君のための幻想郷   作:倭人

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第一章 神祇官 (4)

 

「お、見えてきたぞ。あれが里だ」

 

 途中、川魚を獲るというアクシデントはあったものの、二人はなんとか昼過ぎに里へ辿り着いた。

 里内には畑を囲う簡易的な柵はあるものの、陸奥、出羽、越後などに設けた城柵*1のようなものはない。そのため、門番の役割を果たす柵戸(きのへ)もおらず、かなり開放的な里がこの時代では主流であった。

 人里に足を踏み入れてみると、茅を()いて作られた二十数軒もの屋根が立ち並び、いかにも集落然とした場所が二人を迎える。民家はすべからく竪穴式住居であり、どれもこれも茅葺き屋根ばかりが目に付いた。宮殿・官衙・都城建築では掘立柱建物が採用されているが、まだまだ農民の家などこのようなものである。近畿の一部では、竪穴式住居は古臭いとされてはいるが、残念ながらこの人里は都から遠い。まだまだ住居に関する技術は発展していないのだ。

 特に感心することも驚くこともなく、八雲と慧音は里の中央に伸びる道を歩く。

 目線を逸らしてみれば、住居とは別に荒れ果てた口分田が目に入った。農具は地面に打ち捨てられ、手入れされているとは思えない有様だ。

 さらに一番惨いと思えたのは、家畜の状態である。

 農耕馬は地に臥し、死後何日が経ったかも分からないほど腐敗していた。崩れた肉体の一部からは、蝿が集っているのも見える。

 衛生管理という認識がまだ甘かった時代であったとしても、ここまでの腐敗は体に害だと直感的に感じるはずだ。なのに火葬するわけでも埋葬するわけでもなく、青空の下で放置されている。異臭が鼻腔を通り、吐き気すらも覚えさせる事態に、八雲は愚痴らずにいられなかった。

 

「酷いな……思ったよりも深刻そうだ」

「だから言っただろ。切羽詰まっていると」

「たしかに、あんたの言葉の通りさね」

 

 ざっと見渡せば、農作業に励む者は片手の指で数えるほどしかいない。これでは納税の危機である。税の徴収役を郡司や国司が派遣すれば、この里は壊滅すると断言できる。それほどまでに危ぶまれる状況だ。針の上に木片を置き、奇跡的に平衡を保っているようなものだ。

 

「いつからだい、こんなに廃れたのは?」

「ここ最近だ。皆、外に出るのを酷く恐れている。喧噪などとは程遠い里だろ」

 

 その物怖じしない返答に、八雲はこの状態が一か月ほどは続いていることを察する。

 道中、規則性もなく掘り返された地面の跡を見て、八雲の笑顔がかき消された。

 

「里として真面に機能していないと言うことか」

「ああ、誰も彼もが人の営みを拒否している。中には、死を待ち望む者もいるそうだ」

 

 冷徹とも取れる声色で慧音が述べた。

 慧音の表情から察するに、感覚が麻痺してしまっているのだろう。ちょっとやそっとのことでは、人里の惨状に心が動かなくなってしまっている。もし今ここで、村人全員が自決するようなことでもない限り、動こうとしないほどに。

 慧音は真っ直ぐと歩いていた道を指差した。

 

「ここを真っ直ぐ行けば一番大きな住居が見えてくる。それが里長の住む所だ」

「おうさね。ありがたい」

「気にするな。道案内はここまで、私は自分の住処に戻らせてもらうよ」

「あっ、おい、他にも聞きたい事が……やれやれ。もう行ってしまいやがった」

 

 止めたのにも関わらず、隣に侍っていた慧音はそのまま人里の奥へと身を隠してしまった。八雲は少しの間呆然と立ち尽くす。もともと無理矢理頼み事を押し付けていたに過ぎない間柄だ。慧音に八雲を補佐しなければいけない義務など微塵たりとも無かった。

 

「仕方ない。兎に角、聞き取りをしなきゃ始まらないな。里長のところにいくとしよう」

 

