幻影旅団はヒーロー(夢)を見ない。   作:規律式足

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 原作でロクに活躍のなかった彼の戦闘です。
 オリ技、古い作品の技ありです。
 やや緑谷出久君にアンチ表現あるので閲覧注意。



第十一話 緑谷VS凡戸

 

 オリエンテーションを楽しむ気にもならずぼんやりと過ごしているうちに迎えた最終種目。

 セメントスがコンクリートを操って舞台を作り上げる様子を見る。何度か見たあの個性はやはり便利そうだ、そのうち盗もうかと悩む。クロロの『盗賊の極意』は戦闘中でもなければ条件を満たすのは難しくない、生徒と教師とい関係なら尚更だ。ゆえに考えるのは盗む時期、雄英高校を辞める直後が望ましいだろう。

 僕の横でA組の娘達と同じチアガール衣装を何故か身に着けている小大さんを全力スルーしてそんな思考に耽っていた。

 

「(チアガールには興味なし、メモメモ)」

 

 

『色々やって来ましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!』

 

『頼れるのは己のみ!』

 

 いいやそんなことは無いよヒーロー。

 仲間は【幻影旅団】の皆は、いつだって頼りになるんだから。

 プレゼント・マイクの開始のマイクパフォーマンスに僕は自身の個性もあってそう思った。

 

『一回戦!!未だに個性は温存、何だその顔、ヒーロー科緑谷出久!!、対』

 

『セメダイン滴る良い巨漢!!ヒーロー科凡戸固次郎!!』

 

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか、行動不能にする、あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!』

 

 あの緑谷出久と凡戸君か。

 凡戸君なら勝てると思うけど、緑谷出久の噂の自爆強化がどれだけの出力があるかそれしだいだね。

 僕がどちらが勝つか予想している間に試合は開始した。

 

 

 

「先制グルースコール」

 

 限られた戦場で足場の制圧は有効。

 凡戸固次郎の撒き散らしたセメダインを回避しながら緑谷出久が選んだのは接近戦。

 最初から自爆デコピン砲を放つ気は彼には無い。雄英高校の日々がヒーロー基礎学での訓練と襲撃事件での実戦が、ロクに喧嘩も格闘技の練習もしたことが無いのにも関わらず肉弾戦への自信を緑谷出久に植え付けていた。

 まだ初戦、故にワン・フォー・オールを温存し鍛えた肉体で打ち勝つ。騎馬戦後の轟焦凍との会話が緑谷出久に彼との戦いを意識させてしまった。

 そうヒーロー科B組凡戸固次郎を無意識に見下してしまうほどに。

 

「舐めてるねー」

 

 撃ち放たれる右拳に個性がのっていないことを察した凡戸固次郎はのんびりとそう言った。B組内で珍しい元よりやる気の無いのんびり屋の彼をしてその行動は不快に写った。

 確実に勝てる手段の温存という無意識の見下しは。

 

「グルーシールド」

 

 セメダインを両掌に合わせて引き延ばす、個性により生み出されたセメダインは乾く速度のコントロールが可能。グニャリと半乾きのまま伸ばしたセメダインの膜で緑谷出久の拳を受け止め包む。硬い盾と柔らかい盾、どちらが有効かは永遠の議題だが、この場合は防ぐことだけが目的ではない。

 

「固まれー」

 

 緑谷出久の右拳はセメダインに包まれそのままギブスのように固定されていた。

 

「今のトレンドは拳タイプより拘束タイプなんだよー」

 

 先ずは右拳。

 そこから徐々に包んで拘束。

 近年持て囃される拘束タイプの個性、プロならばベストジーニスト、A組なら峰田実、そんな彼らとの戦闘にはある不文律がある。

 接近戦はするな。

 肉弾戦は避けろ。

 触れて纏わせて包んで拘束無力化。

 それを最大限に最短に活かせる間合いこそが接近戦なのである。

 ようやくそれを思い出した緑谷出久は慌てて距離を取る。凡戸固次郎の弱点はその巨体ゆえの機動力の低さ。

 間合いを取り、ヒットアンドアウェイが緑谷出久の勝機であると判断した。

 だがそんな分かりきった弱点を対策しないほど凡戸固次郎は愚鈍ではない。

 

