バスの中で目を覚まし、思いっきり伸びをし、背骨をボキボキと鳴らす鬼円。
なんかそんな近くでボキボキって聞こえると怖いんだけど。オレてるわけじゃないよね、大丈夫だよね?
そんな心配をしつつ、私達は眼の前のホテルを見る。
「ここが、今日泊まるホテル?」
「でっか……」
「チカチカする……それってラブ……」
「やめなさい!」
蟹菜ちゃんのせいで危うく修学旅行じゃなくなるところだったが、冷世ちゃんが思いっきり頬を叩いたことで難を逃れた。
とはいえ、すごい大きいな……もしかしたら、初めてかもしれない。こんな大きいホテルに泊まるのは。
それはみんな同じか。
「さっさと荷物を部屋におけよ〜」
「さ、私達も行きましょうか!」
冷世ちゃんの言葉で私達は頷く。
部屋割りは男子と女子でやはり、別々の階層になっており、先生が見張ると言われた。
うーん、流石に古典的なことはしないだろうが、部屋に来て覗きとかないよね……。
「私達の部屋はここね」
「うわ〜〜〜〜!! みてみて春ちゃん! すっごいよ!」
私は蟹菜ちゃんに言われて窓に近寄って外を眺める。
前には明日みんなで遊びに行くUTJの入口やアトラクションがあり、私達はそれを見て大きな声を上げるのだった。
しかし、だ。こんな大きな部屋に三人ってのもすごいな……ほかのクラスのことかいないもんなぁ。
「さすが東京の学校ってところね……」
「さすがなの???」
しかもすごいのは、なんと大浴場があるとのこと。もちろん部屋にもお風呂はついているが、みんなで入るならたしかに大浴場のほうがいいもんね。
……ウワーイッタイオイクラダッタンダロウ。
「それじゃお風呂入りましょうか……誰から入る?」
「え? 大浴場行くよ?」
「えっ」
冷世ちゃんが固まった。
わたしはそんな冷世ちゃんを見て首を傾げる。
「もしかして、一人で入りたい派なの?」
「……だって」
口ごもるようにして、冷世ちゃんが口を尖らせた。
「い、いくら同性とはいえ……お、お互いの裸を見せ合うだなんて……」
「なに、そんな大昔の思想を持ってるの?」
「冷世ちゃんって変な所で面白いよね……」
「人を道化師みたいに言わないでくれる????」
私と蟹菜ちゃんは苦笑しつつ、パジャマを持つ。
「私達は行くけど……」
「わかった、行けばいいんでしょう行けば!!」
「最初からそうすればよかったのに」
蟹菜ちゃん、それ以上はいけない。
◇◆◇
「デッッッッッッカ」
蟹菜ちゃんはそう声を上げた。
それもそのはず、大浴場についた私達はその大きさに口を開けていたからだ。
なるほど確かに、これは大浴場に行きたくなるわけだ。
「ささ、速く体洗おっか」
「そうね……」
「……ねえ、冷世ちゃん。隠したって無駄だよ……」
私は冷世ちゃんを見る。
タオルを持っているからわかりづらいが、冷世ちゃんの体はかなりスタイルが良かった。
手に収まりそうな小ぶりの胸に、何も食べてないのではと思えるお腹に、掴みやすそうなくびれ、びっくりするほどスラッと伸びた足。
モデルなのでは? と思われても仕方ないよね、これ。
「い、いや、あの……」
「逆に蟹菜ちゃんは隠さなすぎだよ……」
蟹菜ちゃんの体はなんというか……ある意味暴力的と言うか。
歩けばたゆんたゆん揺れる胸。冷世ちゃんとは違う、存在感はないものの、明らかに少しむちっとした足。
なんだろう、色んな意味で危ない気がする。
「春ちゃん、体洗いっこしよ!」
「え? うひゃあ!!?」
私は思いっきり胸を掴まれて声を上げる。
泡まみれの手で掴まれたため、にゅるん、と私の胸を滑らかに手が滑っていく。
「か、蟹菜ちゃん! まっ、待って! この体勢はやばいよ!」
「おお……冷世ちゃんより大きいから、揉みやすい……」
「やめんか!!」
はーい、と手を離す蟹菜ちゃん。冷世ちゃんの声で助かった……。
セクハラまがいなことをされたものの、それはある意味で言えば、こうして触れ合えるのが嬉しい、という心があるからなのかもしれない。
実際、私もこういうことされるのは苦手だが、触れ合う分には楽しい。
「全く、蟹菜は暴れん坊なんだから……」
「えっへへへ……でも、楽しいでしょ!」
「うん。蟹菜ちゃんがいてよかったよ」
それを聞いた蟹菜ちゃんは照れるようにして、お風呂に沈んでいった。それを見て私と冷世ちゃんは笑うのだった。
「さあ、私達も入りましょう……」
入りましょうか、と言おうとしたのだろう冷世ちゃんは足を踏み出して……水たまりを踏んで、つるっと滑って……
「お……」
「わ……」
大きく足を開けた。顔からお風呂に突っ込むようにして倒れ、私には足の先から体までをさらけ出している姿が映った。
私と蟹菜ちゃんは、そんな冷世ちゃんの裸を見て、ただただ、感服するしかなかったのだった。
この後、どぼんとお風呂に入った冷世ちゃんは、入水自殺を試みようとして私達が止めることになった。