 気を取り直し、八雲は慧音に教えられた通りに道を進む。

 できれば寛大な心を持っている里長だと話が滞りなく進められるのだが、こればかりは祈るしかない。

 

 

 

  

■ ■

 

 

  

 

 慧音が言ったとおり、ちょっと歩けば人一倍大きな竪穴式住居が見えた。近くには物資を溜め込んでおくようの堀立式の貯蔵庫もある。

 まず間違いなく里長の家だろう。

 入口と思わしき戸を発見し、八雲は躊躇うことなく叩く。どんどん、がたがた。立て付けが甘いのか、八雲が叩くのに合わせて門戸と地面の隙間で音がなる。

 

「申し、ここが里長の住居かい?」

 

 いくら他人の家とはいえ、都からやってきた役人である八雲が礼儀を示す必要はない。さっさと戸を開けて我が物顔で入っても、誰も文句が言えぬだろう。

 けれど、八雲はそれをしない。しばらく待っても返事がないのを確認し、八雲は致し方なしにと「申し。朝廷からの使いで来た者だが」と言った。間を置かず、戸の向こう側から控え目な物音が聞こえてくる。八雲はそれら全てを聞き逃すことなく、中に何人いるのかを把握した。

 木の門戸が小さく開かれる。両手ほどの大きさをした隙間から顔を覗かせたのは、八雲よりも背丈の低い壮年の男だった。目尻はおっとりと垂れており、いかにも気が弱そうなのが見て取れる。暗がりからこちらを見ているのも相乗して、不気味な雰囲気を醸していた。

 ぎょろりと八雲にふたつの眼球が向けられる。上から下まで観察し終えれば、ようやく顔を出した本人が口を開いた。 

 

「……あなたは?」

「どうも、俺は神祇官の八雲と言う。氏は忌部で、姓は宿禰と申す。あんたらの力になれないかと遠路遥々やってきた者だ」

 

 八雲は朱色の大袖に腕を忍ばせて言う。

 服装からして、そこらに住んでいる郡司など話にならないほど高い身分なのは明白だった。唯一気になるところがあるとすれば、袖や裾の部分がずたずたに破れているところだろうか。緋袴には些か泥が付着して汚れている。見方を変えれば、役人を追い剥ぎした山賊にも思えた。

 だからなのか、壮年の男は疑わしい者を見るような目で聞き返す。

 

「忌部氏ですか。聞いたことのない氏ですが……」

「まあ、あまり名の知れた一族では無いので、そこは気にしなくていいさ。それよりも、お話を色々と伺いたいのだが」

 

 敵意はないことを示すため、八雲は慧音と獲った川魚を渡した。魚の口から顎にかけては樹皮で編まれた紐が貫通している。量は大したことないものの、今のこの里では豪勢な菜(おかず)であることに間違いない。壮年の男も八雲の気遣いに痛み入りながら受け取った。

 

「ですが、お話とは……見ての通り、この里にはお納めできる物は何一つ無い状況でして」

「気にせんでいい。俺は役人だが税の取り立てにきた者じゃない。話ってのは、あんたたちが奉ってるであろう神さんについてだ」

「っ、もしや地主様(とこぬしさま)のことですか!?」

 

 一転、おどおどしていた男の目に光が宿る。八雲はそれを見逃さなかった。

 

「その地主様について何か力になれると思ってね」

「で、ですが、こればかりはお役人様にも解決できるものではございません……!」

「ほう。それは珍妙な事を物申す。話だけでもいい。聞かしてはくれぬか?」

「で、ですが……これは我々の問題」

 

 あともう一押しといったところだろうか。

 なぜこれほどまでに男が渋っているのかは知らないが、八雲には八雲の事情というものがある。ここで押し問答を続ける気はさらさらなかった。

 

「国人の問題は我々の問題でもある。ともに悩み、ともに解決することこそが帝の望む世界さ」

「陛下の……?」

「重税により苦しめられるあんた達からすれば、少し受け入れ難いかもしれんがね」

 

