ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第113話 春乃という少女

 

 ……俺という人間は、流されやすいのかもしれねぇ。

 そう思いながら、俺はゆっくりと汗を垂らす。

 ゴウンゴウン、と音を立ててゆっくりと上昇していく観覧車。そんな中で、春乃と冷世、蟹菜は窓に張り付いていた。

 

「あっはは! 高ーい!」

「凄いわね、まるで人がゴミのようよ」

「ねぇ冷世ちゃん、そういうこと言うのやめない?」

 

 何言ってんだこいつら、と思いながら俺も、反対側の窓を見て、目を細める。

 夕日が、海を反射しているのが見えた。

 まばらまばらに光を反射している海は、ゆったりと、広大に、流れている。

 

「鬼円、高いところ苦手?」

「いや、別に……」

 

 春乃に言われた俺はそう返す。

 それから、春乃が目の前に座って、外を眺めるのを見つめる。

 ……その目は、優しくて。まるで母親のようで。

 って、何を考えてるんだ俺は、と思いながら、俺はため息を吐く。

 春乃はそれを見て、少しだけ苦笑する。

 

「またため息吐いてる」

「んだよ」

「いや、なんか毎回ため息吐いてるなーって」

 

 春乃はそう言いながら、真似するようにため息を吐く。

 俺はそれを見てクッ、と思う。好きでため息吐いてんじゃねーんだよ。

 そう思いながら、外をずっと眺めていた。

 

「綺麗だね」

「……あぁ」

 

 こうやって高いところから海を見てると、まるで自分が小さく見える、とか言われる。

 その理由が何となく、わかる気がした。

 こうして見てると、本当に自分が小さく見えて、悩みなんて吹き飛びそうだ。

 

 

「鬼円と出会えて、私、良かった」

「なんだよ、ヤブから棒に」

「いやね?」

 

 春乃は小さくうつむいてから、こちらを見る。

 それから、ゆっくりとこちらを向いてきた。夕暮れが、沈みかけている太陽を背にしていた。

 その黒い瞳には俺が映っており、いつも見る、平和ぼけしてそうな、いいふうに言うなら、優しそうな顔からうって変わり、真剣な目だった。

 

「……鬼円は、さ」

「ん?」

 

 春乃が口を開いた。

 俺はその声を聞いて、耳だけを向けていた。

 

「将来の夢って、ある?」

「将来の夢、か」

 

 それを聞いて、改めて考え込む。そんなこと考えたこともなかった。

 ……まだ俺らは高校二年生、いや、もう二年生である。あと一年もすれば、自分の将来を決めなきゃ行けない。

 ……子供の頃のようなことは、もう言ってられないのだ。

 消防士になりたいだとか、警察官になりたいだとか。そういう漠然とした夢。

 そんな夢はとっくのとうに無いし、むしろ出来ないだろう。今から頑張って、間に合うか? と問われれば、間に合うのは難しいだろうしな。

 

「……決まってない?」

「あぁ。これと言ってな」

「……そっか…………良かった」

「良かったァ?」

 

 俺はいいながら、訝しげに目を向ける。春乃はずっとこちらを見ていて、俺のその言葉を聞いて、俺の手を取る。

 それを見て、目を見開く。まるで、支えるようにして、いや、包み込むようにして手を取られていた。手を取られるまで、春乃がこちらを向いてるのを気が付かなかった。

 

「……じゃあさ」

 

 春乃は、恥ずかしそうに照れて、そこで口を閉ざした。

 なんなんだよ、と思いながら待っていて……春乃は、しばらく黙り込んだ後に……また、口を開いた。

 

「一緒に考えよ。私も、漠然としか決まってないからさ」

 

 春乃はそう言って、テレッと笑う。

 その笑みは、どこまでも優しくて、愛らしくて。

 …………そうだったな。こいつは、どこまでも人にやさしくて、馬鹿みたいに笑って、それでいて……。

 

 人の心を、優しく溶かしていく。

 そんなやつだった。

 

「……仕方ねぇな」

 

 俺はそう言って、微笑む。

 

「……探すか」

「……うん」

 

 その日初めて俺は、春乃という女の顔をしっかりと見た。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、無力なのかもしれない。

 

 そう考えたことは、何度もあった。

 目の前で涙を流している女の子の姿を見て、足が止まった。迷子なのかなと思った。小さい頃の私はそれを見て、ただただ…………

 

「可愛そう」

 

 それだけしか言わなかった。

 助けたいだなんて、微塵もなかった。だって、その時の私はまだ無力だし、そんなにすごい人でもなかった。

 

 小説が書けるわけじゃない。

 何かを発明できるわけでもない。

 何かを発見することだって出来ない。

 誰かに教えを解くなんてことも出来ない。

 絵だって書けないし、歌だって作れないし歌えない。ダンスだって、踊りだって、バレエなんてものも出来ない。

 

 世界に名を馳せる偉人というものは、何かをなすために、何かを見つけるために努力をした。

 努力とは、小さな一歩だ。その小さな一歩を踏み出せないやつに、何かができるのだろうか?

 

 人生とは小さな一歩の連続なんだから。

 

 私は、目の前に立っている少女を見る。

 

「……やぁ、快弦ちゃん」

「何が『やぁ』、よ」

 

 快弦ちゃんは腕を組みながら言う。

 それから、私の隣に来て、座り込んだ。

 

「ここ、何って顔ね」

「そりゃあね。こんな夢みたいなの、初めてだもの」

「夢……ね。あながち間違いじゃないかも」

 

 快弦ちゃんは言いながら指さす。そこには、過去に見たシーンが映っていた。

 

「ここは、貴方の記憶の中って言ったらいいかな」

「恥ずかしいのばっかじゃない!!?」

「ふふふ、過去のものもね」

「見ないで欲しいかなぁ!!?」

 

 私は言いながら彼女の目を隠そうとして失敗する。

 けれども、手が触れた。それを見て、小さく声を上げる。そうしてから、快弦ちゃんの顔を見て抱きしめた。

 

「……会いたかった」

「……うん」

 

 私はそう言ってから、ぱぱっと離れて彼女を見る。

 

「それで、ええっと……?」

「話があるの」

「……話?」

 

 快弦ちゃんが真面目な目を向けてこちらを見ていた。

 

「貴方の、『能力』の話よ」

 

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