知り得たか?フハイの賢老、クヴァールを(本編完結)   作:月光好き

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皆が望んでいた主人公二人の共闘だよ、やったね!





『災厄、二人』

 

 

 

実際の所、水鏡の悪魔(シュピーゲル)に関する魔法使い達の考察は間違っていない。

 

この魔物はダンジョンに立ち入った者の記憶を読み取り、完璧な複製体を生成する。

 

何故なら、本体には戦闘能力がないから。

何故なら、同じ力量であれば互角以上の戦いを行えるはずだから。

何故なら、互角以上の戦いを何度も続ければ相手は消耗し、いずれ脅威を排除できるはずだから。

 

故に、本来必要はない行為のはずだった。……この状況を観測するまでは。

 

本体が鎮座する最奥の宝物庫。扉を挟んだ向こう側で行われている戦いを眺めながら、その魔物は思考を回していた。

 

水鏡の悪魔(シュピーゲル)の魔法において重要な点。

それは【一定範囲内の記憶を読み取る】事と【記憶を基にした複製体を生み出す】事だ。

 

そう、記憶を読み取るのだ。とは言え一度読み取ってしまえば情報収集は完了するので、何度もする必要は本来ない。

しかし己を守る最強の守護者となったフリーレンの複製体に対し、あれだけいるのにもかかわらず戦いに赴いたのは、基になったフリーレンを含めた二人。

 

何かがおかしい。

そう感じとった水鏡の悪魔(シュピーゲル)は己の本能が感じ取った違和感に従い、本来無駄撃ちになるはずだった記憶の読み取りを再度行った。

 

 

 

 

 

――そして悟ってしまった。この先に、己が殺される可能性が存在していることに。

 

確実にこちらを御せる策という訳ではない。その程度で倒せるというのなら、彼女が魔族の王を倒せるわけがない。

 

しかし、その先は? この短時間で策を生み出した二人が、新たな作戦を何か思いついたら?

 

危険だ。そう判断した水鏡の悪魔(シュピーゲル)は、目の前の存在を全力で排除するために手段を模索し始める。

 

 

 

 

 

他の複製体を集結させる?

 

……駄目だ。奴ら以外の魔法使いが足止めをしている、これでは時間がかかりすぎる。

 

己の守護者に相手の策を伝える?

 

……難しい。下手に思考に介入しては逆に危険だ、それにわかった所で、一体だけでは状況はさほど変えられない。

 

複製体をこの場に生成する?

 

……厳しい。既にダンジョンに入った魔法使いの複製体は全て出してしまった。倒されるのを待てば再度作成できるが、外の連中にやられる程度の実力では目の前の敵に対処しきれないはずだ。

 

 

 

 

 

もし打てる手があるとすれば、それは最早これしかない。

 

新たな複製体を、このダンジョンにいない存在を基にした複製体を作るしかない。

 

己の守護者の基となる魔法使いを超えなくてもいい。それは己の守護者が対応すればいいのだから。

 

ただ、他の魔法使い全てを打倒できる存在を。

 

記憶の中にのみ存在するゆえに、思考を完全に再現できなくても。

己が理解できないがゆえに、本人が扱える魔法をすべて再現できなくても。

 

実力を再現できなくても、似た魔法で代用ができるのだとしたら。

もしそれが一人だけではなく、自身も含めた複数人の記憶の中に存在しているのだとしたら。

 

 

 

――この場にいる魔法使い達が使える魔法を、誰よりも使いこなせる存在がいるのだとしたら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まるでその場所だけ地震が起きたような衝撃が全体を包み、大きな爆発音が響き渡る。

煙が部屋一面を覆いつくし、その中心に立つ二体は周囲を見渡し、魔力探知による索敵を行う。

 

目的の存在を知覚することはできない。

しかしそれで探知をやめるほど奴らが未熟ではないことを、この部屋にいる全員が熟知しているだろう。

 

 

 

 

 

「……ギリギリでしたね」

「うん、危なかった」

 

 

視界の外。

部屋上部の柱の陰に潜んで魔力を抑えた二人は一息つき、改めて追加された敵の様子を確認する。

 

 

「やっぱり見間違いじゃない、クヴァールだ」

「……ですね。まさか、クヴァールもこの場所に?」

「いや、それはどうかな。少し気になる事が……ん?」

 

 

魔力の揺らぎを感じ、フリーレンは柱の陰から様子をうかがう。

 

フリーレンの複製体、彼女は空間に大きな画面を映し出しており。

クヴァールの複製体、彼はその画面を見ながら正面に大きな魔力を形成し始めていた。

 

 

(なんのつもりだ?……まさか、部屋全体を攻撃する気か?)