 はてさて、八雲の言っていることは本当なのであろうか。

 今ここでそれを論ずる暇もなければ、説明する義理もない。実際に朝廷側が重い税を課せ、民草を苦しめているのは事実だ。

 ただ八雲がそう願っているのも、また純然たる事実である。時に助け合い、時に迷う。人という種族の脆弱さを知っているからこその言の葉であった。

 壮年の男は八雲から何かを感じ取ったのか、半開きだった戸を、今度は全開にする。闇に紛れていた体は日に照らされ、男の見窄らしい姿が八雲の瞳に映り込んだ。 

 

「わ、わかりました。それではお入りください。何分質素な里長なため狭いですが」

「野宿をしてきた俺にとっちゃ十分な豪邸だとも」

 

 快活な笑みを漏らす八雲。暗澹な空気に囚われたこの人里では、眩しすぎるほどよく映える。白衣の大袖を風で靡かせながら、赤い袴を前へ後ろへと動かす姿、人里で息を潜めていた者は皆目を奪われたそうだ。

 

 

 

 

 

■ ■

 

 

 

 

 

 

 地の主と書いて、地主神(とこぬしのかみ)

 その起源を語るとすれば、この国に仏教が伝わるより前の時代に遡る。

 日本の神道などでは、森羅万象に神が発現するとされており、八百万の神と呼ばれるほどの神観念が誕生した。森羅万象に例外はなく、日、水、草、石など自然現象を指す言葉でもあれば、学問、商売、縁結びなど抽象的事柄を指す言葉でもある。もちろん、この中には人が住む土地も含まれていた。

 有名な地主神を紹介するとすれば、大国主命だろうか。彼は葦原の中つ国(あしはらのなかつくに)大地主神(おおとこぬしのかみ)とされている。

 面白いことに、この地主神というのは決して一柱を意味するものではない。各土地ごとにそこを守護する地主神がいると信じられ、どんな土地にも神が存在する。地主神は神社や寺院に祀られることが多く、その神社、寺院が建っている地域の地主神となるのだ。その中でも、より多くの信仰を集める地主神は、頭一つ抜いて大きな力を宿し、多方面での顔を持っていた。

 決して広くない村や里であっても、地主神を奉ることは珍しいことではない。仏教が伝来したのは、まだ数十年だけ昔、厩戸皇子(うまやどのおうじ)が布教したのがきっかけだ。仏教がまだまだ国人に浸透していない時代だからこそ、人々は心の安寧を求め、何かに縋るべく偶像の神を作り上げた。

 信仰を捧げられた神霊というものは、知らず知らずのうちに力を蓄え、肥大化していくものである。人の願いの集合体とでも言えばいいだろうか。真摯に捧げられた徳が積み重なり、最後には八百万の神として名を連ねるまでに至る。神霊として完成すれば、人や妖怪などとは隔絶した存在となる、らしいのだ。

 そして。

 八雲が都から伝聞で知らされた神というのが、この人里によって祀られた地主様ということになる。

 

「まずは先ほどの無礼、お許しください」

 

 壮年の男——里長は、なるだけ心の乱れを感じさせない平静な声を装い頭を下げた。

 

「なにぶん、来客には不慣れな身故、ご容赦いただければと」 

「いや、気にするな。あんたたちの気持ちは分かっているつもりだ」

 

 と、八雲は足を組み直しつつ答える。

 里長の家には、壁に一つの竈が設置されている以外に目ぼしい特徴はない。都の人間が見れば「なんと見窄らしい場所か」と蔑むのだろう。

 しかし、八雲に特段気にした様子はなかった。見慣れているというのもあるが、八雲はこういった質素な家屋が好きだったりする。都にある瓦屋根で装飾された伽藍の方が、落ち着かないとすら思うくらいだ。

 もちろん、都には都なりに雅だと感じる部分もあるが。

 

「ここにいるのはあんたの妻子たちか?」

 

 気になったわけでもなく、自然と目についたがために八雲はそう問いかけた。

 里長はピクリと肩を跳ねさせると、

 

「え、ええ。妻と子供が三人でございます」

 

 と、紹介する。

 男の家に子供と妻がいるのは珍しいことだ。八雲はじっくりと痩せこけた妻子を眺める。

 

