ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第34話 憧れて。堕ちて。

 

 「私は、貴方が憧れだった。1年生の時からね」

 

 幅次李ちゃんは静かに語り出す。

 冷世ちゃんはその言葉を聞いて、少しだけ目を見開く。

 

 「同じ陸上部に入って、段々と成果を、結果を残していく貴方が憧れだったの」

 「……なら、なんでこんなことを?」

 

 幅次李ちゃんの目は、ほんのり()()()()()()()

 私はそれを見て、少しだけ身構える。

 

 「確かに、憧れていた……でも、それと同時に、嫉妬が浮かんできたの」

 「……っ!」

 

 『なんで私の方を向いてくれないんだろう』『なんで私はこんな結果しか残せてないんだろう』

 そう呟いた後に、乾いた笑いを零す幅次李ちゃん。

 

 「そしたら、こんなことをしてしまった」

 

 冷世ちゃんは睨みつけるように……ではなく、まるで憐れむように見ている。

 

 「最初は、バレたらどうしようだとか、なんでこんなことをしてしまったんだろうとか思ってた。けれども、段々とエスカレートしていっちゃったの」

 

 取り巻きの二人を見て幅次李ちゃんは言う。

 取り巻きの二人は一緒に顔を逸らす。

 

 「この子達も、私がただやっている所を見て、私が仲間に入れと言っただけなの。だから、この2人は悪くないよ」

 「幅次李!?」

 

 幅次李ちゃんは二人を庇うかのように言う。

 それを聞いて、二人は幅次李ちゃんの方に近づく。

 

 「庇うだなんて…」

 「呆れた。そんな所で仲間意識か?」

 

 私が呟いた後に、狸吉さんがため息と同時に言った。

 それを聞いて、幅次李ちゃんと二人は狸吉さんを見る。

 

 「いいか?やったことは犯罪だ。その2人も同じ、レコードに声が残っちゃってるんだよ。共犯なんだよ」

 「それは分かってる。でも…」

 「でもじゃない」

 

 狸吉さんの声は段々と低くなっていくのがわかる。

 私は狸吉さんの服の袖を掴む。

 

 「言い過ぎじゃ…」

 「やったことに変わりはないだろ?」

 

 それはそうなんだけど……。

 そう思っていると、冷世ちゃんが幅次李ちゃんに近づく。

 そして、手を振り上げ、頬を思いっきりパチンと叩く。

 

 「……なんでこんなやり方なの?」

 「……っ」

 「やったことに変わりはない。その通りだし、私達は許すつもりは無い」

 

 静かに語りかける。

 それを聞いて、幅次李ちゃんはこくりと頷く。

 

 「だけどね、それは()()の場合」

 

 冷世ちゃんはそう言う。

 私と狸吉さんは「あっ」と同時に呟く。

 

 「……いままでやってきたことを貴方達は胸に刻んで。今から、そしてこれからも」

 「……はい」

 「そして、私に追いつけるように、こんな手を使わないで、努力して」

 「……はいっ…!」

 

 幅次李ちゃんの顔は、涙でグチャグチャになっていた。

 取り巻きの二人は、一緒に頭を下げる。

 

 「ごめんなさいっ……!」

 「…はぁ……。ほら、そろそろ帰る時間だから、立って」

 

 冷世ちゃんは幅次李ちゃんの目の前に手を差し伸べる。

 幅次李ちゃんはそれを掴んで立ち上がる。

 私は少しだけ微笑んで、狸吉さんは頭をポリポリと掻いている。

 

 もしかしたら、私たち以外がこれの場面を見たら、そいつらを許すなとか言われるんだろう。

 けれども、少なくとも、今だけは…。

 

 「これで終わりで、いいんじゃないかな」

 

 誰にも聞こえないように、私は呟いた。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 「冷世は優しすぎるよ」

 「え?そうかな…」

 

 私が言うと、冷世ちゃんは頭の上にハテナマークを浮かべて首を傾げる。

 はぁ……。それも分かってないから、あんなことをホイホイ言えるんだよなぁ……。

 

 「それで、あの三人はどうしたの?」

 「うん。とりあえず、服の弁償はしてもらう事として、その後は一緒に頑張ろうって言って別れたよ?」

 「………やっぱ優しすぎるんだよなぁ……」

 

 私が呟くと、冷世ちゃんは再び首を傾げる。

 

 そういえば、幅次李ちゃんの目が赤かったけど、冷世ちゃんが手を差し伸べた時には赤くなかった…。

 じゃあつまり、解放されたってこと?

 

 それなら良いんだけど……。

 

 「どうしたの?」

 「え?いや。なんにも……あっ、鬼円だ」

 

 私が適当にはぐらかしていると、鬼円が木刀を持って佇んでいた。

 私たちは鬼円の元へと近づいていく。

 

 「……よぉ、お前ら」

 「何してるの鬼円?」

 「木刀持ってるから……剣道部の手伝いでもしてたの?」

 「……あぁ、まぁ、そんな所だな」

 

 少しの間があったのは気になるけど。

 剣道部の手伝いってことは、音流さんの手伝いでもしてたのかな?

 

 「帰らないの?」

 「まぁ、少しやることがあるから残るわ」

 「そっか、じゃあまた明日ね!」

 「もう、またな」

 

 私たちは鬼円にそう言ってから、校門を出る。

 

 「もうあんなに仲良くなってたのね」

 「まぁね〜!それじゃあ私こっちだからさ!」

 「うん。ありがとね。今日のこと」

 

 冷世ちゃんにそう言われた。

 なんかムズ痒いって言うか、照れくさいって言うか…でも、役に立てたのならいいよね。

 私はそう思いながら、帰路のつくのであった。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 

 「帰った……か」

 

 全校生徒が帰ったのを確認した鬼円は、目を瞑る。

 そして、気配のある方へと向かう。

 

 「どうやら、春乃達はうまくいったみてぇだな」

 

 先程帰っていった幅次李の事を頭の中で浮かべながら、鬼円はそう言う。

 鬼円の手には木刀が力強く握られていて、外から部室がある建物の……上を睨みつける。

 

 「で、お前誰だよ」

 

 鬼円はその上にいる人物に向かってそう言う。

 その人物は笑みを浮かべて鬼円を見ていた。

 

 「この前からそんな変な気配を醸し出しやがって……それに、その気配……どうも人間のようには思えねぇ。何もんだ」

 

 鬼円がそう言うと、その人物は立ち上がる。

 

 「まずは自己紹介じゃないのかしら……?」

 

 その人物は、鬼円にそう言う。

 鬼円は額に汗を垂らしながら、気を張っていた。

 

 「私の名前はツァーカブ。以後、お見知り置きを……ってね」

 

 鬼円と、得体の知れない凶悪が、そこに立ち会っていた。

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