人生放浪記   作:記憶破損

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補足説明の話


賑やかの裏にも

 

 皇帝祭祀と言っても種類がある。わかりやすいのは即位儀礼かな、天命を受けた天子である皇帝が袞冕服十二章(こんべんじゅうにしょう)(礼服)を羽織り、官吏(所謂巫女とか神主的役割の偉い人)と歴代の皇帝も受け取った聖書みたいな物とか装飾品を受け取って、数日かけて御霊参りをするって内容。皇帝は天子、つまり神からの使者みたいな人物だからこの世で一番偉い、だからこそ歴代で一番偉い人達に敬意を表そう!というのが宗廟(そうびょう)で行われる。

 

 もう一つが郊祀(こうし)だな、内容としては郊外で皇帝を祭り、歴代皇帝あっての今です、みたいな感謝を皆で喜び合おうという内容だ。皆で踊って飲んで、無礼講…そこまではいかないが、羽目を外す奴が出て来るほどの普通に近い祭り事だ。ただし一般参加者だけな。俺達官職含む者達は皇帝が行う儀礼、まあ神聖な場所巡りの旅について行く御供として終わるまで動けない。

 

 でだ、今回行う皇帝祭祀はなんかどれにも当てはまらない特殊な形式だ。後宮で行う皇帝祭祀は本来存在しない。そもそも、俺を含めた宦官でもない連中を呼ぶだけでなく・・・皇帝にとっての、なんだ…憩いの場?で歴代皇帝を祭ります!には基本ならないし、財務費として落とそうとしてる時点でだいぶ変なんだよね。園遊会として使う物品類ならわかるけど…祭祀自体を神聖でもないモノだと皇帝自ら今回言ってるような状況だからね?神官みたいな連中からしたらブチ切れ案件だよ。

 

 俺にとっては無駄金使うなよって気持ちが大半だが、後宮内部、秘密の花園を覗けるのは貴重な体験だという気持ちもある。何かよくない?女性ばかりの、しかも美貌がほぼ確定してる人達が集まってる場所だよ?まあ、美貌持ちの女性は皇帝のお手付きの可能性が大だから、その事を考えるとビミョーな気持ちになる・・・現実逃避を止めようか。

 

 金銭の事で熱くなったが…何で園遊会みたいなイベントをわざわざ皇帝祭祀の言葉を使ったか考えると、貴族含む自分に従う者達を集合させる意味があるからと読み取れる。それにしても力業な気がするが、このやり方なら来ない連中は反逆者として処理もできてしまうので意外と怖いイベントなんだよ。

 

 そんなイベントに俺を呼ぶ…嫌な感じがする。俺は皇帝と共にある!的なイメージがあの時から生まれて今の俺の状況だ。司会として国の流れを金の流れとして捕らえられる環境に置いてくれたのは感謝すべき事だろう。蔡京の計らいかもしれないがな…大事なのは国の情報を把握できる手段を用意してくれた事だ。梁山泊の誰かが既に活動していることは知っている、俺が仙人として降臨する前から知られていたのだから、より詳細な情報を知れる立場は素直にありがたい…だが今回の事でマズい事になるかもしれない。

 

 今回のイベントは民視点だとどう映るか、そんなの簡単だ贅沢な祭り事。私欲の為にと考える輩が大半だろう・・・何の為に仙人は皇帝と歩んだ!と考える者も出てくるだろう。一応、あの時出した金は民に配ったんだよ?仙人様!仙人様!喜ぶ連中でごった返して大変だった。でもね、それだけ期待している人物が他の汚職の官僚たちと同じだった的に捉えられたらどうなるか…希望が絶望に変わる瞬間、悔しいでしょうねぇ。

 

 …あの仙人殺すべし 慈悲はない… アイヤァァァ!?

 

 やべえよやべえよ…楽しむどころか、俺の行動一つ間違えたら、俺という存在が水滸伝の大悪党の立ち位置に早変わりしちまうよ!仙術を操り、皇帝を傀儡にした真の邪悪…その名も鈴仙人!みたいな感じで捉えかねない状況になっちまった!?民からしたら、朝廷の動きなんてわかるはずがないんだ。政権云々なんて知るか、目に映モノだけを信じるがデフォだから…そこに梁山泊の誰かが入れ知恵を行えば大爆発間違いなし。

 

 童貫含む部下達に探してもらってるけど、未来のように通信機器なんて無い時代。探し回っても数週間はかかるだろう。そもそも探し出せるのかわからん、水滸伝では各人物がいる場所の詳細な情報がほぼ無いんだよ…主人公組が移動していると何かしらイベントがあって仲間になるを繰り返して物語が進むわけだから当然だけど。古参メンバーすらいないであろう今の状態の梁山泊の内情なんて把握できるわけがない。

 

 欲を言えば、羅真人(らしんじん)公孫勝(こうそんしょう)とか王朝側に来てくれると遼や金に怯える必要がなくなるレベルで軍力強化になるんだが…薊州(けいしゅう)にいるの確定だし。あ、宝剣も欲しいな・・・高廉(こうれん)かぁ…童貫達じゃ無理だな絶対。

 

 この世界のファンタジー要素、道士や妖術使い。俺の金銀出す能力とは違い、天候を操ったり、黒雲の上に乗って逃げたり…ガチの仙人レベルの人外どもだ。なんと、割と頻繁に現れては主人公組と戦うのでこの世界のパワーバランスがインフレ気味になる要素だ。

 

 ・・・あー、一応王朝側だが高唐州(こうとうしゅう)の長官(都知事みたいなモノ)として高廉という男がいる。こいつは妖術使いで、今の時期で集めてるか知らないが300人の先鋭部隊を自前で用意したりする奴だ。こいつに限らないんだが、妖術・仙術など使う輩は性格が自己中が多い。そもそも、自前で先鋭部隊とか作る時点で政府側からしたらちょっと待て案件だけどね。

