学校から出た私は、鬼円と一緒にカフェの中に入る。
窓際の席に座って、メニュー表を立てて顔を隠す。
えっ、ちょっと待ってなんで? いや、私が誘ったんだから来るんだろうけどさ? 断んなかったのはなんで?!
「…メニュー表見えねぇんだが」
「あ、あ、ご、ごめん…」
「…? 別に謝ることじゃねぇだろ」
やばい。私いま、挙動不審すぎるでしょ。
鬼円はブラックコーヒーを頼み、私は普通のカフェラテを頼んだ。
…しばらくの沈黙の後に鬼円が口を開いた。
「なんで俺をここに?」
「えっ? ……えーと…げ、元気なさそうだったからさ! えっと、コーヒーでも飲んで…ね!」
「…その割には何とも焦ってそうだな…」
鬼円の言葉にギクッと体を震わせてしまった。
事実、何話せばいいか分からないから焦っている。クソ! こういう時に限って人見知りだったのを恨む事になるとは!
「ま、俺があのまま悪態ついてても仕方がねぇ。ある意味助かったようなものだ」
「…! それなら良かったよ」
「クソ、あの顧問ぶっ殺してやろうか?」
「やめなよ!!?」
過激な言葉に冷や汗を垂らしながら言うと、店員さんが持ってきたコーヒーをズズっと飲む鬼丸。
鬼円って、やっぱりイケメンだよな…コーヒー飲んでる姿もカッコイイって言うか。
…?!
「違う違う違う!!!」
「いきなりなんだ?!」
私は首をブンブン横に振ってバッと立ち上がる。
今私なんて心の中で言った?! カッコイイ?! 鬼円が?! それは事実だけれども!!
「な、なんでもない…」
「そ、そうか……っと、聞きてぇ事があったんだった」
鬼円は変な人を見る目で私を見たあとに、大事そうな話を始めてきた。
私も意識をそちらに戻す。
「あのクソ顧問の、あのクソみたいなファイル、どうする?」
「そうだね……」
あのファイルがある以上、自由に活動ができなくしまったわけだ。
しかも、顧問がいるってことは鶴愛さんも部室に入れなくなってしまった…。
2人で考えていると、ブブッと携帯が鳴る。
「誰からだ?」
「香蔵さんからだ」
私は通話開始のボタンを押し、鬼円に聞こえるように音量をあげる。
『しもしも〜?』
「死語は慎んでくださいね?」
『ごめんて…その様子だと、大丈夫そうかな?』
「な訳ないじゃないですか。ぶちのめしますよ?」
『ほんとに君ってば口悪いね…あぁ、そうだ。春ちゃん?』
私になにか伝えようとしているよか、名前を呼んできた。
私は「はい?」と聞くと、香蔵さんが言った。
『鶴愛ちゃん、部室入れなくなっちゃったから、家で匿ってあげて?』
「………何を言っているんですか?」
『鶴愛ちゃん、部室入れなくなっちゃったから、家で匿ってあげて?』
「いや、復唱しなくていいんですよ」
え、何を言って?
「私の家、アパートですよ??」
『そこをなんとか…ね?』
「出来るわけないじゃないですか!! 家持ってるわけじゃあるまいし!」
私が叫ぶと、しょぼん、と香蔵さんの声が聞こえてきた。
鬼円は顔に手をつけて、はぁ、とため息をついていた。
『じゃ、鬼円……』
「老害がなんて言うか分かりませんよ? そもそもアンタが匿えばいいでしょ」
『それが出来たら苦労しないんだよ!』
それはそう。
すると、鶴愛さんの声が聞こえてきた。
『これは、もう繋がっているということですよね? けーたい? とやらはほんとに凄いんですね』
「鶴愛さん!」
『すみません、無理言って……ですが、何処か匿える場所は無いでしょうか?』
うーんと考え込んでみる。
私の所のアパートってペット許可されてたけども……。
「鶴ってペットに入るの?」
『…………調べたら、特定動物の中には入ってないから大丈夫でしょ!』
「うわテキトー」
ほんとに大丈夫なのそれ? と心配だが……。
『まぁ、青い狸ロボットでも押し入れの中で寝てたし!』
「鶴愛さんを押し入れの中に入れるんですか?!」
『私はそれで構いませんが…』
「構ってくださいよ?!」
とりあえず、鶴愛さんの事よろしく! と言われ通話を切られてしまった。
ど、どうしよ……鶴がアパートにいるって色んな意味でやばいと思うんだけど!
そもそも、アパートに鶴がいるって前代未聞でしょ!
「…老害にも話してみるから、もしかしたらこっちで匿えるかも知れねぇ」
「…頼んでいいかな……」
私が言うと、苦笑いを浮かべる鬼円。
それでも、多分すぐってのは無理だと思うから、一日はこっちで過ごすかもだけれども。
なんでこんなことに……。