その後。
悪噛は血を拭って立ち上がって寝ると言って館の中に入っていき、その後を桑西さんが追いかけて。
鬼円と私たち、そして檻鉄さんは館の中に入ってソファに座るのであった。
香蔵さんは檻鉄さんの妹さんの……羅救ちゃんと遊んでいる。
「お兄ちゃんほんっとに強いから!」
「そうなの?羅救ちゃん髪長いね」
齢11歳の少女の髪は長い。
腰…所ではなく、膝の裏辺りまで伸びて靡いているその髪は綺麗な金色に染っている。
しかし檻鉄さんの妹かぁ……髪の毛金色だけど。染めてるってわけじゃないだろうし……親がハーフなのかな。
「お母さんは?」
「いない!」
「えっ、お、お父さんは?」
「いない!」
あ〜まずい、これ触れちゃダメなやつだ。
香蔵さんは即座にそう判断したのか会話をそこで止めた。
「良かったな羅救遊んでもらって」
「もう、私を小さい子供扱いしないでよ!」
「ハハッ、悪かった」
そこで現れたのは車を運転していた運転手だ。
私たちに目を向けると、どうもと会釈した。
「ごめんね。君たちにも背負わせちゃって」
「あ、いや、手伝うって言ったのはこっちですし…」
運転手さん……名前を
運転していたということは私たちよりも年齢が上の人ってことになるのか。
「……絶乃罵悪栖って年齢層どうなってるんですか…?」
「……大人の人から羅救のような小さな子までなんでもござれだよ」
へ、へぇ……。
それってもう不良集団って言わないんじゃ?
「檻鉄……若の悪いところさ」
そう言ってタバコを吸おうとしてやめる哲殻さん。
ライターを手に持ったまま話を続ける。
「親がいないだとか、家出してきただとか、そういう子達を保護してはかっこいいところを見せつけて虜にする。だから人数も多かったんだよ最初は」
「……何があったんですか…?」
「……話の食い違いさ」
分裂したことを疑問に思い聞いてみると、そう答えられた。
まるで懐かしむような、悲しむような、そんな神妙な顔で語った。
「若は最初から正義感が強くてね。周りの不良集団にも自分からは手を出さない。だから、殴られた後に殴り返すっていう手法を取ってたんだ」
だが、と続ける。
「花畑からしてみれば、舐められてるって感じだったんだろうな。悪いことしてたヤツらに殴りかかっていったんだ」
「…それは、自分から喧嘩を売ったってことですか?」
「あぁ。それで、若と喧嘩になった……いや、論争になったんだ。なぜ殴りに行かないのか、なぜ殴ってしまったのか……結果的に若側、花畑側の二つに分かれて……大喧嘩」
それで分裂してしまったのか。
つまりは、喧嘩を売られない限り動かない。それが癪に触ったんだろう。
「若はあの時のことをまだ悔やんでるんだよ」
「……それは…」
「『なんであんなことを言ってしまったんだろう』とか『なんで認めてあげれなかったんだ』とかね。でもいちばんは多分……『なんで許せなかったんだろう』っていう…そういう感情が強いんだろうな」
ライターを懐にしまった哲殻さんは頭を搔く。
そして、その後に声を張って言った。
「ようはガキの喧嘩だよ。それに巻き込んだこと、若に変わって謝るよ」
「……仲直り」
「え?」
羅救ちゃんが口を開いて、哲殻さんがその言葉を聞いて固まる。
羅救ちゃんは泣きそうな目付きで、哲殻さんに聞く。
「仲直り、できるかな……?」
「……出来る。やってみせるさ」
哲殻さんは強く、羅救ちゃんにそう言いきった。
◇◆◇
檻鉄は息を吐く。
そして、手に持っている重りを静かに下ろす。
その鍛え上げられた体が檻鉄がどれほど努力してきたのかを物語っていた。
「へぇ、トレーニングルームとかあったんだな」
「っ、なんだ鬼円か」
静かにそこに佇んでいた鬼円にビックリするも、耐える。
鬼円がこちらに歩いてくると、重りをヒョイっと持ち上げる。
「こんなん使ってんのかよお前。オーバーワークって知ってるのか?」
「……知ってるさ。だからこそ頑張らないといけねぇんだよ」
「花畑の為か?」
わかってんじゃねぇか。
心の中でそう呟く檻鉄は、頷く。
鬼円はそれを見て、頭を搔く。なぜここまで素直なんだろうかと。
「お前はさ、助けられなかったヤツとか切り捨てられるのか?」
「あぁ?」
唐突に聞いてきた檻鉄に今度は鬼円がビックリする。
鬼円は一瞬だけ、
「あぁ」
「……薄情もんだな」
「なんだテメェ……」
喧嘩売ってるのか?とキレそうになるも、それも顔を見て消え失せる。
檻鉄は、まるで悔しそうな顔で前を向いていた。
鬼円はそれを見て、黙り込んでしまう。
「オレは……切り捨てられねぇわ。お前みてぇな、そんな薄情もんになれねぇよ」
「……なんでテメェ不良なんかやってやがるんだよ」
檻鉄を見て、鬼円がそう尋ねる。
檻鉄は窓の外に広がっている外を見る。
「なんでだろうなぁ……」
様々な考えを浮かばせる。
自己満足ではない。それは間違いない。
人の為か?それもあるだろうが、一番の理由ではないだろう。
ならば何故か……それはたった一つの理由だ。
「『
「……つまんねぇの」
「ハハッ」
乾いた笑いのようなものが口から吐き出される。
それを聞いて余計鬼円はいたたまれなくなる。
「さぁてと。もうちょい頑張るか」
「おい、俺も借りていいか」
「いいぜ」
お互いに筋トレ用のものを持って汗を流すのであった。
例え消えない過去があっても前に進むしかないのだから。