修学旅行一日目。私たちは東京駅に来ていた。駅が大きくて、迷いそうだった。なんとかたどり着いてよかった……。
私は、はぁ、と息を吐いて……眼の前に見覚えのある人たちが見える。
私はその人たちに近づく。
「あ、みんな、春乃来たよ」
「ん……おはよう、春乃」
「おはよう、蟹菜ちゃん、冷世ちゃん……鬼円は?」
「別の連中と話に行ったよ」
蟹菜ちゃんはそう言い、冷世ちゃんが目を向けて居場所を教えてくれた。
見れば確かに、クラスの男子といっしょにいる。なにか話し合っていて……そこに別のクラスの女子が入って……。
鬼円が女子の言葉に手を振り、何かを断って、男子の一人がそれを見て何かわ喋ったのか、鬼円が目を吊り上げて怒っている。
なんだか、たのしそうだな……。
「嫉妬ですかーい?」
「違うわい!!!」
私は言いながら、鬼円から目を離す。
別にそう言うんじゃないよ……ほんとに、嫉妬とかじゃないし……。
でも、やはり……修学旅行といえば、このワイワイ感がいいんだよね。みんな私服で来ていて、いつもと違う姿を見られて、なんだか面白い。
蟹菜ちゃんは、パーカーに、動きやすそうな半ズボンで、肩には、大きめのスポーツバッグが……って。
「それ、何入ってるのさ」
「ん? 化粧品でしょ、着替えに、後はお菓子に……」
「着替えって……それ、前日に送るやつじゃないの……?」
「え」
蟹菜ちゃんが小さく言って、固まる。
あーあ、あるあるというか……送るバッグを間違えるやつって言うか……。
っていうか、着替えが入ってたとしても、お菓子と一緒に入れないでしょうが……。
「そういう冷世ちゃんは……少ないね」
「まぁ、少しでも楽になりたいからね」
冷世ちゃんはマフラーと、コートという、完全防御の状態で来ていた。
……まぁ、気温はかなり冷えているからね……私も、上を羽織ってきたわけだし。
秋になって、やはり夏よりも肌寒くなっている。
「さて、乗り込みと行きますか」
「うん。先生のところいかないとね!」
私達は歩きだして、担任の先生のところへと向かうのだった。
◇◆◇
新幹線に乗り込む時に先生に変なことを言われた。
他の学校の子たちもこの新幹線に乗るらしいが、席に問題があって、二人だけ私達、向花高校の席に来るらしいのだ。
私はそれを聞いて、みんなに伝える。
「他の学校の子の席が足りなくて、私達の方に二人来るんだって」
「空いてる席って、私達の近くだよね」
「うん」
みんなで乗り込んで、トランプやらなんやらを出す。私の隣に、その他の学校からの子である二人が来るらしい。
鬼円や冷世ちゃんが前に座ってから、クルッと席を回す。
私の席からすれば、通路側から、蟹菜ちゃん、冷世ちゃん、鬼円であった。私の眼の前は、鬼円である。
なんだか、安心したような、ドキドキするような……。
そんなことを思っていると、蟹菜ちゃんが声を上げる。
「ねね、来る人もさ、トランプ遊びに誘おうよ」
「蟹菜のくせに、いいこと言うわね」
「なんだと、喧嘩するかこの野郎!!」
蟹菜ちゃんと冷世ちゃんが喧嘩するのはいつも通りなので……鬼円を私は見る。
「鬼円はやる?」
「やらん、眠たいし」
言いながら、頬突きをして外を眺めている。
私が苦笑していると声をかけられた。
「ここかな、隣、いいかな?」
「あっ、どうぞどう……」
ぞ、と言おうとして固まる。あれ、見たことあるなこの人。ポニーテールの赤い髪の毛が特徴的な女の子で、鼻ら辺にそばかすのようなものが……うん。
「桑西……さん……」
「赤芽でいい……あれ、春乃ちゃんじゃん! 久しぶり!」
「ってことはまさか……」
私と鬼円は顔を見合わせて、汗を垂らしながら彼女の隣を見る。
「んでいんだよ……」
「悪噛…………」
「ですよね〜〜〜……」
悪噛が座った頃に、新幹線が動き出す。悪噛は、ファーの付いたトレンチコートを着ていて、くわに……赤芽さんは、白いシャツにスカジャンを着ていた。パッとみ、不良にしか見えないよ……。
「なに、知り合い?」
「私、蟹菜!」
二人がそれぞれ挨拶して、それに対して、赤芽ちゃんが答えて、悪噛はチラ見してから赤芽さんに耳を引っ張られていた。
なんだろう、最初の方の鬼円とよく似てるな。言ったら殺されそうだけど。
新幹線がぐんぐん進む中、私達は雑談混じりに、経緯を話していた。もちろん能力のことは隠しながらね。
「なるほど……ほんとに鬼円ってめんどくさいのに目をつけられるわね」
「好きでつけられてねぇわ。こいつが勝手に突っかかってきたんだよ……」
「うーーん……確かに……」
悪噛に、檻鉄さん……それに、金之助くん。なんか、多いよね……。
「ねね、みんなでトランプしようよ! 何やりたい?」
「いいね! んじゃあ、ババ抜き!」
蟹菜ちゃんの言葉に赤芽さんが乗る。
みんなにトランプを配る、蟹菜ちゃん。問答無用で鬼円と悪噛にも配っていた。
おい、と言いたげな二人に、蟹菜ちゃんは「やろうよ! せっかくだし!」と叫んでいた。
「……ルールは、わかるわよね」
「なめてんのか」
冷世ちゃんの言葉に鬼円がキレて、私と蟹菜ちゃん、赤芽さんは笑うのだった。
ちなみに、ババ抜きでは赤芽さんが三回連続で一抜けしたため、速攻で違う種目になった。