知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを(本編完結)   作:月光好き

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※作者の知識:
①葬送のフリーレン(アニメ)
②クヴァール(pix〇v大百科)

のみです。アニメを初見で楽しみたいが故のこの様よ。
原作と矛盾が発生したら……その時考えます(白目)。



『物語、その始まり』

 

 

 

 

 

『な、なんじゃこりゃああああああッ!!??』

 

『クヴァールさん、この姿はどう考えてもクヴァールさんじゃないか!?』

 

 

 

 

 

――この、景色は。

 

あぁ、懐かしい。儂の……私の、原初の風景だ。

 

 

 

 

 

『クソッ、何故よりによってクヴァールさんなんだ。最終的にフリーレンに負けたとは言え、()()の賢老と呼ばれ、生前も死後も評価がものすごく高い。そんな強キャラに、なんで私が……?』

 

『……夢か? 夢であってほしいな、肌に伝わるこの感覚も幻であってほしいものだな??』

 

 

 

 

 

あぁ、そうだ。最初の日は、とにかく混乱していたんだった。

 

意味もわからず生を終え、事情を把握する前に再び始まった私の物語。

前に終わった理由もわからず、今に至った理由も知らず。挙句、前の知識がそのまま引き継がれている理由も誰かが教えてくれることもなかった。

 

分かっていることはただ一つ。この肉体には本来の所有者がおり、それは私が憧れてやまない存在だということだ。

 

 

 

 

 

『クソッ、わからん。人を殺す魔法(ゾルトラーク)以前の問題だぞ、これ』

 

『魔法とは? 術の構築とは? 魔族とは?……知らないことが多すぎる』

 

『知識が足りない、知能もこのままではだめ、経験なんて言わずもがな。……うへえ、絶望的だ』

 

『だが、諦めてたまるか。不敗の賢老と呼ばれる彼が、こんなことで諦めるわけがない』

 

 

 

 

 

()()の賢老、クヴァール。

 

魔王に仕え、最高幹部たる七崩賢ではないものの圧倒的な存在感を見せた魔族。

彼が作った史上初の貫通魔法である人を殺す魔法(ゾルトラーク)は、人類の魔法体系に組み込まれるほどの完成度を誇った逸品だ。

さらにクヴァール本人は想定外のことが起きても即座に分析、対応して見せるほどの観察力と柔軟性を持ち合わせている。

 

そんな彼に、私はなった。ただの人間であった私が、だ。

 

 

 

 

 

『やってやるさ。クヴァールの名を、世界に刻んでやる』

 

『知識は……魔法使いでも襲うか。戦闘経験にもなるし』

 

『おっと、口調も今のうちに変えておくか。……うむ、儂はこの方がそれらしい』

 

 

 

 

 

今思えば、一周まわって微笑ましい光景だな。

 

あれから何年……いや何百年経っただろうか。

数多の戦闘をこなし、数多の知識を集め、数多の魔法を積み重ねた。賢老と呼ばれるためにも、取り込める物はすべて吸収した。おかげで数えるほどしかいない友人たちには、儂は魔族として異端だと言われていたのを思い出す。

 

……しかし、なぜ今になってこんなことを思い出す?

封印中は時々夢を見るように過去を思い出すことはあったが、直ぐに微睡の中に消えていっていた。それが今回に限っては、これだけ物事を考えても意識が朧気になることはない。

 

まさか――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……分、…安…になってるね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――あぁ。

 

待っていたぞ、この時を……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらです」

「…………」

「これ、は……?」

 

 

村人に連れられ、私たちは目的地にたどり着く。

 

切り立った崖の上。石門の向こうに静かにたたずむそれは、あの日と変わらぬ存在感を放っていた。

 

 

「……さて」

 

 

彼に近づき、手で触れる。

遠目で見た時から薄々感付いてはいたが、こうして触れることでそれは確信に変わった。

 

封印が風化している。年月では説明できない程、わかりやすく。

 

 

「……大分、不安定になっているね」

 

 

確信する、この封印は近いうちに解ける。1月……もしかしたらそれより早いかもしれない。

アイゼンを呼ぶ前にまず確認しておいてよかった。最悪の場合、呼びに行く間に封印が解かれていた可能性すらあったのだから。

 

 

「どうしたものか……」

「フリーレン様?」

「ちょっと状況が変わった。準備をして、明日にでもクヴァールを――――」

 

 

 

 

 

――久しいのう、フリーレン

 

 

「「ッ!?」」

「……?」

 

 

これからの予定を話そうとした瞬間、頭の中に声が響く。

即座に杖を構え、石像に杖先を向ける。視界の端でフェルンが驚く様子がチラッと見えていたから、あの子にも聞こえているようだ。

 

僅かな動きも見逃さないよう彼の全身を見れるように後退しつつ、様子を観察する。

 

何も変わっていない。動く様子もないが、じゃあさっきの声は一体……?

