水滸伝の戦の流れを説明しよう。個性派揃いの108人の英雄が手を取り合い、汚職した連中倒すぞ!とは基本ならない。それどころか、仲間同士で殺し合いしそうな連中の集まりなのだ、まとめ役がいないと瓦解どころか略奪だろうとする連中…日本の戦国時代でも武士・小役人などが略奪する事例はよくあったが、こいつら山賊です。略奪に容赦などありません、まとめ役兼リーダーがいなければ民一人どころか村一つぐらい余裕で滅ぼすでしょう。
そんな山賊共のリーダーの名は
さて、そんな宋江の下に108人の仲間が集まるわけだが…物語を知らない者に聞きたいが、蔡京と蔡福は官職、役人側なんだがどうやって反乱軍に入ると思う?そもそも入るのかよ!っていうのはなしで。普通に汚職に手を染めてる兄弟が、しかも地位もある立場でだよ?普通はしないよね、実際この二人は梁山泊側に付きたくなかった。蔡福から始まるその流れを抜粋しよう。
『あいつを殺してくれたら俺が資産を相続できるんで明日までに殺して…50両渡します(約500万)』
『0が足りないだろ?貴方ほどの貴族がこの程度なんですか~』
『…500両渡すんで』
『話分かるじゃん』
とある暴漢…まあ、梁山泊の一人が色々あって捕まって、そいつが相続人だったのを邪魔と思った人物から賄賂を貰うところから始まる。その者は
臨時収入に浮かれて酒を飲んでいた蔡福、そんな時に梁山泊側の
『捕まっている者はこちらにとって大事な方…1000両でどうか』
『ぶ!、いや、その…」
『ああ!言い忘れてました。受けてくれないなら、貴方を含め、ご家族様を皆殺しにしますのでよろしく』
…まあ、こんな流れで蔡福は蔡京を頼って梁山泊側とも付き合わなくてはならなくなり、その捕まってた輩やその仲間が暴れに、暴れ、梁山泊側に付かないといけない状況になってしまった。
この兄弟の話の中で宮殿内の汚職状況を知ることになるエピソードが語られ、皇帝の置かれている立場、腐った官僚たちなどがわかるのだが…この兄弟やる気ないんだよね。好んで反逆する気もなかったけど、上手く立ち位置を調整しないと双方から遺恨を残しかねなかったからナイナイで動いた結果、こうなったと。意外と梁山泊側に関わったから転落人生になる者達も多いので…運命って怖いね。
梁山泊に着いた兄弟は何をしていたかというと、まずは反乱軍の一員として各防衛ラインで戦います・・・終わり。そうなんだよ、この兄弟特に何も目立った話が出てこないんだよ!蔡福に関しては腕っぷしが強い設定のせいで前線に出せれ致命傷を負い死亡、蔡京に関しては自暴自棄になったのか普通の農民になって終わる。続編で息子たちが忠実の本人みたいな事をするため毒殺されるけどまあいいだろう。
「どうでしょう、鈴仙人殿?私はこの蛇の姿焼きが好みなのですが…お手が進んでいない様子、お口に合いませんでしたか」
俺は今、蔡福と共に料理店に来ている。正確には飲み屋だが…古代中国に限らず、食文化が発達しだしたのは長い歴史の積み重ねがあってこそなのだ。当然、食に関しても発展途上なのは仕方ない事。
現代で中国を代表する料理は?と聞けば中華まんや餃子、焼売などイメージするだろう。だが残念、中華まんの原型、饅頭ができるのは100年以上先だ。餃子なども大体同時期…つまり、今の時代にまともな料理はない。それでも中国は他国に比べれば食文化は豊なのは間違いない、北京ダックとかは今の時代でもあったりするので現代人でもそこまで食べ物に躊躇しないだろう…そういった食事が特権階級の者しか食べれないという現実に目を背けなければね。
なんで俺が宮殿の外に出て蔡福と食べてるか…簡単に言えば誘われたからとしか言えない。娯楽の無い時代での楽しみなんて、それこそ金!暴力!セッ…ぐらいの論理感が一般化している民衆は多い。しかし、それは地方の学もない者達が中心だ。余裕がないとも言えるが、流石に皇帝がいる首都付近でそんな馬鹿な事をする輩は・・・いたけど、そうはいないんだよ。基本的に文化人として論理感を持って、飲食店や女とイチャイチャする場所に行ったりしてた。
蔡福は役人ではあるが、この時代は現代と比べて昼間から飲んでもそこらへんは緩い。仕事中に酒を飲むなんて結構あるぐらい緩い。最終的に仕事ができてたらいいよ、ぐらいの感覚で任されるので皆ゆるい。その代わり、上に行きたいなら金…と金の切れ目が縁の切れ目じゃなく、金の切れ目が人生の切れ目になるぐらいだ。
富、名声、力、この世の全てを手に入れた男、汚職王 蔡京。その男の言葉によって官職たちを駆り立てた。「地位ですか?欲しければ差し上げます・・・探してください、混沌とした時代の中で」男達は優遇される地位を目指し、夢を追い続ける・・・!世はまさに大汚職時代!!…いやほんと、少し改変するだけで似合うんだよね。
「う~む、やはり仙人殿には肉食は駄目でしょうか」
ごめんね、単純に蛇の頭がそのままで丸焼きとか食べる気が起きないだけだから…山にいた時は木の実とか、川魚とか中心で偶に兎肉だったんだよ。俺からしたら、この珍料理に見える蛇の姿焼きはきついっス。酒は貰うけど。
