脳内ピンク砂糖マシです。
ちなみにオリ主の話し方は某シャーマンファイト系主人公みたいな緩さです。
星空コンビのパトロール
目的地へ向かう途中、私はショッピングモールに立ち寄った。
二人一組でのパトロール活動、約束の時間まではまだ少しある。私たちもゲヘナではかなり有名になったから、あまり待ち合わせ場所で待っているとパトロールの障害になってしまうかもしれない。人々はエスカレーターを使うため、人気のない階段の踊り場で立ち止まる。ここで十分ほど待ってから向かえば丁度いいだろう。操夜先輩は大体いつも十分前に来るから、私も同じ時間にたどり着くように調整する。
私の相棒、遠星操夜(とおぼしとるや)先輩。ゲヘナ学園三年生で、風紀委員長。「ゲヘナの星」の異名を轟かせ、大々的でこそないもののゲヘナ生徒会を含めた主要な機関をすべて下した支配者。不良が彼を見ただけで命乞いを始めたなんて逸話もある先輩だけど、実際にはのほほんとしてのんびりしている。
個性派だらけでまとまりのないゲヘナ生徒の中からどうやってか適性のある者たちを集め、事務仕事のほとんどを彼女たちに丸投げしているのは、効率とかじゃなくてその性格ゆえだと思う。そのおかげで風紀委員長となった今でも一緒にパトロール活動ができているのだから、私は嬉しいけれど。
私と操夜先輩のコンビは、私が一年のころから続いている。「星空コンビ」といえば、ゲヘナ外にまで名が知れているそうだ。昔は彼が委員長になったら二人だけでいられる時間は減ると思ったけれど、こんな私と今でも一緒にいてくれる。
踊り場から窓の外を眺めながら、操夜先輩のことを考えているだけで、予定の時間まで一瞬で過ぎ去っている。モールを出て待ち合わせの場所に着くと、時間は約束の十二分前だった。
ゲヘナの大きな噴水広場。トリニティのそれに対抗意識を燃やしたのかどうかは定かでないけれど、かなり立派な噴水広場で、日によっては屋台などもいくつか出されている。その場で大して待つこともなく、予想通りの時間に彼は現れた。
「おはよ~、ヒナ」
「おはよう、操夜先輩」
相棒である操夜先輩と二人、バディでのパトロール活動。気合を入れてやってきたわたしと比べ、操夜先輩は少し眠そうだ。午前中の空は陽光が暖かく、気を付けなければあくびがうつってしまうかもしれない。
そんな風に思っていると、先輩がクレープ屋の屋台のメニュー看板を眺めている。
「ヒナはどれがいい?」
「先輩、今はパトロール中よ」
「そうだな~。じゃあ、ストロベリーにしようか」
「…もう」
そう言って、クレープを買いに行く操夜先輩。普通パトロール中に買い食いだなんて褒められた行いじゃないはずなのに、操夜先輩ははまったく気にしない。なんというか、操夜先輩は良いと悪いが明確に決まっている節があって、こういう良いの方に分類されている場合は言っても暖簾に腕押しで流されてしまう。
それについては私ももう言わないけれど、どうして私がその時食べたいものが分かるのだろうか。別に特別食べたいというわけではないのだけれど、操夜先輩が選んだものを食べていると最終的にはそれが私の好みになってしまう。
「はい、ヒナに半分あげよう」
「は、半分って」
操夜先輩は平然とこういうことをする。恥ずかしいと同時に、うれしさを感じてしまって、顔がにやけそうになるのを何とかこらえる。公衆の面前でもこうだから、またほかの先輩たちにからかわれる…。
買い食いで歩き食いであることなんて忘れて、クレープを食べて渡してを繰り返しながら歩く。
「パトロールなのに、これじゃまるで……」
「…どした?」
「な、何でもない!」
そうやって歩きながら少しすると、遠くない距離から爆発音が聞こえてきた。私たちは顔を見合わせて、音の聞こえた方へと歩き出す。ゲヘナではよくあることなので、焦る必要はない。
すぐに逃げてきた人によって不良グループ同士の戦いが始まったことがわかり、私が走りだそうとすると、操夜先輩がクレープの最後の一口を私の口に押し込んだ。
「それじゃあ、行こうか」
私が数秒フリーズしていると、それを見ていた先輩が笑顔で言って、ゆっくりと走り出した。遅れて追いかけると、ちらりと私を見て操夜先輩が速度を上げる。
私たち星空コンビは、操夜先輩が前衛で私が後衛のポジションを取る。二人そろえば、本当に誰にも負けない自信がある。だからと言って、私ものんびりはしていられない。操夜先輩の機動力はとんでもなく高く、移動力もまた高いため、操夜先輩が本気で走ったら誰も追いつけない。普段のんびりしているのが嘘みたいな緩急の激しさで、でもそれでいて私が走りだすまで待ってくれたりして、ああもう!!
そんな風に思っている間にも、操夜先輩はとんでもない速さで垂直のビルを地面でそうするかのように斜めに駆け上がっていく。高い位置から瞬時に状況を把握するためだろう。こういう時は走る操夜先輩の足元から美しいキラキラが見えるので、思わずそちらに目を向けるが、じっくり見ている時間はなかった。瞬く間に四十メートル以上は駆け上がった操夜先輩が戦場を見渡し、そしてインカムから声が聞こえてくる。
「総数約五十、ヒナは二本左の道から突入、それで最後尾を突ける」
「わかった」
今はあまり見られなかったものは、戦闘中に見れる。私が言われたとおりの道を走り抜けると、丁度操夜先輩が戦場のど真ん中に飛び降りて着地したところだった。
「聞け!!選ばせてやる、降伏かボコられるかをな!」
銃声と爆発音だらけのやかましい戦場に一瞬の静寂が訪れ、そして戦いのときにしか聞けないだろう、操夜先輩の凛々しい声が響き渡った。
「星だ!!」
「ゲヘナの星だって!!?」
「なんでこんなところに!!」
「う、うわあああああああああああああああ!!!!」
撃ち合っていた者たちは一瞬で恐慌状態に陥り、あるものは逃げ出し、あるものは膝から崩れ落ち、あるものは銃を向けた。そして銃を向けた者から順番に、発砲する暇すらなく撃ち抜かれていく。操夜先輩の持つFAMASアサルトライフル「
私もまた逃げ出そうとするものに容赦なく銃撃を浴びせかけた。
「嘘だろ!?空だ、星空だ!!!」
「星空コンビだ!?!」
「お、終わった」
「勝てるわけがない…!」
そうしてほとんど弾を使うこともなく、一瞬で片が付いた。攻撃しようとしたり逃げようとした者を十人ほど倒しただけで、ほかの全員が降伏した。こうした光景は珍しいものではなく、ほとんどの敵は星空コンビの二人がそろっているところを見ただけで、戦意どころか逃げる気すら失う。
それが私たち、星空コンビよ(ふんす)。
ヒナは自分の戦闘力評価は的確でも、自分の女としての魅力は下の下だと思っているので、余計に操夜先輩を見る目がアレです。
ただしヒナが向ける本当の認識の中身は憧憬でも友情でも恋愛でも尊敬でもありません。