 

 

――そう身構えるな、まだ体を動かすことはできん――

 

「……フリーレン様、これは」

「魔法だろうね。でもまさか、意識は既に戻っているなんて」

「フリーレン様、フェルン様。いったい何を……?」

 

 

私たちが相談していると、村人が話しかけてくる。どうやらこの魔法、ある程度対象を絞ることが可能らしい。

 

 

――魔力に声を乗せる魔法(メッセージ)。ある程度魔力を持った者には無差別に届くゆえ、未完成品だがな――

 

「…………」

 

――して、良いのか? 後ろの者、一人はともかく……もう一人は戦う者ではない――

 

「……フェルン、お爺さんを連れて一度村に戻ってもらえるかな?」

「……まさか」

「封印はまだ大丈夫だよ。でも、今すぐ解けてもおかしくないみたいだ。私はここで見張っている」

「いえ、しかし!」

「いいから。もし夜遅くになったら一泊して朝に来るんだよ、危ないからね」

 

 

フェルンは反対しているようだが、それに構っている余裕は正直今はない。

()()()()()()()とはいえ、長年封印された身だ。何をしでかすか、わかったものじゃない。

 

 

「……わかりました。お爺さん、行きましょう」

「は、はい!」

 

 

まだ思うところはあるようだったが、フェルンは村人を連れてきた道を戻っていく。あの子は聡明だ、この状況を正しく理解してくれたのだろう。

 

……さて、どうしたものか。

村にたどり着いたのが昼過ぎで、今は夕方。この分じゃ、フェルン達が村に戻るのは間違いなく夜だ。一応言い聞かせたけど、あの様子じゃ絶対にすぐ引き返して来そうだし……。

 

 

――カカ、随分と過保護な弟子を持ったようじゃのう――

 

「うるさいよ」

 

――あれから、何年たった?――

 

「80年」

 

――80年、か。予測よりも早いが、それでも長い時間がたったものだ――

 

「……意外だね。魔族のお前が、80年をそう感じるんだ」

 

――まあのう。……魔王様は――

 

「殺した」

 

――そうか。ヒンメル達は……いや、無粋だな――

 

 

静かな時間が流れる。

崖の上で、いつ動き出すかもわからない宿敵。それが目の前にいるのに、私たちは会話を続けている。

 

 

「……ねえ、なぜ今まで動こうとしなかったの?」

 

――噓は言っておらぬ。元から不安定になりつつあるのもあったが、思考がまとまるようになったのは先程おぬしが触れてからだ――

 

「やぶ蛇だったか……」

 

 

……あぁ、あの時もそうだった。

 

あの時から変わらない、やはりクヴァールは何かが違う。魔族として、根本的にずれている気がする。

 

 

「で、いつ始める? いつでも解けるだろう、お前なら」

 

――カカ、今ではないのう。そこに関しては、互いにその時は合致しているであろうよ――

 

「…………」

 

――魔王様の敵討ちとも行きたいが、それよりも儂には優先すべきことがある。あぁ、楽しみだ……!――

 

 

……楽しみ、か。

 

魔族とて感情はある。だがその感性は人間とはかけ離れており、絶対に理解しあえるものではない。私は今までも、これからもそう思っている事だろう。

 

だがやはり、こいつだけは違う。

先程の話し方、その内容。明らかにこちら側の感情を理解していた。同胞の死にすら無頓着であるはずの魔族が、自分の主どころか敵の仲間についてまで自然と気遣いを見せているのだ。

 

……本当に、厄介な奴だと思うよ。

 

 

――夜は長い。あの小娘が戻ってくるまで時間がかかる、力を蓄えておけ――

 

「魔族の言うことを信じるわけがないでしょ」

 

――カカ、その通り! だが待つ間、互いににらみ合うのも面白くない――

 

「…………」

 

――契約だ、フリーレン。儂の要求にこたえてくれれば、その時が来るまで儂は動かぬ――

 

「……その内容は」

 

 

 

 

 

――聞かせてくれぬか、魔王様の最期を――

 

 

 

 

 

その後、朝日が昇るまでクヴァールから言葉が発せられることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっか。

……やっぱ、友達が死ぬのを聞くのはいつまでたってもつらいもんだな。特に、異端であるがゆえに友達が少なかった今だと猶更だ。

 

分かってはいたが、80年というのは本当に長い。魔族として何百年と過ごしてきたが、人間としてのこの感覚を忘れないようにして正解だった。

 

何故なら年月を軽く見ていたこの驕りこそが、原作でクヴァールを死に至らしめる原因の一つだったのだから。

 

 

 

……おもえば、ここまで長かった。

 

世界に……最強の魔法使いの1人であるフリーレンに、クヴァールの名を刻む。それこそが、私が考えた大目的の一つ。明日、その運命が決まる。

 

それに、実際の所気になるしな。

80年、その間に人間がどれほど積み重ねてきたのか。私の思惑とは別に、本当に楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぬしの予想は正解だ、フリーレン」

 

「意識が戻った以上、いつでもこの封印は解けていた。全身石化とは言え、思考が回せるということは脳が戻ったということだからのう」

 

「こうして蝕めば、石とて瞬く間に崩れ去る」

 

 

見せてみろ、私。

不敗の賢老(クヴァール)に、積み重ねた叡智の結晶を。

 

魅せてみろ、フリーレン、フェルン。

(クヴァール)に、積み重ねた可能性を。

 

 

 

 

 

「では、始めようかのう」

 

 

――さあ、運命の時だ。

 

 




感想・評価共にありがとうございます。

週間「その他原作」ランキング入り、誠にありがとうございます!
勢いのみで始めたこの小説を楽しみにしてくれている方が多いようで、私としても嬉しい限りです!

やっぱりみんなクヴァールさん好きなんですねえ……。

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