「トランプ飽きた!」
「あんたが持ってきたんでしょうが」
蟹菜ちゃんの悲鳴とともに、テーブルに散らばったトランプが片付けられる。まあ確かに、このまま1時間半程を潰すには足りなさすぎるな……。
私は思いながら、うーんと考え始めて、冷世ちゃんと目が合う。
なんか、いま、嫌な予感が走った気がするんですけど。
「そういえば、赤芽さんは知ってるのかしら」
「? なにが?」
「『鬼円と春乃が付き合っている』こと」
…………。
「……は!!???!??!?」
「うん、知ってるよ。水族館で会ってるし」
「はぁ!!!?!!!?!!?!?!??!!」
私はめちゃくちゃ大きな声を二連続で出した。
まず付き合ってないし!!!!! あと、水族館のやつは、
なんでそういうことを事実のように言うのかなぁこの人!! ほんっとにタチが悪いんだけど!!
「付き合ってない!! 付き合ってないですから!!」
「またまた、そんなこと言っちゃって……」
「そうなの? あの距離感だからてっきり付き合ってるもんだと……」
「どんな距離感? 詳しく」
「蟹菜ちゃんっっ!!!」
私が叫ぶと蟹菜ちゃんはビクッとして、唇をとんがらせたまま、下がった。
私は息をゼェゼェと整えながら鬼円のことをチラ見する。
なんにも思ってない顔だあれ、と思いながらなんとなくムカッときたし、安堵もした。
「ちょっと鬼円、なにか言わないの?」
「ちょっ、冷世ちゃん!?」
鬼円はこちらをじっと見てからため息を吐いた。
「付き合ってねぇよ」
そう言われて少したじろぐがなんとか平静を保つ。ちえっ、と冷世ちゃんが舌打ちし、赤芽さんはそっか、と頷く。
ていうか、なんでこういう話題になると大抵私が的にされるのさ! すっごいムカつくんだけど!!
「じゃあ、冷世ちゃんなにかないの?
「……は?」
「おっ、いいねそれ。恥ずかしいこと暴露大会」
私が言うと、冷世ちゃんが明らかに動揺した目でこちらを見てくる。ざまぁ、みろ、というふうに笑って返す。
「じゃあ、冷世ちゃんの恥ずかしいこと……なにかないの?」
「あ、ああ、あるわけ無いでしょう! 私に、は、恥ずかしいことなんて……!」
「うわ胡散臭……」
「ここまで胡散臭いともう確信まで行くね……」
私達はじっと見つめてから、蟹菜ちゃんが、あっと声を出した。何かを思い出したかのように……。
「この間、廊下のなにもないところでコケてたよね。盛大に」
「辞世の句を今のうちに読んでおくことね」
「えっ」
あ~……。
恐らく能力を使ってスイスイ歩いていたところ、思いっきり踏み外してコケたんだな、多分……。
「そういう蟹菜だって、男子が目の前にいるのに着替えたでしょう」
「うわーーーっ! 男子! 眼の前に男子いるから!!」
なお、その二人の内、一人は窓を見ていて、一人は本を読んでいるのですがそれは。
「赤芽さんはなにか?」
「うわ、いざ振られると恥ずかしいな!」
照れ照れとしながら、小声気味に言った。
「その、悪噛と劇をしたときに……王女様をやらされて、こ、子供たちからキスコールをされたことが……」
私達は固まり……顔を見合わせた。
「……」
「えっ」
冷世ちゃん! 10点と書かれたプラボードを取り出す。
「……」
「ちょっ」
蟹菜ちゃん! 10点と書かれたプラボードを取り出す。
「……」
「待って! 聞いて!!」
私も10点と書かれたプラボードを取り出したところで何やら語り始めた。
「その、悪噛の……親戚が、保育園をやってて、それに巻き込まれてっていうか……」
「その親戚はこうはならなかったのね」
「聞こえてるからなお前らァ……」
悪噛はこちらを睨んでくる。その話題に反応した鬼円が、ニンマリと顔を歪めた。
「将来の夢ですか、悪噛サァン……?」
「言ってくれるじゃねえか、天下の桃佑様?」
二人で立ち上がるのを私と赤芽さんは止めるのだった。
似た者同士だな……ほんと……。
「そろそろつくかしら」
「奈良かぁ、鹿に会えそうだね」
「奈良について、先生の指示で回ってから、大阪ね」
そう確認を取っていると、えっ、と赤芽さんも声を上げた。
「おんなじコースだね!」
「そうなんだ! 会える可能性あるかなぁ?」
「俺はこいつに会いたくないけどな」
あはは、と苦笑いを浮かべる私は、鬼円の顔を見て……ふふふ、と微笑むのだった。
「それじゃあ、また暴露を」
「あなたの首をその前にへし折るわ」
「ミッ……!!?」
南無三。