お前のことだよ、相棒(空崎ヒナ)!!   作:バージ

3 / 19

改めてメインストーリー読んでみると、思ったよりヒナ関係の糖度がかなり高かったです。ということはこの程度じゃ全然別人じゃないじゃん!
なんてことだ…もっとラブコメで世界観を侵食してないといけないのか…。



序章と免罪符を使えないヒナ

 

~ヒナの日記~

 

○月○日

私は変なシチュエーションに弱い。普段は少し憎たらしいくらいに冷静な自分が、操夜先輩といるときだけは別人のように制御できなくなる。何度味わっても慣れることがなくて、心の底からいろいろな感情が湧き上がってくる。ヘリの中で強く支えられた時のことはすごく衝撃的で、下手に思い出すと体が変になるので時間と場所を選ばないといけない。そんな有様でありながら、不思議と悪い気分でもない。

そんな自分自身のどうしようもなさを恥ずかしいと思う自分と、うれしく思う自分と、少しだけ"良し"と思う自分がいる。

この手のことは私はよく知らないことで、副委員長はたぶんよく知っていると思う。操夜先輩も、なんというか人の意思と感情には一家言あるみたいで、二人であれば私よりもずっと深くて興味深い話をしてくれると思う。

うん、やっぱりいいことだと思っている。操夜先輩と出会ってから、こんな感情も含めて自分のことを好きだと思えるようになったから。

副委員長と言えば、彼女は操夜先輩のことをどう思っているのだろう。確か操夜先輩のことを"お星さま"と呼んだ初めての人が副委員長だったはず。操夜先輩が"ゲヘナの星"と呼ばれるよりも前のことだから、それが通り名のもとになっているのかもしれない。

ただ、お星さまの話をしたとき、操夜先輩がどこか少し悲しげな表情をしていた。微笑んでるかのんびりしてることが多い操夜先輩がたまにしかしない表情だから、印象に残ってる。あの二人の関係も、トップとナンバーツーってだけじゃない、複雑なものよね……。

 

 

 

 

○月○日

操夜先輩のことを最初に書くと流れが乱れるし書きすぎる恐れがあるから、まずはことの終わりについて書く。

無事に危なげなく爆走兵器の破壊に成功したものの、カイテンジャーの逮捕には至らなかった。爆散した兵器の中はもぬけの殻で、彼女たちの逃走は迅速だったと言える。すぐに周囲の捜索に移れればよかったけど、それがそうもいかなかった。

理由は場所。移動していくうちにゲヘナの校境を超え、どの学校の領域でもないブラックマーケットに入ってしまっていた。そのせいでブラックマーケットに巣くう雑多な勢力から攻撃を受けることになってしまった。輸送ヘリは一足先に戻していたので、私と操夜先輩の二人しかいなかったから、チャンスだと思われたのだろう。星空コンビの名声はゲヘナ外にまで及んでいるから、有名税みたいなものね。

当然、すべて返り討ちにした。私と操夜先輩がそろっているのだから、当然ね。伊達に"星空"の名を頂いてはいない。最終的には五百人以上の屍を……じゃなくて、気絶者が散乱することになった。これだけやる気のある大勢と戦うことは少ないからか、操夜先輩が終始楽しげで、私も絶好調だった。

ただ、カイテンジャーの方は危ないところだった。もし撃破が遅れていた場合、最悪別の学校の領域にまで侵入していたことだろう。もしそうなればきわめて面倒な事態になっていたはず。そうなる前にタイミングを見極め、最大火力を叩き込む選択をした操夜先輩の慧眼には感服するほかない。さすとる。

あれだけの装甲を持っていながら舗装路を時速二百キロ以上の速度で走ることのできる兵器。元情報部の私でも見たことがないし出所も不明。残骸は回収して調査しているけど、周到なことに自爆装置まで搭載していて爆発したせいで、かなり損傷してしまった。

校境を跨いでしまえば、追撃はもちろん調査もかなり難しくなる。戦闘は兵器よりも生徒主体なところがあるけれど、あの速度で走られると生身での撃破は相当困難になる。……あんなモンスターマシンを作れる組織は大分限られるだろうけど。

後から考えてみれば、当初の想定よりも遥かに厄介な兵器だったといえる。端からヘリに星空コンビという、最小にして最大の戦力で挑んだところから重要な勝因だった。

 

 

 

 

○月○日

あの時の衝撃について、日を置いて考えてみてようやくわかったことがある。それはあんなに強く抱きしめられたのは、あれが初めてだったということ。……まあ、抱きしめていたかはともかくとして。

