)
『ヤベ、殺しちまった・・・殺っちまっもんは仕方ねえな、お前の事忘れないぜ!』
これが主人公組です。梁山泊に集まる連中は山賊が大半なんで、だいぶ簡単に述べましたが実際こんな奴らだった。文庫本でも宝剣売る下りはあるが、売るぐらい切羽詰まってるのwwwみたいな感じでチンピラに馬鹿にされて殺すという、義の為ならば精神のようなアレンジがされている。
ここまで大まかに水滸伝について述べるには理由がある・・・今の俺の状況だ。
「私と共に
現在進行形でその主人公組と敵対?正確には見逃されて続編で殺されたがまあいい。水滸伝の敵役が一人、蔡京からスカウトを受けているのだ。
自己紹介から始まり、こちらの言葉は通じないが相手側もそれを理解した上で俺の力を確かめたいと話しかけてきた。
『こちらの言葉は通じているご様子…では説明致します。脱税をしていた者達が口をそろえて鈴仙人様から銀を授かったと戯けるのです。私は皇帝に仕える者として悲しい限りです、民である者達が善行を積む仙人より頂いた物を私欲として使うなどあってはなりません!』
どの口が言うか…相手からしたら初対面だから仕方ないけどさ、俺からしたらあんたが一番私欲で動く輩だろうがと言いたい。俺は苦笑いで対応したら、蔡京はそのまま畳みかけて来た。
『仙人様には申し訳ありませんが、確認の為に仙術を一見させて頂けないでしょうか?』
…俺はこの時悩んだ。見せていいのか、見せない方が良いのか…
『私としては仙人様に彼の者達への罰を決めてほしいのです…私も仕事として今宵、ここにいるので』
いい笑顔でそう言葉を続けてきた…言葉通りなら俺の行動次第で私欲に堕ちた連中を裁くらしい。俺個人としては…利用された気持ちはある、でも…罪を問うかと言われるとそこまでではない。何だかんだ鈴仙人として扱い、家など用意してくれていたのは事実なのだから。
俺は意を決してタップした…いつも通り、酒器と銀の秤量貨幣が手に落ちる
蔡京は浮かべていた笑顔を凍らせ、黒い眼で俺を見た…俺はその迫力に動揺し、咄嗟に手に持った物を手渡した。やや遅れ受け取ると、その二つを丁寧に返された…元のいい笑顔で。
『なるほど…お御業、しかと確認致しました。仙人様のお言葉は凡人である私にはわかりませぬが、彼の者達への罰はしなくてよいとお考えで?』
俺は頷いた。蔡京の察する能力が凄まじいと改めて感じた、表情や雰囲気で察するって官僚として他者観察が常だからこそ授かったのだろう。
こういった経由があり、冒頭のセリフになる・・・ここからなんだが、俺はついて行こと考えている。だってさ、水滸伝の世界だとしてもだよ?主人公組ってどんなにカッコよく言っても反乱軍だからね?しかも、反乱が成功してもはい終わりではなく国を零から作り直しましょうエンドだからね、現代でよくある悪を倒して主人公組によって世界は、国は救われたじゃないんだよ…反乱軍と汚職組の正規軍による戦いの後、混沌状態で俺達の国造りはここからだなんだよ!
今更だが俺には特別な力がある。酒器と銀の秤量貨幣(金も出せる)、酒器はどうでもいいが、銀と金はどの時代でも価値がある…水滸伝は
いい駒が手に入った…内心でほくそ笑みながら馬に不慣れな仙人を眺める。
(仙人とは清らかな精神の持ち主がなるとは言い当て妙でしたね)
鈴仙人。小物共が泣き叫びながら媚びた者…山の中で突如として現れ、空を撫でると酒器と銀が落ちたという。言葉が通じず、ただ施しを与えながら笑みを浮かべ、心から喜びを見せた善の者。
それが本当なら、心より他者を思いやり仏の如くの精神を持って仙道を歩んだ…実に扱いやすい人物と思った。人の邪を遠ざけ、人の善のみを見るなど馬鹿を見るとはこのことだった。
これから連れて行く開封府、そこは邪仙すらもあざ笑う精神を持つ輩の巣窟と化している。人は己の知る事しか知らぬ、言葉通り、自分のこと以外はどうでもいいという者が集まる場所…官職としての己でも油断は命取りとなる魔の砦。
仙人は善人だった、利用されていたと改めて伝えたにも関わらず…己の力を隠さなかった。例え隠したとしても、罪人として連れて行くこともできたが梁山泊に集まるとされる俗物の仲間だった場合も考えていたが、躊躇せず物を渡してきたのには驚いた。
己の事より、他者を救う。この世にこんな精神の持ち主がいることに驚き、そして哀れと思った。利用されるがまま過ごす日々が待ち受けているというのに、受け入れるのだ。微笑みを崩し、理解していると知っていながら受け入れる…仙人の気持ちなんて一生分からないだろうと真に感じた。
「元長殿…噂は広がった様子」