「……フリーレン様」

「まだわからないけど、良い結果になる事だけはないね。フェルン、ここからは消耗戦になるよ」

「わかりました」

(それにしても、私の複製体が映し出しているあれは……)

 

 

そう考えたフリーレンは目を凝らす。

そしてそれが何なのか理解したの同時に、状況は動き出す。

 

 

 

 

 

彼女が映し出した画面、それはこのダンジョンの全体図だ。

そして今その中に、赤い点が()()()()表示されていた。

 

彼が生み出した魔力の塊、それが一気に収束する。

そしてフリーレン達が入ってきた扉の方を向いている彼は両手を開き、収束したそれを挟むように勢いよく合わせた。

 

 

「ッ、まずい」

 

 

これから起きることを察したフリーレン。

あらかじめ決めていたことを実行すべく、彼女は魔力隠蔽を解除して飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、最深部から少し離れたとある廊下。

そこでカンネとラヴィーネの複製体を待ち伏せていたリヒターとラヴィーネは、奇襲と言う形で戦闘を開始する。

 

ラヴィーネの氷の矢を放つ魔法(ネフティーア)で序盤の対応を封じつつ攻撃することで防御魔法を誘発し、リヒターの大地を操る魔法(バルグラント)で防御魔法ごと攻撃する。

 

第一次試験でカンネ達とリヒターの相性は彼女自身がよくわかっている。だからこそ、複製体がすべて倒されるまでにさほど時間はかからなかった。

 

自身の氷の矢によって引き裂かれたカンネの複製体。

それを眺めながら、複雑な表情を隠さずにラヴィーネは口を開いた。

 

 

「倒した。……でも、良い気分じゃない――――」

 

 

 

 

 

――全員、今すぐその場から回避!――

 

 

「「ッ!!」」

 

 

二人の頭に声が響いた瞬間、即座に魔力感知を最大まで高めながら行動を開始する。

 

事前に決めていた内容。

もしもフリーレンの複製体が広範囲爆撃のような敵味方問わずに攻撃する魔法を使用した場合。近場で対応している他の参加者が巻き添えを食らうかもしれない。

 

そこでフリーレンから予め、とある魔法について説明されていたのだ。

一定以上の魔力保有者――つまりは魔法使いには全員声を届かせることができる魔法、【魔力に声を乗せる魔法(メッセージ)】。

 

まだ識別が上手くいっていないので無差別になってしまうが、心がない複製体相手にやっても効果は薄いため問題ないらしい。

とは言え関係ないのに行動させては逆に隙をさらすことになる。なので必ず最初に言葉を届けたい相手の名前を言うとフリーレンは言っていた。

 

そんな彼女が全員と言った。

それはつまり、それほどまでの事態があの部屋で起きたという事だ。

 

そんな中、聞き取った彼らがとった行動。それは結果的に言えば正解だったのだろう。

 

 

 

 

 

「前に全力で飛べ!」

「わかってる!!」

 

 

リヒターとラヴィーネは飛行魔法を使って急速に移動したことで、幸運にも背後から迫っていたゼンゼの複製体の奇襲を避け。

 

 

「カンネ殿、それぞれ後方へ!」

「うぇ!? あ、はい!」

 

 

同じく戦闘中だったドゥンストとカンネもまた、複製体が防御魔法に専念していたからこそすぐさま離脱でき。

 

 

「この魔力は……ッ!」

「……この指向性、不味いですね」

「下の方から、何かが来る……!?」

 

 

デンケン、メトーデ、ラオフェンは単独で行動していたからこそ狙われなかった。

 

 

 

 

 

――しかし、この状況を知らずにいた他の参加者は対応が遅れてしまう。

 

 

「……なに、この嫌な感じ」

「……やばいな。オイ、二人とも俺が運ぶから全力で防御魔法を展開しろ!」

「ッ、わかった!」

 

 

中層で複製体との戦闘を終えたエーレ、ヴィアベル、シャルフ。

 

彼等は突然頭に響く声に驚愕していたが、そこで実戦経験の有無が運命を分ける。

背筋を走った悪寒。戦場で培った本能にも近い危機感が警報を出したことで、ヴィアベルが即座に行動を開始していたことが功を奏した。

 

 

 

 

 

 

だが、それを持ち得ない者は?