「ふむ。ひどく痩せこけている。里長たちがこれであれば、このところ不作だったのか?」

「はあ、まあ……その通りでございます。今年は天災が続いたのと、水の質も悪かったせいでしょうか、作物がさほど取れなかったのです。加えて、畑に植えてあった桑まで全滅してしまっては……」

「蚕も育たず、か。それは苦労したな」

 

 目も当てられない現実というのは決して少なくない。貧窮に苦しむ民など八雲が知らないだけで何千といる。不作など自然が気まぐれで起こしてしまう時だってあるし、農民の手腕が悪かった時にだって起こり得るありふれた災厄だ。たった今それを目撃しただけで同情するなどお門違いも甚だしいが、八雲は情けの籠った声を発するほかなかった。何を分かった気になって、と石をぶつけられる覚悟でもある。逆上されたとしても可笑しくない。八雲の放った言葉は何の慰めにもならない上から目線の悪態と等しいものだ。

 しかし、そもそも今の里の人間には八雲の態度など、最初からどうでも良いのだろう。気にしているのは、八雲がこの場所に訪れた目的、それだけのはずである。税の取り立てが目的ではなく、地主様関連の、しかも都からわざわざやって来た役人の用事ともなれば気が気でないのだ。

 

「いえとんでもございません。陛下や役人様の仕事に比べれば」

「無理はしなくていい。俺はあんたらが不平不満をここで吐いたとしても、どこにも密告したりせんよ」

「は、はあ……」

「まあ、なんだ。その、すまん。俺が言ってもただの皮肉でしかないな」

 

 八雲は力なく笑うことしかできなかった。

 

「そ、そんなことはございません! ただ、神祇官様はどこか私どもの知る郡司様とは違いましたので」

「はは、そいつは宮内(くない)でも散々言われたことだ。どうも俺は役人の気質じゃあないらしい」

 

 脳裏によぎるのは、同じ役職の人間たちの顔であった。一部の人間を除けば、都に勤めている役人など、弱者を糧とし己の私腹を肥やす有象無象ばかり。私利私欲に塗れた人間という点では八雲も負けていないが、それでも進んで弱者を虐げている者は理解できなかった。

 

「それにしても、神祇官様はなんのお役人様なのですか?」

「ああ、言っていなかったか。俺の役職は神祇官にある。細かい説明は省くが、つまり神事を司る役人だと思ってくれればいい」

「神事……ですか」

「ま、ここらではあまり聞きなれない役職かもしれんが、歴としたお役所仕事だよ。あんたたちが困っていること、力になれるはずだ」

 

 そう話を纏めれば、里長と八雲をじっと見つめていた子供が立ち上がった。

 見れば、年は慧音よりも幼いように見える男児だ。

 

「お兄ちゃんは、僕たちを助けてくれるの?」

「こら! 石麻呂!」

 

 無礼者め、と父である里長がきつく叱りつける。絶対的な上下関係など、この歳の幼児にはまだ理解できぬことだろう。父親がなぜ媚び諂っているのかも、八雲がなぜ偉そうにしていられるのかも、男児には理解できない。

 けれど、たった一つ。男児にとって聞き捨てならないことがあった。

 

 ――あんたたちが困っていること、力になれるはずだ。

 

 それは生まれ落ちて、男児が一度も聞いた覚えもない単語のはずなのに、不思議と希望を抱かせる効力が秘められている魔性の言葉。故に問うてしまった。

 

「だって、お父……お兄ちゃんが、僕たちの力、になるって」

「情けない! そのような不遜な態度があるか! このお方は都からやって来てくださった――」

「構わんさ」

 

 と、八雲が里長を静止させる。物事の分別がまだあやふやな子供を、頭ごなしに叱るのは可哀想だし、そもそも八雲は農民に敬意を払われなくても気にしない男である。些か無礼な立ち振る舞いをされても、笑って流せる気前は持ち合わせていた。

 

