知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを   作:月光好き

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知ってます?
これ、本当は三話くらいで終わらせるつもりだったんですよ?



『攻略開始』

 

 

「フリーレン!」

「……デンケン。それに皆も」

 

 

脳内で仮説を立てた直後、背後から声がかかる。

どうやらデンケン、カンネ、ラヴィーネ、リヒター、ドゥンストは合流することを選んだようだ。

 

魔力探知で誰かはわかっているので、注意を正面に向けたまま声をかける。が、どうにも返事が遅いように感じた。

 

どうしたんだろう? そう考えるが、すぐさま理由を理解する。

そういえば今の自分は魔力制限を完全に解放していた。つまりは結構な圧を皆にかけていることになっているのだろう。

 

これじゃ話しかけにくいか。そう判断したフリーレンが自分から話を切り出す為に口を開いた。

 

 

「他の複製体は?」

「ッ……それが状況が変わった。魔力探知にかかる複製体の数が先程の砲撃以降、数を大きく減らしている」

「砲撃……あぁ、あれか。巻き添えを食ったんだろうね」

「一度倒しても時間が経てば再生成される可能性もあったが、その気配もない。……扉の向こうのあ奴を維持するために、相当なリソースを使っているのだろう」

 

 

そう言いながらデンケンは扉に空いた大穴を見る。

穴の先に立つ二人を眺め、その様相から異常事態であることは把握しているようだ。

 

 

「フリーレン、あの魔族は……」

「このダンジョンにいるわけじゃない。私達の記憶の中から生み出した、半端な複製体」

「名は?」

「クヴァール」

 

 

誰かが息をのむ音が聞こえる。

どうやらみんなはしっかりと魔法史を勉強しているようだ。それが今回に限っていい事なのかは別として。

 

 

「腐敗の賢老、クヴァール。史上初の貫通魔法、人を殺す魔法(ゾルトラーク)を開発した魔族だ」

「……奴が、クヴァール」

「魔王がいた時代の魔族……ですな」

「なんか、嫌な感覚……」

「……だな、魔力が纏まりすぎてて気味が悪い」

 

 

フリーレンの説明を聞き、デンケン、ドゥンスト、カンネ、ラヴィーネがそれぞれ言葉を続ける。

 

そして話を聞いていたリヒターもまたクヴァールの複製体を眺めつつ、状況把握と行動内容を決めるために口を開いた。

 

 

「経緯はともかく、数が増えたのは厄介だな。まだゼンゼとフェルンの複製体も倒せていない、どうするフリーレン?」

「条件は変わらないよ。私の複製体を殺せば最深部の扉は開く、私とフェルンならそれができるのも変わらないけど……」

「奴がそれを許さない、か」

「……ねえ、人を殺す魔法(ゾルトラーク)が貫通魔法だったのは昔の話だよね?」

 

 

そんな中、カンネが声をかける。

それを聞いたリヒターは無言で続きを話すよう促し、それに気づいた彼女も言葉をつなげる。

 

 

「それに対抗できるよう開発されたのが今の防御魔法なんだし、一般攻撃魔法だってこっちの方が新しい。分断した後、フリーレンとフェルン以外の全員で戦えば数の差でいけるんじゃない?」

「分断つったって……どうやって?」

「ど、どうにか!」

「おいおい……」

 

 

カンネが話した内容、それは至極妥当な判断だ。

 

状況は変わったものの、自分達の勝利条件は変わらない。

大昔の存在とは言え、より進化した人類の魔法体系ならば互角以上の戦いができるはずだと、彼女は考えていた。

 

 

「そうだね、作戦の方針としてはそれでいいと思う。まず私が私を足止めするから、その間にクヴァールを分断。その後フェルンがこっちに合流して叩くまでの間、今度は全力でクヴァールを足止めすれば勝てる」

「だよね!」

「でも、勘違いしちゃだめだ」

 

 

フリーレンは賛同するものの、釘を刺すために静かに言葉をつなげる。

 

80年、それは人類にとっては十分に長い時間だ。しかしフリーレンやクヴァールにそれは当てはまらず、奴ならばなおのこと。

 

