ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第121話 きっとそれは、貴方の宝物 その③

 

 アディシェスの脇腹の骨が砕けて、それから、肉が抉られた。

 灰のようなものがブシャアッ! と噴き出し、アディシェスは槍を振るう。

 

 悪噛はゴッ、と殴られて地面を転がる。

 

「ぐっ……!!」

 

 とめどなく灰がこぼれ落ちる。

 アディシェスの目が苦痛に歪み、悪噛を見る。

 

「まさか、ここにも、こんなやつ、いたとは……」

「はっ、ノーマークの野郎が戦力になるのは、どんなもんでも同じだろーがよ!」

 

 悪噛はいいながら血を拭った。

 しかし、アディシェスはまだ動く。再び構えようとする悪噛だが、膝が震える。

 

 春乃はそこに近づいて、支える。

 

「そんな体が震えて……あと何回放てるの!?」

「うるせぇ! 何回だってやってやる……!!」

「無茶よ。任せなさい」

 

 冷世はそう言うと、立ち上がって……ゆっくりと息を吐く。

 寒気が彼女の周りを覆う。

 

「春乃、あなたに決めて欲しい」

「……分かった」

 

 春乃は立ち上がり拳を構える。それから、息を吐いて……走った。

 アディシェスの槍が向けられる。が、しかし、氷の壁が目の前に出来る。

 

「邪魔っ!」

 

 アディシェスが槍を振るって氷を粉々にする。その瞬間、氷が目の前に飛んできた。

 アディシェスはそれを紙一重で避ける。

 

「粉々に壊した氷を殴って、散弾銃のようにしやがった……!」

 

 悪噛は口を噛む。

 それから、春乃はどこかと目を向けて、空を見る。

 遥か彼方。アディシェスの視界から離れるようにして、氷を踏み台にして、飛んでいた春乃の姿があった。

 

 目の前に、氷の壁を張ってから地面から同じ広さと幅の氷の壁を出す。二枚目の壁が出てきた衝撃を使って、空高く舞い上がったのだ。

 

 それを見てから、悪噛は走った。

 

「オラァッ!」

「君もっ、しつこいっ!!」

 

 悪噛を槍で貫こうと穂先を向けて突く。

 悪噛はそれを素手で穂先を掴んでから、ゴチンッ!! と頭突きをする。

 

 アディシェスの視界がチカチカと弾けるものの、咄嗟に蹴り飛ばす。

 悪噛は地面を転がって、ゆっくりと息を吐く。

 

 春乃は、まだ、高らかに空を漂ってから……拳を構えた。

 

 

 

 ━━━……たいした、必殺技なんてない。

 

 

 

 春乃は息を吸う。重力によって、流れるように地面に向かって落ち始める。

 

 

 

 

 ━━━……でも、私のこの力は本物だから。

 

 

 

 

 アディシェスの足元が氷で包まれる。

 アディシェスはそれを払うために槍を振るって……気がついた。

 自分の影が、一回り、先程よりも大きいと。

 

 上を見上げた時には、春乃は既に振りかぶっていた。

 

 

 

「貫けええええええっ!!!!」

 

 

 

 春乃の拳が、構えようと仰け反ったアディシェスにぶつかった。

 拳がアディシェスの腹を貫いて、春乃は地面に降りる。

 

 アディシェスは槍を刺そうとして……震えて、槍を落とした。

 

「……ぐっ……」

 

 アディシェスの口から、灰のようなものがこぼれ落ちる。

 悪噛も、冷世もそれを見て驚きを隠せていなかった。

 

 アディシェスはゆっくりと腕を下ろして睨みつける。

 

「お前ら、は……これから、絶望する、ぞ……」

 

 春乃はそれを聞いてから、息を吐く。

 

「しないよ」

 

 春乃の言葉にアディシェスは目を見開いた。

 春乃はゆっくりと腕を動かして、アディシェスの背中を撫でた。

 

「あなた達の中に、元人間がいるのを知った」

 

 快弦……カイツールの事だ。

 春乃はあの話を聞いて、思った。この、『クリフォトの樹』とは……世界に絶望した、自分に絶望した、そんな人間が集まったのではないか? と。

 

 カイツールも、ツァーカブも。春乃が戦ってきた相手は、何かしらの事情を抱えていたのでは? と。

 

 それでも、人を殺そうとして、何かを計画している。

 

「私たちは、止めるよ。絶望ならもうたくさんしたから」

 

 春乃はいいながらボロボロと崩れ落ちるアディシェスを見た。

 

「勝つよ。私たちは」

 

 アディシェスは何も言わずにその目を見つめた。

 

 春乃の目には、決意が宿っていた。必ず止めると、訴えかけている瞳だった。

 その瞳を見て、アディシェスは目を閉じた。

 

 風が吹いて、アディシェスが消えた。

 

 春乃は腕を引き戻して、空を見上げる。

 

 それから、どしゃりという音が響く。振り返れば、既に冷世が倒れていた。

 

 

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