風邪引いてました
私は歩いて、町中に降りる。
高校生が森から出たとなったら騒ぎにはなるだろうから、裏路地を通っていた。いや、それもだいぶまずいけれどね……。
悪噛はとりあえず怪我した部位を包帯で巻いて、赤芽さんが連れて行った。
お互いにまた会うことを約束してから別れた。私たちは先にホテルに戻っていた。
「ん……」
「あ、起きた……」
私は冷世ちゃんが起きたのを見て、ほっ、と一息ついてから頭を撫でる。
冷世ちゃんは「ん……」といってから目を細めて……私のお腹の方に寝っ転がる。
私はそれにビクッと反応しそうになるが、なんとかこらえる。
「くすぐったいよ……」
「いいでしょ。能力を使うと、体が冷えるの……」
冷世ちゃんはそう言うと、薄っすらと目を開ける。
こちらを見つめる目が、やけに寂しそうで。
「なんで、あんなのと戦ってるの、言ってくれないの」
「……巻き込むわけにはいかないよ」
冷世ちゃんはそれを聞いて、ゆっくりと言った。
「秘密を抱えてる、友達でしょう?」
「……うん。ごめんね」
冷世ちゃんは起き上がり、私を見て、ぎゅっと、抱きしめてきてくれた。
暖かい。体が少しひんやりとしているのに、こんなにも、心は暖かかった。
たしかに、巻き込んではいけないという気持ちはあった。
「その事も含めて、色々説明するから」
「ええ。約束よ」
冷世ちゃんはそう言うと、寝息を立て始めた。スースーと。私はそれを聞きながら頭を撫でてため息を吐く。
結局、膝枕に戻った。
冷世ちゃんからすれば、私は過去にこの子を助けた、恩人的立ち位置なのだろうか。冷世ちゃんは、きっと私たちに手伝うと言い出すかもしれない。
そうしたら、私は……。
「あーーっ!! いた! どこいってたのさ、こんな時間まで!!」
私は声の方を見ると、蟹菜ちゃんがすぐそこにいた。
蟹菜ちゃんは私の膝にいる冷世ちゃんと私を交互に見てから……顔を赤らめる。
「ま、まぁ……そういうのは、否定しないよ、友達だしね?」
「まって、すごい勘違いされてる気がする!!?」
私はその場で全力を持って弁明するのだった。
◇◆◇
「蟹菜ちゃんがお土産買ってくれて助かるよ……」
「ほんとね。お金持ちなのかしら?」
「えへへ……秘密だけど、
「「ごっ…………!!?」」
私たちは帰りのバスの中で話し合っていた。
京都のお土産を蟹菜ちゃんから手渡されていた。
「い、意外とお金持ちなの……?」
「? 普通にバイト代だけど……」
私や冷世ちゃんは、部活に入ってるからバイトなんてしてる暇ないし……子、これがジャパニーズ、働き者……。
そんなことを思いながら私はお金を手渡していた。いや、無償でもらえるわけないでしょ。
冷世ちゃんはお土産を見ながらゆっくりと息を吐く。
「結局、色々トラブル続きだったわね……」
「そうだね……」
「鬼円と春乃もくっつけること出来なかったしね……」
「ちょっと待て、何の話だそれ!!?」
私は蟹菜ちゃんがこぼした発言に食って掛かる。
冷世ちゃんはせんべいを食べながら……もう開けて食べてるし……とにかく、食べながらもああ、と。まるで忘れていたかのような反応をした。
「そういえばそんな話もしてたわね」
「待って何の話だ!!?」
私が言うと、冷世ちゃんがこちらを見て、やけに真剣な目でこちらを見ていた。
「『春乃と鬼円くっつけよう大作戦』よ」
「なるほど、わからん」
「簡単に言えば、もう付き合っちゃえよ!! ってことよ」
「あのさぁ!!?」
私は顔を赤くする。
確かに私はヘタレだから、告白できないけどさぁ!! 未だに好きとか言えてないけどさぁ!! 早くしろって心の声が聞こえてくるけどさぁ!
「それも失敗だけどさ」
「失敗……って……」
私は観覧車での一連を思い出して髪の毛を指でくるくると巻く。
いや、あれは、告白じゃないから……ギリギリ告白じゃ……。
「ま、とにかく帰ったら。これ、超能力部のメンバーに渡しなよ」
「そーそー、大好きな鬼円くんのためにもさ!」
「……うん、ありがとう!」
私は、いい友人を持ったなと思うのだった。
私が、この友人たちを裏切らないために。私は、私は……!!