何故ならクヴァールは目覚めた直後の魔法の攻防。それだけで防御魔法の術式を完全に再現し、弱点も即座に見抜いてみせたのだから。

 

 

「クヴァールの最大の武器は人を殺す魔法(ゾルトラーク)じゃない。80年前に人を殺す魔法(ゾルトラーク)を開発した()()だよ」

「う……」

「待て、そもそもそれ以前の問題が残っている」

 

 

カンネが詰まったところで、リヒターが声をかける。

彼としてもその作戦方針で問題はなかったが、そもそもの前提条件をまだ解決できていない。それをどうするか尋ねるため、口を開く。

 

 

「ゼンゼとフェルンの複製体だ。俺たち全員で戦っている間に、奴らに背後から襲われたらそれこそ終わりだぞ」

「問題ない」

 

 

その問いに対し返答したのはデンケンだった。

彼は閉じていた眼を開き、先程まで行っていた魔力探知の結果を全員に伝える。

 

 

「先程、メトーデがフェルンの複製体と戦闘を開始した。それにゼンゼの大まかな居場所は把握できている、そうだろうリヒター?」

「奇跡的に回避できて、そのまま戦わずに離脱しただけだ。あそこから移動しているのなら、見失ったも同然だろう」

「複製体に自我はなく、決まった習性がある。それなら凡そのルートは予測できるはずだ」

 

 

そこまで話したところでデンケンは何かに気づいたようで横目で視線を逸らし、直ぐに戻す。

そして杖を構えた状態でフリーレンの隣に立って口を開いた。

 

 

「……今まさに、参加者の誰かが戦闘を開始した。先程集まった面子ではない者が、ゼンゼの複製体を見つけ出したようじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(この感覚。……やはり私の複製体の相手は彼女になったか)

 

 

目の前で行われている会話を聞きながら、ゼンゼは魔力探知で全体の戦況を把握していた。

 

今現在残っている複製体は全部で六体。本来なら時間経過で再生成されると思っていたが、デンケンの言う通り他の事に気を取られていてそれどころではないらしい。

 

そしてフリーレン達にとって厄介なのは、最深部を守る二人以外の四人。

しかしこれまたデンケンの言葉通り、その全員が戦闘を開始していた。

 

 

 

 

 

「少々厄介な状況になりましたが……私は私の役割を果たすとしましょう」

 

 

フェルンの複製体は、メトーデが。

 

 

「爺さんたちが心配だし、下手に長引かせるつもりはないよ」

 

 

メトーデの複製体は、ラオフェンが。

 

 

「彼女の言ったとおりだな。本当に複製体の反応が減っている」

「最深部に向かおうとする習性もね。……だからこそ、こうして待ち伏せができたんだけど」

「お前ら、気合入れろよ。なんせ相手は百戦錬磨の爺さんだ、どんな手使ってくるかわかんねえ」

 

 

デンケンの複製体はヴィアベル、エーレ、シャルフが。

 

 

 

 

 

「あれ、毛先が焦げてるじゃん。……どうせだし、もっとさっぱりしてみない?」

 

 

――そして私の複製体は、ユーベルが。

 

 

(勝敗なんて既に分かっている。……おそらく、戦いにすらならない)

 

 

ユーベルは、はっきり言ってイカレている。

 

魔法において必要なのは、完璧なイメージ。

本来なら突破不可能だと言える防御術式が込められた外套を、彼女は過去に難なく切り裂いたことがある。

 

知性ある生命体である人ならば避けられぬしがらみ。彼女はそれを無視して自身の感覚に従って魔法を使うことができる。これは最早才覚の領域だ。

 

 

(ユーベルには勝てるイメージが沸かない。……相性が悪すぎる)

 

 

大体なんでも切る魔法(レイルザイデン)】、ユーベルが使う魔法の名。

 

あれは防御魔法で簡単に防御できる。おそらくだが、魔法を防ぐための魔法を切るイメージはわかないのだろう。

しかし、複数の防御術式が込められている私の髪。本来なら防御魔法よりはるかに強靭な私の髪を、彼女はあっさりと一刀両断にすることができるという確信がある。

 

 

 

 

 

