知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを   作:月光好き

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Q.前話投稿後、放送された22話+二次試験PVにて以下のことが判明しました。この時の作者の気持ちを答えなさい。

①ユーベルは魔法を感覚で扱う。
②ユーベルは共感することで他人の魔法を扱える。
③恐らく参加者同士で戦うであろうPVの会話+ユーベルに攻撃された(?)ラントの描写。





A.こんなドンピシャでやらかすことある!?(猫ミームの頭抱える子猫)

えーっと……対応は、なんとか考えてみます。



いつかどこかの誰かの手記②

 

【天気:曇りのち雨】

 

拠点を離れ、早いものでもうすぐ1週間が経過する。

目的はあれ以降一つも達成できていないのだが、身を隠せる安全な場所(洞窟)を見つけた。一旦落ち着ける場所ができたので、前回起きたことをまとめていこう。

 

あの追記した出来事が起きたのは、出発した二日後のことだった。

 

とりあえず真っすぐ進み、定期的に木の幹に傷をつけて目印を作る。

そんなことを繰り返すこと二日、茂みが揺れたかと思えばそいつは目の前に飛び出てきた。

 

四足獣の魔物……大型犬が一番近いだろう。とにかくそいつはこちらを見て警戒していた。

まぁそれもそうだ。魔力制御による隠密(推定)をしていたのだから、向こうからすればいきなり現れたようにも感じたはず。さらにこんな図体だ、驚くのも無理はない。

 

そう考えつつどうしたものかと思っていると、魔物は唸り声をやめて一直線にとびかかって来たのだ。

 

いきなりか!? そう考えつつ横跳びで回避に成功。

早速修行の成果を確かめるべく、遠距離魔法を使用して迎撃を開始した。……のだが、まあこれが酷いもので。

 

放ったのは大体十発、その全てが掠ることもなく回避されてしまった。弾速はそこまでは遅くはないと思うのだが、今思い返せば奴に当てるには打ち出す力をもっと強める必要がありそうだ。

とは言え初戦闘中の私にそんなことを考える余裕もなく、どうにかして当てようと躍起になって撃ち続ける。とは言え流石にこのままじゃ無理だと判断したので、作戦を変更した。

 

それが前に書いた通りの所謂バクスタ戦法である。遠距離魔法(仮)を地面に打ち付けて視界を塞ぎ、魔力を制御して気配を消す。魔物が周囲の警戒し始めたころを見計らって視界外に石を投げ、奴の注意がそれた瞬間に後方からとびかかり、全力で頭部をぶん殴った。

 

過去に身体能力を確かめたが見た目以上の力はあるらしく、魔力を認識できずに両手を地面に叩きつけた時は結構凹んでいた。なので脳震盪くらいは起こせるだろうと思ったのだが……結果、奴の頭部は爆散した。

 

……うん。

初戦を無事勝利したものの、微塵も喜べる要素がないな。

 

なので対策を考えよう。素早い魔物に遠距離魔法(仮)を当てるにはどうすればいい?

 

①弾速を上げる。

②連射性を上げて逃げ道を減らす。

③別の軌道を混ぜることで相手を多角的に攻める。

 

この辺りだろうか?

①は単純、魔法を打ち出す力を強めればいい。収束する力も強めなければ射程が短くなりそうだが、その辺は試しながら調整していこう。

②は恐らく威力を抑える代わりに制御しやすくすることで負荷を下げ、同時に展開する必要がありそうだ。そもそも今は指先から遠距離魔法(仮)を放っている状況なので、まずここから改善する必要があるかもしれない。

③は……いい案ではあるが、現状難しいか。拠点に戻って本格的に修行を再開できるようになったら改めて考えよう。

 

とは言え良い出来事もある。それは今回の戦闘において、隠密(推定)が正しく機能していたという事だ。

この発見は大きい。いざ魔法使いを発見した時、祈りながら近づくのは余りにも危険。その不安が早めに解消されたのはありがたい限りだろう。

 

戦闘後に木を登って確認したが、もうすぐ森を出る。目的を達成できるまで戻るつもりはないが……いつまでかかる事やら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:晴れ】

 

今日は素晴らしい日だ、そう断言できる。

 

前回より一か月。まあまあ長い旅路の末、遂に私は人間と接触した。

いつも通り周囲を探知しつつ歩いていた所、ふと見知らぬ反応が出た。何ぞと思って離れた場所からその方角を確かめたところ、なんと人間がいたのだ。

 

おぉ、と思ったのも束の間。すぐさまその近くに別の存在がいることもわかった。……魔物だ。

 

前に出会ったやつとは違い、二足歩行なそれは集団を形成していた。あれだ、ゴブリンが一番近い。

とにかくそいつらも人間を認識しているらしく、一直線に近づいている。間違いなく襲うつもりだろう。

 

