辺りが真っ暗になってきた所で、私達はカツカツと下駄を鳴らしながら歩き始めた。
やはりと言うべきか、たくさんの人がいて大賑わいしている。
それはそれとして、金之助君、そんなにイカ焼きを頬張って喋れないでしょ。
「りんご飴、美味しい……」
そう言ってペロペロペロとりんご飴を舐め続ける香蔵さん。それを、快弦ちゃんはじーっと見ていた。
それを見て、狸吉さんがりんご飴をもうひとつ買って、それを快弦ちゃんに手渡した。
「快弦ちゃんにもはいどうぞ」
「あ、ありがとうございます……?」
「敬語は使わなくていいよ! もう友達でしょ?」
快弦ちゃんの目が揺らいだ。
快弦ちゃんはそれを聞いて、口をモゴモゴさせた後に言った。
「あ、ありが……と」
狸吉さんはズキューンッという効果音と共に胸を抑えで倒れた。尊死と言うやつでしょう。南無阿弥。
金之助君がそれを見て、イカ焼きを全て飲み込んでから、快弦ちゃんの手を掴んだ。
「金魚すくい行くっすよ!」
「えっ、ちょっ!?」
快弦ちゃんを連れてドタドタと走っていく金之助君。私たちはそれを見て、苦笑いを浮かべるのだった。
……まぁ、2人だけで楽しませてあげよう。と、香蔵さんが言い、私たちもそれに賛成する。
2人の雰囲気を壊しちゃダメだしね。そう思っていると、鬼円が先生を連れてき……た…………?
「……なにそれ?」
「あ? ……仮面だが?」
「いや、『仮面だが?』じゃなくてさ」
鬼円は、頭に戦隊モノのヒーローの仮面を付けており、黎矻先生も狐のお面? のようなものを付けていた。
……2人してなにやってんの……。
「知らないのか? 狐は可愛い動物だぞ?」
「知ってますよそれぐらい!! というか、そういうの好きなんですね!?」
「俺だって男だぞ??」
先生ェ……。
私はジト目で先生を見る。が、鬼円の視線が気になりそちらを向く。そこには、線香花火が売ってある。
そっか、花火とは言えど、線香花火もあるのか。私はそれを1つ買って、鬼円の元へと駆け寄る。
「鬼円、花火終わったら皆で線香花火しようよ!」
「……あぁ、そりゃいいな」
鬼円はそう言って笑う。
……行けない、そんな笑顔を見せられたら直視出来ない。
先生もそれを見てか、お前笑えるのか……。と呟き、鬼円と殴り合いそうな雰囲気に。誰でも喧嘩売るのはやめなね? と言うか、もう慣れてきた自分が怖くなってきた。
香蔵さんはそんな光景を見ながら、ふと上を見る。
私達もそれに釣られてみてみると……ヒュ〜と音を立てて何かが上がった。
それは、パァンと弾けて、綺麗な閃光を飛ばした。
キラキラと輝くそれに、その場にいた人々が皆で注目する。
香蔵さんが大きく息を吸った。
「たまや〜〜〜〜っ!!!!」
香蔵さんの掛け声がその場に響きわたり、パチパチと拍手が巻き起こる。
私たちは移動しながら花火を見る。鬼円も、花火に夢中でわたあめを食べるのを忘れている。
「……綺麗だね」
「……な」
私が聞くと、鬼円は頷いて言った。
黎矻先生は花火を見て、タバコを付ける。香蔵さんがタバコ! 汚い! と言うと、黎矻先生がそれを見て、嫌そうな顔をしてからタバコの火を消す。
「これでいいんだろ」
「先生……」
まるで『トゥンク』と言う効果音を出してそうな顔と共に脚を踏んだ。
黎矻先生はそれに驚いて足を上げて抑えて……
「なぁにすんだこのクソア………………っ! ば、馬鹿野郎!」
「いまなんて言おうとした!? 教師としてではなくて人間として終わりそうな言葉だったよね!?」
「いきなり何足踏んどんだ!!」
「だって! まずタバコ吸うなよ!」
それを見ながら狸吉さんが苦笑いを浮かべる。
私はふと、鬼円がいないからどこに行ったのかと周りを見渡す。
「あっ」
私が見つめた先には、鬼円がこちらを向いて、来いよ。と指をクイクイと動かして去る姿が。
私はそれを見て、歩き始めた。人々の喧騒が遠い。
鬼円の後を追いかけた私は、森の中に入っていくのを見た。
……開けた場所に出た。
森の中だから、人々の声なんてもう聞こえないし、花火の音と閃光が鬼円を照らした。
鬼円はこちらを向くと、こっちだ。と言った。私は鬼円の隣へと向かう。
「ここ、開けててな。もしかしたらと思ったが、よく見えるじゃねぇか」
鬼円はそう言う。
私はそんな鬼円を見て、頷く。鬼円は私の頭をつかみ、グリっと回して花火の方を向かせた。
「俺じゃなくてあっち見ろよ」
鬼円の言葉に、何も言わずに従う。
ヒュ〜〜〜ドン。ヒュ〜〜〜〜ドン!
花火がどんどんと上がり、夜空を綺麗に彩る。
「……誰かと来た花火なんて、記憶にねぇな」
「……そうなんだ。私と、同じだね」
母親も父親も、忙しくて一人で行ったっけ。
鬼円は私の言葉にふぅーんと言うだけ。私はなんで自分語りしてるんだろうと思ってしまった。
あ〜もう……なんだか恥ずかしくなってきた。
そう思っていると、鬼円が私の頭に手を乗せた。
私は、勢いよく目を見開いて、鬼円を見る。
「じゃあ、俺と一緒で、これが初めてだな」
私は、鬼円の言葉に……
「うん!」
元気に頷いた。