「よいしょー」

 

 固めたセメダインを防具としてフィールドの床を砕く、一見意味不明な行動は武器の調達のため。

 

「いっくよー、『最後の雨(オメガ・レイン)』」

 

 縄ほどの太さに固めたセメダイン、それらの先端に砕いたコンクリート片をくっ付ける。

 頭とセメダインとコンクリート片は繋がり、即席のフレイルと化す。

 

「?!」

 

 驚愕する緑谷出久。

 遠心力により勢いの増したコンクリート片がいくつも自分に飛んでくる。

 咄嗟に躱すも一つではない、正確にではなく大雑把だからこそ回避は困難となり直撃する。

 

「ガッ?!」

 

 頭は防いだ、だが腹部に命中。

 当たらないコンクリート片も多いが、当たれば硬質化個性か念能力者でも無ければダメージとなる。

 

「嬲り殺しになる前に、リタイアしてねー」

 

 のんびりとした凡戸固次郎の言葉。

 入り組んだ町中ではこうはいかない彼の戦闘。だがこのフィールドはあまりにも嵌っていた。

 近寄ればセメダインで拘束、離れればコンクリート片フレイル。

 遠距離攻撃手段が無ければ対応すらできない。

 

「仕方ないっ!!」

 

 だからこそ緑谷出久はここで切り札を使う。痛み伴うその技を。

 

「SMASH」

 

 指を犠牲にした一時的な超強化による衝撃砲。それは人体をフィールドから吹き飛ばすには充分。最初からそれをしていればそれだけで彼は勝てていたほどに。

 だが、

 

「ガフ」

 

 凡戸固次郎はそれを最初から想定していた。

 やられたら負けるその状況を。

 だからこそ、

 

「B組はさ、皆はさ、君達の出し殻なんかじゃないんだよ」

 

 自らを犠牲として次へ活かす覚悟を決めていた。

 

「残弾を出来る限り減らしてもらうよー」

 

 全身をセメダインで包み、フィールドと固定、審判に止まらぬよう攻撃は続ける。

 衝撃により吐き出した血もバレないように誤魔化し、我が身を使って、リンクに勝てるかもしれない緑谷出久を削る(リンクは致命的な程に軽い)。

 

「君は」

 

 その気迫に対戦相手たる緑谷出久とクラスメイトであるA組、そして会場の人々、カメラの向こうの視聴者が呑まれる。

 

「日々夢に向かって頑張る皆を、僕の友達を、見下して、舐めるなよっ!!」

 

 それから凡戸固次郎を倒すまで、緑谷出久は追加で2発ものSMASHが必要であった。

 

『流石はかわいい、自慢の我が生徒だ』

 

 担任たるブラドキングの称賛が静まりきる会場に響き渡ったのである。

 




 
 補足説明

 最後の雨 オメガレイン
 真島ヒロ先生の名作レイブに登場した必殺技。
 分かる人は凄いレベル。ちなみにそっちは鉄屑付き接着剤。

 
 幻影旅団ナンバー8
 シズク・ムラサキ
 リンクにとっては天敵。
 シズク曰く婚約者という間柄で後に登場する自称妻と日々張り合っている。
 幻影旅団においては要の一人で、大抵誰かが護衛についてるフランクリンとか。
 その個性ゆえにリンクと二人行動は不可能で、不満のある本人はデメちゃんを円形なアレに進化させようと日々努力している。
 あの日手を差し伸べてくれたのは君だから、私は君のモノで、君は私のモノ。
 なおまだ旅団員ではない自称妻も似たような境遇である。
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