幻影旅団はヒーロー(夢)を見ない。   作:規律式足

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 今話で緑谷出久君へのアンチが多くあります。
 というかヒーローを目指す子供達に対して。
 閲覧注意です、いやマジでスルーしても良いレベルなんで。



第十話 最終種目まで。

 

 ヒーロー科一年A組、轟焦凍に語られた、彼の過去、彼の想い、彼の怒り、彼の目的。

 

 うん、なんというか。

 聞いた感想として正直言って、

 まるで理解できないなあ、理解というか実感というべきか。

 一緒に聞いている緑谷出久君はゾッとしていてそんな現実あるのかよって顔しているけど、人間が生きる環境としては最低ランクに等しい流星街で育ち、似たような地域を巡り外道下衆クズを人型にしたような存在を見てきた僕からしたらだから何?という話しだ。

 でもそれを踏まえても、そんなことを話されても困るとしか思わない。そもそも話されたのも体育祭で勝てなかった上、オールマイトみたいだったからというわけのわからない理由だった。

 あんなヒーローみたいと思われるの嫌だな。

 数少ない本物のヒーロー、尊敬できる偉人。

 でも、

 彼は流星街に一度として訪れたことのない、僕達を未来永劫救うことのない存在でもある。

 

「お前らの上に行く」

 

 轟君はそう言った。

 無理だと僕は思う。

 彼の個性と念能力は相性が悪い。

 攻撃範囲は広いけど纏を抜ける威力が無いのでその時点で彼に勝ち目はない。

 この体育祭での順位だけなら彼が僕の上にたつことは不可能だろう。

 だから言っておく僕の本音を。

 僕と彼の戦いにお互いの信念は一切関係ないことを。

 

「君の思いが僕には実感できない。親なんて存在が居たことないから、親の想いとか親から与えられたモノとかまるでわからない」

 

 姉さんなら知っていたかもしれないけど僕に実の両親の記憶などない。乳母衆もほとんど関わりがなかったから親と思ったことなんてない(そもそも彼女らは仕事以上の情をもたない存在だった)。

 

「だから親の否定になんの意味があるのかと思う。他人と割り切れば良いのではと思う」

 

 親なんかになぜそこまでこだわるのか?

 この国なら被害を訴えれば法的な対処も可能だと思うけど。

 そういえば僕ら幻影旅団の標的の一人である、NGLの真のボスもそうだった。ヤツの悪意の根底は父親にあった、親という存在は子供にとってどれだけ大きいのやら。

 

「でもさ、一つ気になることがある」

 

 僕の境遇を聞いて息を呑む二人。

 人の境遇を聞いた程度で怯むとかこの先ヒーローをやれるのだろうか?ろくでもない環境で生まれ育ったヴィランなんてザラなんだけど。

 

「何がだ?」

 

「君はなんで笑っていないの?やりたいことをやっているんだろう?」

 

 憤っているようなあるいは悲しそうな表情を浮かべながら轟焦凍は個性を振るう。

 僕にはその理由がわからない。

 

「嫌いなヤツに見せつけているなら、嘲笑いながら個性を振るうものだろうに」

 

 実際にそんなヴィランと遭遇したことがある。イギリスのとある名門ヒーロー一家出身の鉄仮面の男は親の英才教育に耐えきれず家を飛び出し、飲んだくれながら好き放題に暴れ回っていた。喧嘩を売ってきたから返り討ちにして殺すほどに嫌悪感がわかなかったから見逃したけど今どうしてんだろ?

 

「それは」

 

「そうできないなら、そうできない理由があるんじゃない?」

 

 それこそが彼の本当の気持ちかもしれない。

 本人が目を逸らしている自分の根っこ。

 目を逸らしているから辛くて表情が曇っている。

 僕にはそう見えた。

 

「見透かしたことを言うんだな」

 

「君を気遣う理由がないから言いたい放題してるだけだよ」

 

 クラスメイトであるB組相手なら傷つけないように言葉を選ぶし、追い詰めるようなことは言わない。

 けど彼にはそんなことをする必要がない。

 殺す対象ではない他人だ。

 

「右だけで僕に勝つ、やれるならやればいい」

 

 練度的にも劣るだろう左をいきなり使い出したところで戦いが有利になるとは思わないけど。

 それに僕だって、個性を使用していない。

 轟君と爆豪勝己君なんてシズクのデメちゃんを使用したら敵にすらならないのだから。

 僕の話は終わった。

 

 すると今度は緑谷出久君が口を開いた。

 彼は自らの歩みを思い出すように語り、

 

「僕も君に勝つ!」

 

 緑谷出久君による轟君への宣言した。オールマイトのようになりたいという、彼の理由。

 この国の子供らしい、僕の一番大嫌いなヒーローを目指す理由。

 誰かを助けたいからヒーローになるのではない、誰かのためにヒーローになるのでない、助ける存在を認識しないで、助ける存在の姿を見てないで、助ける行為の格好良さしか見ていない、誰かのようになりたいという憧れからはじまった理由。

