知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを(本編完結)   作:月光好き

16 / 20


お久しぶりです。
遂に来月からアニメが再開するということで、ぼちぼち進めていこうかと。





『いつかどこかの誰かの手記③』

 

 

 

 

 

【天気:雨のち曇り】

 

旅の結果を振り返り、まだまだ未熟だと思い知らされてから早数ヶ月。

 

日々研鑽を重ねる私の前に彼は現れ、いきなりこう切り出したのだ。君は人間をどう思う? と。

 

いや、いくらなんでも唐突すぎやしないか?

そう思った私は一先ず拠点に招き入れ、ずぶ濡れだった体を拭いてから事情を聞くことにした。

 

彼の名前は『●△◆×★』というらしく、人類との共存という目的を掲げて人類と争っているらしい。

ただその目的を他の魔族に理解してもらうことはできず、力量の差を見せることで従わせているとのこと。

 

同じ価値観を持つ同族はいないのか? そう考えてた最中に見つけたのが私だったというわけだ。

戦っていた魔法使いを手にかけていないことに違和感を覚え、周辺の状況を集めた結果。私が人間を一人も殺さず、むしろ魔物から助けていたということさえ知ったらしい。そして私の拠点を突き止めたことがきっかけで我慢ができなくなり、部下の制止を振り切ってここまで来たと聞かされた。

 

……さて、どこから突っ込めばいいものか。

そう思った私は問いに答えつつ、時に質問をすることで対話をしてみることに。

 

人間をどう思うのか?

これに対する私の考えはシンプル。己にとって利益があるかどうか、それだけだ。

特に殺す必要はないと考えているが、殺さないという信念があるわけでもない。選択肢の中には存在しており、他に優先すべき事項があるというだけだ。

 

なぜ共存を掲げながら戦争を仕掛けているのか?

それに対する彼の答えは、彼が示した共存の道を人類側が拒否したからだそうだ。

それ以外の方法を思いつかない彼はもっと人間を理解する必要があると判断し、追い詰めたときにこそ本性が現れるという理由で戦争を仕掛けることにしたのだとか。

 

これらの他にも見つかった経緯だとか人への食欲だとか、そういったことを互いに質問して答えていった。

 

そして気づけば日は沈み、夜を迎えて間もない頃に彼は帰っていった。

なんでも彼の部下が随分前から森の外に待機しており、さすがに時間切れとのこと。

 

そして去る前、私に向かってこう切り出したのだ。

『私と共に歩まないか?』、と。

 

返事は後日聞く、そう言い残して彼は去っていった。

 

……よくわからないが、どうやら気に入られたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:晴れ】

 

結論、一旦断った。

 

正直なところ、彼の提案はかなり魅力的だった。

行動を共にすることができれば、魔法を学べる環境が一気に整うということ。

今までとは比にならない効率で研鑽を積み重ねることができるはずだ。私の生涯の目標を果たすためには一分一秒とて貴重な時間、それを大幅に短縮できるであろうこの誘いには乗ろうかと最初は思っていた。

 

……が、そこで彼の話を思い出したのだ。

『思想の合わない魔族は実力で従わせている』、ということを。

 

そうじゃん。そういや魔族って、同族に関しては超実力主義じゃねーか。

ということは私が彼の集団に加わった場合、意にそぐわないと他の魔族がこちらを従わせようとしてくると考えるべきで。

 

いやいや、ありえない。不敗の賢老クヴァールが魔王以外の誰かに従うなんてこと、私自身が認めたくない。

 

そんなわけで正直なことを言えば、私自身のエゴを優先させてもらった。

考えはわかるし提案を受けたいが、まだ私が未熟なので実力が伴うまで待ってほしい、と。

 

さてどうなるかと思ったが、彼はそれをあっさりと承諾。

なんでも彼の腹心の部下は未来を見通せる魔法を扱えるらしく、今回の結果も実は知っていたとのことだ。

とは言え直接私の口から理由を聞いたことで納得したので、今日その部下に隠れてここに来てよかったとも言っていた。

 