――布ってのはさ、切れる物なんだよ。切れて当たり前の物だ――

 

――ところでゼンゼさん。その髪……手入れとか大変でしょ?――

 

 

(……思えば、あの時点で私は負けているのかもしれないな)

 

 

そう思考をまとめたところで、自身に先程から向けられている敵意を感じて顔をしかめる。

 

私がいる広間の奥。最深部を守る内の一人が、出現した時から私の攻撃を警戒しているのだ。

 

 

(隙あらば攻撃する気か?……私に攻撃の意思がないことは水鏡の悪魔(シュピーゲル)経由で分かるだろうに、随分と用心深い事だ)

 

 

腐敗の賢老、クヴァール。

魔王が生きている時代に存在した、数少ない魔王直属の魔族。七崩賢と同等の地位を持ちながら他の魔族を従えず、魔王やその腹心の命令でのみ戦場に現れていたらしい。

 

そして奴が現れた戦場の特徴として、死体が一切残らないという点がある。

その理由こそがあの魔法、【人を殺す魔法(ゾルトラーク)】。史上初の貫通魔法により、奴と戦った戦士や魔法使いの全員が肉体を残すことなく散っていった。その様から【不敗】の賢老とも呼ばれている、大魔族と言っても差し支えない存在だ。

 

 

(格だけなら七崩賢クラスの魔族、まさかこんな形で見ることができるとはな。……さて、君たちはどう攻略する?)

 

 

そう考えている間に、どうやら作戦会議は終わったようだ。

 

短い話し合いだったが、それでもある程度は纏まったようで。

集まった七人は二手に分かれ、部屋に残った組の中でフリーレンとデンケンが歩き出す。その様子を眺めながら、ふと先程探知した結果を思い出した。

 

 

(うん、やっぱり負けた。……それにしても、随分と彼女の魔力が揺らいでいたな。なにかあったのか?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、始めようか」

「本当にいいの?」

 

 

複製体が待つ部屋の前に立つデンケンとフリーレン。

 

元は扉があったのだが、クヴァールの複製体が放った一撃によりその役割は果たせなくなっている。

なので開けられた穴を通れば向こうの攻撃が始まるだろう。そう考えているデンケンに対し、フリーレンは確認も込めて問いかける。

 

 

「言ったはずだ。初手から全員で掛かれば、クヴァールが誰を狙うか予測ができん。場合によっては、即座に死者が出る」

「だけど一人でやるのも大概無茶だ。フェルンと一緒のほうが安全だよ」

「ないな。フェルンはフリーレンの複製体を叩くのに集中すべきだ。それに彼女が姿を隠すだけで、奴らは周囲を警戒せざるを得なくなる」

 

 

魔力制御に長けたフェルンの場所を特定できない限り、常に不意打ちの可能性が奴らの思考によぎる。

一度捕捉したクヴァールの複製体が執拗に追撃し、多少の無茶をしてでも二人掛かりで潰しにかかった。それ程までに警戒しているという事だ。

 

 

「こちらは魔力を温存しつつ、敵を削れる。……これ以上ない手だ」

「今のうちに言っておくけど、あの時使った一般攻撃魔法の派生はクヴァールが生み出したものだ。フェルンは全部使えるけど、私はまだそのうちの半分だけ」

「……第一次試験の時だな」

 

 

第一次試験。そこでフリーレンと戦い、敗北したデンケンはその時の光景を思い返す。

 

地力が違いすぎて、まるで指導試合のようだった。

デンケンが複数種の魔法をかけ合わせて苛烈に攻めていたというのに、フリーレンは基礎的な魔法だけで対処しきった。()()()()()()()()()()()()()()、魔力差で削り切られる結末は目に見えていた。そこで強引に攻めたのだが……綺麗に反撃されてしまい、そのまま敗北してしまったのだ。

 

 

「知っておいた方がいい。あの時使ったのは圧縮して速度と硬度を上昇させる派生と、標的を追尾する派生だ。その他が……」

「好きな軌道で撃てる派生と、着弾点で爆発させる派生。……そうだな?」

「…………」

 

 

正面を向いたまま確信をもって言い放つデンケンに対し、フリーレンは無言で意識を傾ける。

 

