私は家で寝っ転がって天井を見ていた。
すると、鶴愛さんが顔を覗いてきた。
「あの、寝っ転がって……体調が悪いんですか?」
「いや違くて……」
一体、どうしたら助けられるだろう?
いや、どうしたらじゃない。どうやって、だ。
「……鶴愛さんだったらどうする?」
「? 何がですか?」
「いや、助けようと思っても、決まりとか掟とかのせいで助けられないなら……どうする?」
「…う〜ん……」
鶴愛さんは目を閉じ、首を傾げながら唸る。
その仕草が可愛いのはそれはとても良いのだが、鶴愛さんは考えが決まったのか目を開く。
「私だったら助けてしまいますね」
「……それは、能力があるから?」
「いや、私のはただ布を操るだけなので……でも、それで助けられるんだったら助けたい」
鶴愛さんの目は綺麗で、そして真っ直ぐ見つめている。
「私は後悔はしたくない……ですかね」
「……そっか」
そういう考え方もあるよね。
よし。私もずっと
「ありがと。なんかスッキリしたかも」
「はい。どういたしまして」
鶴愛さんはにっこりと笑ったあとに押し入れの中に入ってしまった。
ここまで来るともはや違和感もなくなってしまった。
「さてっと……」
まずは現状報告だよね。
冷世ちゃんが相談してきたのは丁度、今から2日前。
虐めに対してどう思うって話から始まって……服も切る?って話になっちゃった。
私は能力者でもなんでもないから、どうにか出来るかは分からないけど……
『後悔はしたくない』
鶴愛さんの言う通りだ。
後悔はしたくない。私のやりたいことは、助けることだ。
例えそれがルールを破ったとしても。
◇◆◇
違うの。そうじゃない。
『キャハハハハ!靴紐切っちゃった!』
違う。これは私のやりたいことじゃない。
『どうする?教科書捨てる?』
私がやりたいのは、本当は違う。
『次は服も切ろうか?』
『そうだね』
違う。それ以上はダメなの。あの子の、心が壊れてしまう。
やめておこうよ。
たった一言が言えない。
どうして?こんなはずじゃなかったの。ただ、ただ……
『やっぱ、服も切る?』
私は、私は、あの子と一緒に……!
「大丈夫?」
「っ!? 何が?」
友達が心配そうに私の顔を覗いてくる。
「いや、辛そうな顔してるなって」
「もしかして罪の意識出ちゃった……とか?」
「っ……! そ、そんな訳ないじゃん。むしろ清々するし……」
「そそ、首謀者が責任感じるわけないじゃ〜ん!」
私は誰にもバレないように唇を噛む。
あぁ、やめてよ。これ以上はダメなの。彼女が壊れてしまう。
でも、言えない。
言いたくても言えない。
怖い。怖いんだ。私が次の
それでも、行けないことだってわかってる。
【何がダメなの?】
【欲望のまま解放させればいいじゃない】
欲…望……。
私が…望んだこと?これが?
違う。違う。違う違う違う違う違う!!
【だが、これは心の底であなたが望んだ】
【やめる?よしてよ。あなたのせいでこうなってるんでしょ?】
違うの、そうじゃない。
私がやりたいことは、こんな酷いことじゃない!
私はただ……!
【嫉妬、酷いものね】
【嫉。他人のさいわいをおもしろくなく思うこと……妬。ねたむ。ねたみ妨げる。やきもちをやく……これを合わせたものを嫉妬】
【貴方はこんな感情を浮かばせている。アディシェスが見たら吐きそうね】
さっきから…誰?
【私は別にいいのよ】
【あなたの欲望を解放させなさい】
私は……私は……!
◇◆◇
「クソッタレ」
鬼円が学校を見ながら呟く。
だが、鬼円達の視点から見れば別だ。
(なんだ?この悍ましい気配……学校の中から?)
学校は黒く、紫色のオーラのように包まれ、いかにも禍々しい雰囲気を見せていた。
ただの人達が通っているため無害ではあるのだろう。
そう思った鬼円は、木刀を背中に携えながら学校に登校する。
学校に入ると、その気配はさらに悪化する。
鬼円は誰にもバレないように顔を少し下に向け、顔を顰める。
「んだ、このオーラ……馬鹿でもいるのか?」
「鬼円!」
後ろから狸吉と香蔵が走ってくる。
香蔵と狸吉にもこの気配が感じ取れているようで2人とも顔を青ざめている。
「こんな事は始めてだ……」
「あぁ。なんかやばそうだな…」
鬼円はそう呟きながら学校の中に入ろうとする。
すると、禍々しい雰囲気と共に悍ましい気配が遠のいた。
その気配を感じて鬼円は冷や汗をかく。
(これ、
鬼円は気配が遠のいた方を向く。
(……なんか、ヤベェことが起きてるのは間違いない。だが、なんだ?……まさか、赤い目のことと関係は……ねぇよな?)
───嫌な予感がする。
鬼円は、心の中でそう呟いてから、学校の中へと入っていくのであった。