幻影旅団はヒーロー(夢)を見ない。   作:規律式足

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 今回は会話ばかりです。
 人数が多いとどうしても。



第七話 体育祭前。

 

「おのれA組ィィィッ!!」

 

 臨時休校から翌日。

 朝から同じクラスの物間寧人君が荒ぶっていた、というか叫んでいた。

 

「おはようリンク」

 

「おはよう拳藤さん。それで、何アレ?」

 

 物間君を指さして尋ねる。

 新聞を握り締めて叫ぶ同級生というかなりアレな存在だ。

 

「ああ、ソレはこれが原因でさ」

 

 拳藤さんから新聞を一つ渡される、見れば物間君の机の上にこんもりと山のように積まれていた。

 どうやらそれぞれ新聞社は異なるようだけど、その一面はどれも雄英高校襲撃事件を大きく取り上げていた。

 

「情報収集熱心なのは感心するけどコレ全部買ったの?雄英高校の発表が元なんだから大して違いはないだろうに」

 

 軽く読み比べても文面が多少違うだけで同じ内容。シャルナークからの情報以上のモノは無い。

 

「あ、そっちじゃなくてさ」

 

「?」

 

 めくった先に写っていたのは新星という言葉、どうやら襲撃被害者であるA組の生徒達を持ち上げているみたいだ。

 

「ヴィラン襲撃を乗り越えた、かあ」

 

 ヒーロー科なんだからそんなことできて当たり前のことだろうに。

 今までそうしないで生きていけるなんて、この国の人達は恵まれた人生をおくっているようだ。

 まだ朝礼前だからブラドキング先生からの説明はない。僕はシャルナークの情報から詳細は知っているが、知らないように振る舞う。

 

「先生方も重傷を負うくらい奮闘して、A組も自力でヴィランを撃退したんだって」

 

「なら騒がれても仕方ないね」

 

 何が凄いのかイマイチ実感できないけど、高校1年生ヴィランを撃退できたのは凄いらしい。ヒーロー科の実技試験を突破できるならできて当然な気もするけど。

 

「ま、被害者であるA組の心配すべきなんだけど大半がかすり傷みたいで怪我人も個性制御ミスらしいよ」

 

 大物がイレイザーヘッドと13号を重傷にして、それをオールマイトが撃退したのか。

 だから雄英高校も体面を保てたんだろう。

 犠牲者や行方不明者がでていたら臨時休校ではすまないからね。

 

「そうさ、つまりA組の彼らが特別というわけではないのさ」

 

 ゆらりと身体を揺らしながら物間寧人君はギラギラした眼で言う。

 

「僕達B組がぁっ!!ヒーロー科の出涸らしなんてことはないんだよぉぉぉっ!!」

 

 ああ、この記事ね。

 優れた素質の生徒達を集めたA組だからこそ乗り越えられた、エンデヴァーの息子に八百万グループのご令嬢が在籍していることから明白である、って書かれてる。ヒーロー科の出涸らしって表現は酷いなあ。

 

「というか主席がいるのはB組ィィィ!!」

 

「こんな記事を読んだら荒ぶるか」

 

「本気にしてもしょうがないだろうに」

 

「面白くない気持ちはわかるけどさ」

 

 そうして荒ぶる物間君のテンションは一日中続くこととなり、なんだかんだで親しい扱いの僕と拳藤さんはA組が悪い訳じゃないだろとか、先ずは心配するのが人として普通のことだろとか言ってひたすら宥めるのであった。

 放課後にその苦労が完全に無駄に、無下にされることも知らないで。

 

 

 

「A組の前に人集り?」

 

「報道されたから他科の生徒達が野次馬、敵情視察しに来てるみたい」

 

「ブラドキング先生の言ってた体育祭があるからか」

 

 プロヒーローからのスカウトに関係する体育祭。ヒーローを目指す者にとって最大のチャンスだからこそ、たとえ襲撃事件があろうとも開催される。

 

(幻影旅団のメンバーである僕がメディアに露出して良いのか?)