……なんというか、ものすごく苦労をしていそうな予感がする。一先ずご愁傷さまですとだけ心の中で言っておくことにしよう。

 

そんなわけで私の中で納得いく実力になった時、今度は私から会いに行く。

そういった約束を交わし、彼がこの場を去ったのが今朝の出来事だったというわけだ。

 

……うん。まぁ、さすがに私でもわかる。

初めて出会った魔族、それが魔王なんてことあるんだね。

 

間に一ヶ月くらい期間が空いたのですわ忘れたかと思ったが、そこは単純に時間感覚が私とずれていただけらしい。

まあ寿命何百年の魔族からしたら、後日なんて一か月みたいなものか。

 

とは言え、魔王の出会いを含めた今回の出来事はかなり大きな収穫があった。

それすなわち、魔法使いとしてのお手本だ。

 

一人目、私を殺そうとした人類側の魔法使い。

もう誰なのかはなんとなくわかっているが、魔王は彼女を重要視していて監視対象だったとのこと。そのついでに見つかったのが私らしい。

彼女が使った遠距離魔法はこの目に焼き付けている、未だ再現には程遠いが、間違いなく手がかりをつかむことができた。

 

二人目、魔王。

別に戦ったわけではないが、彼の飛行魔法を何度か目にする機会があった。

その際の魔力の流れや、移動することにおける明確なイメージ。これは私の飛行魔法を完全なる状態に持っていくのには十分すぎるヒントだった。

 

これらを基に、私の地力を全力で引き上げる。

目標はもちろん、木っ端の魔族にケチを付けられない程圧倒的なものを、だ。

 

一応の目安は魔王から教えてもらったので、とりあえずそこを目標に始めて行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:晴れ】

 

あれから半年。

遠距離魔法の射程が約二倍になり、強度も向上した。

 

一歩ずつとは言え、間違いなく進んでいるのを実感する。

うん、やっぱ手本の存在って大事なんだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:晴れ】

 

前回より一年。更に倍になった。

元と比べると約四倍なので、ようやく本来の遠距離魔法に近づいたと言えるだろう。

 

日に日に射程が伸びていくのを実感できるのは実に楽しいものだ。とは言え伸びしろは少しずつ落ちているため、序盤特有の伸びだったのだとは思うが。

 

また改良の方も順調に進み、速射型はより速く、連射型はより広範囲にバラまけるようになった。

とは言え速射型は射程が、連射型は密度がまだ足りない。まだまだ鍛える必要があるだろう。

 

正直これらの応用は土台が整ってこそ効率よく鍛えることができると思うが、魔力切れの間に考えていると試したいことが湯水のように湧き出てくるのだ。

何はともあれ実践し、結果をまとめる。そこから使えそうな要素を抽出し、それらをもとに新たな仮説を立てる。

 

そしたらまた実践、といった感じの日々をとにかく繰り返してきた。

おかげで魔力切れで倒れている間に思考を回すことにもだいぶ慣れてきており、最初の方こそ頭が真っ白になっていたのがもう懐かしいとさえ思えるほどだ。……まぁ、とは言え相変わらず指一本動かせないほどの疲労感に包まれているのは変わらないのだが。

 

色々書いてきたが、何はともあれ遠距離魔法の完成が見えてきた。

基礎中の基礎だというのにこんなに時間がかかってしまったのは、ひとえに私のせいとしか言えない。本来の彼ならこんなに手間取るはずがないからだ。歯がゆいものだが、少なくとも前には進めているので気に病むのはやめようと思っている。

 

……だからこそ、次の方針をもう考えておいた方がいいだろう。

というのも魔王に協力するにあたり、魔法の習熟と同じくらいに重要な解決すべき事項があと一つあるからだ。

 

それすなわち、魔力量

魔法使いにとって最もわかりやすい力の源であり、地力と呼べる代物だ。

 

最初に目が覚めた日から六年以上の月日がたっており、そのほぼすべてを鍛錬に費やしてきた。おかげで間違いなく魔力量は上がっているのだが、これではまだまだ足りない。

 

