ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

119 / 119
第115話 京都に向かう前の……

 

 私が目を覚ますと、そこはバスの中でたった今停車したところだった。

 隣の鬼円も目を覚ましていて、外を眺めている。

 今度泊まるホテルらしい。随分と大きくて……前のホテルとは違うな、うん。

 

 というか、旅館っぽいのかな。この前のは明らかにホテルだったが、これは「和!!」という感じがする。

 私たちは降りてからゆっくりと頭を抑える。

 

「なに、頭痛?」

「いやちょっとね……は、ははは……」

 

 快弦ちゃんは夢の中とは言ってたけど、あんなに投げ飛ばされるとは思ってなかった……。

 曰く、明晰夢とよく似ているものらしくて、その経験は私の中に必ず残る、らしい。

 

 とはいえ、痛いものは痛いので……何度意識を失いかけたか……。

 ま、死なない限り目覚めないわよ、とか言われたし、多少、手加減してくれた……のかな。うん……。

 

 快弦ちゃん自体の魂は今現在金之助くんと一緒にいるらしい。

 だから、夢に出たのは私の中に残っていた残留思念? と言うやつらしい。

 とにかく、夢の中で会えるのはもってあと二回、らしい。この修学旅行中はその二回でなんとかしてあげる、とのことだ。

 

 私はそんなことを考えていると、部屋にたどりつく。

 いつも通りの三人でゆっくりとくつろぐ。

 

「いやぁ〜、こんな大きい部屋なのに三人って……贅沢だねぇ〜〜……」

「こら、蟹菜。はしたないわよ」

 

 二人は布団に座り込んでいて、蟹菜ちゃんなんかは溶けていた。ほんとに、スライムみたいに。

 かくいう冷世ちゃんも、座布団の上にあぐらをかいて座っていた。はしたないのは同じだもんね、と思いながら外の声が聞こえてくる。

 

「え、ここ露天風呂あるの?」

「うん! 見える時は、星空で満開なんだって!」

 

 なるほど、通りでデカイわけだ。

 ここは、かなり有名な旅館らしく、有名人も泊まったことある、とのことだ。

 ま、私達もゆっくりと空を見上げるとしましょうか……。

 

「その前に、食事だってさ」

「うーふふん、土鍋で炊いたご飯、塩をまいて……ぱくりと……箸で……!!」

「ヨダレ出てるわよ蟹菜。汚い」

「言い方酷くないっ!?!」

 

 私はそんな二人を見て苦笑いするのだった。

 しかし、確かに土鍋で焼いたご飯は美味しいよね……なんであんなに美味しいんだろ、土鍋って。

 

 とにもかくにも、私たちは立ち上がって食事処に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、春乃ちゃーん!」

「また会いましたね、赤芽さん」

「もー、呼び捨てでいいのに〜!」

 

 いや、私の性格上それが出来ないって言うか……。

 私はそんなことを思いつつ、赤芽さんと歩く。

 

「これから京都なら同じだね」

「そうですね。一緒に回ります?」

「いいね〜! 実の所、悪噛がいると班のメンバーが萎縮しちゃってさ……」

 

 何となくわかるな……汗を垂らす。

 悪噛なら、誰に対しても睨みつけ+ひっくいこえの「あ?」が飛んでくるだろうし……。

 そりゃあ班のメンバーも萎縮しちゃうよね……私だってするだろうし。

 とはいえ、二人で歩き回るのも気まずい……

 

「……二人では歩かないんですか?」

「? 二人きりはいいけど、大人数いないと楽しくないでしょ」

 

 ごもっとも……なのか? とにかく、赤芽さんは大人数で回りたいらしく、私たちはそれに参加することとなったのだった。

 

 私はドサッと座って、隣の鬼円を見る。

 

「うわっ、めちゃくちゃ持ってるじゃん……」

「土鍋はうめーんだよ」

 

 それはとても分かる。

 私は鬼円と共に食べながら目を向けて、静かに言う。

 

「ねね、鬼円って予備の木刀とか持ってないの?」

「持ってるが……いま持ってきてるのは俺の使ってるやつだけだぞ」

「そっか……じゃあ戻ったら貸してよ」

「……んだ?」

 

 鬼円はこちらを訝しげに見る。

 私はその目を見つめてから、ゆっくりと言う。

 

「私も、戦おうと思う」

「……そうか。それで木刀を?」

 

 鬼円は少し考え込んでから、頷く。

 

「わぁった。俺も、手伝ってやる」

「……えっ?」

「俺も、テメェのこと強くしてやる」

 

 鬼円はそう言ってからニヤリと、イタズラ気味に笑った。

 まるで、獲物を見つけたとか……いや、違うか。まるで……「ようやく見つけた」みたいな。「ようやくか」と言わんばかりの笑みだった。

 私はそれを見つめてから、少し苦笑いをしてから、しっかりと頷く。

 

「うん、よろしくね」

 

 私はそう言ってから、ご飯を食べる。

 鬼円は結局、平らげた後におかわりしに行ってしまった。

 

 私はその背中を見ながら強く決意する。もっと強くなってやろうと。

 心も、身体も。もっともっと、色んな人を……悲しませることがないように。

 

 もっと、強くならなきゃなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼円、少しいいか」

 

 先生に呼び止められた鬼円は振り返る。

 

「なんだ」

「なんだじゃないだ……はぁ。まぁいい。お前に急用だからな」

 

 先生はそう言いながら、鬼円に手に持っている電話を手渡す。

 鬼円はそれを見てから、耳元に当てる。

 

 その電話から流れた音声は、鬼円の目を見開くには十分な情報があった。

 敵では無い。そして、超能力部のことでもない。

 

 それは、鬼円の心の底に沈んでいた、無理やり隠していた「もしも」を現実に呼び起こしていた。

 

『桃佑くん!! 大変!! おじいちゃんが……國網さんが、倒れた!!!』

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。