 

 まあ在学中に正体バレする予定は無いから問題ないけど気乗りはしないなあ。

 

「とりあえず騒ぎそうな物間君は(物理的に)黙らせたから大丈夫だね」

 

「今日一日面倒だった、最初からこうしとけば良かったよ」

 

 タンコブをこさえて机に突っ伏す物間君。こうしないとA組に乗り込みかねなかったからね。

 

「他の子はA組に行ったりしてないの?」

 

「鉄哲がヴィランと戦った時の話を聞くんだって言って向かったよ」

 

「彼なら平気だね」

 

「多分よく頑張ったなって言いながら肩を組んで笑いあってるよ」

 

「やりそうやりそう」

 

 まだ僅かな時間ながらもクラスメイト達の人柄はわかってきた。だから男気溢れる彼なら余計なトラブルにならないだろうと安心していたのだが、

 

「ブチのめすぞA組ィィィ!!」

 

「「なんでだよ」」

 

 B組に戻ってきた鉄哲君の声に僕と拳藤さんは顔を見合わせてゲンナリとした。

 

「アイツらは調子づいてやがる。目に物見せてやるぞぉ!!」

 

 なんでもA組に言ったら出てきた生徒にモブ共呼びされたらしい。

 なんで喧嘩を売っているんだろその人。

 

「フフフこれで皆も分かっただろ?このままA組をのさばらせてはならない事がねえっ!!」

 

 物間寧人復活。

 確かにそんなことを言う人が目立つのはちょっと問題かな?

 

「A組こそヒーロー科であるという世間の印象をぶち壊し僕達B組こそが上であると世に示す必要があるってわけさあ!!」

 

「「「「いやそこまでは」」」」

 

 冷静な子達はいやいやいやと首をふっているよ。

 

「さあ勝つための戦略をたてようじゃないか!!先ずは情報収集だ!!拳藤、知り合いがいるらしいじゃないか去年の体育祭について聞きにいくよ。リンク、君も来てくれ!!」

 

「去年の体育祭なら録画があるけど」

 

「なんで僕も」

 

「参加者にしか分からないモノもある。ショタを前にして口が軽くならないヤツは居ない。時間は有限、急ぐよ!!」

 

「先輩にも都合があると思うな」

 

「連れてく理由が酷いから」

 

 僕達二人は物間君に引っ張られて物凄く広い校舎内を駆けずり回る羽目になった。

 

 

 一時間後。

 

「ではこれより、体育祭対策及び打倒A組を目的とした戦略についての話し合いを開始する」

 

 放課後に関わらず一人も帰ることなく教室に残っているB組メンバー。

 とりあえず団結力はA組よりはあると思う。  

 さらにただ待つのではなく例年の体育祭についても調べてくれていたようだ。

 

「先ず体育祭だけど、三種目構成になっている。これは毎年変わらないようだね」

 

 体育祭で三種目なら競技も絞れるか。

 

「そしてその構成と意図も変わらない。

 ぶっちゃけ第一種目は、ヒーロー科以外をまとめて落とすためのものだね」

 

「そんな意図なのかよ」

 

「他科の扱いがひでえ」

 

「いや落とすためと言ったけど、だいたい毎年残らないみたいだね」

 

 調べてもらった情報でも第二種目の定員はヒーロー科の人数+数名程度。ヒーロー科とそれ以外を分けるためと言われて納得だ。

 

「ならなんで一緒にやるんだろ?」

 

 ヒーロー科だけで良いじゃん。

 

「一応ヒーロー科以外は強制参加じゃないから。経営科とか売り子をやる人もいるんだって」

 

「それと他科からの編入を考えてのことみたいだね。体育祭が他科の生徒の能力アピール舞台なんだよ」

 

 第二種目に残れた時点でその科で一番、ってことになるのか。ヒーロー科のカリキュラムをこなす生徒達に自分の努力で追いついたことにもなるし。

 

「そして第二種目、ここではヒーロー科同士の潰し合いになるけど第三種目を個人戦にするためか誰かと組んでやる種目になりやすいね」

 

 即興のチームか、難易度高いな。

 

「だからこそ、僕達B組はここに全力を尽くす。ここなら協力しやすいし、A組を蹴落とす最大の好機だ。第三種目がB組だけとか最高だろう」

 

「確かに目立つな」

 

「そうなると判れば準備もできるか」

 

「となると第一種目は何になるか予想して、第二種目のためにうまく体力を温存できるようにしないと」

 

「体力温存ねえ、必要か?ヒーロー基礎学で全員スタミナついてるだろ」

 

「それはあるよね」

 

「A組の個性を探る機会にもなるから」

 

「そっちもやるべきか」

 

「そもそもヒーロー科が上位になる種目ってなんだろ?」

 

「5人ぶっ倒したら合格とか?」

 

「それはいいなあ滾るぜ。斬り刻んでやる」

 

「体育祭だからな?武道大会じゃないからな?」

 

「順位をつけるなら競争じゃない?」

 

「ただの競争で差がでるノコ?」

 

