少女たちが戦う世界で戦闘機に愛を叫べるか?   作:生カス

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いつも投稿不定期で申し訳ありません……


空中空母ツアー

「……なんだかすげえコトになってんな」

 

 カーゴの中から這い出てきたシズクとホムンクルスに言葉を失っていた最中、後ろから23番の声が聞こえた。

 振り向くと、彼が髭を生やしたいかにもベテランの軍人といった容貌の男と共にーー唖然とした顔をしながらーー歩いてきている。

 隣にいるあの男が、どうやらアローヘッドらしい。

 

「うッ……あ、アナタ、23番……生きてたの……!?」

「よう、シズクちゃん。なかなか目の保養になる寝っ転がり方してるじゃないか」

「……他人のそら似じゃなさそうね」

 

 23番の返答に、シズクは呆れたようにそう言った。

 当たり前かもしれないが、研究所にいた時に幾度となく見た光景だ。

 柄にもなく、懐かしいと思ってしまった。

 

「シズク……お前が言っていた、あの桂木シズク博士か?」

 

 と、アローヘッドは隣にいた23番に聞いた。

 

「あぁ、そうだ。美人だろ?」

「ふむ……確かに写真で見た顔と一致してるが……なぜ彼女が、ホムンクルスを抱き抱えてここにいるんだ?」

「なぜってそりゃあ……なんでだ?」

 

 首を傾げながら、23番はこちらに振り向く。

 そうは言われても、こっちも突然のことで状況が把握できてないのだ。

 答えようがない。

 

「そ、そうだよお姉ちゃん! 何がどうなってそんなコトになってるの!?」

 

 と、レイはまだ動揺しているようで、あたふたと手を振りながらシズクに聞いた。というより吠えた。

 

「……こちらも同じ意見です。現状を把握するため、経緯の説明をお願いします、桂木博士」

 

 慌てふためくレイとは対照的に、天神は努めて淡々と、シズクに聞いた。

 それのおかげか、場の空気がある程度静まる。

 

「ふぅ……そうねえ、どこから説明したらいいか……」

 

 ようやく息が整い始めたらしいシズクが、咳払いをして口を開いた。

 

 彼女の説明を要約すると、こういうことらしい。

 曰く、ライカをマーティネスへ譲渡することが決まってから、着々と準備をしていたと。

 俺がライカを奪取して脱出することに賭けて、水面下でカーゴを仕入れ、自分が乗れるよう調整を施し、バレないようにライカにカーゴの取り付けを行った。

 そして、ライカが譲渡される当日に、ホムンクルスと一緒にカーゴの中に閉じこもってじっと待っていたというわけだ。

 

「そんな危険な……ニッパーさんがライカちゃんを強奪しようとしなかったら、どうするつもりだったのさ? ニッパーさんなら絶対やるだろうけど」

「アハハ……ガムシャラだったし、そういう時のことは考えてなかったわ。それにニッパーなら絶対やるでしょうし」

「絶対やるわね」

「絶対やるね」

「やらなかったら病気を疑うレベルだ」

「むしろやらない方があり得ない」

 

 レイとシズクの言葉に同調するように、天神と落花、駆藤と大羽が俺を白い目で見ながらそう言った。

 なぜこんな呆れたような顔をされてるのか全くわからないが、とにかくシズクは俺の行動に賭けて、そして賭けに勝ったということらしい。大したものだ。

 

「まあ、博士がいるのはそれで良いが……そのホムンクルスは、なぜ持ってきた?」

 

 と、アローヘッド。

 彼の問いは、しかしなんとなく、その答えに予測はついていた。恐らくーー

 

「あ、えーっと……」

「アローヘッドと呼んでいただきたい。博士」

「ど、どうも……ホムンクルスを連れてきた理由としては、この子が一度、ライカと直接接続されたからです。この子の中には接続時に取得されたライカの情報がある。そんなものをあそこに残すのは、リスクがあったんです」

 

 シズクが答えた理由は、概ね俺の予測通りだった。

 彼女の言った通り、あのホムンクルスはライカと接続したことがある。

 それはつまり、接続した情報を元に、ライカを追跡できるということだ。

 

 あの場所にホムンクルスを置いていくということは、ライカの探知機を敵にプレゼントすることとほぼ同義となる。

 それを見越して、シズクは持ってきてくれたのだ。

 

「それはわかったが……そのホムンクルスは例の、人語を話すランバーとも接続したはずだ。そいつがそのホムンクルスを使って、追跡してくる可能性はないのか?」

「そこはもちろん、カウンター用のプログラムを入れてますよ。向こうが接続しようとしてきたら、逆にこちらが情報を引っこ抜いてやれます」

 

 アローヘッドの指摘に、シズクは得意げに答えた。

 伊達に開発者ではないようで、そこもしっかり想定済みらしい。

 

 ーーいや、ちょっと待て。

 あの男、今なんて言った。

 

「……アローヘッド、なぜアナタがそのことを?」

 

 俺と同じ疑問を感じたらしい。

 天神が、目を鋭くしてアローヘッドの方に目を向けた。

 