 

 

 

 

 

「ユーベル!!」

「へ?」

 

 

ラントはそれを察した瞬間に走り出し、全力でユーベルを押し飛ばす。

 

()()()()()()()()()ことを察した彼ができるのは、これが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【疑似再現ー人を殺す魔法(ゾルトラーク)(アサルト)

 

 

 

 

 

解放された一撃、それは圧倒的な密度を保ちながら螺旋を描いて進む。

 

軌道上にある障害を貫くために。

敵味方問わず、その全てを消し去るために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほぅ。このゴーレム、回復魔法も使えるのか。中々に便利なッ!?」

 

 

零落の王墓、その入り口。

ゴーレムを使って脱出したエーデル、ブライ、レンゲ、トーン四四人はそこで待機していた。

 

その中でもレンゲ以外の浅くない傷を負った三名が治療を受けている中、突如エーデルを治療していたゴーレムが彼女を投げ飛ばす。

 

 

 

 

 

――そしてその直後、ゴーレムがいた場所を何かが通り過ぎた。

 

抗う間もなく、耐える様子もなく。

 

その光線が過ぎ去った後。

そこにエーデルを投げ飛ばしたゴーレムの姿はなく、その足だけが残されていた。

 

 

「な、なんじゃ今のは……?」

 

 

レンゲの脱出役を担っていたゴーレムにキャッチされたエーデルは、空を見上げながらそう溢す。

 

雲が全体を覆っていた今日の空模様。

それが一部分だけ不自然に大きな穴が形成され、そこから青空が見えている。

 

そう、それはつまり。

先程通り過ぎた光線……おそらく魔法は、雲を突き抜けるほどの持続力があったという事。

 

その様子をエーデルは惚けながら見ていたがハッとなり、ゴーレムから下りてダンジョンの入り口に近づく。

その出所を探ろうとした彼女は、目の前の光景に驚愕して大きく口を開いた。

 

 

「なんなんじゃああああッ!?」

 

 

一言で表すなら、一直線。

地下深くまで続くダンジョンに、不自然なほど綺麗な穴が形成されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やられた」

 

 

再び覆われた衝撃による煙の中、いつでも魔法を使えるようにしながらフリーレンは呟く。

 

先程の超高密度の遠距離魔法。

あれは侵入者である他の魔法使いへの奇襲と同時に、隠れた二人の居場所を炙り出すための罠でもあったのだ。

 

全員に警告を飛ばすために魔力に声を乗せる魔法(メッセージ)を使用したが、それを見越したフリーレンの複製体が感知した瞬間に攻撃してきた。

おかげでフェルンと分断され、フリーレンは今こうして煙の向こうから向かってくる相手との正面衝突をせざるを得ない状況になってしまっている。

 

先程のフェルンの奇襲。それを警戒しているからこそ、奴らが次にとる行動も予測がついている。

 

 

「まぁ、そうくるよね」

 

 

煙が晴れ、フリーレンの複製体が姿を現す。

 

最初から認識していたようでフリーレンに視線を向けており、そのまま彼女達はほぼ同時に杖を構えた。

 

 

「【破滅の雷を放つ魔法(ジュドラジルム)」】

 

 

もう何度目になったかもわからない、ぶつかり合った稲妻の乱反射。

その隙間を潜り抜けるように飛行していたフェルンだが、今までと違って隠れてフリーレンの複製体の隙を狙う暇はない。

 

 

「……ッ!」

 

 

フェルンの後方から光が瞬き、漆黒の光線が複数迫ってくる。

彼女はそれを見て回避しつつ、避けきれないものに対しては防御魔法を展開することで凌ぎきる。

 