「個性ヲ使ウナラヒーロー科ガユーリデース」 

 

「他科には戦闘訓練ないしな。いや俺らも体力作りばかりだけどよ」

 

「個性使用ありの競争なら障害物競争とかか。ヒーロー科+数名なら四十位以内が安全圏だね」

 

「障害にもよるだろ、雄英だぞ」

 

「必ずロボは出すな」

 

「雄英高校の売りの一つだもんね」

 

「けどよ、戦略は解るが全力で走らないのは納得できねえ」

 

「謀は罪のはじまり」

 

「あと身体能力増強系はあんまり順位低いと評価下がりそうじゃん?」

 

「ね」

 

「教師は個性を把握してるし」

 

「そこは無理強いしないよ。知られても困らない個性ってあるからね」

 

「アレ?この場合ヒーロー科主席のハードルが高いのでは?」

 

「順位低いと怒られるね」

 

「何してんだとか言われそう」

 

「A組なら除籍になる」

 

「推薦組もかな?」

 

「出身中学の代表みたいなものだし」

 

 戦略として考えることは沢山あるな。

 即興でできることじゃないぞ。

 

「よし、とりあえず第一種目は温存と個性調査。第二種目への準備ってことにしよう。けど順位に関しては個人の判断にしよう。ここは個人の事情も絡むからね」

 

「「「「異議なし!!」」」」

 

 競技も障害物競争とは限らないからね。あと念の為5人ぶっ倒すとかの場合はB組は狙わないという取り決めもした。

 

「さて次は第二種目だけど、これに関してはチームを組む前提で個性を活かせる組み合わせを考えようか」

 

「うらめしいことに持ち込み不可だから私と唯は個性が使えないわ」

 

「ね」

 

「キノコも被害がとんでもないことになるノコ」

 

「吹出も調整が難しそうだな」

 

「ぶっ放はドバァァンと得意なんだけどね」

 

「となると柳さんと小大さんは鱗と組む感じか、液体もいけるなら凡戸もか。それならなんとか」

 

「威力調整組は、頑張れっ!!」

 

「対策を投げるな」

 

「いやこの二人の個性は範囲がヤバすぎて」

 

「マップ兵器だマップ兵器」

 

「使いみちが限られるなあ」

 

「「ウグッ」」

 

 強力な個性なんだけどね、強力過ぎる個性なんだよね二人共。

 あと道具持ち込み不可は泡瀬君も厳しいな。

 生成系の子と組むしかないか。

 

「必ずしも個性を使用しないといけない訳ではないから種目しだいで皆でサポートするとかだねえ」

 

「考えられる種目は棒倒しとかか?」

 

「勝った組が三種目か、いやA組B組で確実に別れるだろ」

 

「組むなら組み体操とか?」

 

「それでどうやって勝敗を決めんのよ」

 

「芸術点?」

 

「即興ではやらんだろ」

 

 こうして僕達の話し合いは下校時刻ギリギリまで続いた。

 特に協力技に関しては盛り上がり、後日体育館を借りて練習するようだ。

 なお僕は自分の使える手札である念能力を明かした。無論個性だと偽ってだが。

 基本技、応用技を自身の必殺技として。

 雄英高校体育祭、さてどうしようかな。

 あんまりやる気はないけど。

 負けるのは癪だよね。

 ていうか負けたりしたら幻影旅団の皆に笑われるし。

 

 真剣にB組のために頑張るクラスメイト達を見ていると其処に混じりきれない事実に心が軋むような痛みを感じる。

 これは飲み干すべき痛みだ。

 何が大切かを僕は間違えない。





 補足説明。
 物間君の反発具合から報道された点を考えてみました。あとメディアがA組をピックアップしたのは体育祭に向けて視聴率を上げるためでもあります。
 種目対策に関してはオリ設定です、事前の想定と話し合いはしてそうだと思いました。第一種目の意図に関しては人数的にそうかなと。
 
  

 幻影旅団ナンバー4
 ヒソカ・モロウ
 リンクにとっては兄のような存在であり、もっとも負い目を感じてる存在。
 姉の死が彼に与えたものは余りに大きく、だからこそ申し訳なく感じている。
 幻影旅団のメンバーとはバレていないが、快楽殺人鬼・奇術師ヒソカとしてかなり有名。
 旅団メンバーで殺害数がぶっちぎりで多い。
 自室に居る時はカーテンにサラサの姿を写して過ごしている。
 色褪せない想いは尽きない殺意を生み出し続ける。
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