普段操夜先輩はすごく優しく包み込むように私を抱きしめるから、つかんで離さないというような感覚が初めての経験だったのね。

それに操夜先輩の戦闘スタイルは突撃、立体起動、踊り撃ち、ランアンドガン……改めて普段の様子とのギャップがすごいけど、とにかく動き回るから、あんなふうに合体することはないし。

そもそも星空コンビが二人ともヘリに乗ったまま戦うことなんて今までなかった。あれはあれでヘリというか不死鳥というか空飛ぶ要塞というか。今回はお互いに攻撃しづらい状況だったから操夜先輩もヘリから出なかったけど、もし敵の攻撃が苛烈な状況なら人間離れした曲芸機動をしていたはず。

とにかく初めての経験だったから、あんなに動揺したのも仕方のないことだといえる。……今度"券"を使って、痛いくらいに抱きしめてもらおうかな。

 

 

 

 

 

 

朝起きるといつも通りのけだるさを感じるが、今日は自然と気合が入る。寝る前に決めた通り、今日は操夜先輩に痛くしてもらおう。普通なら私には絶対にできないだろう難題、でも私にはこれがある。

これこそがゲヘナ風紀委員会の至宝、"風紀委員の願いが叶う券"…!通称紀願券。"流れ星券"、"星に願いを"、"遠星操夜が願いをかなえてくれる券"、などと冗談で語られる券であり、これを使うことで様々な恩恵が得られる。高級お菓子セット、温泉旅行券、操夜先輩の手作りガラス細工、高価な銃のアタッチメントなどが人気。元々は副長が考案したもので、特に活躍したり訓練の成績が良かったりするともらえるため、風紀委員のモチベーションの向上に一役買っている。

ただ、主に副長のせいで、操夜先輩に甘えるためにこれを使用する者が一定数存在している。私もその一人というか元祖というかだけど、これがなければ操夜先輩に甘えることなんて私には到底できない……。

 

~朝~

 

風紀委員長室に入ると、副長がいるものの操夜先輩の姿が見えない。

 

「操夜先輩は?」

「衛星の例外に会うと外に行きましたよ」

「衛星の例外?」

「あ…。」

 

副長はしまったという顔をする。大人びた魅力のある女性だけど、そんな表情も様になっていた。

 

「衛星は操夜さんのことを"お星さま"と呼ぶ人のことですよ」

「初めて聞いたけど」

「すごく狭い人しか…それこそ、彼を"お星さま"と呼ぶ人の中でも、ごく一部の人が使っているだけの言葉ですから。あだ名みたいなものです」

 

そういう副長の雰囲気は、いつもと少しだけ違っていた。

私と違って本当に色っぽい。

 

~昼~

 

「とる…」

「委員長、この間のカイテンジャーの件、破壊されたものの詳細が来ました」

「来たか、どれどれ」

 

カイテンジャーの件の続報が来たらしい。操夜先輩がかなり関心を示してしていた案件だし、長くなりそう。

 

~夕方~

 

やっぱり、夕方がいい。仕事を片づけて余裕のある時じゃないと、その後に支障をきたすかもしれない。

 

「と…」

「銃撃戦が発生!二か所で同時です!」

「…微妙な位置で起こったな。ここが一番近いか?」

「……私が行くわ」

「ヒナ、任せた…なんか機嫌悪い?大丈夫?」

「…問題ない」

 

多少のイライラは無法者にぶつけることで発散した。殲滅自体はすぐに終わったけれど、後始末で時間を取られた。いまから学校に戻ってもたどり着くころには暗くなってるだろうし、今日は諦めるしかないか。

そう思っていると、着信音が鳴る。これは操夜先輩(私用)からのものだ。

 

「もしもし」

「ヒナ、お疲れー。そことの中間地点にうまいラーメン屋があるらしいんだけど、行ってみないか?」

「……!」

 

そうして操夜先輩と一緒にラーメンを食べた。微妙に落ち込んでいた気持ちが吹っ飛んだ。紀願券は使えなかった。

 





実は最初期の構想だと4話で完結かななんて考えてました。
砂糖→砂糖→砂糖→撃てよ臆病者!
で4話です。これでMAX糖度を保ちつつ最後に落差で宇宙猫になる予定だったのですが、どうしても急すぎるし伏線とかも仕込めないので結局話数はかなり増えました。

ヒナ視点の操夜しか出ていないせいで全然操夜の内心とか設定とか出てこない訳ですが、操夜関係の話は見たいでしょうか?無糖ですし、操夜が起こすことともあまり関係ないし、独自設定が結構あるので書くべきか悩ましく。どうでしょうか?

  • いらない
  • 少しは欲しい
  • 見たい!
  • どれでもいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。