 

 

 

 …考え事が多いと話がそれるな、まとめよう。皇帝祭祀は逃れられないイベントとして受け入れ、俺はどういった立ち回りをするかで今後の印象などが決まってしまう。たぶんだが、皇帝は俺とズッ友アピールするのは確定事項…いや、あれだけ民の事を思って泣いちゃうぐらい清らかな心を持ってる人物だったから予想だがするだろう絶対。それはいいとして、その後だ…蔡京とも友情アピールが必要だな、権力は依然としてあいつがほぼ掌握してるし。他の貴族とも挨拶巡りは確定…やっぱりアピール力が足りないな。

 

 俺は皆と仲良くこの国で生きていきたいんだ!的なアピールをしたい。勿論、民の皆様方も含んで…でも俺の言葉って伝わらないんだよね。ああ辛い、全てを投げだして逃げようかな?ははは、駄目だ…俺の顔とかもう知れ渡ってしまってる。

 

 …もう知らん…酒だ酒を持ってこい!なるようになるさ、明日になれば全て良くなるって考えるんだ…

 

 蔡福のところに突撃して飲み屋巡りにしゃれ込むのに時間はかからなかった。その後、泣く程嬉しかったのか蔡福は涙を流しながら無心に酒を飲まされ続けたという。

 

 

 


 

 

 無駄な労働ほど疲れが蓄積するモノだ…皇帝祭祀の詳細についての問い合わせが後を絶たない。今頃あの皇帝は礼服の準備や官吏たちの説得に回っているだろう。類を見ない今回の皇帝祭祀、園遊会の間違いではと何度聞かれたことか、内容的にはそうなのだが…それを認めてしまうと強制力が無くなってしまう。体調不良の一言で参加できないと言われればそれまで、ゴリ押しで認めさせるしかない。

 

『蔡京殿、園遊会で』

 

『皇帝祭祀です』

 

『ですが、後宮で』

 

『新しい皇帝祭祀です』

 

『神聖な』

 

『誰が何と言おうと皇帝祭祀なんです』

 

 酒も舞子も大丈夫な園遊会のような皇帝祭祀なんです。この言伝を聞いた本元から納得できないと伝えられる…想定内だ。逆の立場だったら絶対納得しないだろう。だが、納得してもらう。

 

 拒否した者達には文面にて、改めて皇帝祭祀の参加の要請を送る。言伝ではなく文として伝える事で言い逃れさせない。運び人が事故に合うのも想定して皇帝の軍人達を同行させる。ここまでやって届いていないなどホザク輩には全財産没収、家名も含む処置を行う。そうすれば、党内の発言力も無くなり最高だが流石に来るだろう。

 

 こういった強引な処置を行えば間違いなく自分に対し邪の思いを向けるだろう。だから嫌だったのだが…もう後戻りできない状態なのだ、人員が集まらなかった場合、自分の首がマズい。皇帝から実質的な政権を任されている現状で失敗なんてしたら、言い逃れどころか逃げ道が無い。

 

 あの皇帝が助力?無理だ、助かっても命だけで立場を失えば…待っているのはどちらにしても恨みつらみなどの破滅。鈴仙人殿が共に助力してくれても難しい、まだこの場合は希望があるだけマシと考えるべきなのか…

 

「…これが本来の仕事ですか」

 

 今までは自分達の為にと動いて来た人生…今行っているのも、その延長でしかないはずなのだ。

 

「この国の欲がそれだけ溜まっている…溜めていた私が言うべきではないか…」

 

 皇帝の手足となりて国を思い、国の為に動き、国の為に人生を捧げる。それが求められるのが官職、そして皇帝という天子の願いを聞きいれ自らの実力を示し者達が宦官…理想と現実は違っているが、理想通りの動きをしても現実は甘くならないのだから酷い物だ。

 

「次は…」

 

 蔡京は皇帝に今回のような事が今後ないように、何かやるなら相談を最初にしてくれとお願いした。直接会える時間も限られる為、基本は他者の手を借りて文によるやり取りだ。勿論、第三者はこちらの手の者で安全はほぼ確実だ。裏切り予防として家族とお話もしているのだ、人心も納得させた上で動いている。

 

趙瑚儿(ちょうこじ)(顕粛皇后の五女)が私に懐かないんだが、何かいいあ』

 

 …ビリ…

 

「ふぅ…次、どうしました?次です」

 

 文を持ってきた者が動揺していたが、最近の蔡京は怖いもの知らずな心構えになって来ていた。

 

「ほう…鈴仙人殿は経理を掌握し始めたと、良い報告です。では、更なる権限を持って頂きましょう」

 

 さりげない気遣いが、鈴仙人を襲うのはそう遠くない事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 見て頂きありがとうございます。そして申し訳ありません。前回の話でいくつか補足説明不足だったのに気づいて、書き足した回となりました。

 今更ですがここで蔡京と徽宗皇帝の仲について少し説明します。

 この作品内ではギャグ風にして互いに仲良くしてますが、史実でも芸術的趣味が合って、個人間では仲が良かった二人です。蔡京が権力を掌握した事に怒って、何度か地方に飛ばしたりしましたが、個人的に話し合ったりして仲直りを繰り返していました。最終的には蔡京一人勝ちですけど。

 私の作品では水滸伝の蔡京と徽宗皇帝より、どちらかと言うと史実よりの二人として考え書いていきますのでよろしくお願いします。それでも仲が良すぎる気がしますがね。

 

 
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