ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第108話 揺れるバスの中で

 

 私達は奈良県から大阪までのバスに乗っており、みんなそれぞれ雑談をしていた。

 無論、私の隣には鬼円が座っており、目を瞑って、寝息を立てている。

 奈良県で鹿に追われたり、鹿せんべいで鹿に食われかけたりからか、疲れてしまったのか……。いまじゃぐっすりだ。

 

 …………久々に見たな、鬼円の寝顔は。

 いつだったか……確か、えーっと……そうだ、快弦ちゃんが死んで元気がなくなっていた時だっけ。

 あの時も、こんな風に見つめてたなぁ。

 

 ……いやしかし、私っていつから、鬼円を好きになったんだろう。

 ええっと……最初に出会った時はそんなで……逆に怖かったぐらいだし。

 ……鬼円は、きっと優しいんだ。顔は悪鬼みたいだし、言動も行動も暴力的だけど。今までみたいに、みんなを助けるのが鬼円だ。

 いつだって、そうだ、ツァーカブと戦った時も、キムラヌートと戦った時も、アクゼリュスと戦った時も。

 私がいて、鬼円がいてくれた。

 

 ……そっか、ずっとそばにいてくれたから。

 怖い目にあっても、痛い目にあっても、きっと鬼円がいて、助けてくれる。そんな存在だから、私はそんな鬼円のことを好きになってしまったのだろう。

 

「……私、チョロすぎでしょ」

 

 自分で言って、顔を赤くする。

 こんなに自分、チョロかったかなぁ……と思いつつも、鬼円の頬をむにっと触る。

 

 ……柔らかいな。すべすべで……。

 

「……」

「やばっ」

 

 鬼円が身動ぎしたのを見て咄嗟に離れる。だが、寝返りのようなものらしく、寝息は立てたままだった。私はほっとしつつ、鬼円の寝顔を写真に撮る。

 パシャっと音が鳴ったかと思うと、私はそれをすぐに眺める。

 

 ……鬼円の寝顔。レアだな、と思いつつ微笑む。

 鬼円と出会って、もうこんな季節だ。十月、か。出会ったのが四月だから……六ヶ月……約半年か。

 ……そっか、半年間も一緒にいたんだ。

 

 私はそう思い、自分の手を握る。

 色んなことがあった。けれども、その全てに……鬼円はいてくれた。

 私は、幸せ者だな。お母さんにも恵まれて、友達にも恵まれて……そして、自分の好きな人にも恵まれていた。

 

 ……きっと漫画とかなら、私のような人間を主人公とか言ったりするんだろうな。

 ……いや、それは違うか。どんな人間も、自分を主人公だと思わないとだもんね。

 

「鬼円、起きてる?」

 

 起きてないことは知ってる。それなのに、私は聞いてしまった。

 

 なぜなら、この言葉を言うのには……まだ、私の覚悟が決まってないから。

 私は鬼円の耳元に口を近づける。

 

「……」

 

 少しだけ顔を赤らめつつ、小声で言ったのだった。

 

「好きだよ、鬼円」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスに揺れながら鬼円と春乃の様子を見ていた冷世はスマホを睨みつけていた。

 大阪で回る予定のユニバーサル・テレビ・ジャパン……通称UTJの地図である。

 こんな冷たい眼差しを持っている少女でも中身は十七……まだまだ子供なのである。

 そんな彼女のスマホに通知が来る。通知の送り主は幅次李(はばじり)である。覚えてない人に言うと、以前、冷世をいじめていた首謀者の一人である。

 そんな彼女も現在修学旅行中である。

 

『買っちゃった〜! 冷世ちゃんの分も買っておいてあるからね!』

「厄介オタクか何かなの貴方……」

 

 苦笑する冷世。

 幅次李と仲良くなれたのも、春乃のおかげである。

 そう考えた冷世は、春乃を見る。春乃は現在、鬼円の隣であり、座席関係のせいでよく見えないが、鬼円の腕に寄りかかって寝ていた。

 そんな二人を見て、冷世は確信する。

 

(あの二人、まだ付き合ってなのよね……しゃらくさいわね……)

 

 冷世はそう悪態をつきながらも、再びスマホに目を落とす。

 そのスマホの画面には、デートスポットのようなものが何箇所もメモしてあり、それを見た冷世はクククッ……と喉を鳴らす。

 

(なら、付き合うように仕向ければいいのよ……この修学旅行、私達が恋のキューピットになってあげるわ……)

 

 なお、その達、含まれているうちの一人はそんな悪に染まった支配者のような顔を浮かべている冷世の隣に座っている蟹菜であり、ぐっすりと眠っているが。

 

 そんなこと露知らず、その場にいる全員は、大阪へと向かうバスの窓から、見えた景色に大きな歓声を上げるのだった。

 

 大阪まで、あと少しだ。

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