それを彼も感じとったが、何も行動は起こさない。とは言え余計な考えはこの先障害になることはわかり切っているので、さっさと誤解を解くために口を開く。

 

 

「言っておくが儂は使えぬし、クヴァールと戦った事もない。無論、派生形のことが記されている魔導書も持ってはおらん」

「……嘘じゃないみたいだね。じゃあ、どうして?」

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――デンケン様。この魔法はあなたが生きている間は必ず基本の頂点に君臨します――

 

――なので今日はまず、私の親友(とも)が示したこの魔法の先を見せておきましょう――

 

――いつか必ず、人類はこの領域に辿り着く。その時、必ずやデンケン様の力になるはずです――

 

 

 

――無理ですか。……私を殺せるほど、強くなりたいのでしょう?――

 

 

 

 

 

「……なに、昔にな。死にそうな目に遭いながら、対処法を全力で覚えたことがあるだけだ」

 

 

そう言い終え、杖を構えるデンケン。これ以上話すつもりがないのをフリーレンも感じ取り、改めて正面を見据える。

 

相対する四人。

先に行動を開始したのは、フリーレンとデンケンだった。

 

 

「それじゃ、任せたよ」

「いらぬ世話だろうが、気を抜くなよ」

 

 

そう言いあった後、同時に一般攻撃魔法(ゾルトラーク)を放つ。

数多の光線に分裂し、一斉に襲い掛かる。それを見たクヴァールの複製体が前に出て防御魔法を展開するが、届く直前に軌道を変えて地面に次々と着弾する。

 

衝撃と共に視界が煙で覆われる。そんな中フリーレンは二人の上空を陣取るように飛ぶが、彼女の複製体がそれを見逃すはずもなく。

瞬間移動の類の魔法を使い、フリーレンの目の前に現れる。とは言えそれは想定内であり、ここから互いに使う魔法もほぼ予測できていた。

 

 

「【地獄の業火を出す魔法(ヴォルザンベル)】」

 

 

互いの杖先から放たれる地獄の業火。それらはぶつかり合い、周囲に膨大な熱量をまき散らしていく。

 

クヴァールの複製体はその様子を眺めつつ、フリーレンを攻撃しようと手を向ける。

しかし背後から魔力を感知し、振り返りながら人を殺す魔法(ゾルトラーク)を複数放つ。

 

その先、背後に回り込んでいたデンケンは発射直前の動作を観察し、それぞれの特性を察知して対処を始める。

まず通常の人を殺す魔法(ゾルトラーク)を防御魔法で防ぎつつ、追尾派生は引き付けてから反対側へ移動。爆発派生は空中で回避することで爆風に巻き込まれないようにし、圧縮派生は軌道を予測して必要最低限な個所のみ防御魔法を集中させて凌ぎ切った。

 

 

竜巻を起こす魔法(ヴァルドゴーゼ)

 

 

そのまま杖を構えて魔力を起こし、魔法を発動させる。

それは普段と違って横向きの渦を発生させ、その端がクヴァールの複製体に向かって急速に迫る。

 

それをクヴァールの複製体は防御魔法を展開して受け止めるが、デンケンはそのまま魔法を操作する。

以前フリーレンと戦った時は【風を業火に変える魔法(ダオスドルグ)】を併用して威力を向上させていた。しかし今なら、周りの環境を利用するだけであの時以上の炎の竜巻を起こすことができる。

 

地獄の業火を纏った竜巻が、防御魔法とぶつかり合う。

通常ならばしっかりと受け止められていただろう。しかしクヴァールの複製体は今、地に足をつけていない。

 

フリーレンとその複製体が同時に放った地獄の業火が乱反射して部屋中に広がり、床を走る炎が燃え移らないように飛行魔法を使用していたのだ。

 

踏ん張りがきかないのか、又はそのイメージを鮮明に反映できていないか。

もしやとは思ったがその心配はなく、受け止めた状態でクヴァールの複製体は部屋の入口の方へ飛ばされていく。

 

 

「任せたぞ」

 

 

その様子を見つつ呟き、飛行魔法で同じ空間に飛び込むデンケン。

 