貴重な情報源を死なせる理由なんてないので、魔物が人間を取り囲んで立ち止まった瞬間を見計らい、遠距離魔法(改)を一気に放つ。

(改)は前回の反省を踏まえて改良した遠距離魔法で、今回は連射性を上げた試作品。威力が足りるか若干不安だったが、問題なく魔物全員を絶命させることに成功した。

 

人間たちは驚いた顔でこちらを見ていた。見た感じ魔法使いはいなさそうだが、それでも彼らが重要な存在であることは変わらない。という訳で話しかけ、助けた報酬としてとある情報と物品を手に入れることができた。

 

まず一番重要な情報、私が目覚めたあの森について。

特徴を伝えたところ知っているらしく、魔物や獣が蔓延る危険性の高い森として有名らしい。とは言え貴重な薬草や食物が自生しているらしく、たまに持ち帰ることに成功した物品は高値で取引されるのだとか。

 

続いて超欲しかったもの、地図。

その森が記された地図があれば欲しいと要求したところ、すぐさまもらえた。多分この状況はほぼ脅しなので思うところはあるが、それはそれ。命を救った報酬という事で納得してもらおう。

 

特に欲しかった情報と物品、この二つを一気に手に入れることができた私は上機嫌でその場を離れた。そして現在とある廃墟の中でちょうどいい空間を見つけ、こうして手記を書いている。

 

地図は思ったより広範囲が記されているが、ある程度自分の位置と森の場所は把握できた。これで時間はかかるものの、いつでも帰ることができるようになった。……とは言えこの距離を徒歩は流石に不便だ。そろそろ飛行魔法の取得に着手したい。

 

そもそもあれは飛行と言うよりは念力の方が近い気もする。試しに身体を纏うように魔力を展開してみたが、浮く気配はまるでない。とは言え私自身を対象にすることはできているらしく、前方に動くようイメージすると軽く引っ張られる感覚があった。

あれか? 今度は重力という名の力の向きでも認識しなければならんのか?

 

……うん、一旦やめだ。今回は普通に徒歩で帰ることにしよう。

続きを考えるのは拠点に戻った後にしよう。その前に果たさなければいけない目標はまだ残っているわけなのだから。

 

今日は早めに休もう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:おそらく雨】

 

死にかけた。本当に死にかけた。

 

前回から数か月。拠点に戻って来た私は周囲の魔力感知を慎重だが全開にしつつ、忘れる前にこの手記を書いている。

 

いや、本当に終わったと思った。何なら眼前を通り過ぎる遠距離魔法(真)を見ていた時、走馬灯がよぎった気すらしている。

 

どうやら私は、あの日の寝床についていくつか勘違いしていたらしい。

 

一つ、寝床にしていた場所は廃墟ではなくダンジョンだった。

二つ、どうやら人類にとっては未踏破のそれだった。

 

 

 

――即ち、ここから導き出された出来事。

魔法使いとの初遭遇、および戦闘である。

 

本当なら気配を消して遠くから魔法を扱う様子を確認し、接触することなく離れることを目標としていたのだ。

だというのに寝床で休憩し、体力も回復。さて行こうと部屋を出た瞬間、目の前に立っていたのは一人の人間。

 

そして彼は言い放った。『付近の村人を襲ったのはお前だな?』……と。

 

その瞬間、私は全てを理解した。

……あ、ゴブリン擬きをけしかけたの私だと思われている? 何ならあれマッチポンプだったと思われている?

 

今思えば私は理解したつもりでしかなかったのだろう。

魔族と言う存在が、この世界の人類にとってどれだけ脅威なのかを。

 

とは言え言い訳をするのは格好がつかないし、何より不敗の賢老として相応しくない。

そう判断した私は軽く問答しつつ準備を整え、相手が魔法を使うと同時に戦闘を開始した。

 

基本的に遠距離魔法を撃ち合うのだが、私は回避を、相手は魔法による防御を主として対応していく。

ここで改めてわかったことだが、やはり防御魔法はいまだ未熟のようだ。まだ魔力による防護膜といった感じで、魔法に対する絶対的な防御力はまだ備えていなかった。

 

とは言ったものの、こちらの攻撃魔法もいまだ完成していないわけで。

このままではジリ貧だと悟った私は、ここで作戦変更……もとい、誉を投げ捨てることにした。

 

まず付近の建造物を魔法で破壊しつつ地面にも撃って視界を潰す。そして魔力感知で居場所を把握した状態で遠距離魔法(改)を時間差で発射するように設定してその場を離れる。道中反対方向に石を投げるなどして注意力を広げさせつつ、背後に移動したタイミングで魔法の攻撃開始。彼が正面に防御魔法を展開したのを確認した瞬間、手に持った瓦礫を全力で投擲した。

 

