知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを(本編完結) 作:月光好き
※アニメ初見勢だった作者のガチ勘違いから思いつき、勢いのまま始めました。なので設定の食い違いがあったらすみません。
『終わり、そして始まり』
周囲が熱い。なぜなら、儂が燃やしたからだ。
眼前の存在感が薄れている。なぜなら、儂の攻撃で消耗しているからだ。
「……フム、なるほどのう」
だが追撃を加えようとは思わない。なぜなら、儂はすでに奴の策中に陥ってしまったからだ。
「おぬしらの狙い、それは最初からこれであったか」
鈍る身体を観察しつつ、正面の4人組を見据える。
茶髭のドワーフは片膝をつき、折れた斧で支えることで倒れるのを防いでいる。
鶯髪の人間は倒れている、死んではいないがそれだけだ。
白髪のエルフは杖をこちらに向けているものの、魔力はもうほとんどない。
青髪の人間はエルフを守るように前に立ち、満身創痍の肉体で儂と向き合っている。
なんともまあひどい姿だ。
通常魔法1発当たっただけで吹き飛びそうなほど命の灯は儚く、たいして儂はこれ以外に目立った傷は負っていない。戦況としては儂はこの瞬間まで圧倒的に有利だっただろう。
――だが結果として儂は策に嵌り、奴らは全員生き残った。最後の瞬間まで互いを信頼し、各々の役目を全うした。
これが、勇者一行。魔王様の命に手をかけるかもしれない、大いなる可能性を持った存在。
「排除ではなく、封印。……だがいいのか? この封印術では、儂に危害を加えることもできんぞ」
「構わない。はっきり言ってお前は、僕たちの手に余る存在だ。魔王を討つまでの間、大人しくしていてくれ」
「カカッ、見事也!」
嗤いながら片膝をつく。後1分もしないうちに封印術は完了し、儂の全身が石化してしまうだろう。
……クソッ、情けない。この二つ名を汚さないよう全力を尽くしてきたが、結局ここは原作通りになってしまった。
だがこのまま終わるつもりもない。儂は、クヴァールはこのまま終わる存在ではない。
それに、まだクヴァールを敗北者だとは認めたくない!
「ヒンメル、アイゼン、ハイター、フリーレン!」
「誇るがいい、儂に膝をつかせたことを!」
「喜ぶといい、しばしの平穏を!」
「……そして、恐れるといい。このクヴァールが目覚める瞬間を!!」
……あぁ、思考が鈍ってきた。もうそろそろか。
どうだろう、今の台詞で彼の格を保つことはできただろうか?
実際に戦った場面を見ることはできなかったけど、その時に劣らない立ち回りはできていただろうか?
それがわかるのは次目覚めた時。
すべてが終わり、フリーレンが弟子を引き連れてきた時だ。
楽しみだけど、ちょっと怖いな。……あれだけのことをやっておきながら、この感覚が変わることはなかったみたいだ。
じゃあな、マハト。さらばだ、――――。
人間を理解するために人間を殺す。矛盾を抱えながら進む者たちよ。
「精々100年程。……楽しみにしているぞ、人間よ」
楽しみにしている、その台詞を最後に奴は動かなくなった。
封印が完了したことを確認し、思わず座り込む。ふと周囲を見れば全員立っておらず、見事にボロボロだ。
「ヒンメル、アイゼン、ありがとう。二人が注意を惹き続けたから、ギリギリ間に合った」
「うん。……でも、それでもギリギリだ。あと数手で僕たちは崩されていたよ」
「不敗でもある、腐敗の賢老。その名は伊達ではないということか」
「この先七崩賢がいるのかと思うと……これは、飲まないとやっていられませんね」
「でた、生臭坊主。……ハイターも、よくあの瞬間に魔法をぶつけられたね」
偶然ですよ、そう言いながらハイターは仰向けに転がって空を見上げる。つられて視線を上げると、徐々に夜空が明るくなっているのが見えた。
どうやら私たちの戦いは一晩丸ごとになっていたようだ。どうりで私やハイターの魔力も空っぽになる訳だ。
「防御魔法を貫通される以上、その矛先をそらすことくらいしか思いつきませんでした」
「十分だよ。おかげで私たちは……奴を倒した」
「……そうだね」
勝った、とは正直思えなかった。
だけど今確かにある安堵感を味わうように呟き、ヒンメルが返事をした。
「フリーレン様、どうしましたか?」
「……あぁ、ごめんフェルン。すぐ行くよ」
そしてそのまま泥のように眠った私たちが旅を再開したのは、そこから1週間後のこと。
道中色々なことがあったが、私たちは魔王を討伐した。
あれから80年。あの瞬間、私が仕掛けた封印魔法に対して奴は抵抗を試みていた。
本来ならもっと保つはずだが、あの様子ではそろそろ不安定になっていてもおかしくない。
はっきり言って今回は様子見。奴を倒すには私達だけでは難しい、
「アイゼンが来てくれればなぁ……」