第102話 秋と修学旅行がやってきた!
秋がやってきた。
あの戦いからもう一ヶ月過ぎてしまった。私たちは、言えた心の傷を癒やすかのように、学校行事に必死になっていた。
とはいえ、それだけでは埋まらない傷も多かった。
そういう意味では、あの戦いは、深く私達に残るものでもあった。
そんなこんなで、もう10月だ。私たちもちょっとずつ、動いていた。
朝、香蔵さんと狸吉さんたまたまあったので一緒に歩いていた。
「ねぇ、春ちゃん」
「はい?」
香蔵さんはいきなりこっちを見て、真面目な顔をして……すぅ、っと涙を流した。
「お土産、待ってるね……」
「そんな泣くことでもないでしょ!?」
そう、私達二年生は……修学旅行に行くのだ。
大阪・奈良・京都の三箇所に行くというのが今回の修学旅行の内容だった。私達の学校の他にも、この時期に修学旅行に行く学校は多いらしい。
まぁ、修学旅行ということで、クラスのみんなは興奮していた。かくいう私も、かなり楽しみにしている。
私は香蔵さんを見て苦笑いを浮かべながら言う。
「そんな事言わなくても買ってきますよ、待っててください」
「ううう、絶対だよ」
私は頷く。
ところで……鬼円はどうするのだろう。なんにも聞いてないけど……。
そんなことを思いながら、私は席につくのであった。
◇◆◇
「春ちゃ〜ん! 一緒に回ろ!」
「うん、いいよ!」
修学旅行の班決め中の声をかけられた。冷世ちゃんと蟹菜ちゃんだった。私は頷いて、二人の前に来る。
二人は机の上に地図やら、タブレットに神社などの情報を載せていたりしていた。二人もたくさん回るつもりらしい。
そんな中、蟹菜ちゃんが私を見て首を傾げる。
「あれ、鬼円はいいの?」
「え? えーっと……」
ふと、鬼円を見る。鬼円はこちらを向いて、後ろ頭を掻いている。納曽利と立ち上がり、こちらに来る。
どーせ呼んだだろ、と言わんばかりに。
「あら、呼んでもないのに来たわよ」
「どーせ呼ぶとこだったろ……班だろ?」
「う、うん……鬼円はどうするのかなって……」
鬼円が私を見る。私は、そんな鬼円を見て首を傾げる。
そんな中、冷世ちゃんと蟹菜ちゃんの二人はクスクスと笑いながら私の肩を叩く。
え、何?? それで、鬼円も何その顔。
「まぁいいや。護衛よろしくね、鬼円君♪」
「誰が護衛だコラ……なんでそんな違うの? みたいな顔してんだこの野郎」
「えっ、違うの……?」
「護衛の前に辻斬りになってやろうか???」
鬼円は冷世ちゃんを睨みながら言う。まったく、この二人は……と、思いつつ、私はみんなのことを見る。
「どこ行くの?」
「うーん、清水は確定でしょう?」
「大阪は、あれでしょ!? ユニバーサル・テレビ・ジャパン! UTJ!!」
みんなでやいのやいの騒ぐ。
こんなに楽しみな修学旅行は初めてだ。私はみんなの顔を見て、ゆっくりと微笑むのだった。
「なんだその顔」
「えっ? 私そんな変な顔してた?」
「いや」
鬼円は私の顔を見てそういった。
私は頬をかいて、えへへ、と笑う。そんな変な顔してたかな。
「幸せそうだなって」
「……!!?」
私は顔を赤くし、蟹菜ちゃんと冷世ちゃんがこちらを見て固まる。
パクパクと私は口を動かすが、何も言えなくなっていた。いや、というよりも言葉が出てこなかった。
こんなこと、初めて言われた。
「ラブコメの波動がする……」
「ありゃ女たらしだよ……」
「うるせえぞ蟹と雪女」
あっ、二人が殴りかかった。そりゃそんなこと言ったら殴られるでしょう。
しかし、『幸せそうだな』……か。
私は自分の手を見つめたまま、黙り込む。
ここに来て、自分がすごく変わった気がする。いろんなことに巻き込まれたりしたし、悲しいことも痛いこともあった。
けれども、それでも。笑えるのだとわかった。
「うん」
三人が動きを止めて私を見る。
「私、幸せだよ」
そう言って私は、ニッコリと笑うのだった。
修学旅行でそれがさらに加速すればいいな、と心のどこかで、私はそう思うのだった。