このままでは状況は悪くなるばかりだ、そう判断したフェルンは合流ではなく反撃を決意。

飛行魔法を解除して地面に降り立ち、複数の魔法陣を展開して同時に魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)を発射する。

 

それを見たクヴァールの複製体は飛行したまま立ち止まり、防御魔法を展開し受け止めた。

 

このまま飽和攻撃に移行して押し切ろうとフェルンは考える。

しかし相手の防御魔法の隙間から見える漆黒を認識して即座に思考を切り替え、追撃ではなく防御を選択。

 

互いに防御魔法を展開しつつ、相手の隙間を潜り抜けるように放つ精密な遠距離魔法。その撃ち合いが始まった。

 

 

(このままだとジリ貧。魔力量の差で押し切られる)

 

 

防御魔法による防衛だけなら、魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)による飽和攻撃で防御を強制しつつ削り取ることができる。……が、それは向こうも同じ話だろう。

 

 

(無理やり攻撃する?……駄目、技量で捌かれる)

 

 

フェルンはどうにか飽和攻撃に移行しようと隙を伺うが、クヴァールの複製体はそれを許さない。

防御魔法を必要な個所に最低限の量を展開することで消費を抑え、空いた隙間から人を殺す魔法(ゾルトラーク)を複雑な軌道で撃つことで彼女の全力攻撃を抑制していた。

 

一瞬でも気を抜けば押し返されるが、ジワジワと削られる感覚もある。

一見互角に見える魔法の応酬。その中でフェルンは状況を打開するため、今までにない集中力で思考を回していた。

 

 

「ッ、柱が……!」

 

 

しかしその思考の暇すら与えないためか、クヴァールの複製体は行動を変化させる。

 

一部の人を殺す魔法(ゾルトラーク)の狙いを変え、部屋を支えている柱のうち一本を根元から叩き折る。

そしてそれに指を向けた直後。倒れるはずだった巨大な柱が突如向きを変え、フェルンに襲い掛かって来る。

 

それを見たフェルンは攻撃を中止せざるを得なくなり、飛行魔法で上昇することで回避した。

 

 

(マズい、何も見えない。……けど)

 

 

しかし攻撃を中止するということは、敵に時間を与えるという事。

 

柱が衝突したことで生まれた煙、その向こう側で魔力が高まる気配がする。漆黒の光がいくつも煌めき、それらが同時に解放されようとしているのが分かる。

 

このままでは先に向こうの飽和攻撃が始まる。そう判断したフェルンはあえて全速力で煙の中に突っ込む事を選択した。

 

 

(狙いがつけられない人を殺す魔法(ゾルトラーク)は直線。それなら全速力で交差してもう一度距離を――!)

 

 

 

 

 

――フェルン、防御魔法!――

 

「えっ」

 

 

フェルンが突っ込んだ煙の先。

 

そこに立っていた()()()()()の複製体が、今まさに魔法を放とうとしていた。

 

 

「――――ッ!!」

 

 

何故ここに? あの魔力は? クヴァールは?

そんなことは全て後回しにして、フェルンは全方向に防御魔法を展開する。

 

その直後大きな衝撃が伝わり、彼女は防御魔法ごと地面に叩きつけられる。

そしてそこに畳み掛けるように、周囲に浮いていた人を殺す魔法(ゾルトラーク)も襲い掛かってきた。

 

 

「させないよ」

 

 

連携攻撃による圧倒的な物量。それによって突破されそうになっていた防御魔法が、フリーレンによって補強されることでなんとか拮抗する。

そこからさらに魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)による反撃を行うが、フリーレンの複製体のすぐ背後に降り立ったクヴァールの複製体が防御魔法を展開。まとめて防いでいく。

 

しかしこれでわずかながら攻撃が途絶えた。

すぐさまフェルンの肩に手を触れると二人の姿が消え、先程作戦会議をした部屋に突如として現れる。

 

 

「ふぅ。……フェルン、大丈夫?」

「死ぬ、かと……思い……ました」

「少しなら時間がある。ゆっくり息を吸って」

「は……い……」

 

 