「申し。里長の息子よ。お前は今が嫌かい?」

「分かんない、お腹が空くことには慣れたから……でも、お母もお父もいつも泣いているんだ……ごめんねっていつも僕たちに謝るんだ」

「それは苦しいかね?」

「うん、苦しい……胸のあたりがすごく締め付けられるみたいで、苦しいよ……」

「そうか、ならば何とかしないとならんな。石麻呂、できる限りの事をすると俺が約束しよう」

「本当?」

「ああ、本当さ」

 

 八雲が透き通るような声で約束をすれば、鈴麻呂を自身の元へと手招きする。とてとてと警戒心を抱かず近寄ってきた男児に一つ笑顔の花を咲かしてやれば、優しい手つきで頭を撫でてやった。くすぐったかったのか、それとも気持ちが良かったのか、男児ははにかむと、八雲の手から離れて母親の座る膝下へと帰っていった。

 ここで、ようやく話の準備は整う。

 

「さて、本題だ里長殿。この里で起こったことをできる限り詳らかに話してくれ」

「へぇ? は、はい!」

 

 信じられない光景を見ていた里長は、急遽現実に戻され、勢いそのまま気の抜けた返事をする。恥ずかしかったのか、今一度咳払いをしてから説明を始め出した。

 

「んん、ごほん! あれは昨年のことでございます。その年は例年に比べかなりの不作となってしまい、里の者達は文字通り生きるか死ぬかの瀬戸際をきわめていました。土や石を食い、空腹を紛らわす里人すらいたくらい、酷い飢饉だったのございます。そんなある日のことです。一人の若者がその状況に耐えきれず、地主様へ仇をなすようになりました」

「仇をなす、か」

 

 嫌な予感を覚えつつも八雲は相槌を打つ。

 

「貧賤驕人と言ってしまえばそれまでですが、一人の若者から始まったその思想は、いつの間にか里全体へと広がってしまったのです。この背信行為が決定的となったのは、記憶の限りでは、一月ばかり前のことです。不作のせいでろくな備蓄もなく、農閑期を迎えてしまった私たちは不満の頂点に達してしまいました」

「で、具体的には何を?」

「……祠を壊しました」

「他には?」

「馬の皮を剥ぎ、それを献上したのでございます」

 

 二人、目がかち合う。

 八雲は驚きのあまり見開いた目で、里長は罪悪感に苛まれ、負の感情を隠そうともしない瞳孔の開いた目で。

 

「生剥――天つ罪か! その知識は伊勢でしか出回ってないはずなんだがな。どこで手に入れたかは知らんが、よくもまあそんな事をしたもんだ。いと尊き者への冒涜は天罰が降ろうと文句の一つも言えんだろうさ」

 

 呆れた調子に聞こえたかもしれないが、それよりも、八雲は内心冷や汗をかいている自分を押し黙らせるのに必死だった。

 事は思ったよりも危険かもしれない。今まで多くの指令を受けてきた八雲であるが、このような事案は初めてのことだ。信仰の源泉であるはず民自らが、神を穢そうとした。思ったよりも事態は深刻であり、蝕まれていた。

 

「おっしゃる通り、地主様は大変お怒りになられ、私共を滅ぼさんとしているのでございます。少し前も数人ばかりの里人が襲われました。今は落ち着いておりますが、またいつ天災がくるか分からぬ状況で……全ては里長である私の責任。不作への怒りを天へと向けてしまった、私どもの弱さが原因なのでございます」

 

 里長はそうやって締め括ると、許しを乞うように平伏した。合わせるように、一緒に話を聞いていた妻子たちまでもが、額を地に付ける。彼ら彼女らは、一体誰に向かって頭を下げているのか。目の前に八雲が座っているものの、心の向かっている先は、きっとこの土地を守護してくれていた一柱の神に違いない。

*1
東日本に地方支配の拠点として設けられた軍事・行政施設のこと。 7世紀から9世紀にかけて、段階的に北進して設置された。 『日本書記』に初見される城柵は、大化3年に越後に設置された渟足柵。




今日はちょっと長め

みなさんのおかけでルーキー日間に載っていたそうです。
感謝です。
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