ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第118話 幼馴染

 

 悪噛と桑西は幼馴染である。

 幼稚園、小学生、中学生、高校生と全く同じ学校であり、クラスであった。

 隣の席になり、毎日顔をあわせて、登校して、共に過ごしていた中だった。悪噛にとっても、桑西という存在は大きく、デカかった。

 恋心ではない。「幼馴染」という言葉が二人を結んでいた。

 大事な絆となるそれを、悪噛は一度も手放したことはない。

 

「悪噛……」

 

 京都の深々とした森の中にある廃墟となった家の中。

 ひっそりと佇むそこは、隠れ家というより、拉致したものを隠すには最適であった。

 桑西は唇を噛んでから周りに目を向ける。

 

(どこだここ……拉致されてから、そんな経ってない、はず……)

 

 桑西は立ち上がろうとして、目の前の男に目を向けて固まる。

 

(こいつが、拉致犯……!)

 

 声が出ない、いや、出せなかった。

 目の前の男は、不思議なほど、こちらを……『()()()()』でみていたからだ。

 桑西はその目を見て、意味がわからず混乱していた。

 なぜわざわざ、拉致してきた相手に、哀れの目を、情けの目を向けたのかわからなかったからだ。

 

(こいつ、なんなの……? 情けをかけているの?)

 

 桑西は汗を垂らすことしか出来なかった。

 男の手の甲に書かれていたのは『4i』の文字。

 

「可哀想な、やつ……まぁ、仕方ないよね……鬼円を、呼び出す、ためだもの」

「……は?」

 

 桑西は初めて、自分の声を響かせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪噛速すぎるんだけど!! と私は空を駆けながら思う。

 悪噛の能力は狼であることは確かだ。実際、体から噴き出しているオーラも、その見た目も、走る姿まで……まるで狼だからだ。

 

 鬼円は俊敏性や機動性なんかに平等的にステータスを振っているのなら、悪噛は俊敏性と力に全フリしているのだろう。

 鬼円と悪噛は似ているようで似ていないのだ。

 

「どこまで行くのよ全く……!!」

「わからない、けど……あの山にいるのは確かだね……!!」

 

 私は言いながら前を見る。禍々しい何かを感じる……確実にここにいる。

 私はゴクリとつばを飲み下して、冷世ちゃんを下ろす。下ろされた冷世ちゃんは目をパチパチと(しばた)かせて首を傾げていた。

 そんな彼女に一言言う。

 

「ここで待ってて」

「……は?」

 

 私の言葉に冷世ちゃんがそう言って固まって、口を開いてきた。

 

「何言ってるの……そんなヤバイやつなら、私だって!!」

「勝てないかもしれないし、そもそも、怪我をする。だから、待っててほしいの」

「アホ! 敵前で指を咥えて待ってろなんて……!」

 

 冷世ちゃんはそう言って、ズンズン歩いて、私の目の前に来る。

 

「私も行くわよ。戦うなんてことしたことないけど、友達を見捨てるほど終わってもないわ!!」

「れ、冷世ちゃん……」

 

 私はそんな冷世ちゃんに()されつつに考える。

 冷世ちゃんをこんなところにいさせるわけには・・・それに、悪噛のことを信用してないわけじゃないが、鬼円がいないし……。

 

 …………。

 

「そう、だよ」

 

 鬼円がいないからって、こんな所で足踏みしてたらだめだ。

 強くなるって、決めたじゃないか。

 

「……わかった。けど、本当にヤバいって思ったら、絶対逃げてね?」

「上等よ。アスリートは目標が高ければ高いほど本気になれるんだから」

「そういう問題かなぁ、これ……」

 

 私は困惑しつつも、森の中をかき分けていく。

 この先にきっといるはずだから。

 

「どこにいるかわかるの?」

「ええっとね……」

 

 私は目を閉じて意識を集中させる。能力という概念に。

 感覚でやっているけどもこれでいいんだろうか……私は少し難しいことを考えつつ、研ぎ澄ましていく。

 

 私は、目を開く。

 

「あそこの傾斜を登っていくと……誰かの別荘だったのかな、小屋みたいな……広めの家がある」

「よく分かるわね」

「え? い、いや……あはは……」

 

 快弦ちゃんは『クリフォトの樹』の一員だった。その名残なのか、私にもわかってきた。

 『クリフォトの樹』の気配だ。気配が、道となって私に見えている。足跡のように、手がかりのように、映し出されている。

 レーダーのようなもの、かな。とにかく、今はこれがありがたいし、頼りになる。

 

「行こう」

「うん」

 

 私と冷世ちゃんは歩き出して……後ろから口を抑えられるかのようにして掴まれる。

 

「んん!!?」

「んっ!!!」

 

 冷世ちゃんが即座に地面を凍らせようとした瞬間だった。

 

「待てバカ」

 

 悪噛がそこにいた。

 抑えられていた腕が下ろされて、私と冷世ちゃんはぷはっと息を吐いてから……

 

「なぁにすんだこのっ!!」

「わわわ、冷世ちゃん!! 声! 声っ!!」

 

 私たちは二人で冷世ちゃんを抑えて、息を吐く。

 それから、ゆっくりと悪噛を見た。

 

「なんであんたここに……! 先行してたはずでしょ!?」

「それがな。あれだ」

 

 悪噛はいいながら目を向けた。

 私達も釣られてそちらを見ると、人影があるのが分かる。

 

 森の中にある倉庫、と言えばいいか。

 その前に陣取っている男は、ゆっくりと槍を携えながら空を見上げていた。

 その男は、ゆっくりと息を吐いて、地面を何度もコツ、コツと叩いていた。

 

 あいつか……あいつが、赤芽さんを……!!

 

 これ以上被害を出させない。それが、私たちの目標。

 こいつをここで確実に仕留めなければ……。

 

「俺がやる、手を出すなよ」

「なんであんたらって毎回こう、自分を犠牲にするわけ」

 

 冷世ちゃんはそう言って立ち上がる。

 そうして、歩いていく。確かに草を踏みしめながら。やつの前に出る。

 

「ちょっ、冷世ちゃん……」

「コソコソしてるなんて、私は嫌」

 

 冷世ちゃんはそういうと、ドンッ! とやつの目の前に立った。

 

「私は冷世。あんたは?」

「……まさか、真正面から、来る、とは」

 

 そいつは槍を構えて、目を細める。

 

「……アディシェス」

「そ」

 

 冷世ちゃんはそう言ってからまた強く地面に脚を振り下ろした。

 一瞬で地面に氷と霜柱が走り、アディシェスの脚を凍りつかせた。

 

「私の友達、返してもらうわ?」

 

 

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