土曜日。
私は自転車を漕いでコンビニの目の前で止まり、自転車から降りる。
スマホを見て、時間を確認する。
「…9時、か…」
勉強会は10時頃からやる予定だったのだが…つい昂ってしまい、1時間も前に来てしまった。
確か、ここのコンビニで集合場所はあっているはずだ。
しかし、1時間もコンビニで時間を潰せるかと言えば…………うん。無理だな。
近くプラプラしてればいいかな……。
「あれ、春乃ちゃん?」
「あ、音流さん!」
トコトコと歩いてきて声をかけてきたのは音流さんであった。
私は自転車を手で押し、音流さんの近くへと歩く。
「早いねぇ」
「音流さんもですけど」
「私は近いからね。お昼買っちゃおうかと思ってさ」
はぁ、だからこんな早い時間にコンビニに来たのか。
音流さんはバッグから財布を取り出して、私に500円とちょっとばかしの小銭を渡してくる。
「ちょっ?」
「いいよ。奢ってあげる〜!それに、鬼円に苦労してるでしょ?」
「いや、う〜ん……」
「いいからいいから!」
私は背中を押され、コンビニの前へと押し出される。
せ、せめて自転車だけでも停めさせて下さいね?!
自転車を停めたあと、私と音流さんはコンビニの中に入る。
「何〜食べようかな〜ふっふん〜」
鼻歌を歌いながらお弁当を手に取り、選んでいる音流さん。
私は適当におにぎりとパンを手に持ち、カゴに詰める。
「そういえば、この近くって言ってましたけど?」
「うん。この近くに道場があってさ。よく鬼円が通ってるんだよね〜」
「あっ、そこで知り合ったんですか?」
そだよ〜。と言いながらお弁当をカゴの中に入れる音流さん。
私は後で話を聞いてみようかな?と思いつつ、会計を済ませて、レジ袋を持って外に出る。
しばらくした後、音流さんが出てくる。
「鬼円と初めて会った時はさ、なんかこう…………絶望してるみたいな顔だったんだよね」
「絶望?鬼円が?」
頷く音流さん。
「事故で親御さんを亡くしちゃったみたいでさ、それ以来、お爺さんと暮らしているらしいんだ」
「……」
「で、お爺さんと道場にたまたま来たのが最初……かな?凄く力強くてね……握手しただけなのに、腕取れちゃうかと思ったよ!アハハ」
「笑い事なんですかねそれ?」
鬼円って小さい頃から力強かったのか。
確かに、悪噛と戦ってた時、凄い強い力で木刀持ってたけど……。
「まぁ、それからは稽古してあげてる。と言うよりも、稽古させてるの。クヨクヨしてても仕方がないってね!」
「へぇ……。音流さん、鬼円のこと心配してたんですね」
「まぁね〜」
音流さんがふふん。と自慢げに胸を張っている。
私はそれを見て苦笑いを浮かべつつ、香蔵さんと狸吉さんが集まるのを待っていた。
◇◆◇
「げぇ、お前らマジで来たのかよ……」
「本気と書いてマジと呼ぶ!お邪魔しマース」
音流さんについて行き、鬼円の家に着いた私たち……なのだが……。
「でっかぁ……」
「大きいな……」
「デカすぎんだろ……」
私と狸吉さん、香蔵さんは鬼円の家を見て大きく口を開けていた。
まるで昔の大名が住んでいそうな、そんな和風漂う大きな家であった。
なんか、漫画で見るようなほんとに大きな和風屋敷って感じの……。
「入れお前ら」
「お、お邪魔します…」
私たちは汗をかきつつ、中へとはいる。
やはり中も大きく、鬼円について行かないと迷いそうな、通路が沢山あった。
障子をスパンと開け、和室に入るように促す鬼円。私たちはそれに従って和室の中に入る。
「ここで待っててくれ」
鬼円がそう言って障子を閉じて、歩いていってしまったのか、音が遠のいていき、消えた。
私たちは和室をキョロキョロと見つつ、音流さんがなにかしているので、そちらを見る。
「は〜開放的〜」
音流さんは、部屋にある障子を開け、縁側に座って外を眺めていた。
都会の中にある和風な屋敷。見たことある景色が見えるだろうと思っていたけど……。
「わぁ……」
庭にはちょっとした大きな池があり、鯉がちゃぽんと音を立てて深く潜り、低木がサラサラと音を立てて揺れる。
都会とは違う、自然を感じられる庭となっていた。
私はそれに、心を奪われていた。
すると後ろの方で障子が開く。どうやら、鬼円が、お茶を持ってきてくれたようだ。
お茶をテーブルの上に置き、鬼円は一息つく。
「……で、勉強は?」
「すぐやります……」
鬼円は音流さんを睨みつけると、音流さんは渋々と言った感じでバッグからノートと教科書を取りだしてテーブルの上に置いた。
「狸吉〜」
「任せろ!」
こうして、勉強会が始まるのであった。