如何せん魔力感知ができた魔法使いはこれまで三人としか出会えておらず、うち二人は頂の世界にいる例外。

残った一人も特別強かったわけでもないため、彼を目安にするのはいささか早計だろう。

 

ならば残された手段は一つ。目安の母数を増やしつつ、より濃密な経験を積むしかない。

 

詰まる所、とにかく実戦あるのみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【天気:曇り?】

 

……まずい、新発見がないからと書くのをさぼりすぎた。

 

まず遠距離魔法が納得いく完成度になった時、鍛錬のメニューを見直した。

 

遠距離魔法と飛行魔法、及び魔力探知や魔力操作の訓練は変わらず続けている。

ただ大体半年に一度、数か月ほどかけて遠征に出るようにしたのだ。

 

目的はもちろん、魔法使いとの実戦。

人類はもちろん、私を従えようとしてきた魔族も何度か相手にした。初見の魔法を見極めた上で対処法を見出し、少ない手札で戦う。これは中々に難儀だったが、おかげである程度の対応力は鍛えられたと思う。

 

また勝った際の報酬と称して魔導書などのアイテムを根こそぎ奪ったため、いくつか魔法を覚えることもできた。とは言え戦闘用と言えるものは少ないうえに使う予定もないのだが、魔法そのものを学ぶ機会にはなっている。いつかあの魔法を作れるようになった時、何かの役に立てばいいのだが。

 

とは言え現在挑んでいるのは基本互角、よくて僅かに格上の相手だけだ。本音を言うのなら格上と戦うことで少しでも技術を盗みたいのだが、人類相手にそれをやるほど私は馬鹿ではない。また彼女の存在がある以上、無暗矢鱈と実害を出すわけにもいかないのが現実だ。こればっかりは解決するのは時間の問題になるのだろう。

 

そんなわけで鍛錬を重ね、試行錯誤を繰り返し、実戦経験を積み上げ続けてきた。

 

何度も何度も。

こうして日記のことを忘れ去ってしまうほどには没頭し、あたかもあの日の出会いが少し前の出来事に感じてしまうほど熱中していた。

 

 

 

……さて、ようやくだ。

 

五十年。随分と待たせてしまったが、ようやく約束を果たす時が来た。

 

覚えているのか若干不安だが、そこは彼の言葉を信じるしかない。

明日になったら荷物をまとめ、長年世話になったこの森を出るとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《追記:魔王軍1日目》

 

魔王様の部下(シュラハトという名前らしい)に連れられた先、そこには山のように積み上がった魔導書がありました。

 

……いや、嬉しいけどさ。

確かに従う際の対価として魔法を研究できる環境を希望したけどさ。

 

え、本当はもっと増える予定だった?

神話の時代のものと予想される魔導書もある?

 

なんで君は私にこんなに協力してくれるの??

 

いいから存分に使ってくれ? 

これからも増やすから存分に没頭してくれ?

是非とも私の夢が叶うことを願っている?

 

あ、はい。わかりました。

 

 

 

 

 




※魔王
設定不明すぎてほぼオリキャラ。この作品では口調や声色には感情が乗っているが、常に無表情。名前は聞き取れたのだが文字で表現できないほど難解だったらしい。

※魔王腹心の部下
未来を見通せる魔法を持つあの方。直接見たことで詳細な未来分岐を見てしまい、あまりのやばさに主人公の魔法研究RTAを決行することを決意した。



感想・評価共にありがとうございます。
また誤字報告も助かっております、ありがたい限りです。

番外編全体の構成見直しも無事終わりました。
その日の勢いで書いてたからそれぞれ構成が微妙に違っており、それをある程度統一した感じですね。その日のテンションで表現変えていたからばらばらでまぁ大変でしたね……。

そう言えばぼんやりしていたのでここで設定を決めておこうかと。
私は単行本勢になったのですが、主人公の原作知識は『アニメ1期』のみです。なので原作キャラの一部に関しては知らなかったり覚えていなかったりします。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。