フェルンが深呼吸をしているのを横目に、フリーレンは扉の前に立つ。

 

既に向こうにこちらの位置はバレている。ならば攻撃に躊躇を持たせるため、敢えて魔力隠蔽を完全に解除する。そして防御魔法をちらつかせることで、威嚇をしながら時間を稼ぐことにした。

 

 

「……本当に厄介だ」

 

 

 

 

 

先程の攻防。自身の複製体と戦っていたフリーレンだが、突如相手が行動を変化させてきたのだ。

 

ほぼ近距離戦と言ってもいいほどの距離で戦っていたわけだが、いきなり複製体が身を翻して飛び出した。

隙だらけなその姿に反射的に攻撃したが、複製体はこちらを一瞥もせずに的確に防御魔法を展開して防ぎ切っていた。その行き先に気づいて急いで対処したことで間に合ったが、本当に紙一重であったと言えるだろう。

 

そして、そこで気づいたのだ。

フリーレンの複製体が先程の移動時に防御魔法を使っていないことに。

 

さらには先程の光景。自身の複製体は奴が作った防御魔法の中に入り、フェルンの不意を突こうとした。

周囲にはあからさまに今から攻撃する姿勢の人を殺す魔法(ゾルトラーク)が浮遊していたのも相まって、フェルンは煙の先にいるのがクヴァールの複製体だと思い込んでしまったのだ。

 

それらから判断できること。その答えは単純だが、それでも認めたくないものだった。

 

 

(私の追撃を防いだのはクヴァール。……あいつは、防御魔法を遠隔で発動できる)

 

 

防御魔法は主に自身の防御のために用いられる魔法だ。それは基本魔法であるのと同時に、構造の維持および複数展開による広範囲の防御には的確な位置把握能力が必要になるからである。

 

自身の周囲に安定して展開するだけでも見習い魔法使いは苦労する。それをクヴァールは動き回る複製体の動きを把握しつつ、必要な場所を的確にイメージして淀みなく発動させていた。

これによりフリーレンの複製体は防御を考えず、全力で攻撃し続けることができるようになっていたのだ。

 

 

(こんなこと、知りたくはなかったんだけどな)

 

 

――クヴァール。奴は誰かと組んで戦う時に、その真価を発揮する。

 

味方の能力を底上げする支援能力、それがクヴァールが積み重ねた研鑽の真の持ち味だったのだ。

しかも今回はその対象がまさかの自分自身、ここまでくると複雑と言う言葉でも表現しきれなくなりそうだった。

 

そこまで考えたところで、やはりとあることが引っかかる。未だ相手は様子見をしているようで動く気配はないため、まとめるためにも思考を再開した。

 

 

(あいつは一目見ただけで防御魔法を再現し、弱点にも気づいた。とは言え……)

 

 

まずフリーレンの予想では、クヴァールはこのダンジョンにはいない。

 

複製体はあくまで模倣しているだけで心はない。

あれが本当にクヴァールの完璧な複製体だった場合、現状はもっと悲惨なことになっているはずだ。

 

故にあれは不完全、恐らくフリーレン達の記憶の中から無理やり作られた半端な複製体だと予測していた。……しかしその場合、先程の攻防で見せた魔法が説明できない。

 

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)は私が散々解析したし、派生形は魔導書にもあったやつだからフェルンが理解している。飛行魔法はむしろあっちの領分。……だけど防御魔法、あれはあの日の戦いだけではたどり着けない練度だ)

 

 

 

 

 

そこから導き出せる仮説。それは逆に、状況を複雑化させるもの。

 

それはつまり。あの複製体は過去の存在だが、古の存在ではないという事。

 

80年前の完全な姿ではなく、彼女たちと戦った後の隻腕の姿でもなく。

現在もどこかにいるであろう、右腕が生身のように動く()()()()になっているあの魔族を。

 

 

(私とフェルン、それ以外に現代(いま)の奴を知る存在がいるということだ)

 

 

 

 

 




感想・評価共にありがとうございます。
誤字報告もいつも感謝です、非常に助かっております。


休日の間にどうにか一段落させたいのでドンドン行きますよー。
……が、終わる気配がまるでない。どうすんべこれ(白目)。


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