おまけのつもりでしたがドレスヒナが来たので、一話増えました。
小夜曲のイベントでゲヘナの日常描かれて、一気に解像度が上がった気がします。ヒナが意外と慕われてて安心したり。
ただ原作時空、先生と出会った後のヒナは割と幸せそうですが、先生存在しなかったら全然楽しくなさそうな気もしてしまう。そこまで考えた後で、先生いなかったらまずキヴォトス滅ぶんだということに気づいてしまった。
青春学園物語というジャンルの中にあって、一部の生徒がお労しすぎる。アリウス自治区に至っては洗脳少年兵だから青春学園とかすってすらいないのな。
今日は操夜先輩と一緒に出掛ける日。見たい映画があるけど一緒にどうかと操夜先輩が誘ってくれた。映画館もある大型ショッピングモールに二人で遊びに行く。
間違ってもデートではない。私はそんなことを考えられるような女じゃないから。もし私がデートを意識していたのなら、操夜先輩も多少はそういう風に扱ってくれたかもしれない。でも私は操夜先輩と付き合いたいわけじゃないし、操夜先輩に煩わしく思ってもらいたくもないから、これでいい。
二十分前に待ち合わせ場所に着いて、十分後に操夜先輩と合流。
晴れた青空の下を、手をつないでゆっくりと歩く。身長差があるせいで、子供と大人のようになってはいないかと少し不安になる。それでも操夜先輩を見上げるとどこか上機嫌な様子で、ただそれだけで私も幸せな気持ちになる。
「問題児って言葉を割と使うけどさ。短期的には雇えるんだよな」
世間話を続けるうちに、操夜先輩がそんなことを言い出した。
「んー、なんて言うかさ。ドロップアウト組というか不良という分類で間違っていないにもかかわらず、そうでない生徒との交渉が意外と普通に可能だったりするんだな。つまり金銭で雇うことが可能で、雇われる側には真面目ではなくとも最低限依頼を果たそうとする意志があり、雇う側は金を払う意思があるってこと」
「そうかもしれないけど…依頼のどちら側にしても、約束を守らない者は次の依頼を難しくするのだから、それはおかしくないんじゃない?」
「そうだけどさ、ゲヘナだぜ?……そこまで考えてるか?」
考えているはずだと言おうとしたところで、そうでもないかもしれないと思ってしまった。まさかそんなと思う一方で、否定しきれない自分がいた。言っているのが操夜先輩であることも影響しているかもしれないけど。
「これって意外とゲヘナなりなんなりの仲間意識がどこかに存在しているのか……それとも単に何も考えていないか、おバカ同士の素朴さゆえなのか。何かこう……ゲヘナ特有の…
操夜先輩が考え込み始めたあたりで、ようやく私も考えがまとまった。
「でも、少なくとも全員が考えなしってことはないはず。割合は、なんとも言えないけど」
「…まあ、確かに。どっちもいるからよく分からないっていうか、混沌感があるんだろうな」
込み合っているフードコートで開いている席を探し、注文を選ぶ。
「これがブラックマーケットとかの無法地帯だと、結構騙し合いが起こって料金未納とか裏切りが起こるんだよね。まああんまり舐めた真似続ける組織は周りからボコられて瓦解する訳だが」
「…?…操夜先輩……どうしてそんなこと知ってるの?」
そうやって聞くと操夜先輩は少しだけにへらと笑って肩をすくめた。
「いろいろほかの学校にもいってるからな。実は俺も姿を隠して突貫したことがある」
「先輩……先輩のことだから誰かのためにやったんだろうけど。風紀委員長なんだから、他校で暴れちゃだめ」
「大丈夫、恰好も銃も戦法も変えてたから。真っ黒黒子スタイル~☆」
「レッドウィンター南のブラックマーケットであった、黒幽霊による五関突破?」
どこかで聞いたことがある話だから聞いてみれば、操夜先輩は無言でにっこり良い笑顔を浮かべる。あれやったの操夜先輩だったの。
「絶対に正しいことだと信頼してるけど。それはそれとして、操夜先輩は何をしでかすかわからないところがある…」
「ははは。でまあ話を戻すけど、短期的にはともかく、長期的になると制御できなくなることが多いのかなと」
「…でも、ゲヘナで生活していれば、バイトなんだろうけど働いている生徒をよく見かける。問題児かどうかまでは分からないけど、普段の問題児も含まれているはずだし、普通にバイトしてるんだと思うけど」
そんなことを話しながら昼食をとっていたら、うっかりゆっくりしすぎてしまって早足で映画館に向かった。
一緒に見た映画は素朴な雰囲気ながら面白くて、見終わった後もしばらくはふわふわとした気持だった。そんな気持ちのままに公園のベンチに座って、操夜先輩と感想を言い合う。こういうのは不慣れだけれど、操夜先輩が相手だから楽しかった。
朝、目が覚めた。かつてはあった幸せな日常の夢を見た。
眠っている間ギュッと抱いているままだった操夜先輩の銃を見つめる。一日中決して手放さないそれを抱いて、その銃身にゆっくりと指を這わせてから起き上がった。
空崎ヒナは笑わない。同じ一日のルーティンを繰り返す。
洗面台の横に置かれた、サルを模したガラス細工を見ながら歯を磨く。
横に置かれた小さめのガラスコップは日常的に歯ブラシを置くために作られたものの、ヒナは一度もこれに歯ブラシを立てたことがない。せっかく操夜先輩が作ったものを汚すのが嫌だったし、そうでなくとも歯ブラシ立てに使うにはきれいすぎた。
テーブルの上にいくつも並べられた動物のガラス細工を眺めながら朝食を食べて、着替えるだけという段階まで準備する。
ヒナの部屋には、操夜先輩に関係のない機能的でないものは全く置かれていなかった。並べられたガラス細工は、すべて操夜先輩が作ったもの。それを見て、何も思うことがなかったとしても、ヒナはそれを置いたままにしている。
空崎ヒナは感じない。同じ一日のルーティンを繰り返す。
寝間着を脱いだヒナは、ガンラックも使わずにずっと横に置いていた操夜先輩の銃、「
銃声が部屋に響いた。
「
あの時操夜先輩に与えられたものと、似ている。操夜先輩の手から離れても、これは間違いなく操夜先輩のもので、ずっと持ち歩いていたもの。この痛みも、色も、美しい光も、操夜先輩が起こすものと比べればずっと小さいけれど。あの人の日常を、一番感じることができる。
空崎ヒナは思わない。かつてのこと以外は何も。
時の止まったかのように、同じ一日のルーティンを繰り返す。
着替えて家から出れば、変わらない非日常が待っている。操夜先輩が残した、ゲヘナ風紀委員長としての仕事が。
どうしてこんな話書いたんですか(自問自答)
この話がいまいち難産だったし作者が忙しくなってしまったせいで投稿が遅れました。そのせいでこれの次に投稿する予定だったおまけも後ろ倒しに。