壁にぶつかり、クヴァールの複製体は動きを止める。

しかし防御魔法を全面に展開していたらしく、炎を弾き飛ばして地面に降り立つ彼は無傷だった。そしてデンケンを迎撃しようと人を殺す魔法(ゾルトラーク)を放つために魔力を煌めかせる。

 

 

「リヒター!」

「わかっている!」

 

 

その言葉の直後。

部屋の隅から魔力を感知し、クヴァールの複製体は振り向きながら魔法の矛先を変える。

 

視線の先、床に手を当てている状態でリヒターが魔力を起こす。すると床が激しく揺れ、これから彼が行おうとしていることをクヴァールの複製体は察知した。

故にそれを止めようと人を殺す魔法(ゾルトラーク)を連射するが、隣に立つラヴィーネが防御魔法を展開してそれを防ぐ。

 

ならばそれ毎叩き潰す。そう判断し、いくつもの魔力を展開して圧縮させ――――。

 

 

 

 

 

――首元に感じる鋭い魔力を察知した時、反射的にその方向に向かって人を殺す魔法(ゾルトラーク)を発射した。

 

 

「…………」

 

 

その行き先、彼らが戦っている部屋の奥。

フリーレンとその複製体がいる部屋に繋がる大穴の中に立つフェルン。そして彼女の前に降り立つデンケンは軌道を見極め、冷静に集中させた防御魔法で防ぎ切る。

 

そこでクヴァールの複製体は気づく、今のは自分の注意を逸らすための罠だったのだと。

自分達が最も警戒していた、フェルンによる魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)の不意打ち。半端とは言え単独となったこの状況ならば、早期撃破のために狙ってきてもおかしくはないと判断していたのだ。

 

だが違った。彼らが狙っていたのは……完全な分断だ。

 

 

大地を操る魔法(バルグラント)

 

 

部屋の床。その全てがせりあがり、この部屋にいる全員を巻き込んで上昇していく。

 

 

「うおおおおお!?」

「馬鹿、しゃがめ!」

 

 

あっという間に天井に迫り、それでもなお止まることはない。

 

分かってはいたが、ラヴィーネは揺れる足元で姿勢を保てない。

それを即座に見抜いたリヒターは空いた左手で彼女の手を掴み、魔法で操った床を変形させて二人分纏めて覆うように包む。

 

 

裁きの光を放つ魔法(カタストラーヴィア)

 

 

その様子を見て手助けは不要と判断したデンケンは光の矢を生成し、自身を防御魔法で覆いながら真上に向かって連続で放つ。

 

彼等はあらかじめ決めていた状況のため対処が間に合ったが、クヴァールの複製体はそうではない。

すぐに防御魔法を展開したが、天井……つまりは圧倒的な質量の前にやがて砕けてしまう。ぶつかってもなお止まらずに床はせりあがり続け、故に彼は両手を上で交差させて防御姿勢をとることで耐えるしか手はなかった。

 

 

 

 

 

数秒後。衝撃が収まり、クヴァールの複製体は手を下ろす。

 

多少ダメージはあるが、あくまで多少だ。全身土まみれなだけで、戦闘に支障はないだろう。

そう考えつつ、周囲を見渡して状況を把握する。

 

先程とは違う、広い廊下のような空間。一つ上の層まで移動したらしい。

次に正面。デンケン達三人は既に体勢を立て直し、少し距離を取った状態で魔法を放つ準備を整えている。

 

 

 

――そして周囲。彼らの他にも数名、魔力を感知していた。

 

 

「……さぁ、全力で時間を稼ごうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、短い方も似合ってるじゃん」

 

「さーて、さっきも揺れてたし……あいつはどこにいるのかな?」

 

 

 

「ハイハイ、わかってるよ。全く、人使いが荒いんだから……眼鏡君は」

 

 





感想・評価共にありがとうございます。
誤字報告もいつも感謝です、非常に助かっております。


それにしても、誤字が多くて本当に申し訳ない。
書き終わった後に複数回に分けて確認してはいるのですが、それでも起きてしまいます。
前話ではゼンゼがガラス管になっていましたし、なんとかせねば……。


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