この時代の防御魔法は逆にある程度の質量攻撃にも対応できているようだが、とは言え発動しなければ防御機能はない。さらにはただ全力で投げつける遠距離魔法(筋肉)なので、魔力感知にも引っかからないわけで。

 

結果、瓦礫をもろに喰らった相手は大きく体勢を崩し、その隙を逃さず急接近。触媒である杖を破壊し、相手の攻撃手段を奪ったことで勝利したわけだ。

 

その後の処理は単純。廃墟、もといダンジョンの中にあった縄を使って拘束し、所持品を確認しつつ殺さないという条件でいくつか質問した。

 

内容は主に、時間に関する事と魔法の事。

まず年月日を聞いたところ答えてくれたが、時計やカレンダー的なものは持っていなかったため何とも言えない結果だった。

次に魔法に関すること、もとい魔導書もしくは彼自身にとっても魔法を扱う感覚についてだ。こちらの収穫は上々で、なんと都合のいいことに魔導書を一冊持っていたのだ。ついでにいい話も聞けたので、これで大目標も達成し終わったといえるだろう。

 

……ちなみに、ここまでの問答において彼は常に真っ青な表情で答えてくれていた。その理由は主に、この壁に空いた大穴が原因だろう。

 

あの時、急接近しようと思った時。

恐らくだが、私は無意識下で飛行魔法による高速接近をしようとしていた。これは私の肉体が魔族であり、独学で魔法を扱えるようになるほど才能に長けた魔族だからこそ出来る事なのだろう。

 

とは言え頭脳、もとい思考は人間である私だ。

全身に魔力を纏って地面から足が離れた時、どうやって相手に近づけばいいかを考えてしまった。そして前方へ動かすという点において、唯一成功体験のある方法を選択してしまったのだ。

 

さて思い出してほしい。

私が持つ唯一の成功体験、それは遠距離魔法(仮)を前方に打ち出すイメージだ。

そして私の図体、それは人間を優に超える巨体だ。

 

質量×速さ。

その恐怖を彼は、粉々になった杖と壁を見たことで思い知っただろう。

 

……まあ、何なら私も思い知った。直前でやばいかもと感じて若干軌道を逸らしておいて本当によかったと思っている。

 

 

 

 

 

で、ここで終わっていれば万々歳な結果だったのだが。

現実はそう甘くないようで。

 

周囲に魔物がいないことを確認した私は入り口に魔法使いを放置し、隠密を継続しながら移動していた。

 

――そして数分後。彼がいるであろう方向から、途方もないほど膨大な魔力を感じ取ったのだ。

 

一瞬で全身に冷や汗をかく。そしてその動揺が自身の隠密に揺らぎを生じさせたのを自覚した瞬間、全力でその場から離脱した。

そして目の前を光線が通り過ぎ去ったかと思えば、大きな爆発を引き起こして吹き飛ばされたのだ。

 

もうそこからは必死だった。

魔力を逆探知されるわけにもいかないので隠密だけを徹底し、身を隠せる場所に潜伏する。そして夜中の数時間だけ移動し、日中は再び隠れる。

そんなことを隠れるために遠回りしながら続けていった結果、行きの何倍もの時間がかかったわけだ。これも人間から地図を貰っていなければできなかったことなので、本当に感謝している。

 

 

 

……駄目だ、まだ思い出すと恐怖で身体が震えてしまう。

 

今日はいったんここでやめ、また纏まったら記すことにしよう。まずは休むことを優先したい。

 

上には上がいるとは知っているものの、あんな規格外の存在もいるのか。……いつかは、絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:大雨】

 

魔族に出会った。

なんでも人間との共存を目指しているらしい。

そんな中で二度も出会い、かつ一度は攻撃されたのにもかかわらず殺さなかった私の噂を聞いて、ここまで探しに来たとのことだ。

 

こちらへの殺意を感じることはないし、一先ず話だけでも聞いてみることにした。

私としても、ようやく出会えた同胞だ。色々と、有意義な話ができればいいのだが。

 

 

 

とはいえ、その……なんだ。

いくら声色が喜んでいるとはいえ、無表情だといささかシュールだ。それに全身びしょ濡れなのも相まって、ものすごくシュールだ。

 

取り合えず、身体だけでも拭いてくれ。

 

 




※この話の置き場所を考えています。最新話である現在の場所か①の次、どちらに置いた方が皆さん見やすいでしょうか? よろしければ、アンケートに答えていただければ幸いです。


実は前書きを書いていたのは数日前で、このあとがきは24話を見ながら書いています。なので現在はまあ大丈夫かと思っていますが、当時の混乱っぷりを思い出すためにあえて残してみたり。

……いやー、書きたいことが溢れてくる。
こっちの完結より先に二次試験編を書き出す可能性すら出てきそう


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