 

(合わないなコイツ)

 

 生涯分かり合うことのできない存在、僕は緑谷出久をそう認識した。

 流星街で故郷で姉さんみたいな犠牲者を出さない様にする為に自分の残りの人生を悪党として生きる覚悟を決めた幻影旅団の僕は。

 コイツの考えが心の底から気に入らない。

 笑って人を救ける最高のヒーロー、それは素晴らしい存在だろう。だがコイツラには救ける対象が無限に湧き出るものだと認識しているのか?その大元を無くす為に何が必要か考えたことはないのか?

 今までヒーローを見てきて思ったこと、コイツラは事件を解決し、ヴィランを倒し、人を救う。

 だがその根底にある要因を無くそうとしない。解決に動いたヒーローなんていない。

 だからいつまでもヒーローは存在し、ヒーローの飯の種である悲劇は無くならない。

 

(だからといってどうこうする気はないけどさ)

 

 友人でもクラスメイトでもない。

 今後の学生生活でそう関わることのないだろうコイツに悪感情抱いても手出しはしない。

 そこまで関わりたくもないと僕は思った。

 相手とぶつかり合うのは相手が変わると期待できるからだ。そんな期待を目の前の存在に抱けない。

 だからリンク・アクセスは緑谷出久を見切った。

 

 この時にリンク・アクセスの抱いた感情。

 これが数ヶ月後に緑谷出久にとって、オールマイトにとって、ヒーロー業界にとって、最悪の事態を招くことになる。

 その待ち受ける絶望の未来をこの時の緑谷出久はまだ知らない。

 轟焦凍はリンク・アクセスに声をかけるべきではなかったのだ。

 

 

 

(不快な時間だった)  

 

 やはり僕のような生まれの人間はこんな場所にいるべきではないのだろうか。

 B組ではあまり感じないのだが、彼らの苦悩などの内面に触れると共感できないことから場違いのような感覚にとらわれるのだ。異物感と疎開感が一人ぼっちで居る時のような寂しさになる。

 

(会いたいな皆に)

 

 僕は無性に大切な仲間達の顔が見たくなった。

 

 

 昼休憩の終了。

 午後のレクリエーションは不参加でぼんやりと過ごすことにした。

 なぜかA組女子がチアガール衣装を着ていたけどノブナガに連れられたイベントのサンバ衣装に比べたら大したことはない。

 レクリエーション開始前に最終種目の説明を行う。総勢16名からなるトーナメント形式のガチバトル。ミッドナイト先生が用意したくじ引きで対戦相手を決める。

 一回戦は緑谷出久と凡戸君。

 噂に聞く自壊するほどの身体能力を凡戸君がどう捌くかが勝利を左右するね。

 僕は一回戦の最終組。

 相手はヒーロー科入試2位の爆豪勝己。

 彼もあまり好きな人じゃない。やりすぎないように注意したいけど精神状態的に厳しいかな。

 念能力は感情の揺らぎによって操作性と威力が変動してしまうのが難点だ。

 沈んだ気分のまま午後の時間を消化した。




 
 補足説明。
 この世界にNGLは存在します。現在のところ裏稼業は飲む麻薬製造ぐらいですが、幻影旅団は危険視し調査しました。裏ボスであるジェイクまで辿り着きましたが現在地は不明。悪意をバラ撒きたいという彼の欲求を悟り抹殺対象です。
 デメちゃんは炎、冷気、電気、爆破液の吸引が可能で、放出タイプ、創造タイプ個性の天敵だったりします。ただ念能力を纏われていると不可能なので基本的に念能力者の相手は苦手です。
 リンクにとってヒーローとは憧れる存在ではありません。むしろ公的なヒーローは個性を公の場で使用したい存在、許可されて暴力を振るう存在だと認識しています(外国のヒーローは警察と敵対するレベルでモラルがない存在も居る)。流星街を筆頭としたスラム街を悪の生まれる土壌扱いしながら、それらを無くそうとしない国家とヒーローを嫌悪しています。緑谷君のようにヒーローになりたがる子供は彼からしたら「事件が起こらないかなー」と願っているようにも見えるのです。

 幻影旅団ナンバー7
 フランクリン・ボルドー。
 リンクにとっては兄というかおじさんみたいな存在。ノブナガなどとは喧嘩したりするがリンクには保護者として接している。
 俺の両手は機関銃はヒロアカ世界であまり珍しくないタイプの個性だが、念能力にて超強化されていて威力は最高峰。シールドヒーロークラストのシールドも容易く貫通する。また堅がウボォーギンに次ぐ練度のためフランクリンの進軍を止められる者は滅多にいない。
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