ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第100話 たった一輪の華 その⑦

 

 香蔵さんは、静かに地面に降り立った。

 アクゼリュスの肉体がうねって再生しようとする。私たちはつばを飲み、それを見つめる。

 言葉すらも飲み込むほど、うねりを見せた……アクゼリュスですらない『それ』は大きくなっていき、鎌を体中から生やす。

 

 香蔵さんは、ふぅと息を吐いてから手を前にした。

 

「『月魂(ルナアルマ)日食の剣(エクリプセ・エスパーダ)』」

 

 月の光から現れた剣がくるくると回り、アクゼリュスの鎌を切り落としていく。『七夕戦争』のときとはまるで違う。

 あのときは、手加減してたんじゃないかってぐらい……

 

「さぁ、これは……鶴愛ちゃんの分」

 

 剣が一閃を薙ぎ払う。恐ろしい速度で薙ぎ払われたそれは、アクゼリュスをいとも容易く切り裂いた。

 明らかに、これは……

 

「傷つけられた人の分、被害者の家族の分も、警察の方々の分も!!」

 

 ザシュザシュと塵が飛び散り、コンテナまで巻き込む。

 それなのに、私達のところには来ない。塵も、コンテナの破片も……何も来ない。まるで、守られてるかのように。

 

 逆に言えばそれは……

 

「……それだけ、()()()()()()()ということ」

「あそこまでは、さすがの俺でも出来ねぇ」

 

 そこまで、して香蔵さんは……倒したいんだ。こいつを。

 しかし、この世にまだしがみつこうとしているのか、アクゼリュスはどれほど切られても、切られても、その体を保とうと、再生しようとしている。

 

 鎌が思いっきり振られるが、それすら香蔵さんには届かない。

 鎌が一瞬で消えると、アクゼリュスは後ずさる。それを逃さないように、香蔵さんは、アクゼリュスの足を切り落とした。

 その後、手を切り落として、完全に逃げられないようにする。

 

「あ…………あぁ、あ……………ああぁ、あ、あ!」

 

 もはや言葉にすらなっていなかった。

 逃げようとしても逃げれない。再生した瞬間、切り落とされる。転がされる。それだけでも、笑ってしまうほど滑稽なのに。

 

 ただ、私はそれを見て……

 

「……おかしいよね。鶴愛さんも、快弦ちゃんも殺したやつなのに。なんでか……」

 

 可哀想にも、見えてしまう。

 

 恨むべき相手のはず。殺したいほどに組んでいる相手のはず。それなのに、それなのに。

 どうしても、そんな言葉が頭によぎる。

 

「香蔵さん」

 

 私が香蔵さんの名前を呼ぶと、『月魂(ルナアルマ)日食の剣(エクリプセ・エスパーダ)』の動きが止まる。

 その剣は震えながら空中で止まって、消えた。

 

「もう、いいや……」

「いいのかよ」

 

 香蔵さんはそうつぶやき、こちらに振り返った。

 その眼には、涙がたまっていた。この人は確かに、涙を流していた。

 そして、鬼円の言葉に答えるように、口を開いた。

 

「こんなことしても、二人は、喜ばないよ」

「そう、ですね」

 

 アクゼリュスは、うねり、声を上げていく。

 いつの間にかこちらに歩いてきていた金之助くんはそれを見て、大きく息を吐いた。

 

「じゃあ、俺がやるっす」

 

 金之助君は(まさかり)を持っていた。けれども、腕はだらんと落とされており、ガガガッと地面についていた。

 私達はそれを見守ることしか、出来なかった。その眼は、どこか、もの悲しそうで。それでも、確かな敵意を持って。

 

「……じゃあな」

 

 そう呟いてから、アクゼリュスを叩き切った。

 ザラザラ、と塵があふれる。アクゼリュスの体が、塵になっていく。

 

 最後の断末魔すら、人の形を保てていなかった。

 

「……」

 

 そして、塵が消えた頃、私達の顔が上を向く。きれいな満月が、顔を出していた。

 そしてそれは……私達を照らし、香蔵さんと、金之助君を静かに見つめていた。なにもない、静かな風が、吹いた。

 

「……快弦さん。終わったっすよ」

 

 ただ、金之助君はそういって、それに手を伸ばした。

 

 こうして、この日。

 私達は、この戦いを終えたのであった。

 

 確かに、アイツのせいでいろんなものを失った。

 これから、鶴愛さんとも、快弦ちゃんとも、楽しい記憶を作ることが出来ない。

 それでも、私達は歩いていかなきゃいけない。

 どうしても、人に足という概念がある限り、歩き続けなければならないのだから。

 私達は、こんなところじゃ止まれないのだ。

 

 ここから先、どんなに辛いことがあっても。

 

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