私達がアクゼリュスを倒した後、みんなで帰り道を歩いていた。
各々が黙ったまま歩いて……それぞれの帰路につく。
「それじゃみんな、また、明日」
「うん。また、明日ね」
「お疲れ様っした」
「…………」
私はふらっと歩き出す。
今日は、とても疲れた。このまま家に帰って、と思っていると、ふと電話がかかってきていることに気づく。
私は、それを見て小さく、あっ、と声を出す。
母さんからだった。
「もし、もし」
『もしもし! 元気……そうじゃないね。どうしたの?』
脳天気な声が聞こえる。
私をこの街に送りだした人の声だ。全く変わってない。
「ううん、なんでもないよ。ただ、つかれてるだけ」
『そう……まぁ、深くは聞かないわ』
母さんはそう言ってから、ただ、と続けた。
『なにか、無理そうだとか。ダメそうだなってときは連絡しなさいね。お母さん、いつでも相談乗るからさ』
「急にどうしたの。こんなときにさ……」
私は、家に帰り、玄関のまえで、ポロッと涙をこぼす。止まらない。あんなに、ひとしきり泣いたのに。
泣かないって、決めていたはずなのに……
「ううっ、かあ、かあさん……」
『急に!? どうしたのよ!!』
私は泣き出してしまった。
小さい頃のように、母親の前で。こんなふうに、泣きすがるように。
私は、えんえんと、泣き続けた。
疲れるまで、私が落ち着くまで、母さんは、大丈夫と、言ってくれたのだった。
◇◆◇
「おかえり、香蔵」
「……えーっと、なんでいるのかな? 私鍵かけたよね?」
「合鍵を渡してきたのはどっちよ」
狸吉はそう言うと、抱きしめてきた。何をして聞いたのかは、把握済みのようだった。
香蔵は少し困惑したような声を出してから……抱きしめた。
ぎゅうっと掴み、唇を噛み締めた。
「なんか、ごめんねぇ、言えなくて」
「吐き出していいんだよ? 全部さ」
狸吉がそう言うと、香蔵はぽろぽろと、涙をこぼした。
全部ぶちまけるように叫んだ。
「どうしようって、このまま斬ったら、もう戻れないんじゃないかって! わたし、自分が自分じゃないみたいで!! 怖くて、辛くて! どうしようもなくって」
ぽんぽんと撫でる狸吉は、香蔵を持って、歩く。
ソファに座った二人は、グスグスと泣いている香蔵をひたすら慰めていた。
「私、わたし……どうすればよかったのかな?」
ひたすらに悩んでいたのだ。
高校3年生、しかし、まだ子供である彼女らにとってそれは、大きな、悩みでもあった。
「大丈夫だよ、香蔵。こっち見て?」
「……?」
泣いたまま顔を上げた香蔵は……唇に柔らかいものが当たった衝撃で目を見開いた。
二人の呼吸が重なり、唇が離れた。
「た、たぬ……」
「私はね、香蔵がどんなふうになっても、大丈夫だよ」
狸吉はまた、唇を押し付けた。
二人の距離がほぼ、ゼロになって密着する。
「香蔵が壊れちゃっても、地獄に行こうが、奈落に行こうが、どこまでも一緒について行ってあげるから」
狸吉の言葉に、またボロボロと涙をこぼす香蔵。今日は、人一倍に泣いていた。
そんな香蔵をまた、人一倍慰める狸吉でもあった。
◇◆◇
「また、やられたか」
「あいつ、ふざけんなよ……クソクソクソ……バチカル様の邪魔ばかりしてたし、逆に消えてよかったかしら……」
バチカルの隣に立っている女が指を噛みながらいう。
その後、槍を持ってる細身の男が立ち上がる。
「じゃあ、殺すかい? 僕はどっちでもいいけど」
「いや、殺す。俺達の邪魔になるだろうからな」
四人が睨み合う。
各々が歩き始め、そこには誰もいなくなる。
各々の殺意が目覚めて、春乃達、超能力部に襲いかかろうとしていた。
季節は流れる。
それぞれの想いが風となり、大きな竜巻となる。
それは、全てを巻き込むような大きな、竜巻だった。
「はっくしゅん!」
「何お兄ちゃん、風邪?」
それは大きく弧を描いて、それぞれの仲間に届く。
「悪噛! あんだけ勉強しろって行ったじゃない!」
「うるせえよ……」
「うるさい…………ってなんだと!!」
そんな大きく動き出す、秋となる。
やっとこさ、ここまで来れた……。
次からちょっとした閑話です。