カフェを出た後に、鶴愛さんと合流を果たす。
見つけると同時に鶴愛さんは頭を下げてきた。
「すみません、苦労かけてしまって…」
「い、いいんですよ! 頭あげてください!」
しかし、部室に入れるなくなったって何があったんだろ?
鶴愛さん曰く、部室の顧問が出来てしまったことで、緩かった鍵の管理が厳しくなってしまったらしい。
それを聞くと、悪態をつき始める鬼円を横目に見る。
「鶴愛さんは…人間の姿になれますか?」
「ちょっとやってみますね……」
私たちからすれば人間に見えるけど、周りからすれば鶴が喋ってることになっちゃうからなぁ……。
鶴愛さんの姿は少しだけ変わり、白髪の美女となっている。
「どうでしょう……?」
「鏡を見たらいいんじゃねぇか?」
「名案だね。でも、鏡持ってないよ?」
鬼円が女子なのに持ってないのか? と言った顔をしてこちらを見てくる。
なんだよ! 持ってない女子だっているかもしれないでしょ?!
鬼円は刀を取り出して、その刃に鶴愛さんを映す。
「…大丈夫そうだな」
「あぁ、良かった……」
ホッと安堵の息を零す鶴愛さん。
「さて、行きましょう。アパートならすぐそこですから」
「はい。わかりました」
「そんじゃ、俺は帰ってジジィに談判してみるわ」
「ありがと、助かる!」
私は鬼円に感謝を伝えたあと、鶴愛さんと共にその場を離れた。
アパートにはすぐに着き、鶴だと言うことはバレずになんとか部屋に辿り着くことに成功した。
「…なんとも…言ってはいけないとは思いますけど、平凡な部屋ですね」
「じゃあ言わなくていいんだよ? 言葉はナイフになるんだよ?」
鶴愛さんの言葉のナイフが私に刺さった所で、ぐぅぅとお腹の音が鳴る。
私ではない。ということは……
「…すみません、何も食べてなくて……」
「あはは。じゃあすぐにご飯作りますね!」
私は鶴愛さんを座らせてから、料理するための道具を出す。
すると、後ろから布を織る音が聞こえてきた。振り返ると……。
「!? どこから出したんですか
「え? すみません……能力の影響でつい……迷惑でしょうか?」
「いや、別にいいんですけど……」
鶴愛さんが手織り機で布を織る姿が。しかも、布は作りかけで、長さ的にも、そろそろ終わるのでは?と言うぐらいにはあった。
私の部屋、そこまでデカくないんだけどなぁ……。
「って、能力?」
「はい。私、布を操ることが能力でして……それぐらいしか出来ないですけど、私の織る布は特別で…」
私が能力について尋ねると、鶴愛さんは微笑みながら能力について語ってくれた。
布を操ることが出来る。が、戦闘向きでは無いため、代わりに服を作っている。
ちなみに、布をたまに売ることもあるが、それが中々にお高くつくらしい。
「それで生活を立ててるの?」
「いえ、香蔵さん達に渡しています…私を救ってくれましたし…」
「へぇ……。晩御飯出来ましたよ〜パスタですけど、許してくださいね」
「ぱすた? ぱすたとはなんですか?」
鶴愛さんは、目の前に出されたパスタを物珍しそうに見ている。
私がパスタはイタリアという国が発祥の料理と説明すると、パスタを箸で掴んで食べようとしている。
「あぁ、箸じゃなくて、フォークをこうやって……はむ。こう使うんですよ!」
「……ふぉーく……異国の文化は珍しいんですね……」
異国って……いつの時代の人なんですか……いや、鶴か。
鶴愛さんは、フォークを使って、パクッとパスタを食べる。すると、目を輝かせ始めた。
「美味しい!」
「ふふ。まだまだありますから、焦らないで食べてくださいね」
「はい! ありがとうございます!」
なんだろう、こうパスタを美味そうに食べられてると、こっちまで嬉しくなって……はっ、これが料理人の気持ちか…!?
私と鶴愛さんはパスタを食べ終えると、少しだけ世間話を始めた。
すると、鶴愛さんはテレビを指さしてきた。
「これって、『てれび』と言うやつですか?」
「そうだよ。つける?」
コクコクと頷く鶴愛さん。
テレビをつけると、ちょうどM−1グランプリがやっていた。
「これは、漫才ですか?」
「そうだよ。漫才で、競い合ってるの」
「へぇ……こんな面白い漫才もあるのですね」
テレビを見て笑っている鶴愛さん。
それを見ながら、私は寝る準備をし始めた。
◇◆◇
「えっと、別にそこで寝なくていいんですよ?」
「いえ、私のためにお家の面積を取る訳には行きませんし…」
だからって押し入れで寝なくてもいいんですよ?
鶴愛さんはでは。と言って押し入れを閉めてしまった。鶴愛さんってもしかして、ちょっとズレてる?
「……ま、本人がいいって言ってるならそれでいいか……」
鶴が寝る押し入れ……。なかなかに珍しい……っていうか、前例をまず見ないか。
私は後ろ頭を掻きながらお風呂に入る。
今日は色々あったな……。
顧問の無茶ぶりに、鬼円の話……。
鬼円で、私はカフェでの出来事を思い出して、首を横に振り、頭をお湯に突っ込む。
だから!鬼円はカッコイイけど!
……よし。落ち着いた。
そういえば、皆能力持ってるな……。私だけ持ってないし、戦力にならないのかな……?
「…私も役に立ちたいなぁ……」
お風呂から上がり、携帯を見ながら呟く。
すると、メッセージが飛んでくる。誰からだろ?
『明日、時間ある?』
その名前は……REYO……?
REYO……れよ……冷世? えっ冷世ちゃんから?! メッセージ交換してたっけ?!
メッセージ交換してたか聞くと
『鬼円から貰った』
と帰ってきた。
鬼円から…。なんか、脅してそうだな……。でも、なんでだろう?ま、もう夜も遅いし、明日聞くことにしよっと。
私はそう思いながら、ベッドに寝っ転がり、意識を手放すのであった。