ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第10話 犯罪者

 

 草木も眠る丑三つ時にはまだ速い夜。

 既にシーンと静まり返っている向花高校で、二つの人影が動いていた。

 

 「ちゃ、狸吉さん…そこから入れるんですか?」

 「まぁ、見てなって。ここ私と香蔵の秘密の部屋だから」

 「それハリー・ポッターですよ…」

 

 一つの影は黒髪が特徴的な女の子、春乃真希。そしてもう1つは、茶髪の髪の毛を持つ、これまた女の子、山之上狸吉。

 

 狸吉が窓の部分で何かをカチャカチャとやる。それをオドオドと周りを見ながら気にする春乃。

 すると、窓が開く。

 

 「はい開いた!」

 「大声で言うものじゃないですよ…」

 「まぁいいじゃん、中に入ろうか」

 

 狸吉が先導して中へ入る。春乃もそれに続くように中に入る。

 春乃は嫌な背徳感を抱えつつ暗く静かになっている学校を見て冷や汗を垂らす。

 

 「なに?ビビってんの?」

 「ビビってませんよ…」

 「じゃあ行こうか!」

 「ちょっ、走らなくてもいいじゃないですか!」

 

 走ってしまう狸吉を必死に追いかける春乃であった。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆

 

 

 

 

 

 春乃と狸吉は周りに注意を払いつつ、理科室へ向かう。

 そして問題の準備室の前へと来た。

 

 「そんじゃ、入って。多分鍵は無いはずだから」

 「わ、分かりました…」

 

 狸吉が春乃を肩車し、春乃は扉の上にある窓に手をつけて動かしてみる。

 ズズッと、音を立てて窓が開く。春乃が中に入る前に、周りを確認するために中を覗く。

 

 人体模型やロッカー。そして様々な薬品などが入っている棚など、特にこれといって変わったこともない。

 そして、小村樹泰雄先生もそこにはいなかった。

 そこで春乃は肝心なことに気づく。

 

 「え、ちょっとこれ待って。前から落ちるんですけど」

 「は…やく!」

 

 狸吉が動いてしまったので、前のめりになり覗いてた春乃はさらに前のめりになってしまい、悲鳴も出す間も無く、地面に叩きつけられた。

 

 「痛っっっ?!?!」

 

 幸い、グルンと前のめりになった状態から一回転して落ちたことで背中を強く地面に打った。

 しかし、痛いことには変わりないので、春乃はその場で横に倒れ、背中をさする。

 痛みが引いたあと、立ち上がり、中を探索する…と言っても、行く場所は単純明快。

 

 「ロッカー…だよね」

 

 連れ去られた時は大半ロッカーというのはお約束だと呟いてから、春乃はロッカーの取っ手に手をかける。

 硬いのか、結構引っ張るのに開かない。

 

 「あれ?う〜ん!!」

 

 両手を使い、強めにロッカーを開けようとする。すると、ガチャッとロッカーが開いた。

 強く引っ張っていた春乃は後ろへと倒れ込んでしまった。

 

 「痛い…さっきから痛い思いしかしてないんだけ…」

 

 ロッカーの中には、口をテープで塞がれ、手首を縄で縛られて、そして涙を浮かべている女子の姿が。

 あははと苦笑いしながら春乃は立ち上がり、ロッカーからその少女を出してあげる。

 そして、縄やテープを外す。

 

 「あ、あなたは?」

 「2年生の春乃…超能力部です」

 

 それを聞いてさらにホロホロと涙をこぼし、ペタッと地面に座り込んでしまう少女。あわわと春乃がその少女の背中に手をつける。

 

 「えっと、名前聞いても?」

 「小日向、小日向美玖…!」

 

 名前を聞いて春乃は頷き、優しく語りかけるように口を動かす。

 

 「速くここから出て、家族に会おうね」

 「…うん……うん!」

 

 その子は強く頷き、立ち上がる。

 春乃は扉へと向かい、鍵を開けて扉を開ける。小日向が春乃の後に続き外に出ると、なにかに気づいたのか声を漏らした。

 聞こえなかったからもう一度聞こうと、春乃が振り返った時だ。

 

 春乃の後頭部に鋭い痛みが走った。

 春乃は頭を抑え、倒れ込む。

 

 (痛い…!痛い痛い!?何?!)

 「ダメじゃないか…あれほど入っちゃダメって言ったのに」

 

 後ろを振り向くと、机に座っている小村樹先生の姿が。

 後頭部を抑えたまま、春乃は硬直し、考え込む。

 

 (なんでここに?!狸吉さんは?!何で殴られた?!痛い…!)

 「あーあ。僕も手にかけたくないのにな〜」

 「ひっ、あっ…」

 

 小日向は小村樹先生を見ると、真っ青な顔をして後ろに後ずさりする。

 春乃は頭を抑えたまま、小村樹先生の方を見る。

 

 「女の子監禁しておいて、何が手にかけたくないですか……どちらにせよ捕まりますよ!」

 「いいや、捕まらない。なぜなら君を殺して、その子をもう一度ロッカーに閉じ込めればいいからだ」

 

 その言葉に何かがプツッと切れかける。春乃は小村樹先生の方から顔を動かさずに横を見る。

 狸吉の姿は見えない。嫌な予感を掻き消し、考える。

 

 「…何を探しているんだい?」

 「…先生を……いや、犯罪者を倒すための道具ですよ!」

 

 春乃は勢いよく近くにあったフラスコを小村樹先生に投げ、小日向の腕を掴み、そこから逃げるために走る。

 小村樹先生は、フラスコを叩き落とし、春乃を見る。

 既に春乃は教室から出るための扉に手をかけており、小日向を逃がそうとしていた。

 

 「させないよ」

 「っぁ!?」

 

 いつの間に後ろに来ていた小村樹先生に首を掴まれる春乃。

 勢いよくぎゅうっと力を込める小村樹先生。春乃は小村樹先生の腕を掴み、バタバタと足を地につけようとしていた。

 

 「このまま絞め殺すことにするよ」

 (な、なにこの力!?息ができない…!まずい……!)

 

 春乃の脳内に過ぎる死という文字。だが、すぐにふわっとした感覚に襲われる。

 春乃はケホケホと咳き込み地面に手を着く。

 

 「地め……!?」

 「ごめんね、少し気になったから席外してたんだ」

 

 隣に立っていたのは狸吉であった。

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