「おお、酒は行けますな!では」
注いでくれた酒を飲みながら、蔡福と共に飲む…何度も思ったが、この人の弟が何であんな風になるのだろうか?普通に接してたら付き合いのいいおっちゃんなのにね。逆か?こんな性格だから弟が頑張ってああなったのか。だからこそ、この兄を亡くしてやる気が失せたのか、まあいい兄ちゃんだしね。
それにしても・・・度数が低い。辛み酒なんだが、現代基準で考えたらアルコール数%ぐらいしかない。俺はストゼロ3缶ぐらいでやっと酔うぐらい強いからな。対して俺に合わせるペースで飲む蔡福は顔がやや火照ってる。7杯を超えたぐらいで酔ったようだ。
「は、はは、鈴仙人殿は強いですな…」
まだまだ余裕なんだが?絡み酒でもするか!ほれ、ソチも飲むが良い~
「・・・頂きましょう!」
「戯れはほどほどにお願いできますか鈴仙人殿。兄上も仕事に差し支えるのでお止めよ」
ファ!?蔡京!?どうしてここにいると知って、皇帝との話はどうした!。驚く俺と酔いが回った蔡福を交互に眺めてどこか呆れた様子で喋り出した。
「鈴仙人殿は司会としての役職を用意するとまとまりました故お伝えに来たのですが…兄上と飲んで酔わぬとは仙道の道は酒に通ずると言いますな」
仙人が酒を飲むイメージなんだけどさ、それって酒が水のように透き通ってて酔いによる興奮状態が神秘の詰まった水によって起こったってイメージが酒にあるから付いただけなんだよ。俺も酒器出してるから思われたのかな?まあ、酒は好きだけど。
「酔いは見えませぬが、司会としての職を全うして頂こうと思うのですが…」
どうだろう?一応、俺も中国語で喋ってみたが何故か通じない。名前を呼んだ時は通じるのに…文字は読めてるし行けるんじゃないか?司会って確か会計士みたいなもんだろ、月まとめを計算するぐらいいけるはず。簿記持ってるからね俺、勉強しててよかった。
俺は親指を出してグッとポーズで答えた。蔡京は反応に困ったような様子で俺を案内しようと声をかけてきた。このポーズの意味を理解されるのは、数百年以上先の未来なので当然の事である。なお蔡福は水を貰い道中で吐いたらしい、その姿を仙人に知らせぬままだった為、後日飲み友気分で来た鈴仙人に対し、苦笑いをしたという。
蔡京の前に不思議な計算を行う仙人がいた。未来で『中国の数学』と時代の最先端を進んでいた古代中国式の数学は、現代の数字を扱った物だけでなく
『蔡京』
己の学んできた式と違う不思議な字(現代数字)を紙に書き、計算したのだろう結果を我々の字に戻し提出された。
「…合っています。素晴らしい!」
何より驚くべきはその読解能力もそうだが、計算速度がそこらの文官より圧倒的に早かった。官職としての役職故、下からの報告書を受け取るのだが…お世辞にも正確な文章で来るとは限らない。現地に向かって確かめ直すなど日常茶飯事であった。首切り役人と言えど、現行犯などであればその場で斬首できるが、何者でも斬れるほど甘くない。証拠が必要になる際は作る…も手段だが、どっちにしても集める際に決定的な物が必要になる。
鈴仙人はこちらの言葉を喋れないのは知っていた。文字書き計算ができない可能性も考慮して兄に任せていたのだ、学の無い者はすぐ騙される。ましてやこの宮殿含む、官職の者達がいる場においてはなおさらだ。まだ来て日が経っていない内に我々との関係を匂わせ、兄上なら適任と考えての行動だった、逆に兄上が飲まれるのは想定外だったが。
「これならば、すぐにでも引き継げるでしょう。私の方で人は集めます故、その働きが多くの民を救う手になることを願います」
鈴仙人が想定より賢かった、より後方に回る必要が出てきた。我々とは違う形で学問を相応に身に着けていると読み取れた、話せないだけで理解はできている。ならば相応に接しつつ、欲の渦巻くこの都においての位置も決まる。
(…他の者達も抱き込む必要が出ましたね。ばらまくだけでは遺恨を残すか、贅沢な悩みだ)
まずは、鈴仙人を他の者達に認知させる。仙術を見れば欲に目がくらむ輩が大半だが、ここで仙人様の身の上話が役に立つ。己の欲を出せば勝手に離れていくとわかるのだ、文字通り欲に溺れている者達にとって話さずとも通じ合っている。
資金、金に興味の無い者が金の管理を扱う・・・なんて理想的な状況なのだろう。しかも日頃から金の流れを見て、その損失が大きく嘆き、悲しむ者がいると理解すれば身を削ってでも補充してくれる者がいる。そして前例ができれば、間を開けて形を変えてまた…と。
合っていたのが嬉しかったのか、ホっと胸を下ろす仙人を眺めながら思う。この仙人はどこまで人の欲に溺れないかと…人の狂気は魔物より恐ろしい、人の欲は天人すらも堕とすのだと理解しているのだろうか?
「長くなってしまい申し訳ありません。もう日が落ちます、寝床に案内を」
女官を呼び案内をさせる。勿論、呼んだ女官も我々兄弟と知り合いの者だ。ついて行く仙人の後姿を見終わった時、ふと思った…仙人となった者にも性欲はあるのだろうかと。
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