ようこそ!超能力部です!   作:YY:10-0-1-2

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第80話 刻が鳴る

 

 夏には台風が直撃することが結構ある。

 私たちも、その台風によって考えることを変えなければならない。

 私と快弦ちゃんは、えっほえっほ、とコインランドリーで回してきた洗濯物を持って帰っていた。

 台風の影響でものすごい風がビュンッ! と吹くが、何とか耐えながら家に着く。

 二人でため息を吐いてから、少しだけ笑い声をだす。

 

「もう、疲れちゃったね……」

「そうですね。……あれ? 鶴愛さんがいない?」

「あぁ、なんだか用事があるみたいで朝から出かけちゃったよ」

 

 鶴愛さんがいないことに気づいた快弦ちゃんに対してそう返す。

 鶴愛さん曰く、今日は香蔵さんに用事があるらしく、先程も言った通り朝からいない。相当大切な用事らしいんだが、内容は教えてくれなかった。

 まぁ、きっと香蔵さんの事だし、大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 鶴愛はカツカツと下駄を鳴らして歩く。

 香蔵との会話は終わった。しかし、その目にはまだ警戒という文字が張り付いていた。

 カツカツ、下駄が鳴る。そしてそれは、森の中に響いた。

 

「……誰でありんすか?」

「おぉ、バレてやんの」

 

 

 木の上からガサッと音が鳴る。

 まさか森に入るとはな、と呟きながら降りてくる。目には『5i』の文字が刻まれている。

 それを見て、鶴愛の目が見開かれ、先程の香蔵との会話が浮かび上がる。

 

 鶴愛が、香蔵の家に行ったのは雑談をしに行っただけじゃない。

 目的は、もうひとつあったのだ。

 

「ツァーカブには『7i』、そしてキムラヌートには『10i』……!」

「ほぉ? 気づいてたのな」

 

 鶴愛がそう言うと、感嘆の声を上げる男。

 鶴愛の語った記号は、以前鬼円や春乃、そして香蔵自身も戦って勝利を収めた2人についていた記号である。

 狸吉が気付いたのだ。何か記号が刻まれていると。

 

「記号が身体に刻まれているのは、彼女らの仲間……!」

 

 つまりそれは。

 

「敵と言うこと……!!」

「お、お、あ、た、り〜♡」

 

 鶴愛は、口を噛み締めた。

 今現在、台風が日本列島を襲っている状態。それは、渋谷も例外ではない。

 台風と呼ばれる災害が襲っている中での敵との戦闘。

 

 鶴愛の能力『鶴の恩返し』は、自身の周りにある布を操るというもの。だがしかし、鶴愛の持っている布は衣服のみである。

 操れる条件は、鶴愛に作られた布かどうかによる。無論、敵の布などは作っているわけが無い。

 

「あなたは、誰ですか?」

「おっ、名前聞きたい? 冥土の土産ってやつ?」

 

 おちゃらけた調子で言う男。そんな男を見つつ、ザリっと脚を動かす。

 男は、虚空から鎌を1つ、2つと取り出す。

 

「俺は、アクゼリュス。地獄で、名前広めててくれよ?」

(逃げ切れれば、私の勝ち。しかし、それは難しいでありんしょうね……)

 

 アクゼリュスが名前を名乗っている間、思考を凝らす鶴愛。

 どう動いてもほとんど詰みに近い、そのような状態で彼女はどうするのか。

 答えはひとつ。

 

「おっ」

 

 アクゼリュスが声を上げた。

 鶴愛の腰に巻きついている帯が動く。シュルルルと音を立てて鶴愛から離れ、アクゼリュスの目の前にやってくる。

 アクゼリュスはそれを切り裂き離れている鶴愛を見て、舌を出す。

 

「いいねぇ、逃げるのか……追うだけっしょ!」

(っ! 速い!?)

 

 鶴愛が後ろを振り向き、心の中で叫ぶ。

 鎌が1つ投げられる。禍々しく緑色の刃を見せている鎌は鶴愛の横を通る。鶴愛は、それをジャンプして回避する。

 鎌がクルクルと回り、木に刺さる。

 その木に刺さった鎌に足を乗っけたアクゼリュスは思いっきりジャンプをする。

 鶴愛が驚き、声を上げる前にアクゼリュスは思いっきり鶴愛の喉元に向けて蹴りを入れる。致命的にならないものの、確実に潰す勢いで蹴った。

 鶴愛は蹴られたことで、地面に叩きつけられ、2、3回地面を転がり、大きく咳き込む。

 

「コホッ、コホッ、ケホッ!」

「逃げれる場所、反対側になっちまったな? ほら、もう1回逃げていいんだぜ?」

 

 イカれてる。

 その言葉が鶴愛の中で浮かび上がる。鶴愛は、口元を拭い、冷や汗を垂らす。

 ふと、木に刺さっていたはずの鎌がないことに気づく。

 瞬間、脚にグサッと何かが刺さった。

 

「ぐっ、ああああああああああああっ!!?」

「おっ、バッチリだね」

 

 そこには、木に刺さっていたはずの緑色の刃のついた鎌が脚の甲にあった。

 鶴愛は叫びながら、鎌を引き抜き、遠くに投げる。遠くに投げられた鎌は、クルクルと回り、なんとアクゼリュスの手の中に収まった。

 

「お前が布を操れるように、俺も鎌を操れるんだわ」

「っ! なんてこと……っ!」

 

 顔を歪める鶴愛。

 このままでは、自分が死ぬことは確実。そう確信した鶴愛は、ゆっくりと息を吸った。

 

「あなたさん達は、何がしたいんでありんすか?」

「目的? あぁ、うーんと……言っていいのかな?」

 

 アクゼリュスは顎に手を当ててわざとらしく首を傾げる。

 首が90度になった所で目を細めた。

 

「ま、どーせ実行されるからいいか」

「っ!」

 

 鶴愛は目を見開く。

 その計画とは、鶴愛が絶句するようなものであった。鶴愛はその計画の内容を聞き、冷や汗を垂らす。

 アクゼリュスは、その顔を見てケラケラと笑った。

 

「ほ、ほんとに……ほんとに、そんなことしようとしてるのでありんすか!?」

「あぁ、俺たちは常に本気(マジ)だぜ?」

 

 アクゼリュスはニヤッと笑みを浮かべる。それは、とてもとても歪んだ顔。口が裂けるのではないかと錯覚するような、そんな歪んだ顔。

 対して、鶴愛はその光景を、それが成された時を想像して、喉を鳴らし顔を青ざめさせていた。

 

「『虚無の世界に地球丸ごと連れていく』……?」

 

 それが、計画であった。

 

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