返事をせず顔を背ける。その動作で一礼をし、馬に隠れるように森の中へと消えていく。仙人としての足枷が残ると困るのだ、この行為は善性の仙人に捧げる私からの捧げものと心より思った。
その夜は冷えていた。大きくなった町並みに火元を求めて歩みを始める者達がいた。その者達は鈴仙人の噂を聞き、実際に川から流れる宝を求めて来た者達だった。
「よう、宝は流れて来たか?」
「駄目だ、見えはしたが取られちまった」
「かぁーどいつも手が速い」
男たちは一攫千金を求め来た不良集団。この時代には仕事もなく、ただ生きる為に転々と村を町を出向く者が多くいた。今宵の者達もまた同じ、有象無象の民草に過ぎなかった。
「あん?何の音だ・・・馬、こんな夜に」
夜に馬を走らせる者は少ない。夜道で事故に合う可能性もあり、現代のように明かりがあるわけでもないのだ。馬を走らせるとしたら、皇帝の勅令など大事な言伝か…
「ヒャッハァァァ!!」
野盗の群れぐらいしかない
ぎゃぁぁぁーーー助けてーーー
平穏の夜は終わり、辺りは火で明るくなる。燃え広がる家から引きずり出され犯され殺す、この世の地獄が始まった。
「ここにいる奴らを殺せ!殺せば殺すだけ賞金が出るぞ!!」
「あ…あ…なんなんだ、お前ら」
「まだ息があるのか」
その男は答えはせず、倒れた者の息の根を止めた。
「頭!何人殺せばいいんですか」
「知らねえよ、殺せば殺した分だけ申告すれば金を出すって噂だぜ!金品も奪えよお前ら!」
「皇帝様様だぜ!」
野盗たち、正確には税に苦しむ他の村の者達で結成された集団。この町が鈴仙人による恩恵を受け豊となった、だからこそ税収も高くする…その周囲一帯の土地含め。税が潤うならば、その周囲も潤っている、そんな根拠のない考えによって損害を受けた民草の怒りは強い。その怒りの矛先が定まらない状態から、ある噂が流れてくる…
…あの町は犯罪者が作った町だ、住人には賞金がかかっている…
根拠がない噂…されど、近くの割を食ったところで噂は広がっていた。そんな噂がこうも流れてくるのだ、きっと本当なんだ!・・・実に単純、実に無計画。現実もまた単純…この者達にとって噂が本当かなんてどうでもいい、この怒りをぶつける場所が欲しかった。自分たちが丁度欲しかった理由が湧いた、それだけで良かったのだ。
野盗から命からがら山奥に逃げ出せた者達もいた。しかし、その者達が山から下りることは無かった…野盗の次は山賊、身ぐるみを剥がされ土へ帰ることしかできなかった。ただ気がかりなのは、山賊にしては良い武器を持ち、殺しの御業が見えた事だろう。
尻が痛え…慣れない馬に乗るのもそうだが、後方に蔡京がいるのが精神的に辛い。
「大丈夫ですか、鈴仙人殿?馬に不慣れな様子、休みを挟みましょう」
そして凄い優しいのが怖い。どうせ、俺をどう利用するかとか考えているのだろう。俺の身分を確立するため、ある程度は協力しなきゃ駄目だからな…協力し過ぎて泥沼に足を突っ込まないようにしないといけないが。
首都に着いたら
「ああ、お伝えし忘れてました…私には兄弟がおり、名を
知ってる。丁度考えていたとこ、あと何で辛い?大丈夫よ、知ってるからって気持ちで顔を振る。それはよかったって安心したように頷き返された。
「開封府に着く頃には…罪人で溢れているでしょう。私達の仕事も目にするかもしれませんので」
え、何それ怖い。この時期になんか戦でもあったっけ…まさか、幻想水滸伝の話か!いやありえねな、あれは全く別物だし、108人の仲間と戦争ぐらいしか関係性ねえな。
俺が考えているその姿を見ていた蔡京は…なんか凄く、獲物を狩る動物みたいな雰囲気をしていた。水滸伝で何かあったか?
「人の欲とは決して消えぬ物だと私は考えています。その欲を抑制するのではなく解放させる事こそが…人が人故に感じる真実だと思うのです」
いきなりどうした…そういえば文化人の側面も持ってたなあんた。人が欲を求めるねえ、まあ普通の事じゃね?俺の仙人としての考えを聞きたいのか・・・頷いとくか。
「鈴仙人殿も知ることになるでしょう・・・人の醜い欲望を、貴方の力はその醜さを表に出させてしまうでしょう」
まあ、世の中金ですからね?人は醜くなるでしょうよ…それに水滸伝って汚職が蔓延る時代!ってあらすじから始まるからね?世紀末みたいな感じって知ってるからね?
「人が信用できなくなった時、この蔡京をお頼りください」
うん…頼ると思うけど…絶対信用しない
見て頂きありがとうございます。大分わかりやすく書いたと思う…少しでも水滸伝に興味が出れば幸いです。ハーメルンだと幻想水滸伝の方しかないんですよね。