「あのホムンクルスがランバーに乗っ取られた話は、世間一般では公表されてないはずです。どこでその情報を?」

「……ふむ、本当に芹沢殿から何も聞いてないのだな」

 

 天神に対してのアローヘッドの答えは、思っていた内容とは違っていた。

 

「え……理事長?」

 

 それは天神も同じだったのだろう。少し間の抜けた声が、彼女の口から出た。

 

「一体どういうーー」

「まあまあ、いつまでもここで立ち話しててもしょうがないだろう?」

 

 天神の困惑した言葉を遮って、23番が身を翻して、続ける。

 

「皆様どーぞこちらへ。いろいろ聞きたいこともあるでしょうし、我らが指揮官様の下へご案内します」

 

 芝居がかった言い草で、23番は俺たちの前を歩き出した。

 これは……まあーー

 

「ついていくしかなさそうね……」

 

 天神も同じことを考えていたようで、溜息を吐いたあと、歩き始めた。

 俺たちは誰が何を言うでもなく、ただ続いて歩き始めた。

 

「ち、ちょっと待って待って! 誰か耐圧スーツ脱がせるの手伝ってよ!」

 

 ただ、動けないシズクのスーツを脱がせ、ホムンクルスを背負うため、来た道をすぐに戻ることになった。

 

 

 

 

「しっかし、すごいねぇ、ここ……」

 

 指揮官と呼ばれる人物に会いにいくため、23番に先導されている途中。

 落花は周りの景色を見て、そんなふうに感嘆していた。

 他のウルフ隊の面々も同じようで、皆一様に、物珍しそうにあたりを見回していた。

 

 確かにこの場所は、常識外れと形容して差し支えないだろう。

 エレベーターリフトに乗っている最中だが、そこから見えるさまざまな建造物の数は、もはや数えられるものじゃない。

 UAVの製造や、各設備のメンテナンスをしているであろう機械が、所狭しと動いている。

 

 人の姿もちらほらと見えるが、規模の大きさにはまるで見合っていない。

 この場所は、ほとんどを機械で補っているのだ。

 

「ストームルーラーは、ここの指揮官が提唱した、可能な限り自動化を目指した空中要塞なんだ」

 

 まるで社会科見学の子どもに答えるみたいに、アローヘッドは口を開いて、続ける。

 

「とはいえ、万一のことを考え、要の部分は人間の手で行うようにしている。あくまで主導権は人間にあり、判断に機械を一切介入させない。これも指揮官の理念によるものだ」

「「はぇー」」

 

 アローヘッドがそう言うと、レイと駆藤が返事をした。

 ただ、あまり言っている意味はわかってなさそうに見える。

 

「人工知能が主流のこの時代に、古風な人ね。だからアナタたちアーケード隊も、そんなTACネームなのかしら?」

 

 するとシズクが、そんなことを23番に聞いた。

 どういう意味だろうか?

 

「ちなみに、俺たち以外にもいるぜ?」

「へえ、名前は『ソルバルウ』かしら? それとも『イカルガ』?」

「すげえな、どっちも当たりだ」

「ふふん」

 

 23番の賞賛に、シズクはどこか得意げだ。

 なぜわかったんだろうか?

 

「なんの話?」

「さっぱりわからん」

 

 天神の問いに、俺はそう答えるしかなかった。

 と、そうこうしているうちに、わずかな慣性を感じた。

 エレベーターリフトが止まったのだ。

 

「着いたな、こっちだ」

 

 23番が降りたのを見て、俺たちもそれに続く。

 リフトから降りて少し歩いたら、奥の方に無機質な自動扉が見えた。

 23番がそこの前に立ってボタンを押すと、ブザーが鳴った。

 

「ビックバイパーです。お客さんをお連れしましたよ、指揮官どの!」

 

 23番が言うと、扉がスライドして、開いた。

 前にいる順に、それぞれ中へと入っていく。

 俺も続いて、背負っているホムンクルスの頭をぶつけないように、少し屈んで部屋へと入った。

 

 部屋の中は、一人用の、ごく普遍的な事務室だった。

 だからだろうか。部屋奥に見える、空母の外の景色であろう、青黒い空が一等目についた。

 ガラスのはずはないだろう。おそらく、外部カメラからの映像を映し出しているのだろうか。

 

 そんな中、書類に埋もれて、机に突っ伏している男がいた。

 男は書類をバサバサと落としながら、のそりと起き上がり、コチラを見た。

 指揮官のイメージとは似つかない。メガネを掛けた、髪がボサボサの、どこかぼんやりとしてイメージの男であった。

 

「……来客時くらい身嗜みは整えろと言っただろう。指揮官」

「ん……あぁ、すまないね、アローヘッド。さて、じゃあ君たちが……」

 

 そう言いながら、男は俺たちを見る。

 何か、見透かされてるような、品定めしているような、そんな目だ。

 

「あの、アナタは……?」

「失敬、まだ名乗っていなかったね」

 

 天神の言葉に、男はのんびりと答え、続けた。

 

「私はロッソ。ギルバート・ロッソ。芹沢の友人だ」

 

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